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全般機能評価尺度

Global Assessment of Functioning

別名
GAF
臓器系
精神
科目
Psychiatry
トピック
精神医学 A-09:統合失調症の急性期・長期治療とリハビリテーション

🧠 全体像:GAF(全般機能評価尺度)は、患者の心理的・・機能を単一の連続尺度(1〜100点)上で評価する、臨床家による総合的な印象評価である。-IV-TRの多軸診断でAxis V(第V軸)として使われていた指標で、「症状がどれくらい重いか」と「生活・仕事がどれくらい回っているか」という本来別々の2つの軸を1つの数字にするのが設計上の特徴であり、同時に最大の弱点でもある。

目的と適用場面

内容
目的 精神疾患患者の心理的・・機能を、単一の数値で総合的に評価する
対象 ほぼすべての精神疾患患者。診断を問わず横断的に使える汎用尺度として設計された
使う場面 治療前後の重症度・改善度の比較、の評価、治療反応性の判定基準(例:導入基準)、多軸診断のAxis V記載(-IV-TR時代)
評価しないもの 特定の症状領域(・など)の強さそのもの、身体的・環境的による機能低下

💡 1つの得点に2つの軸が入っている。 採点者は症状の重症度と機能障害の程度をそれぞれ考慮したうえで、低いほうの点数を最終スコアとして採用するのがな運用である。症状は軽いが機能は著しく低下している患者と、症状は重いが機能は保たれている患者が、同じGAF点数になりうる1。

構成要素と配点

複数項目を加点する形式ではなく、1〜100点の単一軸を10段階の点数帯に区切って評価する(0点は「情報不足で評価不能」)。

点数帯 目安となる状態像
91〜100 症状なし。あらゆる面で優れて機能し、周囲から頼られる存在
81〜90 症状はほぼないか軽微(試験前の軽い不安程度)。全領域で良好に機能する
71〜80 症状があってもストレスへの一過性・予期される反応にとどまり、機能低下も軽微
61〜70 軽い症状、または・機能の軽度の困難はあるが、おおむね機能し有意義なも保つ
51〜60 中等度の症状(など)、または中等度の機能障害(友人が少ない、対人葛藤など)
41〜50 重い症状(、頻回のなど)、または深刻な機能障害(友人がいない、仕事を続けられない)
31〜40 や意思疎通に一部障害(話が支離滅裂)、または仕事・家族関係・判断力・思考・気分など複数領域で重大な機能障害
21〜30 ・に行動が強く支配される、または意思疎通・判断の著しい障害、ほぼ全領域で機能不能
11〜20 の危険がある、最低限の身の回りの清潔を保てないことがある、意思疎通が著しく困難
1〜10 自他を深刻に傷つける危険が持続する、最低限の清潔を保てない、明確なを伴う自殺行為
0 評価するための情報が不十分

解釈とカットオフ

状況 目安
日本の導入基準(反応性不良の入口) 「反応がみられない」=GAF評点が41点以上に相当する状態になったことがないことと定義される2
一般的な重症度の目安 71点以上はおおむね正常範囲、51〜70点は軽度〜中等度、50点以下は重い症状・機能障害を示唆する

💡 41点というの意味。 日本のクロザリル電子添文が反応性不良を判定する際、GAF 41点以上(=上表の「41〜50」以上の帯)に一度でも到達していれば「反応があった」とみなす。逆に言えば、41点以上に届いたことが一度もないまま2種類以上のを規定量・規定期間投与されて初めて、反応性不良の入口を満たす2。

限界と使ってはいけない場面

⚠️ ではには廃止された尺度である。 多軸診断システムの廃止に伴いAxis Vとともに削除され、代わりにWHODAS 2.0(障害評価スケジュール2.0)が・障害の評価ツールとして提示されている3。新規の臨床記録やでGAFを標準指標として選ぶ根拠にはならない。

⚠️ それでも日本の実地臨床・文書では現役である。 の電子添文の反応性不良基準や、国内外のの一部では引き続きGAFが使われている2。「で廃止された=もう出会わない」と考えると、これらの文脈でつまずく。

⚠️ 症状と機能という異質な2軸を1つの数値にするため、同じ点数でも中身がまったく異なりうる。両者が乖離する症例は約10人に1人存在し、乖離時は機能側のほうがより重症であることが多い。点数だけを追わず、症状評価と機能評価を別々に確認する運用が望ましい1。

⚠️ 評価者間の一致度が採点者の訓練の有無に左右されやすく、訓練を欠くと臨床実務でのが下がりうる3。単発の評価者による1回の点数を、そのまま厳密な数値として扱わない。

💡 症状の重み付けを取り除き、・機能だけに焦点を絞った派生尺度としてSOFAS(・機能評価尺度)がある。「機能低下だけを取り出して評価したい」場面ではGAFよりSOFASのほうが軸が単純である。

まとめ

  • GAFは心理的・・機能を1〜100点の単一連続尺度で評価する、-IV-TR Axis V由来の総合的臨床印象評価である。
  • 症状の重症度と機能障害という異質な2軸を1つの得点にする設計であり、低いほうの点数を採用するのがな運用。
  • では多軸診断の廃止とともにには削除され、WHODAS 2.0が後継として提示されているが、日本の電子添文の反応性不良基準(GAF 41点以上に達したことがないこと)など、実地では今も使われている。
  • 症状・機能の乖離、評価者訓練への依存という限界を踏まえ、単発の数値だけで重症度を断定しない。

出典

  1. 1.The symptom and function dimensions of the Global Assessment of Functioning (GAF) scale(Comprehensive Psychiatry・2012)GAFが症状(symptom)と機能(function)という2つの異なる次元を1つの得点に混在させて設計されていること、両次元のスコアが乖離する症例が約10%存在し、乖離した場合は機能側のほうが重症であることが多いこと、GAFの伝統的な運用(症状・機能のうち低いほうの点を採用する)はこの乖離にもかかわらず全体的な指標として機能したことを確認した閲覧 2026-09-05
  2. 2.クロザリル錠25mg/クロザリル錠100mg 電子添文(ノバルティスファーマ/医薬品医療機器総合機構・2024)日本のクロザピン(クロザリル)の効能又は効果に係る反応性不良の基準(5.1.1)で、「反応がみられない」とはGAF評点が41点以上に相当する状態になったことがないことと定義されていること、すなわちDSM-5でGAFが公式には廃止された後も日本の規制文書では現役の指標として使われ続けていることを確認した閲覧 2026-09-05
  3. 3.DSM-5 and the Assessment of Functioning: The World Health Organization Disability Assessment Schedule 2.0 (WHODAS 2.0)(The Journal of the American Academy of Psychiatry and the Law・2014)DSM-5が多軸診断システムを廃止したことに伴い、Axis Vという独立した機能評価の軸およびGAFが削除されたこと、代わりにWHODAS 2.0が新たな全般的機能・障害評価ツールとして提示されたこと、GAFがそれまで臨床・研究のみならず司法・行政・保険の各制度でも広く採用されてきた尺度であったことを、抄録で確認した閲覧 2026-09-05