スコア体系ノート一覧へ

Scores · Published

Y-BOCS

Yale-Brown Obsessive Compulsive Scale

別名
Yale-Brown強迫観念・強迫行為尺度エール・ブラウン強迫尺度
臓器系
精神
科目
Psychiatry
トピック
精神医学 B-03:強迫症:病因・疫学・診断・経過・鑑別・治療
適用疾患
強迫症

🧠 全体像重症度を定量し、治療反応をに追跡するための尺度であり、点数だけでを診断・除外する検査ではない。「でどんながあるかを洗い出す」→「10項目で、その症状に費やす時間・支障・苦痛・抵抗・コントロールを採点する」という2段構成を理解しておくと、点数の意味を取り違えない。

目的と適用場面

内容
目的 すでにが確認されている患者における、症状の種類の同定と重症度の定量、治療前後の変化の追跡
対象 の診断が既についている、またはその疑いが強い患者
使う場面 治療開始前のベースライン評価、SSRIや)による治療中・治療後の反応判定
施行者・形式 原型は訓練を受けた面接者が行う。⭐ 各項目は直近1週間の状態について評定し、その週の平均的な出現の程度を反映させる。項目の評定は患者の報告に基づくが、最終的な採点は面接者の臨床判断による。も開発されており、面接版と強いを示す
評価しないもの の診断そのもの(DSMのは別に確認する)。の具体的内容の同定は、の前に行うの役割である

💡 面接では患者本人の報告が中心になるため、加害的・性的・宗教的な内容のは恥や恐れから語られにくい。得点は聞き出す面接の質に依存する。

構成要素と配点

まずで現在・過去のの種類を項目立てで、最も中心的な症状()を定める。次に、そのを念頭に置いての10項目を採点する。10項目は5項目(項目1〜5)・5項目(項目6〜10)に分かれ、同じ5つの次元をそれぞれに当てる。各項目は0〜4点で、総得点は項目1〜10の合計(0〜40点)は項目1〜5の合計(0〜20点)、は項目6〜10の合計(0〜20点)である。1

次元 の項目 の項目
費やす時間 項目1 項目6
生活への支障 項目2 項目7
苦痛 項目3 項目8
抵抗 項目4 項目9
コントロール 項目5 項目10

費やす時間(項目1・6) — 5つの次元のうち、唯一時間というな目盛りを持つ。

点数 に費やす時間(項目1)/に費やす時間(項目6)
0 なし
1 1日1時間未満、または時々
2 1日1〜3時間、または頻繁
3 1日3時間を超え8時間まで、または非常に頻繁
4 1日8時間を超える、またはほぼ絶え間ない

残る4つの次元も同じ0〜4の5段階で刻む。両端の目安は次のとおりで、中間段階を含む各点の詳しい判定文は原版の面接シートに当たる1

次元 0点 4点
生活への支障(項目2・7) 支障なし 機能できない
苦痛(項目3・8) 苦痛なし 生活を破綻させるほどの苦痛
抵抗(項目4・9) 常に抵抗しようとする 完全に、かつ自ら望んで屈する
コントロール(項目5・10) 完全にコントロールできる 完全に不随意で抑えがたい

⭐ 項目3は「そのものが今どれだけ苦痛か」を問うのに対し、項目8は「止められたらどれだけ不安になるか」を問う、聞き方が違う質問である。同じ次元名でも側と側で問う対象が違う点は、採点で取り違えやすい。

⚠️ 原版の面接では、これ以外に投機的な追加項目(1b:のない時間の長さ、6b:のない時間の長さ、11:、12:回避など)も評定するが、これらは総得点には含まれない。中でも(項目11)は抵抗(項目4・9)とは別の項目であり、両者を混同しない。1

解釈とカットオフ

総得点 重症度 対応する
0〜13点 軽症 0〜2
14〜25点 中等症 3
26〜34点 中等症〜重症 4
35〜40点 重症 5〜6

この帯は、臨床家によるCGI重症度評定との対応関係から経験的に定められたものである。2

⚠️ これとは別の重症度帯(0〜7点:亜臨床、8〜15点:軽症、16〜23点:中等症、24〜31点:重症、32〜40点:最重症)が臨床サイトや資料で広く流通している。 原版の採点シートにはこの帯の記載が無く、出所を確認できない。点数を報告・引用するときはどちらの帯を使ったかを明示する(項目1〜5)と(項目6〜10)を別に見ることで、症状プロファイルが優位か優位かもできる。

治療反応の定義

や経過観察では、総得点のベースラインからの減少率で反応・寛解を運用的に定義することがある。国際合意による定義は次の通りである。3

状態 定義
反応 ベースラインから得点が35%以上減少し、かつが1または2の状態が1週間以上持続
寛解 得点が12点以下、かつが1または2の状態が1週間以上持続
回復 寛解の基準を1年以上持続
再発 反応者では35%減少の消失とが6以上の状態が1か月以上持続、寛解・回復者では得点が13点以上とが6以上の状態が1か月以上持続

⭐ 「反応」はあくまで相対的な改善率であり、「寛解」はな点数(12点以下)を要件に含む。減少率だけを見て寛解を判定しない。

版と派生

対象・特徴
(原版、1989) 成人向け。10項目・各0〜4点・総得点0〜40点
(小児版) 小児・青年向けので、同じ10項目構成を持つ。の評価は、児童本人と保護者双方から得られる情報を統合する手続きに影響されうる4
(改訂版) 各項目の配点が0〜4点から0〜5点に拡大され上限が40点から50点になった。の「への抵抗」の項目は「のない時間」を問う項目に置き換えられ、回避がそれぞれの支障項目の採点に組み込まれた5
(自己記入版) 患者自身が記入する版。臨床的な患者の集団で面接版と強いを示す6

⚠️ 版が違えば総得点の範囲・項目内容が異なる(原版は0〜40点、は0〜50点)。経過を追うときは同じ版で測り続ける

限界と使ってはいけない場面

⚠️ 診断を確定・除外しない。 は重症度と治療反応を追跡する尺度であり、の診断はDSMので別に確認する。

⚠️ 抵抗の点数が低い=軽症とは限らないがある。 が乏しい患者ほど「これは不合理だから抵抗しよう」という動機自体が働きにくく、抵抗(項目4・9)が低く出て総得点が見かけ上下がりうる。抵抗の点数だけを重症度の代理指標として読まない。原版の面接ではは項目11で別に評定される投機的項目であり、低い抵抗点を見たらも確認する。

⚠️ 内容の秘匿に注意する。 加害的・性的・宗教的な内容のは、本人が恥や罪悪感、あるいは誤解されることへの恐れから面接で語らないことがある。得点は聞き出す面接の質と開示の程度に依存する。

⚠️ などにそのまま流用しない。 これらはとは独立した診断であり、それぞれ専用に開発された別のがある。

⚠️ 合計点だけで(薬物療法かか、その併用か)を決めない。 優位か優位かという症状プロファイル、機能障害の種類、本人の希望、併存症を合わせて判断する。

まとめ

  • の種類をた後、10項目(5項目・5項目、各0〜4点)で費やす時間・支障・苦痛・抵抗・コントロールを採点する2段構成の尺度である。
  • 総得点は項目1〜10の合計で0〜40点。0〜13点軽症、14〜25点中等症、26〜34点中等症〜重症、35〜40点重症という帯はCGI重症度評定との対応から経験的に定められている。
  • 治療反応は国際合意により、反応=35%以上の得点減少、寛解=12点以下(いずれもCGI基準とセット)と運用的に定義される。
  • が乏しい患者ほど抵抗の項目が低く出るというがあり、抵抗の点数だけを重症度の代理指標にしない。
  • 診断そのものは確定・除外できず、などへは流用しない。・改訂版()・自己記入版()は項目構成や配点が原版と異なりうるため、経過は同じ版で追う。

出典

  1. 1.Yale-Brown Obsessive Compulsive Scale (Y-BOCS) — Severity Scale(原著: Goodman WK, Price LH, Rasmussen SA et al., Arch Gen Psychiatry 1989;46:1006-1011の採点シートをそのまま再録した版)(cnsforum.com(原著者: Wayne K. Goodman らのYale-Brown Obsessive Compulsive Scale)・1989)症状チェックリストの後に重症度尺度10項目(強迫観念5項目・強迫行為5項目、各項目0〜4点)を採点する構成であること、各項目の質問文と0〜4点それぞれの判定基準の文言、総得点が項目1〜10(投機的な追加項目1b・6bを除く)の合計で0〜40点、強迫観念下位尺度が項目1〜5の合計で0〜20点、強迫行為下位尺度が項目6〜10の合計で0〜20点であること閲覧 2026-08-04
  2. 2.Defining clinical severity in adults with obsessive-compulsive disorder(Comprehensive Psychiatry(PubMed抄録)・2015)Y-BOCS総得点0〜13を軽症(CGI-Severity 0〜2に相当)、14〜25を中等症(CGI-S 3)、26〜34を中等症〜重症(CGI-S 4)、35〜40を重症(CGI-S 5〜6)として、臨床家によるCGI重症度評定との対応から経験的に定めたカットオフであること閲覧 2026-08-04
  3. 3.Towards an international expert consensus for defining treatment response, remission, recovery and relapse in obsessive-compulsive disorder(World Psychiatry・2016)反応をベースラインからの(C)Y-BOCS得点35%以上の減少とCGI-I 1または2が1週間以上持続すること、寛解を(C)Y-BOCS 12点以下とCGI-S 1または2が1週間以上持続すること、回復を同じ基準が1年以上持続すること、再発を反応者では35%減少の消失とCGI-I 6以上が1か月以上、寛解者では(C)Y-BOCS 13点以上とCGI-I 6以上が1か月以上持続することと定義する国際専門家合意閲覧 2026-08-04
  4. 4.Criterion Validity of the Yale-Brown Obsessive-Compulsive Scale Second Edition for Diagnosis of Obsessive-Compulsive Disorder in Adults(Frontiers in Psychiatry・2018)序文において、Y-BOCS-IIでは各項目の配点が0〜4点から0〜5点に拡大され上限が40点から50点になったこと、重症度尺度の「強迫観念への抵抗」の項目が「強迫観念のない時間」を問う項目に置き換えられたこと、回避が強迫観念・強迫行為それぞれの支障項目の採点に組み込まれたことを報告している閲覧 2026-08-04
  5. 5.The Yale-Brown Obsessive Compulsive Scale: interview versus self-report(Behaviour Research and Therapy(PubMed抄録)・1996)面接版と同一項目構成の自己記入版Y-BOCSが存在し、臨床的な強迫症患者の集団において面接版と強い収束的妥当性を示し、強迫症群と非強迫症群を良好に鑑別したこと閲覧 2026-08-04
  6. 6.Children's Yale-Brown Obsessive Compulsive Scale: reliability and validity(Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry(PubMed抄録)・1997)小児・青年を対象とした半構造化面接であるCY-BOCSが10項目から成り、信頼性・妥当性の評価が児童本人と保護者の双方から得られる情報の統合という手続きに影響されうること閲覧 2026-08-04