Histopathology

Histopathology · H2-107A

デスモイド型線維腫症(腸間膜)

Desmoid fibromatosis – MESENTERIUM

描出疾患
軟部肉腫

🧠 全体像は、遠隔転移能を持たないが局所浸潤性が強く再発しやすい線維芽細胞・性腫瘍である。Wnt/β-経路の(多くはCTNNB1変異、ではAPC変異)が発生機序の中心であり、核内β-蓄積という所見が診断を支える。

組織像

所見 解釈
高分化な線維芽細胞・ 細胞異型に乏しく、悪性肉腫との鑑別点になる
浸潤性の 周囲の脂肪織・腸管・筋膜へしみ込むように広がる
長い束状(fascicular)配列 淡好酸性の細胞質を持つが平行に走る配列
周囲の平滑筋 腸間膜・腸管など病変周囲の正常構造
flowchart TD
    A["APCまたはCTNNB1の変異"] --> B["β-<span class='jp-term jp-term-diagram' title='catenin'>カテニン</span>分解の障害"]
    B --> C["細胞質・核内へのβ-<span class='jp-term jp-term-diagram' title='catenin'>カテニン</span>蓄積"]
    C --> D["Wnt<span class='jp-term jp-term-diagram' title='target gene'>標的遺伝子</span>の恒常的な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transcriptional activity'>転写活性</span>化"]
    D --> E["線維芽細胞・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myofibroblast'>筋線維芽細胞</span>の腫瘍性増殖"]
    E --> F["周囲組織への浸潤性進展"]
    F --> G["局所再発を繰り返すが遠隔転移はしない"]

発生部位と背景疾患

腹腔内型は腸間膜・後腹膜に、腹壁型・腹壁外型は胸壁・四肢・体幹軟部に好発する。に伴うGardner症候群では、APC遺伝子のを背景に腸間膜の頻度が高く、大腸の既往・家族歴がある患者の腹腔内腫瘤ではこの背景を必ず考慮する。

β-カテニン免疫染色

提示標本の後半は、同じ病変に対するβ-免疫染色である。線維芽細胞の核が褐色(DAB発色)に強陽性となる所見は、通常は細胞膜・部に留まるはずのβ-が核内へ異常に蓄積していることを示し、を裏づける補助的所見として用いられる。

所見 解釈
核内の褐色反応(陽性) β-の核内蓄積。CTNNB1/APC経路異常を支持する所見だが、単独で確定診断とはしない
細胞膜のみの染色(陰性) 正常なβ-分布に近く、を積極的には支持しない

⚠️ 核内β-陽性は診断を支持する有用な所見だが、感度・特異度は完全ではなく、一部の症例で染色パターンが典型的でないことがある。と併せて総合的に判断する。

治療方針

は再発率が高く、広範切除を行っても再発しうることに加え、進行が自然に停止・退縮する例も一定数存在する。そのため、無症状で切迫した臓器障害のない病変では、直ちに広範切除を行うのではなく、まず経過観察(active surveillance)を行い、増大や症状増悪があれば、NSAIDs、分子標的薬など)や手術を検討する方針が現在は広く推奨される。

⚠️ 「積極的な広範切除が第一選択」という考え方は現在は見直されており、の状態と再発率の相関も一定しない。は腫瘍の部位・症状・増大速度を踏まえて個別に判断する。

線維芽細胞・分化を示す軟部腫瘍全般は線維芽細胞・分化軟部腫瘍、軟部腫瘍の軟部腫瘍の疫学・病因・組織型・病期・症状・診断を参照する。

まとめ

  • は遠隔転移しないが局所浸潤性・再発性が強い線維芽細胞・腫瘍である。
  • Wnt/β-経路の(CTNNB1変異、ではAPC変異)が発生機序の中心である。
  • 核内β-免疫染色陽性は診断を支持する補助的所見であり、形態学的評価と併用する。
  • 現在は無症状病変への第一選択として経過観察を行い、増大・症状増悪時にや手術を検討する。