分子細胞生物学 · 14
真核生物の遺伝子構造、真核生物における転写の開始と終結
Structure of the eukaryotic genes, initiation and termination of transcription in eukaryotes
🧠 真核生物の転写は「1遺伝子・1プロモーター・1mRNA」という原核生物とは対照的な原則の上に成り立ち、DNADNA(deoxyribonucleic acid)がヌクレオソーム nucleosome ヌクレオソーム(nucleosome) nucleosome(ヌクレオソーム) に包まれているという追加の障壁を越えるために、原核生物にはない大量の一般転写因子 general transcription factor 一般転写因子(general transcription factor) general transcription factor(一般転写因子) (TFIIA〜H)を必要とする。 RNARNA(ribonucleic acid)ポリメラーゼがI・II・IIIの3種に分化している点、転写と翻訳が核と細胞質で時間的・空間的に分離されている点も、単一のRNAポリメラーゼが核も細胞質もない場所で転写と翻訳を同時に行う原核生物との際立った対比をなす。
真核生物のRNAポリメラーゼ
真核生物は3種類のRNAポリメラーゼ(I、II、III)を持つが、原核生物はRNAポリメラーゼを1種類しか持たない(コア酵素core enzymeコア酵素(core enzyme)core enzyme(コア酵素) α₂ββ′ω にσ因子が付いたホロ酵素 holoenzymeホロ酵素(holoenzyme) holoenzyme(ホロ酵素) α₂ββ′ωσ。σを差し替えることで認識するプロモーターを切り替える。トピック11参照)。もう1つの違いは、原核生物では転写と翻訳が同時に起こるのに対し、真核生物ではRNAがまず核内で転写され、その後細胞質で翻訳される点である。
| RNAポリメラーゼ | 合成されるRNA | 成熟RNA産物 | α-アマニチン amanitin (α-amanitin) アマニチン(amanitin (α-amanitin)) amanitin (α-amanitin)(アマニチン) の効果 |
|---|---|---|---|
| I | 大型pre-rRNA | 28S、18S、5.8S rRNA | 阻害されない |
| II | hnRNA、snRNA | mRNA、snRNA | 非常に低濃度で阻害 |
| III | pre-5S rRNA、pre-tRNA、U6 snRNA、SRP RNA | 5S rRNA、tRNA、U6 snRNA、SRP RNA | より高濃度で阻害 |
(加えて、ミトコンドリア転写用のミトコンドリアRNAポリメラーゼが存在する)
真核生物遺伝子の構造
真核生物の遺伝子(共に機能するタンパク質をコードするもの)は、そのDNA上で物理的に離れていることが多い——通常は異なる染色体に位置する。各遺伝子The genes 各遺伝子(The genes)The genes(各遺伝子) は自身のプロモーターから転写され1本のmRNAを産生し、これが翻訳されて単一のポリペプチドを生む(原核生物では単一のプロモーターが多数のタンパク質をコードすることが多いのと対照的)。
遺伝子はまず、エキソンexon エキソン(exon)exon(エキソン) 配列とそれらを分けるイントロン配列の両方を含む配列転写産物へ転写される。その後イントロンが除去され、エキソンexon エキソン(exon)exon(エキソン) が繋ぎ合わされる(比較:原核生物のDNAは非コードのギャップがほとんどなく密に詰まっており、DNAは直接mRNAへ転写される)。
| 配列 | 内容 |
|---|---|
| エキソンexonエキソン(exon)exon(エキソン) | コード配列coding sequenceコード配列(coding sequence)coding sequence(コード配列)、転写+翻訳される。ポリペプチド鎖のアミノ酸をコードする |
| イントロン | 非コード配列 coding sequenceコード配列(coding sequence) coding sequence(コード配列)、転写されるが翻訳されない(ほぼ常に5′端にGU配列、3′端にAG配列を持つ) |
| プロモーター配列promoter sequenceプロモーター配列(promoter sequence)promoter sequence(プロモーター配列) | RNAポリメラーゼIIによる遺伝子転写がどこで始まるかを規定するDNA配列。通常、転写開始transcription initiation 転写開始(transcription initiation)transcription initiation(転写開始) 部位の直上流または5′端に位置する |
真核生物RNAポリメラーゼII依存性プロモーターの4配列
| 要素 | 認識因子 | 内容 |
|---|---|---|
| TATAボックスTATA boxTATAボックス(TATA box)TATA box(TATAボックス) | TBP(TATA結合タンパク質、TATA-binding protein) | 転写開始transcription initiation 転写開始(transcription initiation)transcription initiation(転写開始) 部位の25〜35 bp上流に位置。TBPがTATAボックス TATA box TATAボックス(TATA box) TATA box(TATAボックス) に結合し、DNAを巻き戻す。アデニンadenine アデニン(adenine)adenine(アデニン) +チミン thymine, T チミン(thymine, T) thymine, T(チミン) はH結合が2本のみで最も巻き戻しやすい。ただしヒトのコアプロモーター core promoter コアプロモーター(core promoter) core promoter(コアプロモーター) の多数派はTATAを持たない(下記⚠️) |
| BRE(B認識要素、B recognition element) | TFIIB | 転写因子IIBの結合部位 |
| DPE(下流プロモーター要素、downstream promoter element) | TFIID | プロモーターが下流領域(+)に現れる場合 |
| INR(開始要素、initiator element) | TFIID | 最初のヌクレオチドがここで転写される=転写開始 transcription initiation 転写開始(transcription initiation) transcription initiation(転写開始) 点 |
⚠️ TATAボックスTATA box TATAボックス(TATA box)TATA box(TATAボックス) は「典型的な真核生物プロモーター」ではなく、むしろ少数派である。 ゲノム規模の解析では、ヒトのコアプロモーター core promoter コアプロモーター(core promoter) core promoter(コアプロモーター) の約76%がTATA様配列を欠き、代わりにGC含量が高くSp1結合部位に富む。TATA様配列を持つのは約24%にとどまり、そのうち標準的なTATAボックス TATA box TATAボックス(TATA box) TATA box(TATAボックス) (TATAWAWR)を持つものは約10%にすぎない。一方でコンセンサスINR(YYANWYY)を持つプロモーターは約46%あり、TATAよりINRのほうが優勢である(TATAもコンセンサスINRも持たないプロモーターも約46%ある)1。傾向として、TATAを欠くプロモーター=ハウスキーピング遺伝子 housekeeping geneハウスキーピング遺伝子(housekeeping gene) housekeeping gene(ハウスキーピング遺伝子)、TATAを持つプロモーター=ストレスや刺激で強く調節される遺伝子という対応がヒトでも酵母でも見られる。したがって上の4要素は「必ず4つ揃う」ものではなく、組み合わせが遺伝子ごとに違うパーツの一覧として理解する。
ターミネーター配列terminator sequence ターミネーター配列(terminator sequence)terminator sequence(ターミネーター配列) : 遺伝子のコード区間のすぐ下流にあるDNA配列で、RNAポリメラーゼにより転写停止のシグナルとして認識される。
シグナル:
- 5′キャップ付加のための上流配列シグナル: mRNAの5′端へのキャップ(7-メチルグアノシン guanosineグアノシン(guanosine) guanosine(グアノシン)、7-methylguanosine)付加のシグナル。キャップは翻訳開始 translation initiation 翻訳開始(translation initiation) translation initiation(翻訳開始) の促進とmRNAの安定化を担う
- ポリA尾部付加のための下流配列シグナル: AAUAAA配列がポリA尾部付加のシグナルとなる。mRNAをより安定にし分解を防ぐ(注:ポリA尾部は転写後に付加される)
真核生物細胞における転写開始
真核生物の転写開始 transcription initiation 転写開始(transcription initiation) transcription initiation(転写開始) は、ヌクレオソームnucleosome ヌクレオソーム(nucleosome)nucleosome(ヌクレオソーム) およびより高次 higher order 高次(higher order) higher order(高次) のクロマチン構造に梱包されたDNA上で起こらなければならない。真核生物のRNAポリメラーゼは多数の因子を必要とし、これらは総称して一般転写因子general transcription factor一般転写因子(general transcription factor)general transcription factor(一般転写因子)と呼ばれる——RNAポリメラーゼIIによって転写される大部分の遺伝子のプロモーターで必要とされるためである。
RNAポリメラーゼIIによる転写開始 transcription initiation 転写開始(transcription initiation) transcription initiation(転写開始) には、以下を助ける開始因子が必要である:
- RNAポリメラーゼをプロモーターへ正しく位置づける
- 鋳型鎖が酵素の活性部位 active site 活性部位(active site) active site(活性部位) に入れるよう2本のDNA鎖を引き離す手助けをする
一般転写因子(TFII、ポリメラーゼII用転写因子)
| 因子 | 機能 |
|---|---|
| TFIID | TATAボックスTATA box TATAボックス(TATA box)TATA box(TATAボックス) 認識(TBP+TAF群。TATAを欠くプロモーターではTAFがINR・DPEを介して認識を担う) |
| TFIIA | TBP-DNA結合を安定化し、抑制因子repressor 抑制因子(repressor)repressor(抑制因子) の作用を打ち消す(下記の開始複合体 initiation complex 開始複合体(initiation complex) initiation complex(開始複合体) 形成の手順7にも登場する) |
| TFIIB | 正確な位置決め |
| TFIIF | 開始複合体initiation complex 開始複合体(initiation complex)initiation complex(開始複合体) 構造の安定化 |
| TFIIE | TFIIHの調節 |
| TFIIH | DNA二重らせん double helix 二重らせん(double helix) double helix(二重らせん) の巻き戻し、ATP加水分解 |
開始複合体の形成
- TFIIDのサブユニットであるTBPが最初にTATAボックス TATA box TATAボックス(TATA box) TATA box(TATAボックス) プロモーター(DNAの主溝 major groove 主溝(major groove) major groove(主溝) 内)に結合する。TAF(TBP関連因子、TBP-associated factor)はTATAボックス TATA box TATAボックス(TATA box) TATA box(TATAボックス) を欠くプロモーターからの転写を開始する。TBPが開始因子複合体の組み立てを開始する
- TFIIBがBREに結合する(RNAポリメラーゼIIが転写開始 transcription initiation 転写開始(transcription initiation) transcription initiation(転写開始) 部位でDNA鎖を溶かすのを助け、ポリメラーゼII活性部位 active site 活性部位(active site) active site(活性部位) 近傍の鋳型鎖と相互作用する)
- TFIIBとRNAポリメラーゼIIが結合——ポリメラーゼを開始部位上に位置づける
- TFIIEがTFIIHのためのドッキング docking ドッキング(docking) docking(ドッキング) 部位を作る
- TFIIHの結合により転写前開始複合体 initiation complex 開始複合体(initiation complex) initiation complex(開始複合体) の組み立てが完了する(TFIIHのサブユニットがATPエネルギーを用いて転写開始 transcription initiation 転写開始(transcription initiation) transcription initiation(転写開始) 部位のDNAを巻き戻し、鋳型鎖をポリメラーゼへ露出させる)
- RNAポリメラーゼIIのCTD(C末端ドメイン、C-terminal domain)がTFIIHによりリン酸化される——この段階は開始複合体 initiation complex 開始複合体(initiation complex) initiation complex(開始複合体) の解放とmRNA伸長開始に必要(CTDは7アミノ酸のタンデム反復 tandem repeatタンデム反復(tandem repeat) tandem repeat(タンデム反復))
- 前開始複合体 initiation complex 開始複合体(initiation complex) initiation complex(開始複合体) の組み立て後:TFIID(+TFIIA)はRNAポリメラーゼIIがプロモーター領域 promoter region プロモーター領域(promoter region) promoter region(プロモーター領域) から転写を進める間もTATAボックス TATA box TATAボックス(TATA box) TATA box(TATAボックス) に残留する一方、TFIIB・F・Hは完全に解離する
- RNAポリメラーゼIIがDNAに結合→転写開始 transcription initiation転写開始(transcription initiation) transcription initiation(転写開始)
💡 開始したポリメラーゼはそのまま走り出すわけではない——プロモーター近傍で止まる。 従来のモデルは「RNAポリメラーゼIIをプロモーターへ連れてくること」だけを調節点として描いてきたが、高等真核生物では伸長初期のプロモーター近傍ポーズ promoter-proximal pausing プロモーター近傍ポーズ(promoter-proximal pausing) promoter-proximal pausing(プロモーター近傍ポーズ) が広く行き渡った調節機構 regulatory mechanisms調節機構(regulatory mechanisms) regulatory mechanisms(調節機構)であることが、高スループット解析で示されている。開始点から数十ヌクレオチド下流でポリメラーゼはNELF・DSIFに捕まって一時停止し、P-TEFb(CDK9)がDSIF・NELF・CTDのSer2をリン酸化して初めて生産的伸長へ移行する。ポーズはシグナル応答性の経路の遺伝子で特に高頻度で、刺激が来たときに一斉に転写を再開できる「発射discharge 発射(discharge)discharge(発射) 準備完了」状態を作る2。上の手順6で登場するTFIIH(CDK7)によるCTD Ser5リン酸化は開始のための段階であり、Ser2リン酸化を担うCDK9とは役割が異なる。
クロマチンの壁を越える機構
真核生物細胞ではDNAがヌクレオソーム nucleosome ヌクレオソーム(nucleosome) nucleosome(ヌクレオソーム) へ梱包され、さらに高次 higher order 高次(higher order) higher order(高次) のクロマチン構造へ組織化されている。このためコアプロモーター core promoter コアプロモーター(core promoter) core promoter(コアプロモーター) のTATAボックス TATA box TATAボックス(TATA box) TATA box(TATAボックス) は梱包されたDNA内に非常によく隠されている。そこでTFはTATAボックス TATA box TATAボックス(TATA box) TATA box(TATAボックス) に到達するための助けを必要とする:
- 活性化因子: エンハンサーenhancer エンハンサー(enhancer)enhancer(エンハンサー) と呼ばれるDNA上の配列に結合しなければならないタンパク質。RNAポリメラーゼIIを転写開始 transcription initiation 転写開始(transcription initiation) transcription initiation(転写開始) 点へ誘引する機能を持つ
- メディエーター: 活性化因子タンパク質(エンハンサーenhancerエンハンサー(enhancer)enhancer(エンハンサー))がRNAポリメラーゼII・TFと適切に通信できるようにする巨大なタンパク質複合体。メディエーター複合体mediator complex メディエーター複合体(mediator complex)mediator complex(メディエーター複合体) は転写を活性化/抑制しうる
- クロマチン修飾酵素 modifying enzyme修飾酵素(modifying enzyme) modifying enzyme(修飾酵素): クロマチンリモデリングchromatin remodeling クロマチンリモデリング(chromatin remodeling)chromatin remodeling(クロマチンリモデリング) 複合体・ヒストン修飾histone modification ヒストン修飾(histone modification)histone modification(ヒストン修飾) 酵素を含み、クロマチンの共有結合修飾 covalent modification 共有結合修飾(covalent modification) covalent modification(共有結合修飾) によりヌクレオソーム nucleosome ヌクレオソーム(nucleosome) nucleosome(ヌクレオソーム) のきつい構造を緩めDNAへのアクセスを増加させる
→ 結果としてDNA上にTF装置の組み立てが助けられる(15-regulation-of-the-transcription-in-eukaryotes参照)。
真核生物転写の終結
mRNAの最後の部分は3′-ポリA尾部であり、これが転写終結の目印となる。RNAポリメラーゼIIが遺伝子の末端に達すると、類似した機構がpre-mRNAの3′端を適切にプロセシングする:
- RNAポリメラーゼIIが3′端をコードする配列に達する
- CstF(切断刺激因子CstF (cleavage stimulation factor)切断刺激因子(CstF (cleavage stimulation factor))CstF (cleavage stimulation factor)(切断刺激因子)、cleavage stimulation factor)とCPSF(切断+ポリアデニル化特異性因子 cleavage and polyadenylation specificity factor (CPSF)ポリアデニル化特異性因子(cleavage and polyadenylation specificity factor (CPSF)) cleavage and polyadenylation specificity factor (CPSF)(ポリアデニル化特異性因子)、cleavage and polyadenylation specificity factor)という2つのタンパク質がRNAポリメラーゼの尾部とともに移動する
- RNAがRNAポリメラーゼIIから切断され、CstFとCPSFが新たに切断されたRNA分子上の認識配列に結合し、それらとともに他のタンパク質が組み立ってmRNAの3′端を作る
- PAP(ポリA重合酵素、polyA polymerase)がATPを用いて切断によって生じた3′端に約200個のアデニンヌクレオチド AMP+ADP+ATP アデニンヌクレオチド(AMP+ADP+ATP) AMP+ADP+ATP(アデニンヌクレオチド) を付加する
- RNAポリメラーゼIIは合成されたmRNAの3′端が切断された後も配列の転写を続ける——このため新生RNAは5′キャップを欠く(保護されていないため、5′→3′エキソヌクレアーゼ exonuclease エキソヌクレアーゼ(exonuclease) exonuclease(エキソヌクレアーゼ) がポリメラーゼ尾部に沿ったヌクレオチドを分解する)
💡 この手順5の機構には「トルピード(魚雷)モデル」という名前がついており、担い手は5′→3′エキソヌクレアーゼ exonucleaseエキソヌクレアーゼ(exonuclease) exonuclease(エキソヌクレアーゼ) Xrn2 である。 Xrn2は切断で露出した5′リン酸末端に取りつき、下流RNAを食べながらRNAポリメラーゼIIを追走して終結させる。ドミナントネガティブdominant-negative ドミナントネガティブ(dominant-negative)dominant-negative(ドミナントネガティブ) 型のXrn2を発現させるとゲノム全体で終結が遅れ、大部分のポリA部位の下流で強い終結不全が生じる(ヒストン遺伝子・U snRNA遺伝子でも軽度の遅延が出るので、この機構はポリA依存性終結に限らない)。さらに終結位置はXrn2とポリメラーゼの「速度競合」で決まる——伸長の遅いポリメラーゼ変異体では終結が上流へずれ、速い変異体では終結域が下流へ延びる3。
flowchart TD
A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ribonucleic acid'>RNA</span>ポリメラーゼIIが3'端<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coding sequence'>コード配列</span>に到達"] --> B["CstF・CPSFがポリメラーゼ尾部とともに移動"]
B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ribonucleic acid'>RNA</span>が切断され、CstF・CPSFが認識配列に結合"]
C --> D["PAPがATP依存性に約200<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adenine'>アデニン</span>残基を3'端へ付加"]
D --> E["ポリメラーゼは転写を継続するが下流産物は5'キャップを欠く"]
E --> F["5'→3'<span class='jp-term jp-term-diagram' title='exonuclease'>エキソヌクレアーゼ</span>が無防備な下流<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ribonucleic acid'>RNA</span>を分解"]
まとめ
- 真核生物は3種のRNAポリメラーゼ(I:rRNA、II:mRNA/snRNA、III:tRNA/5S rRNA等)を持ち、原核生物の単一ポリメラーゼとは異なりα-アマニチン amanitin (α-amanitin) アマニチン(amanitin (α-amanitin)) amanitin (α-amanitin)(アマニチン) 感受性も異なる。
- 真核生物遺伝子は1プロモーター1mRNAの原則に従い、TATAボックスTATA boxTATAボックス(TATA box)TATA box(TATAボックス)・BRE・DPE・INRという4要素からなるRNAポリメラーゼII依存性プロモーターと、エキソンexon エキソン(exon)exon(エキソン) -イントロン構造を持つ。
- 転写開始transcription initiation 転写開始(transcription initiation)transcription initiation(転写開始) はTBP(TATAボックスTATA box TATAボックス(TATA box)TATA box(TATAボックス) 認識)→TFIIB(位置決め)→TFIIE/H(DNA巻き戻し、ATP依存性)という順序で一般転写因子 general transcription factor 一般転写因子(general transcription factor) general transcription factor(一般転写因子) が組み立てられ、RNAポリメラーゼII CTDのリン酸化が開始複合体 initiation complex 開始複合体(initiation complex) initiation complex(開始複合体) 解放の引き金となる。
- クロマチンに埋もれたプロモーターへは活性化因子・メディエーター・クロマチン修飾酵素 modifying enzyme 修飾酵素(modifying enzyme) modifying enzyme(修飾酵素) という3層の補助機構がアクセスを可能にする。
- 転写終結はCstF/CPSFによる3’端切断とPAPによるポリA尾部付加を伴い、下流に残るRNAは5’キャップを欠くため5’→3’エキソヌクレアーゼ exonuclease エキソヌクレアーゼ(exonuclease) exonuclease(エキソヌクレアーゼ) Xrn2に急速に分解される(トルピードモデル。終結位置はXrn2とポリメラーゼの速度競合で決まる)。
- 覚え直すべき2点:①TATAボックス TATA box TATAボックス(TATA box) TATA box(TATAボックス) はヒトのコアプロモーター core promoter コアプロモーター(core promoter) core promoter(コアプロモーター) の少数派で、約76%はTATAを欠きINRやGCリッチ配列で認識される。②開始複合体 initiation complex 開始複合体(initiation complex) initiation complex(開始複合体) ができれば転写が進むわけではなく、プロモーター近傍ポーズの解除 P-TEFb/CDK9 解除(P-TEFb/CDK9) P-TEFb/CDK9(解除) が高等真核生物では主要な調節点である。
出典
- 1.Prevalence of the initiator over the TATA box in human and yeast genes and identification of DNA motifs enriched in human TATA-less core promoters(Gene・2007)ヒトのコアプロモーターの約76%はTATA様配列を欠きGC含量が高くSp1結合部位に富むこと。TATA様配列を持つのは約24%で、そのうち標準的なTATAボックス(TATAWAWR)を持つのは約10%にすぎないこと。約46%はコンセンサスINR(YYANWYY)を持ち、約46%はTATA様配列もコンセンサスINRも持たないこと。TATAを欠く遺伝子はハウスキーピング機能に多く、TATAを持つ遺伝子は強く調節される遺伝子に多いこと閲覧 2026-08-22
- 2.Promoter-proximal pausing of RNA polymerase II: emerging roles in metazoans(Nature Reviews Genetics・2012)従来のモデルが転写開始(RNAポリメラーゼIIのプロモーターへの動員)だけを調節点としてきたのに対し、高等真核生物では伸長初期におけるRNAポリメラーゼIIのプロモーター近傍ポーズが広く行き渡った調節機構であること。ポーズはシグナル応答性の経路の遺伝子で特に高頻度であること閲覧 2026-08-22
- 3.Effects of Transcription Elongation Rate and Xrn2 Exonuclease Activity on RNA Polymerase II Termination Suggest Widespread Kinetic Competition(Molecular Cell・2015)転写終結の「トルピード(魚雷)モデル」では5′→3′エキソヌクレアーゼXrn2が切断で露出した5′リン酸末端を攻撃しRNAポリメラーゼIIを追走すること。ドミナントネガティブ型Xrn2はゲノム全体で終結を遅延させ、大部分のポリA部位下流で強い終結不全を生じること。伸長速度の遅い変異体では終結が上流へ、速い変異体では下流へずれることから、Xrn2とポリメラーゼの速度競合が終結位置を決めていること閲覧 2026-08-22