Medical Microbiology

Medical Microbiology · 1/14

抗菌薬の併用

Antibiotics in combinations

🧠 抗菌薬を2剤以上併用するときに問うべきは「1+1が2より大きいか、小さいか、ただの1のままか」の1点。 併用の目的(を狙う・スペクトラムを広げる・耐性化を防ぐ)と、実際に生じる相互作用の結果(・拮抗・)は別の話——目的通りにが出るとは限らず、むしろ拮抗して片方の薬の効果を打ち消してしまうこともある。

抗菌薬を併用する目的

複数の抗微生物薬を同時に投与する際は、薬剤どうしの相互作用に特に注意が必要である。また、体内に存在する他の物質(食物やアルコールなど)との相互作用が起こることもある。

抗菌薬を併用することで、目的とする効果をより確実に達成しやすくなる。時に(複数菌種による感染)が存在し、それぞれ抗菌薬感受性パターンが異なることもある。併用によって狙う効果は主に3つ。

  • を得る——以下のような場合:
    • 原因菌のにより多くの抗菌薬を要する
    • 患者が重症の(全身性)感染症を有する
    • 患者が免疫不全状態にある
  • を拡大する——以下のような場合:
    • 病原体がまだ同定されていない(では、考えられる原因菌をできるだけ広くカバーする必要がある)
    • 患者が混合(多菌種)感染を有する
  • 耐性機構の誘導を防ぐ——特に長期治療において重要

併用効果の3分類

2剤(薬剤AとB)を併用したときの結果は、以下の3パターンに分類される。

分類 定義 イメージ
AとBが互いに目立った影響(増強も減弱も)を及ぼさない。併用の効果は、最も効果の強い単剤と同程度にとどまる。 A+B ≒ 最強の単剤
拮抗 AとBの相互作用により、一方または両方の効果が減弱する。併用の効果は、最も弱い単剤の効果よりもさらに劣る。 A+B < 最弱の単剤
AとBの相互作用により、一方または両方の効果が増強する。併用の効果は、両薬剤の効果の単純な合計よりもさらに大きくなる。互いの効果を高め合う。 A+B > Aの効果+Bの効果
flowchart TD
    A["抗菌薬A+抗菌薬Bを併用"] --> B{"相互作用の方向は?"}
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='indifference'>無関係</span><br>効果は最強の単剤どまり"]
    B --> D["拮抗<br>効果は最弱の単剤より低下"]
    B --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='synergy'>相乗</span><br>単剤の合計を超える効果"]

⚠️ 併用は必ずしも「足し算」ではない。 を組み合わせると、が細菌の増殖を止めてしまい、の細菌を狙うの効果がかえって弱まる拮抗的な組み合わせになりうる——併用を決める前に、それぞれの薬剤の作用機序(など)を踏まえて組み合わせの相性を考える必要がある。

まとめ

  • 抗菌薬併用の目的は、を狙う・を広げる・耐性誘導を防ぐ、の3つ。
  • 併用の実際の結果は、・拮抗・の3パターンに分類される。
  • はA+Bが単剤の合計効果を上回る場合、拮抗はA+Bが最弱の単剤より劣る場合、はA+Bが最強の単剤どまりの場合をいう。
  • 薬剤どうしだけでなく、食物やアルコールなど体内の他物質との相互作用にも注意が必要。
  • 作用機序の異なる薬剤同士でも、組み合わせ次第では拮抗が生じうるため、機序を踏まえた選択が重要。