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Lab values · Published

塩素

Chloride

別名
クロール血清クロールCl
臓器系
腎・泌尿器全身
科目
Pediatrics
トピック
小児科 2-29:代謝性・呼吸性アルカローシス
関連疾患
肥厚性幽門狭窄症

🧠 全体像:塩素(クロール、Cl⁻)はで最も量の多いで、ナトリウムと対になって動き、浸透圧・電気的中性・を支える。単独の異常として読むのではなく、ナトリウムとの3点セットで読む——同じCl⁻の変化でも、Naと並行して動けば水分バランスの問題、Naと乖離して動けば酸塩基の問題を疑う入り口になる。

何を測っているか

Cl⁻は経口摂取したNaClとして小腸で吸収され、の主要なとしてNa⁺のを務める。腎ではNa⁺再吸収と連動して・・で再吸収され、胃ではがH⁺とともにCl⁻を胃酸(HCl)として分泌する。この「胃酸としてのCl⁻」という経路があるために、嘔吐で酸を失うと同時にCl⁻を失うという結びつきが生まれる。

flowchart TD
    A["経口摂取のNaCl"] --> B["小腸で吸収"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='extracellular fluid, ECF'>細胞外液</span>のCl⁻(Naと対)"]
    C --> D["腎でNaと連動して再吸収"]
    C --> E["胃<span class='jp-term jp-term-diagram' title='parietal cell'>壁細胞</span>がHClとして分泌"]
    E --> F["嘔吐・胃管吸引で喪失"]
    D --> G["利尿薬・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tubular'>尿細管性</span>疾患で喪失"]
    F --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypochloremic metabolic alkalosis'>低Cl性代謝性アルカローシス</span>"]
    G --> H

基準値と単位

おおむね 96〜106 mmol/L を目安とするが1、この範囲は測定法・施設によって多少幅があり(97〜107 mmol/Lとする総説もある)恣意的に定められた区分にすぎない2。必ずNa⁺・と同時に読む。 Cl⁻単独の絶対値より、Naとの並行性(水分バランス)とHCO₃との(酸塩基バランス)の方が解釈上重要である。

高値の意味

機序 代表的状況 次に確認すること
医原性の (0.9% NaCl)の大量輸液 輸液量・種類、balanced crystalloidへの変更の要否
腎からの排泄障害 、腎不全 、K、
純粋な水分喪失 脱水、 Na、浸透圧、
() 中毒、 が著明に低い・負値なら疑う3

高クロール血症は強イオン差(SID)の低下を介して低下・遊離H⁺増加をもたらし、代謝性アシドーシスと結びつきやすい2。領域の集計では、高クロール血症は死亡リスクの上昇(約28%)とリスクの上昇に関連する4。

低値の意味

機序 代表的状況 次に確認すること
消化管からのHCl喪失 嘔吐、による吸引 K、、脱水の程度
腎からの喪失 ・系・、Bartter/ 尿Cl、
相対的 低クロール輸液によるの希釈拡張 輸液の種類と量

は消化管性のの代表例である。反復する嘔吐でH⁺・Cl⁻を同時に喪失し、がを介した腎でのH⁺・K⁺排泄を促すため、低Cl性・低K性という組み合わせを来す。この病態では、輸液で脱水とCl⁻を補正してから手術に進むのが原則になる。

測定上の注意

⚠️ が著明に低い、または負値のときはを疑う。 法では、少数のイオンが塩素より強く反応し、イオン1個が複数個の塩素イオンとしてされるため偽高クロール血症を来す。中毒の症例ではが-65まで低下した報告がある3。同様の負のはでも報告されており、を用いる測定系はこの干渉を受けにくい。

  • Cl⁻単独で酸塩基異常を診断しない。Na・HCO₃・と同時に評価する
  • の大量輸液では医原性高クロール血症を来しうるため、輸液量・種類を輸液記録で確認する

経時変化とモニタリング

での大量輸液中や、のような消化管性喪失を来す病態の術前管理では、Cl⁻を電解質パネルの一部として反復測定し、補正の進み具合を追う。単回値ではなく、Na・K・と合わせた推移で輸液方針を調整する。

まとめ

  • Cl⁻はの主要なで、Naと対で動き浸透圧・を支える
  • はおおむね96〜106 mmol/L程度だが施設差があり、単独ではなくNa・と同時に読む
  • 高値はの過剰投与・腎性排泄障害・水分喪失、低値は消化管性喪失(嘔吐)・腎性喪失(利尿薬)が代表的機序
  • は低Cl性・低K性の代表例
  • ⚠️ が著明に低い・負値のときは・による(偽高クロール血症)を疑う

出典

  1. 1.A Comprehensive Review of Chloride Management in Critically Ill Patients(Cureus(Sagar N, Lohiya S)・2024)血清塩素の生理的基準値がおおむね96〜106 mmol/Lとされ細胞外液の主要な陰イオンとしてナトリウムと共動し浸透圧・電気的中性・酸塩基平衡の調節に関わること、低クロール血症は嘔吐・下痢など消化管液の喪失や塩酸喪失に伴う代謝性アルカローシスで、高クロール血症は生理食塩水の大量投与・腎機能障害・代謝性アシドーシスに伴い生じることを確認した閲覧 2026-09-05
  2. 2.Clinical physiology aspects of chloremia in fluid therapy: a systematic review(Perioperative Medicine・2020)血清Cl⁻の生理的範囲が97〜107 mmol/Lと恣意的に設定されていること、低クロール血症の機序を消化管性喪失(嘔吐・胃内容吸引)・腎性喪失(腎不全、ループ利尿薬・サイアザイド系・アセタゾラミド)・相対的低クロール血症(低クロール輸液による細胞外液拡張)に分類できること、高クロール血症は生理食塩水による輸液蘇生後に重症患者でしばしば生じ尿細管性アシドーシス・腎不全・水分喪失でも起こること、強イオン差(SID)の低下を介して重炭酸低下・遊離H⁺増加・アシドーシスをもたらすことを確認した閲覧 2026-09-05
  3. 3.Unexplained Bromide Toxicity Presenting as Hyperchloremia and a Negative Anion Gap(Cureus(Rayamajhi S, Sharma S, Iftikhar H)・2023)イオン選択電極法による血清塩素測定では、少数の臭化物イオンが塩素より強く反応し臭化物イオン1個が複数個の塩素イオンとして測定されることで偽高クロール血症を来し、アニオンギャップが著明な負値(本症例で-65)になったこと、比色法を用いる塩化物測定法はこの干渉を受けにくいことを確認した閲覧 2026-09-05
  4. 4.Dysregulated serum chloride and clinical outcomes in critically ill adults: A systematic review and meta-analysis(PLOS ONE・2025)34研究・175,021例を統合したメタ解析で、集中治療領域における高クロール血症の集計有病率が34%(95%CI 26〜43%)・低クロール血症が14%(95%CI 1〜28%)であり、高クロール血症は死亡リスク28%上昇(OR 1.28)、低クロール血症は死亡リスク55%上昇(OR 1.55)と関連したこと、高クロール血症は急性腎障害リスクの上昇とも関連したことを確認した閲覧 2026-09-05