Biochemistry

Biochemistry · 4/9

インスリンのシグナル伝達

Signal transduction of insulin (Midterm 2) — S I

🧠 (IR)は「するチロシンキナーゼで、IRS蛋白というを介してPI3K-Akt(代謝)とMAPK(増殖)の2経路に枝分かれする」と読む。 経路のはSH2ドメインをもつ。GLUT4膜移行にはPI3K依存経路と非依存経路(Cbl/CAP、)の2ルートがある。IRS-1/2マウスの表現型の違いが、各分子の役割を教えてくれる。

インスリン受容体の構造

で、α₂β₂(2つの+2つの、S-S結合で連結)。

サブユニット 局在 機能
完全に細胞外 インスリン結合部位
細胞外の小部分+膜貫通+細胞内 インスリン制御性チロシンキナーゼ活性
  • インスリン非存在下ではのキナーゼ活性を抑制している。
  • インスリン結合でが起き抑制が解除、(隣接同士が互いのTyr残基をリン酸化)が起こり、のTyrリン酸化へ進む。
  • Ser/Thrリン酸化(PKA・PKCなどによる)はキナーゼ活性を負に制御する(Tyrリン酸化と逆)。アドレナリンなどはこの経路でインスリン作用に拮抗しうる。2型糖尿病での受容体機能低下に関与する可能性が示唆されるが詳細は未解明。

IRS蛋白

活性化した受容体はIRSファミリー(IRS-1〜4)をリン酸化する。リン酸化TyrはSH2ドメインをもつシグナル分子(PI3K、SHP2、Grb2など)の部位になる。

IRS 主な分布
IRS-1, IRS-2 全身に広く発現
IRS-3 主に脂肪組織
IRS-4 腎・脳に多い

下流の2大経路

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='insulin receptor'>インスリン受容体</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='autophosphorylation'>自己リン酸化</span>)"]
  A --> B["IRS-1/2(リン酸化Tyr、SH2<span class='jp-term jp-term-diagram' title='docking'>ドッキング</span>部位)"]
  B --> C["Grb2 → Ras → MAPKカスケード<br>(増殖・分化、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mitogenic'>有糸分裂促進</span>効果)"]
  B --> D["PI3K(p85制御+p110触媒サブユニット)"]
  D --> E["PIP3産生 → PDK1活性化"]
  E --> F["Akt/PKB、PKCι/ζ、mTOR、p70S6キナーゼ"]
  F --> G["GSK-3阻害・GLUT4膜移行・グリコーゲン/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='protein synthesis'>タンパク合成</span>・遺伝子発現(例:glucokinase)"]
  • Grb2→MAPK経路: インスリンの(増殖)効果を媒介。他のとも共通の経路。
  • PI3K→Akt経路: インスリンの代謝効果の中核。PI3Kはp85(制御、IRSと結合)+p110(触媒、PIP₂→PIP₃)。PIP₃がPDK1を活性化し、Akt(Ser/Thrキナーゼ、基質にGSK-3など)・PKC・mTOR・p70S6キナーゼへ連鎖。

Aktの基質GSK-3を抑えるとが進む。 GSK-3はを抑制的にリン酸化する酵素。Aktが GSK-3を不活性化すると合成酵素の抑制が解け、が進む。

GLUT4膜移行の2ルート

  • PI3K依存経路: 上記のAkt経路がGLUT4のから細胞膜への移行を促す(主要経路)。
  • Cbl/CAP経路(、PI3K非依存): 受容体が中のAPS(アダプター)をリン酸化→Cbl/CAP複合体形成→flotillin(に豊富)と相互作用→Crk/C3G→GタンパクTC10(Rhoファミリー)を活性化→GLUT4小胞を膜へ輸送。PI3K非依存の並行ルート。

IRS-1 vs IRS-2ノックアウトマウス(実験的知見)

マウスの表現型の違いから、IRS-1とIRS-2の役割分担が分かる。

成長 血糖・糖尿病 PI3K活性化
IRS-1 KO 糖尿病にはならない(インスリン抵抗性のみ) IRS-2を介してに活性化
IRS-2 KO 正常な成長 2型糖尿病を発症 IRS-1だけでは部分的にしか活性化されない

💡 IRS-2が代謝効果、IRS-1が成長を主に担う。 IRS-1欠損マウスはするが糖尿病にはならない(IRS-2が代償)。IRS-2欠損マウスは正常に成長するが糖尿病を発症する(β細胞量の変化も伴う)。この相補的表現型が、IRS分子の機能分化を実験的に示す好例。

2型糖尿病の病態生理(要点)

  • インスリン抵抗性が2型糖尿病の中心的異常で、症状発現前から検出可能。肥満に伴って進行。
  • 当初はβ細胞が基礎・食後を増やして代償するが、やがて代償不能になり→糖尿病へ進行。
  • β細胞のグルコース感知(が律速)→解糖→ミトコンドリアでのATP産生→ATP感受性K⁺チャネル閉鎖→脱分極→開口→、という機構は04-08-blood-glucose-regulation-hyperglycaemia-insulin-release-insulinと共通。

まとめ

  • はα₂β₂型RTK。インスリン結合でしキナーゼ活性が解放される。Ser/Thrリン酸化は逆に抑制的。
  • IRS蛋白がリン酸化Tyrを介しSH2アダプター(Grb2・PI3K等)をさせ、経路が分岐。
  • Grb2→MAPKは増殖効果、PI3K→Akt/PKB→GSK-3阻害・mTORは代謝効果(GLUT4移行・)を媒介。
  • GLUT4移行はPI3K依存経路とCbl/CAP-TC10(、PI3K非依存)経路の2ルート。
  • IRS-1 KOは(糖尿病にはならない)、IRS-2 KOは正常成長だが2型糖尿病を発症。