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Kikuchi分類

Kikuchi classification

別名
Kikuchi level菊池分類
臓器系
消化器腫瘍
科目
Surgery
トピック
外科学 O/23:直腸・肛門腫瘍(症状・診断・治療)

🧠 全体像:Kikuchi分類は、茎を持たない(・)大腸のT1癌が、をどこまで深く侵したかをsm1(浅い)・sm2(中間)・sm3(の近く)の3段階で表す分類である。茎のある病変に使うの版にあたる。深いほどリンパ節転移や再発が増えるという整理に使われてきた分類だが、現在の日本のガイドラインはへの浸潤の距離(1000 μm)で追加治療を決めるため、Kikuchi分類は歴史的な背景と、授業・論文を読むための知識として押さえる。⚠️ 「sm1・sm2・sm3ごとの」としてよく見る数字は、KikuchiではなくKudo分類のものである。

目的と適用場面

内容
目的 のについて、への浸潤の深さを共通の言葉で表し、(内視鏡切除でよいか、腸切除が要るか)の目安にする1
対象 までの浸潤にとどまる()の大腸癌。茎のある病変はを使う2
使う場面 の。原著は、浸潤の深さの術前評価がポリープへの不要な手術を減らしうるとした1
評価しないもの 組織型・・、リンパ節転移の有無そのもの。の「な距離」(ミクロン単位の測定)

原著は、1982〜1989年に診断された182例を5年以上または死亡まで追跡して、浸潤の深さと予後の関係を調べた1。

構成要素と区分

⭐ 点数を足す形式ではなく、癌の最深部がのどの深さにあるかで決める順序分類である。粘膜、、、の順に壁が重なり、癌が深く入るほどsm1からsm3へ進む。

区分 浸潤の深さ(原著の定義) 原著の症例数
sm1 ごく軽い浸潤(原著の表記はへの軽い癌浸潤、200〜300 μm) 64例
sm2 中間の浸潤 82例
sm3 の内面に及ぶ浸潤 36例

定義は原著ののとおり1。ミクロン単位の数字が付いているのはsm1だけで、sm2・sm3は深さの見当で区別する。

flowchart TD
    A["粘膜内にとどまる<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intramucosal carcinoma'>粘膜内癌</span>)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Muscularis mucosae'>粘膜筋板</span>を越えて<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='submucosa'>粘膜下層</span>へ入る"]
    B --> C["sm1<br>ごく浅い浸潤(200〜300 μm)"]
    C --> D["sm2<br>中間の浸潤"]
    D --> E["sm3<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='muscularis propria'>固有筋層</span>の内面まで"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='muscularis propria'>固有筋層</span>へ達するとT2"]

解釈とカットオフ

原著の結果

追跡した182例のうち、またはの後に局所再発が4例、リンパ節転移が13例あった。この17例にはsm1が1例もなかった。浸潤のレベル、形態、部位が有意な危険因子(P<0.05)で、・組織学的悪性度・腫瘍径は有意ではなかった1。

💡 原著のは、浸潤レベルごとのリンパ節転移率を示していない。「浅ければ転移がほぼない」ことは示したが、sm2・sm3の具体的な割合はからは読めない。

よく引かれる転移率はKudo分類のもの

腸切除例を対象にしたで、リンパ節転移の割合は次のとおりだった2。

区分(Kudo分類) リンパ節転移の割合
sm1 3%
sm2 8%
sm3 23%

深いほど転移が増えることは分かるが、これはKudo分類の数字であり、Kikuchi分類の区分で測った値として引用しない。

現在の考え方:絶対的な深さ

sm1〜sm3はの全層を切除してはじめて相対的な深さを測れる。内視鏡で切除した標本はの深い部分が残らないので、ミクロン単位の絶対深度で測る方法が広く使われている2。

日本のガイドラインの歴史を見ると、「ごく浅い浸潤」はおおむね200〜300 μmとされ(1994年の取扱い規約第5版)、その後の症例集積で200〜300 μmが1000 μmまで広げられた3。Kikuchiのsm1が200〜300 μmで定義されたのに対し、現行の追加治療の閾値は1000 μmである。

日本の集計で、病変の別のリンパ節転移は次のとおりだった3。

病変数 リンパ節転移
0〜500 μm未満 65 0(0%)
500〜1000 μm未満 58 0(0%)
1000〜1500 μm未満 52 6(11.5%)
1500〜2000 μm未満 82 10(12.2%)
2000〜2500 μm未満 84 13(15.5%)
2500〜3000 μm未満 71 8(11.3%)
3000〜3500 μm未満 72 5(6.9%)
3500 μm以上 240 35(14.6%)

1000 μmを境に転移が出始めるが、1000 μm以上でも約90%は転移がない。ガイドラインはだけで決めず、他の因子を併せて追加治療を考えるとしている3。

内視鏡切除後の判断

flowchart TD
    A["内視鏡切除後にpT1癌と診断"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vertical margin'>垂直断端</span>が陽性か"}
    B -->|"はい"| C["外科切除を勧める"]
    B -->|"いいえ"| D{"次のいずれかがあるか<br>SM浸潤1000 μm以上<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='lymphovascular invasion'>脈管侵襲</span>陽性<br>低分化・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='signet ring cell'>印環細胞</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mucinous carcinoma'>粘液癌</span><br>最深部の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tumor budding'>簇出</span>がBD2/3"}
    D -->|"あり"| E["リンパ節郭清を伴う腸切除を勧める"]
    D -->|"なし"| F["追加切除なしで経過観察を考える"]
    E --> G["転移のリスクと手術のリスク、患者の希望を併せて決める"]
    F --> G

この流れは日本のガイドラインの推奨を整理したもので、Kikuchi分類の区分は使わない3。

限界と使ってはいけない場面

⚠️ にしか使えない。 茎のある病変は頭部・頸部・茎という区別があり、で扱う。同じ病変にKikuchi分類との両方を当てはめない2。

⚠️ 内視鏡では測れない。 sm1〜sm3はの全層を見て決める相対的な深さの分類で、内視鏡で切除した標本ではの深い側が残らず、sm2とsm3を区別できないことがある。このため日本のガイドラインはミクロン単位のを使う23。

⚠️ をKikuchi分類の数字として引用しない。 原著のは等級別のを示していない。「sm1が約3%、sm2が約8%、sm3が約23%」はKudo分類の腸切除例の数字である2。

⚠️ 浸潤レベルだけで決めない。 原著の症例では・組織学的悪性度は有意な危険因子でなかったが1、現行の日本のガイドラインは、低分化・・、を追加治療の判断に入れている3。古い研究のを現在の判断基準として使わない。

⚠️ sm1でも転移ゼロとは限らない。 原著で転移・再発の17例にsm1がなかったのは、このコホートでの観察である。Kudo分類の腸切除例ではsm1でもリンパ節転移が3%あった2。

まとめ

  • Kikuchi分類は、ののへの浸潤の深さを、sm1(200〜300 μm)、sm2(中間)、sm3(の内面まで)の3段階で表す。茎のある病変はを使う。
  • 原著では、局所再発またはリンパ節転移の17例にsm1がなく、浸潤のレベル・形態・部位が危険因子だった。等級別のはに無い。
  • よく引かれるsm1 3%・sm2 8%・sm3 23%はKudo分類の数字で、Kikuchi分類のものではない。
  • 内視鏡では相対的な深さが測れないため、現在の日本のガイドラインは1000 μmと、・組織型・を併せて追加の腸切除を決める。
  • 授業・論文でsm1〜sm3や「Kikuchi-1」に出会ったら、どの分類の定義か、な距離に直すとどのくらいかを確認して読む。

出典

  1. 1.Management of early invasive colorectal cancer. Risk of recurrence and clinical guidelines(Diseases of the Colon & Rectum(Kikuchi R, Takano M, Takagi K, et al.)・1995)抄録で確認した。粘膜下層に浸潤したが固有筋層には深く入らない早期浸潤大腸癌の治療方針を作る因子を調べた研究。1982〜1989年の182例を5年以上または死亡まで追跡し、浸潤の深さでsm1(粘膜筋板からごくわずかな浸潤、200〜300 μm)64例、sm2(中間の浸潤)82例、sm3(固有筋層の内面に及ぶ浸潤)36例に分けた。内視鏡的ポリペクトミーまたは局所切除後に局所再発が4例、リンパ節転移が13例あり、この17例にsm1は1例もなかった。浸潤のレベル・形態・部位が転移または再発の有意な危険因子(P<0.05)で、脈管侵襲・組織学的悪性度・腫瘍径は有意でなかった。浸潤レベルによる評価は、無茎性ポリープへの不要な手術を減らす指針づくりに有用と結論している。抄録には等級ごとのリンパ節転移率は無い。全文は購読誌のため、Methods・Resultsの詳細は未確認。閲覧 2026-10-28
  2. 2.Endoscopic diagnosis and treatment of early colorectal cancer(Intestinal Research(Hong SW, Byeon JS)・2022)PMC9344247の全文(Europe PMCのfullTextXML)で確認した。早期大腸癌の粘膜下層浸潤の深さの分類は形態で異なり、有茎性はHaggitt分類、無茎性はKudo分類またはKikuchi分類で行うこと、腸切除例の後ろ向き研究でリンパ節転移の割合がKudo sm1で3%・sm2で8%・sm3で23%であること、これらの分類は粘膜下層を全層切除した後に相対的な深さを測る必要があるため、内視鏡切除標本では絶対深度で測る方法が広く使われること、日本の多施設研究で無茎性は浸潤深度1 mm未満でリンパ節転移が0%であることを確認した。総説であり、Kikuchi分類そのものの等級別転移率は本文に無く、各数値の一次文献は未確認。閲覧 2026-10-28
  3. 3.Japanese Society for Cancer of the Colon and Rectum (JSCCR) guidelines 2019 for the treatment of colorectal cancer(International Journal of Clinical Oncology(Hashiguchi Y, Muro K, Saito Y, et al.)・2020)PMC6946738の全文(Europe PMCのfullTextXML)で確認した。内視鏡切除後のpT1癌で、垂直断端が陽性なら外科切除を勧め、T1b(SM浸潤1000 μm以上)・脈管侵襲陽性・低分化腺癌/印環細胞癌/粘液癌・最深部の簇出がBD2/3のいずれかがあれば、リンパ節郭清を伴う腸切除を勧めること(推奨度2・エビデンスレベルB)。粘膜下層への浸潤の深さは「大腸癌取扱い規約」第3版英語版の方法で測ること。「大量浸潤」の定義が第5版(1994年)で「ごく浅い浸潤(おおむね200〜300 μm)を超える浸潤」と具体化され、その後の症例集積研究で200〜300 μmが1000 μmまで広げられたこと。JSCCRのプロジェクト研究でSM浸潤1000 μm以上のリンパ節転移率が12.5%、約90%は転移がなく他の因子を考慮して追加治療を決めること。SM浸潤距離別の転移率の表(Table 14)で、無茎性は0〜500 μm未満が65例中0例、500〜1000 μm未満が58例中0例、1000〜1500 μmが52例中6例(11.5%)、3500 μm以上が240例中35例(14.6%)。本文中にKikuchi分類の記載は見当たらない。閲覧 2026-10-28