スコア体系ノート一覧へ

Scores · Published

Haggitt分類

Haggitt classification

別名
Haggitt levelHaggittレベル
臓器系
消化器腫瘍
科目
Surgery
トピック
外科学 O/19-20:大腸ポリープ・ポリポーシス症候群・憩室症の外科的側面
適用疾患
大腸腺腫

🧠 全体像:は、茎のある()の中にできた癌が、ポリープの頭部・頸部・茎・腸壁のどこまで入り込んだかを0〜4のレベルで表す分類である。癌がポリープの根元(茎)を越えて腸壁側のへ入ったレベル4が最も深く、内視鏡で切除した後にリンパ節転移や再発の懸念が高まる。の病理でレベルを決め、追加の腸切除が要るかどうかを考える材料の1つにする。⚠️ にしか使えず、平坦・の病変には別の測り方(など)を使う。

目的と適用場面

内容
目的 内視鏡的に切除した内の癌の浸潤の深さを共通の言葉で表し、追加治療の要否を考える1
対象 で切除された(茎のある)の大腸腺腫内癌
使う場面 の。茎のと浸潤の範囲を評価して、追加の腸切除を検討するとき
評価しないもの ・平坦型の病変(Kudo分類・Kikuchi分類、またはを使う)、リンパ節転移の有無そのもの

構成要素と区分

⭐ 点数を足す形式ではなく、癌の最深部がどの層にあるかで決める順序分類である。ポリープの頭部(先端の膨らみ)、頸部(頭部と茎の境)、茎、茎より下の腸壁、の順に深くなる。

レベル 浸潤の最深部
0 癌が粘膜内にとどまる
1 ポリープの頭部
2 ポリープの頸部
3 ポリープの茎
4 茎より下の、腸壁側の

定義は原著のとおり1。レベル4でもには達していない(にとどまる)ことが前提である。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pedunculated polyp'>有茎性ポリープ</span>内の癌"] --> B["レベル0:粘膜内にとどまる"]
    B --> C["レベル1:頭部まで"]
    C --> D["レベル2:頸部まで"]
    D --> E["レベル3:茎まで"]
    E --> F["レベル4:茎より下の腸壁の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='submucosa'>粘膜下層</span>まで"]

解釈とカットオフ

原著は、129例の(までの浸潤)を平均81か月追跡して、予後との関係を調べた1。

所見 結果
レベル0()65例 予後不良例なし
浸潤癌64例 8例が予後不良(癌死、癌を有したまま生存、または結腸切除でリンパ節転移陽性)
有意な予後不良因子 レベル4(p<0.001)と直腸の局在(p=0.025)だけ
レベル4の28病変 7病変が予後不良

💡 原著のは「浸潤のレベルが管理を決める主要因子であるべき」だが、症例数は少なく、予後不良の判定が転移だけでなく癌死・癌の残存を含む点に注意する。

切除後の考え方

現在は、浸潤のレベルだけでなく、組織型・・・を併せて追加治療を考える。日本の大腸癌治療ガイドラインは、追加治療を考える因子として、低分化腺癌・・、最深部の低分化成分と、、を挙げ、SM浸潤1000μm以上でもリンパ節転移があるのは約12.5%で、約90%は転移がないため、他の因子や患者の背景・希望を考慮して決めるとしている2。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pedunculated polyp'>有茎性ポリープ</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='resection specimen'>切除標本</span>で癌を認めた"] --> B{"浸潤レベルは4か"}
    B -->|"はい"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high-risk findings'>高リスク所見</span><br>追加腸切除(リンパ節郭清を伴う)を検討"]
    B -->|"いいえ(0〜3)"| D{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='positive surgical margin'>断端陽性</span>・低分化・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lymphovascular invasion'>脈管侵襲</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='high-grade tumor budding'>強い簇出</span>のいずれかがあるか"}
    D -->|"はい"| C
    D -->|"いいえ"| E["追加切除なしの経過観察を検討"]
    C --> F["全身状態・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='surgical risk'>手術リスク</span>・患者の希望を併せて決める"]
    E --> F

この流れは本ノートの整理であり、実際には施設やガイドラインの基準に置き換えて使う。

限界と使ってはいけない場面

⚠️ にしか使えない。 ・平坦型の病変は茎がなく、頭部・頸部・茎という区別ができない。これらはKudo分類またはKikuchi分類での浸潤深度を表すか、内視鏡では絶対深度(から測った)で評価する3。

⚠️ レベルだけで追加手術を決めない。 日本のガイドラインは、のでもリンパ節転移が53例中3例(5.7%)にあり、3例とも脈管(リンパ管)侵襲が陽性だったことを示している2。浅い浸潤でも、・低分化・があれば追加治療を考える。

⚠️ 深さの測り方が国や施設で違う。 日本の基準は(1000μm)を使い、そのものは本文中に出てこない2。は絶対深度でも評価でき、浸潤深度3mm未満でがなければリンパ節転移は0%とする研究が引かれている3。資料を読むときは、・・Kikuchi分類のどれで書かれているかを確認する。

⚠️ 標本によってはレベルを判定できない。 フランスの(pT1大腸癌312例)で140例にを当てたところ、レベル1が52例、2が28例、3が53例、4が2例で、5例は判定できなかった4。レベル4は実際にはまれで、同じ研究が転移の強い危険因子に挙げたのは低分化・・高グレードのだった。判定が難しいときは病理医と相談し、無理にレベルを決めない。

まとめ

  • は内の癌の浸潤の深さを、0(粘膜内)、1(頭部)、2(頸部)、3(茎)、4(茎より下の腸壁の)で表す。
  • 原著では、レベル4と直腸の局在だけが有意な予後不良因子で、に予後不良例はなかった。
  • 追加の腸切除はレベル4だけでなく、断端・組織型・・と、全身状態・患者の希望を併せて決める。
  • にしか使えない。にはKudo分類・Kikuchi分類やを使い、日本のガイドラインは(1000μm)で扱う。

出典

  1. 1.Prognostic factors in colorectal carcinomas arising in adenomas: implications for lesions removed by endoscopic polypectomy(Gastroenterology(Haggitt RC, Glotzbach RE, Soffer EE, Wruble LD)・1985)抄録で確認した。粘膜下層までの浸潤にとどまる腺腫内癌129例(ポリペクトミーのみ63例、結腸切除66例、平均観察81か月)で、浸潤レベルを0(粘膜内にとどまる癌)、1(頭部)、2(頸部)、3(茎)、4(腸壁側の粘膜下層)と定義した。粘膜内癌65例に予後不良例はなく、浸潤癌64例のうち8例が予後不良(癌死、癌を有したまま生存、または結腸切除でリンパ節転移陽性)だった。有意な予後不良因子はレベル4(p<0.001)と直腸の局在(p=0.025)だけで、レベル4の28病変のうち7病変が予後不良だった。著者らは、浸潤のレベルが腺腫内癌の管理を決める主要因子であるべきだと結論した。全文は購読誌のため、Methods・Resultsの詳細は未確認。閲覧 2026-10-27
  2. 2.Japanese Society for Cancer of the Colon and Rectum (JSCCR) guidelines 2019 for the treatment of colorectal cancer(International Journal of Clinical Oncology(Hashiguchi Y, Muro K, Saito Y, et al.)・2020)PMC6946738の全文(Europe PMCのfullTextXML)で確認した。pT1癌の原則は腸切除とリンパ節郭清だが、転移リスクが極めて低い一部のpT1(SM)癌では過剰治療を避ける目的で内視鏡切除後の追加治療の基準を設けたこと、追加治療を考える因子としてSM浸潤深度、低分化腺癌・印環細胞癌・粘液癌、最深部の低分化成分と粘液結節、簇出、脈管侵襲が挙げられていること、SM浸潤1000μm以上のリンパ節転移率が12.5%(Table 14)で約90%は転移がなく、他の因子を考慮して決めること、有茎性の頭部浸潤53例のうち3例(5.7%)にリンパ節転移があり3例とも脈管(リンパ管)侵襲陽性だったことを確認した。Haggitt分類そのものの記載は本文中に見当たらず、有茎性病変は頭部浸潤とSM浸潤距離で扱っている。閲覧 2026-10-27
  3. 3.Endoscopic diagnosis and treatment of early colorectal cancer(Intestinal Research(Hong SW, Byeon JS)・2022)PMC9344247の全文(Europe PMCのfullTextXML)で確認した。有茎性の早期大腸癌の粘膜下層浸潤はHaggitt分類で、無茎性はKudo分類またはKikuchi分類で分類されること、現行のガイドラインがSM浸潤深度1mm超・脈管侵襲・中等度から高度の簇出・低分化を不良な組織学的所見としていること、内視鏡切除標本では絶対深度で測る方法が広く使われ、有茎性は浸潤深度3mm未満でリンパ管侵襲がなければリンパ節転移0%、無茎性は1mm未満で0%という日本の多施設研究が引かれていることを確認した。総説であり、各数値の一次文献は未確認。閲覧 2026-10-27
  4. 4.Histopathological factors help to predict lymph node metastases more efficiently than extra-nodal recurrences in submucosa invading pT1 colorectal cancer(Scientific Reports(Barel F, Cariou M, Saliou P, et al.)・2019)PMC6554401の全文(Europe PMCのfullTextXML)で確認した。フランスFinistère県の消化器癌登録に基づくpT1大腸癌312例の研究(追跡46か月以上)で、リンパ節転移は19例。有茎性ポリープ140例にHaggitt分類を適用すると、レベル1が52例(38.52%)、レベル2が28例(20.74%)、レベル3が53例(39.26%)、レベル4が2例(1.48%)で、5例はレベルを判定できなかった。Haggittレベル1・2を低リスク群、3・4を高リスク群として扱い、リンパ節転移の強い危険因子として低分化・脈管侵襲・高グレードの簇出を挙げた。Haggitt群ごとのリンパ節転移率は本文から抽出できていない。閲覧 2026-10-27