組織病理学

組織病理学 · H1-014

アポトーシス

Apoptosis

🧠 全体像:アポトーシスは、カスパーゼにより制御された細胞死で、個々の細胞が縮小・し、膜に包まれたとして炎症をほとんど起こさず除去される。高倍率では「細胞縮小」「好酸性化」「・」「周囲炎症の乏しさ」を一組で探す。

標本の要点

項目 所見
標本 高密度な細胞集団のHE像
病変 散在性のアポトーシス
細胞質 縮小し、強い好酸性を示す
核 から(karyorrhexis)へ進む
細胞膜 早期には保たれ、断片を包む
周囲反応 に乏しい

発症機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deoxyribonucleic acid'>DNA</span>傷害・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='growth factor'>増殖因子</span>欠乏・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endoplasmic reticulum (ER) stress'>小胞体ストレス</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endogenous pathway'>内因性経路</span>:ミトコンドリアから<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cytochrome'>シトクロム</span>c放出"]
    C["Fasなどの死受容体刺激"] --> D["外因性経路:開始カスパーゼ活性化"]
    B --> E["実行カスパーゼ活性化"]
    D --> E
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deoxyribonucleic acid'>DNA</span>・核タンパク・細胞骨格を分解"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='apoptotic bodies'>アポトーシス小体</span>形成"]
    G --> H["マクロファージ・隣接細胞が貪食"]

生理的・病的アポトーシス

場面 例
発生・組織形成 の不要な細胞を除去する
ホルモン依存組織 低下後の子宮内膜や乳腺の退縮
免疫反応の 役割を終えた好中球・リンパ球を除去する
傷害 修復不能な遺伝子傷害をもつ細胞を排除する
ミスフォールドタンパク質が蓄積した細胞を排除する
ウイルス感染・腫瘍 が死を誘導する

観察の順序

低倍率

アポトーシスは広い連続領域を壊すのではなく、組織内に単独または小として散在する。まず背景組織が保たれ、強い炎症や広範ながないことを確認する。

高倍率

所見 読み方
細胞縮小 周囲細胞より小さく、円形になる
細胞質好酸性化 タンパク質濃縮により濃い桃色を示す
クロマチンが凝集し、核が小さくする
凝縮した核が複数の断片へ分かれる
核断片やを含む断片
貪食 マクロファージや隣接細胞内に断片が取り込まれる

💡 膜が早期に保たれるため、細胞内容物が周囲へ漏れにくく、典型的には強い炎症を起こさない。除去が遅れると膜のを失い、へ進むことがある。この二次性壊死も単なる受動的な崩壊ではなく、カスパーゼ3がDFNA5(GSDME)をAsp270で切断し、生じたN末端断片が細胞膜に孔を開けて起こる制御された過程である1。

💡 「制御された細胞死=アポトーシス、壊死=制御されない事故死」というは現在は成り立たない。 細胞死委員会(NCCD)の2018年分類は、内因性・外因性アポトーシスと並んで、、、、MPT依存性ネクローシス、など壊死の形態をとる制御された細胞死を独立した様式として定義している2。HE標本上の形態(腫脹・膜破綻・炎症)だけでは、事故的壊死とこれらの制御されたを区別できない。下の対比表は古典的なアポトーシス/壊死の形態対比として押さえたうえで、機序の分類は別軸だと理解する。

壊死との鑑別

項目 アポトーシス 壊死
分布 単一細胞・小 連続する細胞群
細胞サイズ 縮小 腫脹
細胞膜 早期は保たれる 破綻する
核 濃縮・整然とした 濃縮・崩壊・融解が不規則
炎症 通常は乏しい しばしば目立つ

まとめ

  • アポトーシスはカスパーゼ依存性に進む制御された細胞死である。
  • 細胞縮小、細胞質好酸性化、、、を順に確認する。
  • 膜に包まれた断片が速やかに貪食されるため、炎症反応は乏しい。
  • 広範な、膜破綻、強い炎症を示す壊死と区別する。

出典

  1. 1.Cleavage of DFNA5 by caspase-3 during apoptosis mediates progression to secondary necrotic/pyroptotic cell death(Nature Communications・2017)アポトーシス細胞が貪食・除去されずに残ると、融解性で炎症性の二次性壊死へ進む。この過程はカスパーゼ3がGSDMD類縁タンパク質DFNA5(GSDME)をAsp270で切断し、生じたDFNA5-N断片が細胞膜を標的として孔を開けることによる。DFNA5を欠失させた細胞はエトポシドやウイルス感染で二次性壊死へ進まず小さなアポトーシス小体へ分解し、DFNA5依存性の二次性壊死とGSDMD依存性のパイロトーシスはいずれもカスパーゼ活性化に依存する制御されたネクローシスである閲覧 2026-08-24
  2. 2.Molecular mechanisms of cell death: recommendations of the Nomenclature Committee on Cell Death 2018(Cell Death and Differentiation・2018)細胞死命名委員会(NCCD)の2018年分類は、形態ではなく分子機構に基づいて細胞死を定義し、内因性アポトーシス・外因性アポトーシスと並んで、MPT依存性ネクローシス・ネクロプトーシス・フェロトーシス・パイロトーシス・パルタナトスなど制御された壊死型の細胞死を独立した様式として挙げている閲覧 2026-08-24