Molecular Cell Biology

Molecular Cell Biology · 73

細胞内分画の解析

Investigation of subcellular cell fractions

🧠 この実験の核心は「各オルガネラだけに存在する分子(マーカー)」を見つけ、それを比色反応に変換して「そこにそのオルガネラがどれだけあるか」を測る、という発想である。 核はDNA量、ミトコンドリアは脱水素酵素、はUDP(ER)や5’-(細胞膜)、細胞質は——で分けた画分の「」を、その画分に特異的な酵素活性の有無で検証するのがこの実験全体の論理である。

分画研究の目的

は複数の(核、ミトコンドリア、ER、ゴルジ、リソソーム、、細胞質)を含み、それぞれがその特定の区画にのみ見出される高度に特異的な高分子を含む。したがってこれらの高分子はオルガネラ特異的マーカーとみなすことができる。この実験の目的は、これらのマーカーが実際に特定の分画(区画)に特異的であることを検証することである。

マーカーには例えば、や細胞質の、酵素、核酸がありうる。これらのマーカーは以下の手法を用いて同定できる:

  • 免疫染色(): 無傷の細胞や組織中のマーカーを検出できる。タンパク質は抗体により、DNAはDAPI()により検出される
  • 免疫ブロット(): タンパク質を細胞内分画から単離し、SDS-PAGE(試料をその分子量ごとに分ける)で分離した後、へ転写する
  • 生化学的アッセイ: 細胞内分画由来の酵素を特異的基質存在下でインキュベートし、産物形成を/蛍光光度計でモニターする(→タンパク質の単離)

マーカーの検出は、<a href=“/topics/mcb/71-methods-in-cell-biology-cell-culturing-cell-fractionation-in-vivo-microscopy” class=“wikilink” data-goes-to=“細胞生物学の手法:細胞培養、細胞分画、in vivo顕微鏡観察、フローサイトメトリー、S”>と呼ばれる分画法によって単離された細胞内分画で行われる。これは細胞内オルガネラの密度の違いを利用する→粗細胞抽出液からのは増加するrpm(毎分回転数)でのにより分離される。沈降速度は各区画に特異的である:

分画 マーカー g値
ゲノムDNA 1000
ミトコンドリア 脱水素酵素 11,000
ミクロソーム 5’-(細胞膜)、UDP(ER) 100,000
細胞質 >100,000(

核マーカー:ゲノムDNA

ゲノムDNAが核マーカーである。DNAの酸加水分解によりデオキシが得られ、これはにより定量される——これが呈色生成物(シッフ塩基=青色)を生じる。

flowchart TD
  A["ゲノムDNA"] --> B["酸加水分解"]
  B --> C["デオキシ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ribose'>リボース</span>"]
  C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diphenylamine'>ジフェニルアミン</span>との反応"]
  D --> E["呈色<span class='jp-term jp-term-diagram' title='condensation'>縮合</span>生成物(シッフ塩基、青色)"]

ミトコンドリアマーカー:コハク酸脱水素酵素

脱水素酵素は内ミトコンドリア膜の酵素である。この酵素はその基質であるから2つの水素原子を除去し、産物であるを生じる。これらの水素原子は酵素に強く結合したFADを還元できる。

酵素活性を測定するために、FADH2を再酸化できる試薬が加えられる。この反応の間、試薬の色が変化する。用いられる試薬はINT塩化物であり、そのは赤色(低)である。

INTするために、「FTF混合液」でされる:

  • (pHを低下させる)
  • Triton X(
  • と反応する)

→ FTF混合液を加えることで、赤色溶液を見ることができる(INTされるため)。

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='succinic acid'>コハク酸</span>"] -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='succinic acid'>コハク酸</span>脱水素酵素"| B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fumarate'>フマル酸</span>+2H"]
  B --> C["FADが還元されFADH2に"]
  C --> D["INT塩化物によるFADH2の再酸化"]
  D --> E["INT<span class='jp-term jp-term-diagram' title='formazan'>ホルマザン</span>(赤色、低<span class='jp-term jp-term-diagram' title='solubility'>溶解性</span>)形成"]
  E --> F["FTF混合液(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='formic acid'>ギ酸</span>+Triton X+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='formaldehyde'>ホルムアルデヒド</span>)による<span class='jp-term jp-term-diagram' title='solubilization'>可溶化</span>"]
  F --> G["赤色溶液として測定可能"]

ミクロソーム画分

は、ERやゴルジ膜のような大きな細胞内膜系の細胞抽出である小胞を大部分含む。や細胞膜断片も含みうる。

ERマーカー:UDPグルクロニルトランスフェラーゼ

マーカーはUDPである。人工的な黄色の基質(p-ニトロ)が、UDP-部分をへ転移する反応を触媒するウリジン二リン酸-とともに用いられる→体外への排出が容易なよりの化合物を産生する。

→ 反応の産物はビリルビンのモノ/ジであり、水溶性で無毒である。

細胞膜マーカー:5’-ヌクレオチダーゼ

マーカーは5’である。Fiske-Subbarow比色リン酸アッセイにより5’レベルを決定する。5’は、Mg²⁺イオン存在下でグリシン-NaOH緩衝液(pH8.5)中のAMPを用いて細胞内分画からアッセイされる。

細胞質マーカー:アルギナーゼ

マーカーはである。の肝臓において、は細胞質に局在し、の最終酵素反応を触媒する。

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arginine (Arg)'>アルギニン</span>+H2O"] -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arginase'>アルギナーゼ</span>"| B["オルニチン+尿素"]
  B --> C["ジアセチルモノオキシム+チオセミカルバジドとの反応"]
  C --> D["呈色生成物"]

まとめ

  • は特異的なマーカー分子(核:ゲノムDNA、ミトコンドリア:脱水素酵素、ER:UDP、細胞膜:5’-、細胞質:)を持ち、これらは免疫染色・・生化学的アッセイにより同定される。
  • は細胞内オルガネラの密度の違いを利用し、増加するg値(1000→11,000→100,000→>100,000)で粗細胞抽出液をすることで各分画を分離する。
  • 各マーカー酵素はそれぞれ特異的な比色反応(DNA→デオキシ発色、→INT発色など)に基づいて定量され、分画のを検証するために用いられる。