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Lab values · Published

遊離T3・遊離T4

Free T3 and free T4

別名
FT3FT4遊離トリヨードサイロニン遊離サイロキシン
臓器系
内分泌・代謝
科目
Internal Medicine
トピック
内科学 E-02:甲状腺疾患の症状・診断・治療
監視対象薬
リオチロニン

🧠 全体像:・遊離T4は「で異常を検知したあとに、どこがどう動いているかを見る」検査である。TSHがの感度の高い入口だとすれば、・遊離T4はその軸のうち末梢でどちらのホルモンがどれだけ動いているかを教える。この2つを併せて見る意味は主に2つに絞られる——①が「合わない」ときの手がかり(中枢性疾患、症候群、)、②T3だけが動く病態(T3単独中毒症、症候群の低T3、の特徴的パターン)を拾うことである。との組合せパターンのはTSHのノートに委ね、ここでは・遊離T4という測定値自体の性質と、T3・T4が乖離する病態に集中する。

何を測っているか

甲状腺は主にT4を分泌し、末梢組織(肝・腎・骨格筋など)で1型・2型脱ヨウ素酵素がT4をより活性の高いT3へ変換する。血中のT3・T4の大部分は結合グロブリン(TBG)・・アルブミンに結合しており、遊離型(結合していない分画)だけが細胞内に取り込まれ作用する。遊離T4は甲状腺自体の分泌能を、は末梢での変換を含めた「実際に組織へ届く活性型ホルモン量」をより直接に反映するという役割の違いがある。

基準値と単位

は測定法・年齢・妊娠週数で異なり、報告書の測定法固有範囲を優先する。⚠️ ・は(TBG等)の変化(妊娠、、など)で見かけ上変動するため、を優先して評価する——ただしのにも別の限界がある(後述)。

高値の意味

パターン 代表的な状況
遊離T4・ともに高値 (、、)
のみ高値(遊離T4正常) T3単独中毒症——早期、の一部
高値・逆T3低値・/遊離T4低値 に特徴的なパターン(後述)

⭐ 低値で遊離T4が正常でも、T3単独中毒症を否定するにはの確認が要る。 T3単独上昇は早期ので先行して起こりうるため、・遊離T4の組合せだけで「異常なし」と判断しない。

低値の意味

パターン 代表的な状況
遊離T4低値・低値・高値 の像
遊離T4低値・低値〜 中枢性(下垂体・)甲状腺機能低下症
のみ低値(遊離T4・は低値〜正常) ⭐ 症候群()

⭐ 症候群は「T3から先に落ちる」という進行パターンを持つ。 重症疾患では末梢の1型脱ヨウ素酵素活性が低下し中枢の2型・3型脱ヨウ素酵素活性が上昇することでT4→T3変換が低下し逆T3が上昇する——最も一般的なパターンは・低値でT4・は低値〜正常にとどまるが、重症度が上がるとT4も低下し(low T4 syndrome)、さらに進行するとも低下しうる1。⚠️ が2 μg/dL未満まで低下すると死亡確率が80%を超えるという関連が報告されており、・遊離T4の低下は重症度の指標として読む。 は一般に推奨されず、基礎疾患の治療が主軸になる1。

⭐ は、とは逆にが高値になる点で対照的なパターンを示す。 MCT8はT3の細胞内取り込みに関わる輸送体で、これが機能しないと脳はT3欠乏に陥る一方、末梢組織ではで取り込まれたT3が過剰になる。男性患者では血清高値・逆T3低値・/遊離T4低値・/T4比0.75超・正常〜軽度上昇という組み合わせがみられる。この比が正常な他の疾患(GJC2関連Pelizaeus-Merzbacher様疾患、MECP2重複症候群、PLP1遺伝子によるPelizaeus-Merzbacher病)とは鑑別できるが、THRA遺伝子による非甲状腺腫性は/T4比の上昇をと共有するため、比だけでは鑑別できない——への反応性・正常な所見・より軽症な知的障害の程度で見分ける2。💡 が正常〜軽度上昇にとどまる点が重要である。 通常の甲状腺機能低下症ならT4低値に対しが著明に上昇するはずだが、下垂体・視床下部のフィードバックが末梢の高T3状態に反応するため、は大きくは動かない。

⚠️ 測定上の注意

  • は異常・自己抗体で見かけ上の異常値を示しうる。 抗T4・抗T3自己抗体(特に患者)は遊離T4・の見かけ上の高値を引き起こすことがあり、家族性アルブミン異常高血症(FDH)など異常は遊離T4測定でartifactualな結果を示しうる3。
  • 測定プフォームに固有の干渉もある。 ルテニウム標識を用いる測定系では抗ルテニウム抗体が、では、ではを引き起こしうる3。摂取による干渉はTSHのノートで扱う内容と共通する。
  • と臨床像・が合わないときは、まれな病態を探す前にを確認する——別法での再測定、平衡透析法による確認を検討する。

経時変化とモニタリング

の調整はTSHで行うため、遊離T4・をの主指標にはしない。ではが調整の指標にならないため、遊離T4を用いて経過を追う。 症候群では、・遊離T4は基礎疾患からの回復とともに正常化するのが通常で、そのものの治療対象にはしない。では、/T4比を治療反応の評価に用いる(詳細はを参照)。

まとめ

  • 遊離T4は甲状腺自体の分泌能、は末梢での活性化を含めた「実際に組織に届く活性型ホルモン量」を反映する。
  • 低値・遊離T4正常でもT3単独中毒症の可能性があり、の確認を要する。
  • 症候群は重症疾患で末梢のT4→T3変換が低下する病態で、から先に低下し、重症度が上がるとT4・も低下しうる。は一般に不要。
  • はと対照的に高値・逆T3低値・/T4比0.75超という特徴的パターンを示し、は正常〜軽度上昇にとどまる。
  • は自己抗体・異常・プフォーム固有の干渉で見かけ上の異常値を示しうるため、臨床像と合わなければを先に疑う。

出典

  1. 1.Euthyroid Sick Syndrome(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2022)2022年12月8日改訂版を確認した。非甲状腺疾患症候群(低T3症候群、euthyroid sick syndrome)では末梢の1型脱ヨウ素酵素活性が低下し中枢の2型・3型脱ヨウ素酵素活性が上昇することでT4からT3への変換が低下し逆T3が上昇すること、最も一般的なホルモンパターンが総T3・遊離T3低値かつT4・TSHが低値〜正常であること、重症度が上がるとlow T4 syndrome・low T3/T4 syndromeへと悪化しうること、総T4値が2 μg/dL未満に低下すると死亡確率が80%を超えるという関連が報告されていること、甲状腺ホルモン補充は一般に不要で基礎疾患の治療が主軸であることを確認した。閲覧 2026-09-07
  2. 2.Allan-Herndon-Dudley Syndrome(GeneReviews (NCBI Bookshelf)(Sarret C, Oliver Petit I, Tonduti D)・2020)既存id・claimを再利用(diseases/mct8-deficiency.mdの出典と同一)。2020年1月16日改訂版を確認した。MCT8欠損症の男性患者に特徴的な甲状腺機能検査所見として血清遊離T3高値・逆T3低値・総T4/遊離T4低値・遊離T3/T4比0.75超・TSH正常〜軽度上昇を示すこと、GJC2関連Pelizaeus-Merzbacher様疾患・MECP2重複症候群・PLP1遺伝子によるPelizaeus-Merzbacher病は甲状腺機能検査そのものが正常である点で区別できること、一方THRA遺伝子による非甲状腺腫性先天性甲状腺機能低下症は遊離T3/T4比の上昇をMCT8欠損症と共有する重複所見であり、レボチロキシン治療への反応性・正常なMRI所見・より軽症な知的障害の程度で区別されることを確認した。閲覧 2026-09-07
  3. 3.Hormone Immunoassay Interference: A 2021 Update(Annals of Laboratory Medicine・2022)全文で確認した。抗T4・抗T3自己抗体の存在が遊離T4・遊離T3の見かけ上の高値を引き起こしうること(特に自己免疫性甲状腺疾患患者)、家族性アルブミン異常高サイロキシン血症(FDH)などアルブミン結合異常が遊離T4測定でartifactualな結果を示しうること、ルテニウム標識を用いる測定系では抗ルテニウム抗体が競合法で偽高値・サンドイッチ法で偽低値を引き起こしうることを確認した。閲覧 2026-09-07