Histopathology

Histopathology · H1-040

大動脈瘤内の層状壁在血栓(肉眼標本)

Thrombus muralis laminata in aneurysma aortae

描出疾患
大動脈瘤

🧠 全体像:腹部(abdominal aortic aneurysm:AAA)では、拡張した内腔の流れが乱れて壁沿いに血栓が反復形成され、血小板・フィブリンに富む淡色層と赤血球に富む暗色層が重なる層状となる。血栓が厚くても大動脈壁の破裂危険がなくなるわけではない。

標本の要点

項目 所見
臓器 腹部大動脈
標本 の横断肉眼標本
血管壁 外側へ拡張し、・中膜弱化を伴う
血栓 壁に沿う厚い層状の
切面 ・弧状の淡色層と暗色層がに重なる
残存内腔 血栓の内側に偏在する狭い流路として残る

標本では、腔の大部分を黄白色の厚い層状血栓が占め、内側に血液が通る残存腔がある。層状構造は、流血中でが何度も繰り返されたことを示す。

動脈瘤形成の機序

flowchart TD
    A["加齢・喫煙・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='atherosclerosis (atheromatous change)'>粥状硬化</span>など"] --> B["大動脈壁の慢性炎症"]
    C["遺伝的な結合組織・基質調節異常"] --> B
    B --> D["プロテアーゼ活性上昇"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='elastin'>エラスチン</span>・コラーゲン分解"]
    B --> F["中膜<span class='jp-term jp-term-diagram' title='smooth muscle cells'>平滑筋細胞</span>の減少"]
    E --> G["大動脈壁の構造支持が低下"]
    F --> G
    G --> H["腹部大動脈が拡張"]
    H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='turbulent flow'>乱流</span>・局所うっ滞"]
    I --> J["層状<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mural thrombus'>壁在血栓</span>"]

高度のはAAAと強く関連するが、「プラークが中膜を物理的に圧迫するだけ」で説明しない。慢性炎症、分解、減少が組み合わさり、壁が血圧に耐えられなくなる。

層状血栓の成り立ち

主な成分 肉眼的特徴
淡色層 血小板・フィブリン 灰白色〜黄白色
暗色層 赤血球を多く捕捉したフィブリン 赤褐色〜暗赤色

血流のある場所で血小板・フィブリンが沈着し、その後に赤血球を多く含む凝固層が加わる。この反復でに相当する層状外観が形成される。は血管壁へ広く付着するが、内腔を完全には閉塞しないことが多い。

壁在血栓は「安全装置」ではない

⚠️ 層状を「大動脈を補強して破裂を防ぐ良い血栓」と断定しない。血栓が一部のを低下させる可能性はある一方、厚い血栓は酸素・栄養の拡散を妨げ、炎症細胞やを供給して隣接壁の弱化に関与しうる。血栓を伴うAAAでも拡大・破裂は起こり、血栓量だけで破裂危険を判定できない。

合併症

合併症 帰結
破裂 または腹腔内への大量出血、
下肢末梢動脈、、腸間膜動脈などの虚血
分枝圧迫・閉塞 腎・腸管・下肢の血流障害
周囲組織圧迫 尿管、椎体などへの影響
器質化 血栓の線維化と残存腔の変形

類似病変との区別

病変 壁構造
血管壁の全層が拡張壁を構成する
壁が破綻し、血腫が周囲組織に囲まれて血流と交通する
血液が中膜内へ進入してを形成する

まとめ

  • AAAでは壁の炎症、分解、減少によって大動脈壁が弱くなる。
  • 拡張腔のにより、淡色層と暗色層がに重なる層状が形成される。
  • 層状構造は流血中に反復形成された生前血栓を示す。
  • が厚くても破裂を防ぐとは限らず、壁弱化や末梢塞栓にも関与しうる。