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抗ウイルス薬感受性試験
Antiviral susceptibility testing
- 臓器系
- 感染症
- 科目
- PharmacologyDermatology
- トピック
- 薬理学 C5:抗ヘルペス・抗水痘帯状疱疹・抗サイトメガロウイルス薬・抗インフルエンザ薬・抗コロナその他ウイルス薬皮膚科 2-03:性器ヘルペスウイルス感染症
🧠 全体像:抗ウイルス薬感受性試験 antiviral susceptibility testing 抗ウイルス薬感受性試験(antiviral susceptibility testing) antiviral susceptibility testing(抗ウイルス薬感受性試験) は、分離したウイルス株に薬剤を直接作用 direct action 直接作用(direct action) direct action(直接作用) させて増殖を抑えられるかどうかを見る、表現型そのものを見る検査である。核酸増幅検査nucleic acid amplification test, NAAT 核酸増幅検査(nucleic acid amplification test, NAAT)nucleic acid amplification test, NAAT(核酸増幅検査) (PCRPCR, polymerase chain reaction)は「ウイルスの核酸がそこにあるか」しか教えてくれず、死んだウイルスの核酸も生きたウイルスの核酸も区別なく検出するため、耐性かどうかを直接確かめる材料にならない。一方ウイルス培養viral cultureウイルス培養(viral culture)viral culture(ウイルス培養)で得られる分離株 isolate 分離株(isolate) isolate(分離株) は生きた病原体そのものなので、薬剤に暴露して増殖抑制の有無を見る——という発想がそのまま成立する。感受性試験susceptibility test 感受性試験(susceptibility test)susceptibility test(感受性試験) がウイルス培養 viral culture ウイルス培養(viral culture) viral culture(ウイルス培養) の上に成り立つ検査だという構造そのものが、この検査の限界を決めている。
何を測っているか
分離したウイルス株を培養細胞 cultured cell 培養細胞(cultured cell) cultured cell(培養細胞) に接種し、抗ウイルス薬を段階的な濃度で加えて、薬剤なしの対照と比べてどこまで増殖(細胞変性効果cytopathic effect細胞変性効果(cytopathic effect)cytopathic effect(細胞変性効果)・プラーク形成plaque formation プラーク形成(plaque formation)plaque formation(プラーク形成) など)が抑えられるかを見る。増殖を50%抑制する薬剤濃度(IC50/EC50)を求め、あらかじめ決められたカットオフ値 cutoff (value) カットオフ値(cutoff (value)) cutoff (value)(カットオフ値) と比較して感受性/耐性を判定する——プラーク減少アッセイが代表的な手法である。
- 検査対象はあくまで分離株isolate分離株(isolate)isolate(分離株)であり、検体そのもの(スワブswabスワブ(swab)swab(スワブ)・体液・組織)を直接この検査にかけることはできない。分離株isolate 分離株(isolate)isolate(分離株) を得るにはウイルス培養viral cultureウイルス培養(viral culture)viral culture(ウイルス培養)がまず成立する必要がある1
- 単純ヘルペスウイルスherpes simplex virus, HSV 単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus, HSV)herpes simplex virus, HSV(単純ヘルペスウイルス) (HSVHSV, herpes simplex virus)ではアシクロビル、サイトメガロウイルスcytomegalovirus, CMV サイトメガロウイルス(cytomegalovirus, CMV)cytomegalovirus, CMV(サイトメガロウイルス) (CMVCMV, cytomegalovirus)ではガンシクロビル ganciclovir ガンシクロビル(ganciclovir) ganciclovir(ガンシクロビル) への感受性が代表的な対象である。両薬剤ともウイルス側の酵素によるリン酸化を経て初めて活性化するプロドラッグ prodrugsプロドラッグ(prodrugs) prodrugs(プロドラッグ)であり、その活性化酵素の変異(HSVのチミジンキナーゼ thymidine kinaseチミジンキナーゼ(thymidine kinase) thymidine kinase(チミジンキナーゼ)、CMVのUL97キナーゼ UL97 kinaseUL97キナーゼ(UL97 kinase) UL97 kinase(UL97キナーゼ))が主な耐性機序 resistance mechanism 耐性機序(resistance mechanism) resistance mechanism(耐性機序) になる
基準値と単位
定性〜半定量的な判定であり、数値そのものの基準範囲 reference range 基準範囲(reference range) reference range(基準範囲) というより「あらかじめ設定されたカットオフ cut-off カットオフ(cut-off) cut-off(カットオフ) 濃度をIC50が超えるか」で感受性/耐性を二値判定する。単純ヘルペスウイルスherpes simplex virus, HSV 単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus, HSV)herpes simplex virus, HSV(単純ヘルペスウイルス) では、分離株isolate 分離株(isolate)isolate(分離株) の増殖抑制にアシクロビル1〜3 mg/L超の濃度を要する場合を耐性と確認する2。カットオフ値cutoff (value) カットオフ値(cutoff (value))cutoff (value)(カットオフ値) は施設・アッセイ間で完全には統一されていない。
感受性/耐性の判定
⭐ 感受性=治療が効くと期待できる、耐性=同じ薬剤では増殖を抑えられない、という表現型そのものを直接見ている。 これは薬剤耐性 antimicrobial resistance, AMR 薬剤耐性(antimicrobial resistance, AMR) antimicrobial resistance, AMR(薬剤耐性) を疑う根拠として最も直接的な情報だが、同時に最も手に入りにくい情報でもある——分離株 isolate 分離株(isolate) isolate(分離株) を得るところからこの検査は始まるため。
| 何が分かるか | 内容 |
|---|---|
| 感受性 | 分離株isolate 分離株(isolate)isolate(分離株) はその濃度域の薬剤で増殖が抑制される。臨床反応が乏しいのに感受性という結果が出た場合は、耐性以外の原因(免疫抑制の程度、服薬状況、薬物動態pharmacokinetic薬物動態(pharmacokinetic)pharmacokinetic(薬物動態))を再検討する材料になる |
| 耐性 | 分離株isolate 分離株(isolate)isolate(分離株) はその薬剤で増殖を抑制できない。単純ヘルペスウイルスherpes simplex virus, HSV 単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus, HSV)herpes simplex virus, HSV(単純ヘルペスウイルス) ならアシクロビル耐性、サイトメガロウイルスcytomegalovirus, CMV サイトメガロウイルス(cytomegalovirus, CMV)cytomegalovirus, CMV(サイトメガロウイルス) ならガンシクロビル ganciclovir ガンシクロビル(ganciclovir) ganciclovir(ガンシクロビル) 耐性が代表例で、フォスカルネットfoscarnetフォスカルネット(foscarnet)foscarnet(フォスカルネット)など活性化酵素に依存しない薬剤への変更を検討する根拠になる |
代替アプローチとして遺伝子型検査genotyping遺伝子型検査(genotyping)genotyping(遺伝子型検査)がある。分離株isolate 分離株(isolate)isolate(分離株) を培養で増やす代わりに、検体または分離株 isolate 分離株(isolate) isolate(分離株) から直接、既知の耐性変異 resistance mutation 耐性変異(resistance mutation) resistance mutation(耐性変異) (HSVのチミジンキナーゼ thymidine kinase チミジンキナーゼ(thymidine kinase) thymidine kinase(チミジンキナーゼ) 遺伝子、CMVのUL97・UL54遺伝子など)をシークエンス sequence シークエンス(sequence) sequence(シークエンス) で検出する方法である。培養を経ないため結果が速く、培養で増えにくい株でも判定できる利点がある一方、臨床的意義が確立していない変異は解釈が難しい3。
flowchart TD
A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antimicrobial resistance, AMR'>薬剤耐性</span>を疑う<br>(治療を継続しても反応が乏しい)"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='isolate'>分離株</span>が得られるか<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='viral culture'>ウイルス培養</span>が成立するか)"}
B -->|"得られる"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='phenotypic test'>表現型検査</span><br>(感受性/耐性を直接判定)"]
B -->|"得られない・培養が使えない"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='genotyping'>遺伝子型検査</span><br>(既知の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='resistance mutation'>耐性変異</span>を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sequence'>シークエンス</span>)"]
C --> E["結果まで数日〜数週間"]
D --> F["結果は比較的早いが<br>未知変異は解釈が難しい"]
E --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='susceptibility test'>感受性試験</span>が実施できない・<br>間に合わない場面が多い"]
F --> G
G --> H["実際には臨床反応で<br>耐性を判断することが多い"]
⚠️ 測定上の注意
- 感受性試験susceptibility test 感受性試験(susceptibility test)susceptibility test(感受性試験) の実施可能性そのものが限られる。 ウイルス培養viral cultureウイルス培養(viral culture)viral culture(ウイルス培養)自体が臨床現場で利用できなくなりつつあり、分離株isolate 分離株(isolate)isolate(分離株) を必要とするこの検査も同じ制約 Limitations 制約(Limitations) Limitations(制約) を受ける1。結果が出るまで数週間かかることも多く、急性期の治療方針 treatment strategy 治療方針(treatment strategy) treatment strategy(治療方針) 決定には間に合わないことが多い
- PCR陽性は耐性の証拠にならない。 核酸増幅検査nucleic acid amplification test, NAAT 核酸増幅検査(nucleic acid amplification test, NAAT)nucleic acid amplification test, NAAT(核酸増幅検査) は死んだウイルスの核酸も生きたウイルスの核酸も区別なく検出するため、検体がPCR陽性であっても、それだけでは薬剤に感受性か耐性かは分からない。感受性/耐性を直接確かめるには、生きた病原体そのものである分離株 isolate 分離株(isolate) isolate(分離株) が要る
- 遺伝子型検査genotyping 遺伝子型検査(genotyping)genotyping(遺伝子型検査) は既知の変異しか拾えない。 臨床的意義が確立していない変異(多型か真の耐性変異 resistance mutation 耐性変異(resistance mutation) resistance mutation(耐性変異) か不明な変異)が見つかった場合、解釈には専門家 expert 専門家(expert) expert(専門家) への相談が要る
- 表現型検査phenotypic test 表現型検査(phenotypic test)phenotypic test(表現型検査) だけでは耐性を見逃しうる。 表現型検査phenotypic test 表現型検査(phenotypic test)phenotypic test(表現型検査) で感受性と判定された株の中に、耐性遺伝子変異を保有する例が報告されており、両者は完全には一致しない3
経時変化とモニタリング
単回の判定で完結する検査であり、経時的serial 経時的(serial)serial(経時的) な数値推移という概念は基本的に持たない。実地でどう使われているかを見る方が実用的である。
- 単純ヘルペスウイルスherpes simplex virus, HSV単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus, HSV)herpes simplex virus, HSV(単純ヘルペスウイルス)・サイトメガロウイルスcytomegalovirus, CMV サイトメガロウイルス(cytomegalovirus, CMV)cytomegalovirus, CMV(サイトメガロウイルス) とも、感受性試験susceptibility test 感受性試験(susceptibility test)susceptibility test(感受性試験) の利用可能性は限定的で、多くの施設では日常的 routine 日常的(routine) routine(日常的) に実施されていない。そのため、耐性が疑われる場面でも、感受性試験susceptibility test 感受性試験(susceptibility test)susceptibility test(感受性試験) の結果を待たずに臨床反応(治療を継続しても病変・ウイルス量が改善しないか)で耐性を判断し、経験的に薬剤を変更する対応が実際には多い2
- 遺伝子型検査genotyping 遺伝子型検査(genotyping)genotyping(遺伝子型検査) への移行が進んでいる。 結果が速く分離株 isolate 分離株(isolate) isolate(分離株) を必要としないため、表現型検査phenotypic test 表現型検査(phenotypic test)phenotypic test(表現型検査) が使いにくい状況を補う位置づけで臨床導入が広がっている1。ただし表現型検査 phenotypic test 表現型検査(phenotypic test) phenotypic test(表現型検査) と遺伝子型検査 genotyping 遺伝子型検査(genotyping) genotyping(遺伝子型検査) の一致率 concordance rate 一致率(concordance rate) concordance rate(一致率) は完全ではなく、両者を組み合わせたほうが単独より正確に耐性を検出できるとされる3
- サイトメガロウイルスcytomegalovirus, CMV サイトメガロウイルス(cytomegalovirus, CMV)cytomegalovirus, CMV(サイトメガロウイルス) の遺伝子型検査 genotyping 遺伝子型検査(genotyping) genotyping(遺伝子型検査) は、少なくともUL97(ガンシクロビルganciclovirガンシクロビル(ganciclovir)ganciclovir(ガンシクロビル)・マリバビルmaribavir マリバビル(maribavir)maribavir(マリバビル) 耐性)とUL54(ガンシクロビルganciclovirガンシクロビル(ganciclovir)ganciclovir(ガンシクロビル)・フォスカルネットfoscarnetフォスカルネット(foscarnet)foscarnet(フォスカルネット)・シドフォビルcidofovir シドフォビル(cidofovir)cidofovir(シドフォビル) 耐性)の領域を対象とし、近年はNGSでこれらを一括して解析する運用が広がっている1
まとめ
- 抗ウイルス薬感受性試験antiviral susceptibility testing 抗ウイルス薬感受性試験(antiviral susceptibility testing)antiviral susceptibility testing(抗ウイルス薬感受性試験) は、分離したウイルス株に薬剤を作用させ増殖抑制の有無を直接見る表現型検査 phenotypic test 表現型検査(phenotypic test) phenotypic test(表現型検査) で、ウイルス培養viral cultureウイルス培養(viral culture)viral culture(ウイルス培養)で得られる分離株 isolate 分離株(isolate) isolate(分離株) が前提になる
- PCRは死んだウイルスの核酸も検出するため耐性試験の材料にならない。生きた病原体そのものである分離株 isolate 分離株(isolate) isolate(分離株) だけが表現型検査 phenotypic test 表現型検査(phenotypic test) phenotypic test(表現型検査) に使える
- 単純ヘルペスウイルスherpes simplex virus, HSV 単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus, HSV)herpes simplex virus, HSV(単純ヘルペスウイルス) (アシクロビル耐性)・サイトメガロウイルスcytomegalovirus, CMV サイトメガロウイルス(cytomegalovirus, CMV)cytomegalovirus, CMV(サイトメガロウイルス) (ガンシクロビルganciclovir ガンシクロビル(ganciclovir)ganciclovir(ガンシクロビル) 耐性)が代表例。判定はIC50とカットオフ値 cutoff (value) カットオフ値(cutoff (value)) cutoff (value)(カットオフ値) の比較で行う
- 代替アプローチとして遺伝子型検査 genotyping 遺伝子型検査(genotyping) genotyping(遺伝子型検査) (既知の耐性変異 resistance mutation 耐性変異(resistance mutation) resistance mutation(耐性変異) のシークエンス sequenceシークエンス(sequence) sequence(シークエンス))があり、培養不要・結果が速いが未知変異の解釈が難しい
- ⚠️ ウイルス培養viral culture ウイルス培養(viral culture)viral culture(ウイルス培養) 自体の利用可能性低 PE unlikely 可能性低(PE unlikely) PE unlikely(可能性低) 下、PCR陽性が耐性の証拠にならないこと、遺伝子型検査genotyping 遺伝子型検査(genotyping)genotyping(遺伝子型検査) は既知変異しか拾えないこと、表現型/遺伝子型が完全には一致しないことに注意
- 感受性試験susceptibility test 感受性試験(susceptibility test)susceptibility test(感受性試験) の実施可能性が限られるため、実際には臨床反応で耐性を判断することが多い
出典
- 2.2024 European guidelines for the management of genital herpes(International Union against Sexually Transmitted Infections (IUSTI) Europe / European Academy of Dermatology and Venereology (EADV) / Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology・2024)HSVの抗ウイルス薬感受性試験は利用可能性が限られており、そのため臨床反応(治療への反応)が耐性判断の指針として実際にはよく使われること、アシクロビル耐性は分離株の増殖抑制にアシクロビル1〜3 mg/L超の濃度を要する場合に確認されることを確認した。閲覧 2026-08-10
- 3.Genotypic testing improves detection of antiviral resistance in human herpes simplex virus(Journal of Clinical Virology(Glasgow HL, et al.)・2023)表現型検査(プラーク減少法)と遺伝子型検査は臨床分離株での一致率が完全ではなく(35%程度)、表現型検査で感受性と判定された株の中に耐性遺伝子変異を保有する例があったこと、表現型と遺伝子型を組み合わせた方が表現型単独より正確かつ迅速に耐性を診断できると結論づけていることを確認した。閲覧 2026-08-10