Biophysics

Biophysics · 28.07

呼吸の生物物理I―分圧とヘンリーの法則

Respiratory biophysics I — partial pressure, Henry’s law

応用トピック
麻酔科学IV:吸入麻酔薬

🧠 分圧は、混合気体中の各成分が全圧へ寄与する圧力であり、気体と液体の間の平衡を決める。 肺胞と血液で酸素・がどちらへ移動するかは、総量ではなく各気体の分圧差から判断する。

混合気体における分圧

では全圧は各成分の分圧の和であり、理想混合気体について成分 ii のモル分率 FiF_i を用いると

Pi=FiPtotal,Ci=αiPiP_i=F_iP_{total},\qquad C_i=\alpha_iP_i

と表せる。第一式は気相の分圧、第二式はの法則である。たとえば酸素の割合が同じでも、高地で全気圧が低下すれば吸気も低下する。割合と分圧を同一視しないことが重要である。

ヘンリーの法則と溶解量

では、温度が一定でできる範囲において、液体へ物理的に溶ける気体濃度 CiC_i は気相の分圧 PiP_i に比例する。比例係数 αi\alpha_i は気体と溶媒、温度によって異なる。

は酸素より水や血液へ溶けやすいため、同じ分圧でも物理的溶解量は多い。ただし血液中の総酸素量の大部分はヘモグロビンへ結合しており、の法則だけで全酸素含量を求めることはできない。分圧は拡散の、含量は運べる総量という役割の違いがある。

気相から血液まで

flowchart TD
  A["全気圧と気体のモル分率"] --> B["各気体の分圧"]
  B --> C["肺胞と血液の分圧差"]
  C --> D["肺胞―毛細<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular layer / uvea'>血管膜</span>を拡散"]
  D --> E["血漿へ物理的に溶解"]
  E --> F["酸素は主にヘモグロビンへ結合"]

平衡時の溶解量を説明するの法則と、移動速度を説明するは役割が異なる。前者は「最終的にどれだけ溶けるか」、後者は「どれだけ速く膜を通るか」を扱う。この二つをつなぐ具体例が肺胞―血液間のガス交換である。

生理条件が分圧へ与える影響

  • 高地では全気圧低下により吸気が下がる。
  • 吸気が加湿されると水蒸気も全圧の一部を占め、他の気体に割り当てられる分圧が下がる。
  • 肺胞では酸素の取り込みとの放出が続くため、乾燥外気と同じ組成にはならない。

まとめ

  • 成分分圧はモル分率と全圧の積で決まり、全圧は分圧の和である。
  • の法則は液体中の物理的溶解濃度が分圧に比例することを示す。
  • 分圧は拡散方向を決めるが、血液中の総ガス含量とは同じではない。
  • 溶解平衡と膜を通る速度は別の法則で扱う。