Histopathology

Histopathology · H1-039

動脈血栓症(肉眼標本)

Thrombosis arteriae

描出疾患
末梢動脈疾患

🧠 全体像は、高流速下でを起点に血小板が活性化し、血小板・フィブリンに富む比較的淡色の血栓を作る病変である。静脈血栓より「」と呼ばれやすいが、実際には赤血球も含む混合血栓である。

標本の要点

項目 所見
臓器
標本 動脈の肉眼標本
内腔に付着する淡黄白色〜灰白色の血栓
血小板とフィブリンが優位で、赤血球も含む
局所要因
主な帰結 急性虚血、梗塞、末梢塞栓、器質化・

「白色血栓」の意味

特徴 動脈血栓 静脈血栓
主な形成環境 高流速・ 低流速・うっ滞
優位な成分 血小板・フィブリン 赤血球・フィブリン
肉眼色 淡灰白色を帯びやすい 暗赤色を帯びやすい
伸長方向 血流に逆らう方向へ伸びやすい 心臓方向へ伸長しやすい
重要な転帰 局所閉塞と末梢 肺血栓塞栓

」や旧来の「」は成分優位性を表す呼び方で、血栓全体が純粋に白色または血小板だけでできているという意味ではない。

Virchowの三徴

要素 動脈血栓での具体例
・機能不全 ・びらん、血管炎、外傷、放射線傷害、喫煙・高血圧・に伴う
血流異常 狭窄部や分岐部の、動脈瘤内の局所うっ滞
悪性腫瘍、など。は一般に静脈血栓との関連が強い
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='atherosclerosis (atheromatous change)'>粥状硬化</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endothelial injury'>内皮傷害</span>"] --> B["内皮下基質と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tissue factor'>組織因子</span>が露出"]
    C["狭窄・分岐部の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='turbulent flow'>乱流</span>"] --> D["血小板が血管壁へ接触しやすくなる"]
    B --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='platelet adhesion'>血小板粘着</span>・活性化・凝集"]
    D --> E
    E --> F["トロンビン生成と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fibrin formation'>フィブリン形成</span>"]
    F --> G["血小板・フィブリン優位の動脈血栓"]
    G --> H["内腔閉塞または末梢塞栓"]
    H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tissue ischemia'>組織虚血</span>・梗塞"]

肉眼での観察順

  1. 厚い血管壁と比較的狭い内腔から動脈であることを確認する。
  2. 内腔に付着する淡色で脆い血栓性物質を探す。
  3. 血栓の下に性プラーク、潰瘍、石灰化がないかを見る。
  4. 淡色層と暗赤色層がに見える場合は、流血中に形成されたを考える。
  5. 血栓がしているか、残存内腔があるかを確認する。

💡 生前血栓は血管壁へ付着し、層状構造を示しうる。は通常、壁への付着が乏しく、暗赤色の沈降部と黄色い部に分かれた柔らかな塊となる。

臨床病理学的帰結

  • の急性閉塞による下肢虚血
  • 血栓の進展による
  • 末梢への塞栓による・下腿の梗塞
  • 血栓溶解による消失
  • 侵入による器質化と、部分的な

⚠️ Factor V Leiden変異やは代表的なだが、主としてと関連する。動脈血栓では、まず局所のを評価する。高齢、喫煙、肥満はに寄与しても、それだけを単独の性疾患とは呼ばない。

同じく血小板・フィブリンに富む流血中血栓は内にも形成される。の左室や、の疣贅は重要な例だが、これらは動脈壁そのものに生じる血栓ではなく、体循環へのとなるとして区別する。

まとめ

  • 動脈血栓はを起点に形成され、血小板・フィブリンに富む。
  • 」は相対的な成分と色調を示す呼称で、赤血球を全く含まないわけではない。
  • 血管壁への付着とは、流血中に形成された生前血栓の手がかりになる。
  • 、末梢塞栓、器質化・という転帰を追って読む。