Physiology

Physiology · 1.3

シグナル伝達:受容体・Gタンパク質・セカンドメッセンジャー。

Signal transduction: receptors, G proteins, second messengers.

🧠 受容体は「第一メッセンジャー(first messenger:ホルモン・神経伝達物質)を受け取り、細胞内で(second messenger:cAMP・Ca²⁺など)に変換する変換器」と捉える。 5種類の受容体(GPCR/)は、いずれも「」という同じ論理を、異なる速度・機構で実行しているだけ。GPCRはGs/Gi/Gq/G12-13という4系統のGタンパクでを切り替える「交換台」だと理解する。

受容体の一般原理

  • リガンドを認識すると同時に、を生み出す。
  • 低濃度のリガンドを認識できる。
  • 結合は可逆的特異的(ただし完全ではない)、(全受容体が結合し尽くす点がある)。

受容体-リガンド結合の定量

KdK_d は最大結合の50%を与えるリガンド濃度。Kdが低いほど親和性が高い(低濃度で効率よく機能する)。

L+RLR,Kd=[L][R][LR]L + R \rightleftharpoons LR, \quad K_d = \frac{[L][R]}{[LR]}
リガンドの種類 効果
100% を最大限に誘発
<100% 部分的な反応
0% 受容体部位をするのみ(双方をブロック)
と逆の効果を生む
  • (EC₅₀): の50%を生む
  • 有効性: その薬物が生み出せる

💡 一部の受容体はを持ち、リガンドがなくても活性を示す。例:II受容体は(血管収縮)方向に働くため、はこのごとブロックして血圧を下げる。

細胞内シグナルの2大「分子スイッチ」

機構 活性化 不活化
リン酸化 ATPにより付加
GTP GEF(guanine exchange factor、)がGDPを外しGTP結合を促す GAP(GTPase activating protein、GTPase活性化蛋白)が内因性GTPase活性を促進しGDPに戻す

受容体の分類

flowchart TD
  A["受容体"]
  A --> B["1. Gタンパク質共役受容体 GPCR(7回膜貫通)"]
  A --> C["2. <span class='jp-term jp-term-diagram' title='Ionotropic receptors'>イオンチャネル型受容体</span>"]
  A --> D["3. 酵素活性を持つ受容体"]
  A --> E["4. 酵素活性は持たないが酵素と共役する受容体(JAK-STAT)"]
  A --> F["5. <span class='jp-term jp-term-diagram' title='intracellular receptor'>細胞内受容体</span>(脂溶性リガンド用)"]

1. GPCR

7回で、αβγの三量体Gタンパク質と共役する。

→受容体活性化 ②Gタンパクが受容体と相互作用(+GDP→GTP交換 exchange)③活性化Gタンパク(GTP結合型)が受容体から解離④α-GTPがβγサブユニットから解離 ⑤α-GTPとβγがそれぞれのと相互作用 ⑥α-GTPがGDPに加水分解→α不活化+三量体再形成。

Gタンパク質のサブタイプと下流シグナル

Gタンパク への作用 主なシグナル 代表的受容体
Gs(刺激性, stimulatory) ATP→cAMP↑→PKA(protein kinase A)活性化(PDE, phosphodiesteraseがcAMPを分解) β-、ACTH受容体、
Gi/Go(抑制性, inhibitory) AC↓(cAMP↓) K⁺チャネル活性化(過分極)、抑制、PLA2(phospholipase A2)活性化→放出 α2-AR(adrenergic receptor)、M2/M4 ACh受容体、
Gq(G11) (phospholipase C, PLC)↑ PIP₂→IP₃(inositol trisphosphate)+DAG(diacylglycerol)。IP₃はSR/ERからCa²⁺放出、DAGはPKC(protein kinase C)活性化 ADH、II(angiotensin II)、
G12/G13 Rho-GEF活性化 Rho small →Rhoキナーゼ→制御 視覚()・味覚()など体も関連
flowchart TD
  A["Gq活性化"] --> B["PLC活性化"]
  B --> C["PIP2切断"]
  C --> D["IP3"]
  C --> E["DAG(膜に留まる)"]
  D --> F["SR/ERからCa2+放出"]
  E --> G["PKC活性化"]
  F --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='calmodulin'>カルモジュリン</span>結合<br>MLCK活性化→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='smooth muscle contraction'>平滑筋収縮</span>"]
  F --> I["cAMP<span class='jp-term jp-term-diagram' title='phosphodiesterase (PDE)'>ホスホジエステラーゼ</span>活性化<br>→cAMP分解(Gs作用の減弱)"]

⚠️ アスピリンはを阻害する。 Gi経路でPLA2が活性化され→プロスタグランジン(COX経由)/経由)が作られる。COX阻害はプロスタグランジン産生を止め、鎮痛・に働く一方、保護的プロスタグランジンも減るため潰瘍リスクにつながる(6-03-function-of-the-salivary-glands-and-regulation-of-salivary-secretion-gastric参照)。

アドレナリン受容体

受容体 親和性 Gタンパク 局在 効果
α1 NE > E Gq/G11 平滑筋 収縮
α2 Gi/o 神経活動抑制
β1 NE = E Gs 心臓
β2 NE << E Gs 平滑筋 弛緩(relaxation、血管拡張)
β3 NE > E Gs 熱産生

副腎髄質はNEとE両方を産生できるが、はNEのみを産生する。

コリン作動性受容体

機構 阻害薬 補足
GPCR、主にPARA系 M1/M3/M5=Gq/11、M2/M4=Gi/o(語呂「QIQIQ」)
(筋型 muscle-type) イオンチャネル、がGPCR活性化なしに開口 骨格筋、阻害で
(神経型 neuronal-type) 同上 に存在

2. イオンチャネル型受容体

  • で作動する最速の受容体。(例:ACh)。
  • 神経伝達物質に適し、シグナル伝達を行う。
機能 リガンド 特異性
興奮性 ACh( Na⁺/K⁺
グルタミン酸(NMDA受容体) Na⁺/K⁺とCa²⁺
グルタミン酸(AMPA、 Na⁺/K⁺
セロトニン( Na⁺/K⁺
抑制性 GABA(A型) Cl⁻
グリシン Cl⁻

3. 酵素活性を持つ受容体

受容体チロシンキナーゼ

・EGF受容体など。を持つ。

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ligand binding'>リガンド結合</span>"] --> B["受容体<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dimerization'>二量体化</span>"]
  B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='autophosphorylation'>自己リン酸化</span>"]
  C --> D["GRB2のSH2ドメインが認識"]
  D --> E["経路1:GRB2-SOS-Ras-MAPK<br>(増殖・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transcriptional activity'>転写活性</span>化)"]
  D --> F["経路2:PI3キナーゼ-PDK1-PKB<br>(BADリン酸化→アポトーシス抑制)"]
  • 経路1(GRB2経路): GRB2(growth factor receptor-bound protein 2)がSOS(Ras-GEF)を動員→RasのGDP→GTP交換→Raf-1→MEK→MAPK(mitogen-activated protein kinase, 分裂促進因子活性化蛋白キナーゼ)が核内で転写因子をリン酸化し転写を促進。
  • 経路2(PI3 phosphoinositide 3-kinase pathway): PIP₂→PIP₃、PHドメインを持つ蛋白(PDK1, PKB/Akt)が認識、活性化PKBがBADをリン酸化してアポトーシス抑制蛋白を解放→アポトーシス抑制(がん化=の機序に関連)。

グアニル酸シクラーゼ受容体

  • GTPからcGMP(cyclic GMP)を合成(ACがATPからcAMPを作るのと対応)。例:心臓のANP受容体。cGMP→PKG(protein kinase G)→血管拡張など。
  • :Ca²⁺-がNO合成酵素を活性化→NOがを刺激しcGMP産生。

💡 )はcGMPを阻害する。 通常cGMPを分解するPDEを止めることでcGMPが蓄積し、血管拡張効果が持続する。

セリン/スレオニンキナーゼ受容体

TGF-β受容体が代表例(線維化の形成に関与)。→II型サブユニットのSer/Thrがリン酸化→活性化→標的蛋白のリン酸化。

4. 酵素活性は持たないが酵素と共役する受容体(JAK-STAT経路)

・プロラクチン・サイトカインなどのリガンドが対象。受容体自体にチロシンキナーゼ活性はないが、Janusキナーゼと会合している。

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ligand binding'>リガンド結合</span>(GH, プロラクチンなど)"] --> B["JAKリン酸化→受容体<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dimerization'>二量体化</span>"]
  B --> C["JAKが受容体をリン酸化"]
  C --> D["受容体がSTATをリン酸化"]
  D --> E["STAT<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dimerization'>二量体化</span>→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nuclear translocation'>核内移行</span>→遺伝子発現制御"]

5. 細胞内受容体

疎水性(脂溶性)リガンド用:ステロイド(テストステロン・エストラジオール・プロゲステロン)、コルチゾール、アルドステロン、甲状腺ホルモン、ビタミンD3(vitamin D3)、

機構: ①細胞質のHsp90(heat shock protein 90)に結合した状態→②が露出→③→④

その他、合成(ER→Golgi→)、GLUT4、栄養素受容体の(internalization、LDL、)も細胞内輸送・受容体機構の一部として扱われる。

細胞間コミュニケーションの様式

様式 特徴
しイオンなど小分子・電気的信号を直接伝達。心筋・平滑筋の興奮波伝播に重要
分泌した細胞自身の受容体で受け取る
近傍の異なる細胞へ局所ホルモンを送る
から神経伝達物質がを渡る
血流を介して遠隔のに到達
。細胞同士の直接接触が必要

細胞外シグナルに応答して細胞内で産生/放出される分子。例:環状ヌクレオチド(cyclic nucleotide:cAMP, cGMP)、脂質由来分子(lipid-derived molecule:IP₃, DAG)。

まとめ

  • 受容体は5種類:GPCR、(RTK・・Ser/Thrキナーゼ)、
  • GPCRは4系統:Gs(cAMP↑)、Gi/o(cAMP↓)、Gq(IP₃/DAG/Ca²⁺↑)、G12/13(Rho経路)。
  • RTKはGRB2-Ras-MAPK経路(増殖)とPI3K-PKB経路(アポトーシス抑制)の2大下流経路を持つ。
  • JAK-STAT経路はサイトカイン・GH・プロラクチンのシグナル伝達に特有。
  • 細胞間シグナルはの6様式に分類される。