Anesthesiology

Anesthesiology · B-17

麻酔科学IV:吸入麻酔薬

Anesthesiology IV.: Inhalation anesthetics

前提:病態
吸入麻酔薬
前提:正常
呼吸の生物物理I―分圧とヘンリーの法則イオンチャネルの分類・機能・電位依存性Ca²⁺チャネル
疾患
悪性高熱症
症状
筋強直

🧠 全体像の効果部位は脳だが、臨床ではを指標に投与する。導入・覚醒速度は主に血液/ガスと肺胞換気、麻酔強度はで比較する。

全身麻酔の3段階

段階 主な操作と評価
導入 ・鎮痛・必要時NMBA、気道確保
維持 ・鎮痛・、酸素化・換気・循環・体温・出血・輸液を継続管理
覚醒 麻酔薬を減量・中止し、NMBA拮抗、意識・換気・気道反射・循環を確認して

濃度だけで麻酔の全構成要素を保証することはできない。、併用薬、年齢と生理反応を見ながら投与し、覚醒後もで呼吸・循環・疼痛・PONVを監視する。

肺胞から脳まで

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vaporizer'>気化器</span>・呼吸回路"] --> B["吸入濃度 FI"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alveolar concentration'>肺胞濃度</span> FA"]
    C --> D["動脈血分圧"]
    D --> E["脳分圧"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypnosis'>催眠</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immobilization'>不動化</span>"]
  • では/吸入濃度比(FA/FI)が1へ近づくほど脳分圧も速く上昇する。
  • 血液/ガスが小さい薬ほど血液に溶け込みにくく、肺胞分圧が速く上がり、導入・覚醒が速い。
  • 肺胞換気が大きいほど導入は速く、心拍出量が大きいほど薬が肺胞から血液へ取り込まれて肺胞分圧上昇は遅くなる。
  • 、回路容量、も速度に影響する。

主な吸入麻酔薬

数値は成年層の概数で、年齢・体温・併用薬により変化する。

薬剤 血液/ガス MAC概数 臨床的特徴
0.65 2% が少なく、に適する
0.42 6% 導入・覚醒が速いが、急な濃度上昇で・交感神経刺激
1.4 1.2% 安定した維持、導入・覚醒は比較的遅い
0.47 約104% 単独では手術麻酔不能、鎮痛とMAC節減
2.4 0.75% 現在は多くの地域で歴史的薬剤。肝障害・不整脈

MACは「1気圧で皮膚切開に対し50%の患者が体動しない」であり、濃度や個々の患者の投与目標そのものではない。

MACを変える因子

MACを低下させる MACを上昇させる/影響が小さい
高齢、低体温、妊娠、低Na血症、急性アルコール摂取、オピオイド・鎮静薬 若年、発熱、慢性アルコール使用、一部の

重度低酸素血症・低血圧はMACを低下させるが、これは安全な麻酔節減法ではなく直ちに是正すべき病態である。

臓器作用

循環

  • に血管拡張とを起こし、血圧を低下させる。
  • 濃度のは交感神経刺激により頻脈・高血圧を起こし得る。
  • QT延長や不整脈感受性など薬剤差はあるが、低酸素、電解質異常、併用も含めて評価する。

呼吸

  • を低下させ、血症を起こす。
  • が少なく、は咳、息こらえ、を起こしやすい。
  • は気管支拡張作用を持つが、への対策は別に必要である。

脳・腎・肝

  • を低下させる一方、に脳血管を拡張し・頭蓋内圧を上げ得る。換気、血圧、と統合する。
  • 現代の薬剤は通常濃度では大きな肝腎毒性が少ないが、低血圧による低下を防ぐ。
  • (compound A)やは理論的・実験的懸念があるため、承認されたと機器条件を守る。

亜酸化窒素

  • へ拡散するため、気胸、腸閉塞、中耳手術、では避ける。
  • を防ぐため終了時に十分な酸素と換気を行う。
  • ビタミンB12(vitamin B12)依存酵素を阻害するため、長時間・反復曝露、B12欠乏、重い造血・では避ける。
  • PONVを増やし得る。利点と環境負荷を考慮し、必要性を個別に判断する。

悪性高熱症

は、感受性患者で骨格筋Ca放出異常を引き起こす。N2O、、オピオイド、ではない。

早期所見

  • 説明できない呼気終末CO2上昇、頻脈、、酸素消費増加、、高K血症。
  • 体温上昇は重要だが遅れて現れることがあり、発熱を待って治療しない。

治療

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='malignant hyperthermia, MH'>悪性高熱症</span>を疑う"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='trigger'>誘発薬</span>を中止・応援要請"]
    B --> C["100% O2で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperventilation'>過換気</span>"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dantrolene'>ダントロレン</span> 2.5 mg/kg"]
    D --> E["症状が続けば反復"]
    E --> F["冷却・高K・アシドーシス・不整脈を治療"]
    F --> G["ICUで<span class='jp-term jp-term-diagram' title='relapse'>再燃</span>・臓器障害を監視"]
  • を外し、可能ならを装着する。手術継続の必要性を外科と判断する。
  • 2.5 mg/kgを速やかに投与し、呼気終末CO2、、頻脈が制御されるまで反復する。
  • では冷却するが、38〜39°C程度まで下がったら過冷却を避ける。は機序上無効である。
  • 高K血症、アシドーシス、不整脈、、DIC、腎障害を治療する。併用中は高K血症・の懸念からCa拮抗薬を避ける。
  • 患者と家族へ説明し、専門機関で感受性評価を行う。

環境と職業曝露

  • 、適切な回路漏れ確認、を用い、患者安全を保ちながら排出を減らす。
  • とN2Oは温室効果が大きいため、臨床的利益が乏しい場合は代替法を検討する。
  • は薬剤専用であり、誤充填を防ぐ。吸入濃度、酸素濃度、呼気終末CO2を連続監視する。

参考ガイドライン

まとめ

  • 低い血液/ガスはFA/FI上昇と導入・覚醒を速める。
  • MACはの集団指標で、年齢、体温、併用薬に応じて必要濃度が変わる。
  • の循環・呼吸抑制を起こすため、呼気濃度と生理反応を監視する。
  • または曝露後のETCO2上昇・ではMHを疑い、中止と投与を急ぐ。