生物物理学

生物物理学 · 26.04

化学シフト

Chemical shift

🧠 は、同じ核種でも周囲の電子状態によって実効磁場と共鳴周波数がわずかに変わる現象である。 周波数差をppmで化するため、異なるの装置でも化学環境を比較できる。

電子遮蔽が共鳴周波数を変える

外部磁場B0B_0を加えると、核の周囲の電子は誘導磁場を生じる。多くの場合、この誘導磁場は核が感じる外部磁場を弱めるため、核の実効磁場は概念的にBeff=B0(1−σ)B_{\mathrm{eff}}=B_0(1-\sigma)と書ける。定数σ\sigmaは結合、、分子構造などに依存する。

の関係ω=∣γ∣Beff\omega=|\gamma|B_{\mathrm{eff}}から、が強い核ほど共鳴周波数が変化する。同一分子内の同じ核種を区別できるのは、この局所的な実効磁場の違いによる。

ppmによる表現

測定周波数ν\nuと基準物質の周波数νref\nu_{\mathrm{ref}}の差を

δ=ν−νrefνref×106 ppm\delta=\frac{\nu-\nu_{\mathrm{ref}}}{\nu_{\mathrm{ref}}}\times10^6\ \mathrm{ppm}

で表す。周波数差そのものはB0B_0に比例して大きくなるが、基準周波数で割ったδ\deltaは原則としてに依存しない。このためスペクトル上のピーク位置を装置間で比較できる。

flowchart TD
  A["核の周囲の電子分布が異なる"] --> B["電子<span class='jp-term jp-term-diagram' title='shield'>遮蔽</span>が変化"]
  B --> C["核が感じる実効磁場が変化"]
  C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Larmor'>ラーモア</span>周波数がわずかに移動"]
  D --> E["ピーク位置から化学環境を推定"]

スペクトルの読み方

ピークの位置は化学環境、ピーク面積は条件を整えれば核数、ピークの分裂は近接核との結合を反映する。したがってだけで分子を断定するのではなく、複数のスペクトル情報を組み合わせる。

NMRで核の化学環境を読む考え方と、不対電子を観測するとの違いを区別しておく。でも水と脂肪の共鳴周波数差がやに関係する。

まとめ

は、核の局所電子環境を磁気共鳴周波数の相対差として表す。12

  • 核周囲の電子は実効磁場を変え、同じ核種の共鳴周波数を移動させる。
  • は基準周波数に対する相対差をppmで表すため、装置磁場に依存しにくい。
  • ピーク位置は化学環境を反映するが、構造解析では面積や分裂なども併用する。
  • では水と脂肪の周波数差として、画像形成やにも現れる。

出典

  1. 1.Magnetic resonance spectroscopy(Science Progress・2017)NMR分光で化学環境を共鳴周波数差として読む原理閲覧 2026-08-21
  2. 2.Spin Hyperpolarization in Modern Magnetic Resonance(Chemical Reviews・2023)核スピンの磁気共鳴、分光およびMRIへの応用閲覧 2026-08-21