組織病理学

組織病理学 · H1-090

悪性黒色腫のリンパ節転移

Metastasis lymphoglandularum melanomatis

描出疾患
悪性黒色腫

🧠 全体像:皮膚悪性黒色腫(cutaneous melanoma)はリンパ管を介して所属リンパ節へ転移しうる。転移リンパ節は腫大し、メラニンにより褐色〜黒色を呈することがあるが、色素を欠く転移もあるため、色調だけで診断しない。

転移の流れ

flowchart TD
    A["原発<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cutaneous melanoma'>皮膚悪性黒色腫</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dermal lymphatic'>真皮リンパ管</span>へ侵入"]
    B --> C["所属リンパ節へ移動"]
    C --> D["被膜下洞へ到達"]
    D --> E["リンパ節内で増殖"]
    E --> F["リンパ節構造を置換"]
    F --> G["さらに<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lymphatic'>リンパ行性</span>・血行性に進展"]

肉眼所見

所見 解釈
リンパ節腫大 腫瘍置換を示唆するが、でも生じる
褐色〜黒色 メラニンを示唆する
出血、壊死、色素量の差を反映しうる
周囲組織 進行例ではを伴いうる

検体ではリンパ節に周囲の骨格筋が付随することがある。なら頭頸部皮膚などのを検討するが、が退縮して不明となる悪性黒色腫もあり、部位だけで原発を断定しない。黒色腫は全黒色腫の3.2%を占め、リンパ節病変にとどまる例の予後は既知原発のと大きく変わらない1。

組織所見

所見 読み方
残存リンパ組織 の背景を確認する
腫瘍細胞 またはで、核小体が目立つ
メラニン 細胞質内の褐色色素としてみられうる
壊死・出血 で伴いうる
被膜を越える

色素だけに依存しない

褐色色素にはメラニンのほか、などがある。では肉眼的にも組織学的にも黒くないため、SOX10、S100、Melan-A、HMB45などを形態に応じて組み合わせる。

💡 リンパ節ではSOX10が読みやすい。 リンパ節転移黒色腫401例の検討では、S100蛋白とSOX10の両陽性が93.2%、両陰性が3.9%と両者の感度はほぼ同等だった。ただしS100はなど節内のも染めるのに対し、SOX10は染めないため、背景に紛れず判定の再現性が高い2。

鑑別 手掛かり
上皮性結合と発現
反応 に乏しく、マクロファージ系形質
褐色色素を伴う出血 と鉄染色
他の腫瘍 系マーカーと臨床情報

悪性黒色腫はではないため、「の代表的」という一般論だけで説明しない。黒色腫自身が・血行性の両方で進展することを理解する。

⚠️ 陽性=郭清、ではない。 はとして確立しており、中間厚(Breslow 1.20〜3.50 mm)では10年を71.3%対64.7%に改善し、節転移の有無で10年黒色腫特異的が62.1%対85.1%に分かれる強い予後因子となる3。一方、転移陽性例に即時の完全リンパ節郭清を追加しても黒色腫特異的生存は改善せず(3年で86%対86%)、得られるのは所属リンパ節の局所制御(92%対77%)と病期情報にとどまった4。この結果を受け、陽性例でも一律に郭清せず超音波監視と全身で管理する方針が広がった。

原発病変の病理は H1-087: で確認する。

まとめ

  • 悪性黒色腫は所属リンパ節へしうる。
  • 黒褐色はメラニンを示唆するが、転移もある。
  • リンパ節腫大と色調だけでは確定せず、組織形態とを統合する。
  • 頸部転移でも原発部位を一律に決めず、退縮原発も考慮する。

出典

  1. 1.Malignant melanoma of unknown primary site. To make the long story short. A systematic review of the literature(Critical Reviews in Oncology/Hematology・2011)原発不明黒色腫は全黒色腫の3.2%(4348例の系統的レビュー)。リンパ節病変のみの原発不明例は5年生存率28.6〜75.6%と、既知原発の所属リンパ節転移に近い予後を示す閲覧 2026-08-24
  2. 2.SOX10 is as specific as S100 protein in detecting metastases of melanoma in lymph nodes and is recommended for sentinel lymph node assessment(European Journal of Cancer・2020)リンパ節転移黒色腫401例で、S100蛋白とSOX10の両陽性が93.2%、両陰性が3.9%。SOX10はリンパ節内の免疫細胞を染めないため判定が再現性高く、センチネルリンパ節評価に推奨される閲覧 2026-08-24
  3. 3.Final trial report of sentinel-node biopsy versus nodal observation in melanoma(The New England Journal of Medicine・2014)MSLT-I(2001例)で、センチネルリンパ節生検による病期診断は予後情報を与え、中間厚(1.20〜3.50 mm)では10年無病生存率を71.3%対64.7%(ハザード比0.76、P=0.01)に改善した。中間厚でリンパ節転移陽性なら10年黒色腫特異的生存率は62.1%、陰性なら85.1%(死亡ハザード比3.09)閲覧 2026-08-24
  4. 4.Completion Dissection or Observation for Sentinel-Node Metastasis in Melanoma(The New England Journal of Medicine・2017)MSLT-II(1934例)で、センチネルリンパ節転移陽性例への即時の完全リンパ節郭清は黒色腫特異的生存を改善しなかった(3年生存率86%対86%、P=0.42)。所属リンパ節の局所制御(92%対77%)と予後情報は得られるが、生存利益は無い閲覧 2026-08-24