遺伝学

遺伝学 · 7.3

システム生物学

Systems biology

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W10Lecture / 講義

🧠 は「疾患を1つの遺伝子ではなく、遺伝子・タンパク・代謝物のネットワーク全体として見る」という視座の転換として読む。 とを用いることで、の、薬剤の、を共通の枠組みで検討できる。ただし、得られるは用いるインタラクトームの収録範囲と品質にも左右される。1

疾患へのシステム生物学的アプローチ

=生物学的分子間の相互作用をグラフとして表現したもの——=分子(遺伝子・タンパク・代謝物・等)、=間の関係性(相互作用)。

ネットワークの分布:スケールフリー vs ランダム

型 次数分布 特徴
ランダム/ポアソン分布ネットワーク 均等 大半のがほぼ同じ数の接続をもつ
(Albertモデル) べき乗則分布 少数のが極めて多くの接続をもち、大半のは少数の接続しかもたない。生物学的ネットワークの一部で近似的にみられるが、観測される分布は測定法・収録範囲・データベースのにも依存する1

生物学的ネットワークの分類

ネットワーク
相互作用ネットワーク タンパク質・遺伝子・代謝物・ 物理的接触、遺伝子産物タンパク間相互作用、転写因子-、同一生化学反応への関与、-、-相互作用
— —
— 転写因子と遺伝子の関係
— —
疾患/遺伝子 共有遺伝子(疾患間)/共通疾患(遺伝子間)/(遺伝子間)

ハブ遺伝子の性質

である傾向が強く、進化的により保存されており、欠失させると表現型に大きな変化が起こりやすい——ただし、と疾患遺伝子は同義ではない。2 CD/CVモデルは、に頻度が比較的高く効果の小さいバリアントが多数関与するという仮説であり、それらがに限局するとは考えない(05-2-complex-inheritance-iのT1DM多数バリアントモデルも参照)。

⚠️ 生物学的システムへのの影響は、標的の位置とネットワーク構造で変わる。 除去(遺伝子の完全な欠失・機能喪失)は多数のを同時に失わせるため大きな影響を及ぼしやすく、とくにの除去は破壊的たりうる。ただし、重要な相互作用を担う単一の変化が大きな表現型を生む場合もあり、「除去は常に変化より重大」とは限らない。

疾患地図

=疾患を、共有するをとするネットワーク——の大きさはその疾患に関連する遺伝子数に比例する。

⭐ 一部の疾患モジュールは重なり合い、これがと薬剤の転用可能性を検討する手がかりになる。 ある疾患モジュールへのが、重なり合う別の疾患モジュールにも影響することがあり、モジュールの重なりや近接性は疾患間の関連と結びつく。3 ただし、すべての疾患対に共通するな「2倍」のリスクではない。同じ論理から、1つの疾患を標的とする薬剤が別の疾患にも効果を示す可能性を探索できる(、11-1-pharmacogenomics-and-nutrigenomicsも参照)。

ネットワーク薬理学

では、疾患モジュールと薬剤標的のネットワーク上の近接性を評価し、既存薬の新しい適応候補や複数経路に作用する治療戦略を探索する。疾患関連タンパクそのものだけでなく、その近傍を含む相互作用ネットワークを地図化することが新規治療標的の発見に有用である。4

まとめ

  • は疾患を単一遺伝子ではなく(=分子、=相互作用)として捉える。性は有用なモデルだが、観測されるネットワークはデータの不完全性と収集の影響を受ける。
  • 生物学的ネットワークは相互作用・代謝・制御・遺伝子・に分類される。は必須性が高く保存される傾向があるが、疾患遺伝子であるとは限らず、CD/CVモデルのバリアントもに限定されない。
  • 除去は大きなを生じやすいが、影響はネットワーク構造に依存する。疾患モジュールの重なりや薬剤標的との近接性は、の理解とdrug repurposing候補の探索に利用できる。

出典

  1. 1.State of the interactomes: an evaluation of molecular networks for generating biological insights(Molecular Systems Biology・2025)インタラクトームは収録範囲・品質・バイアスが資源ごとに異なり、研究目的に応じたネットワーク選択が必要閲覧 2026-08-24
  2. 2.The human disease network(Proceedings of the National Academy of Sciences・2007)疾患遺伝子は必須遺伝子やハブと同一ではなく、疾患遺伝子同士の共有から疾患間関係を構成できる閲覧 2026-08-24
  3. 3.Disease networks. Uncovering disease-disease relationships through the incomplete interactome(Science・2015)不完全なヒトインタラクトーム上でも疾患モジュール間の重なりや近接性は疾患間関係の解析に利用できる閲覧 2026-08-24
  4. 4.Network-based approach to prediction and population-based validation of in silico drug repurposing(Nature Communications・2018)疾患遺伝子と薬剤標的のネットワーク近接性を用いて薬剤転用候補を予測し、患者データで検証できる閲覧 2026-08-24