生物物理学

生物物理学 · 28.08

血液―肺胞間のガス交換(gas exchange)

Gas exchange between blood and alveoli

🧠 肺胞―血液間のガス交換は、との分圧差によって薄い障壁を越えて進む拡散である。 酸素は肺胞から血液へ、は血液から肺胞へ移動する。

肺胞―毛細血管障壁

ガスは肺胞表面の液層、肺胞上皮、基底膜、を順に通過する。障壁はおよそ 1 μm1,\mu\mathrm{m} と薄く、多数の肺胞が大きな交換面積を作る。空気を肺胞まで運ぶ換気と、血液を毛細血管へ運ぶ灌流がそろって初めて、この交換面が有効に使われる。

は通常、の方が流入する静脈血より高いため酸素が血液へ移動する。分圧は静脈血の方がより高いため、逆方向へ移動する。方向を決めるのは各気体の分圧であって、酸素とが互いを押し出すわけではない。

フィックの法則による移動速度

肺胞膜を通る気体流量はのを分圧差で書き換えて表せる。

V˙gas=DAT(P1−P2)\dot V_{gas}=D\frac{A}{T}(P_1-P_2)

DD は組織と気体に依存する、AA は交換面積、TT は障壁厚、P1−P2P_1-P_2 は分圧差である。したがって交換を増やすのは大きな面積、大きな分圧差、高いであり、厚い障壁は交換を遅くする。はが高いため、分圧差が酸素より小さくても比較的速く拡散する。

構造変化が交換を障害する経路

flowchart TD
  A["正常:広い面積・薄い障壁・分圧差"] --> B["十分なガス拡散"]
  C["肺水腫・線維化"] --> D["障壁厚Tが増加"]
  E["肺気腫"] --> F["交換面積Aが減少"]
  G["低換気"] --> H["肺胞<span class='jp-term jp-term-diagram' title='partial pressure of oxygen'>酸素分圧</span>が低下"]
  D --> I["酸素移動が低下"]
  F --> I
  H --> I

肺水腫や線維化は TT を増やし、肺気腫はの消失によって AA を減らす。気道閉塞は膜そのものを変えなくても肺胞換気を減らし、分圧差を小さくする。原因は異なっても、の式のどの因子が変化したかに対応させられる。

拡散だけでは決まらない酸素化

ガスが膜を通れても、換気されない肺胞や血流のない肺胞は交換に寄与しにくい。さらに血液へ入った酸素の運搬量はと結合状態に依存する。したがっての低下を、すべて「」と呼ぶことはできない。

運動時には毛細血管が短くなる一方、換気量とが増え、利用される交換面積も広がる。正常肺には十分な拡散があるが、障壁肥厚ではこのが小さく、安静時より運動時に低酸素が表れやすい。

まとめ

呼吸器の力学とガス交換は、気道・肺胞の構造、、換気、拡散を分けて扱う。12

  • 酸素とは、それぞれの分圧勾配に沿って反対方向へ拡散する。
  • ガス流量は交換面積・・分圧差に比例し、障壁厚に反比例する。
  • 肺水腫・線維化、肺気腫、低換気はの式の異なる因子を変える。
  • 実際の酸素化には拡散だけでなく換気、灌流、ヘモグロビンも必要である。

出典

  1. 1.Lung Structure and the Intrinsic Challenges of Gas Exchange(Comprehensive Physiology・2016)気道から肺胞へ至る構造、換気、拡散およびガス交換面の関係閲覧 2026-08-21
  2. 2.Gas Exchange in the Lung(Seminars in Respiratory and Critical Care Medicine・2023)肺胞換気、分圧、肺胞―毛細血管間の拡散および換気血流関係閲覧 2026-08-21