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Drug Atlas · B17 Thyroid drugs / 甲状腺薬

リオチロニン

liothyronine

分類
Thyroid drugs / 甲状腺薬
商品名(日本)
チロナミン
商品名(EU)
Cytomel
科目
Pharmacology
トピック
B17: Thyroid and antithyroid drugs. Pituitary hormones. Hypothalamic hormones, hormonanalogs and antagonists
承認適応
甲状腺機能低下症
禁忌疾患
原発性副腎不全
副作用
動悸振戦
監視検査値
遊離T3・遊離T4

🧠 全体像:は(合成T4)とは違い、活性型ホルモンであるT3そのものを直接補充する薬である。生体はふだんT4を末梢で必要量だけT3に変換してしているが、はこの調整機構を経由せず直接T3濃度を動かすため、効果発現が速い代わりに血中濃度が不安定になりやすい。この「速いが荒い」という性質のため、日常の維持療法にはほとんど使われず、のような緊急時にT4単独を補う目的で慎重に用いる、という位置づけになる。

薬効群の中での位置づけ

薬 補充するホルモン 効果発現 位置づけ
T4(生体が必要に応じてT3に変換) 緩徐(半減期約7日) 甲状腺機能低下症の標準治療・第一選択
T3そのもの 速い(末梢変換を経由しない) でT4に併用、または特殊な検査・状況で短期使用

💡 なぜ維持療法にT3を使わないか。 T3はT4より半減期が短く血中濃度の変動が大きいため、な補充にはT4の「緩やかで安定した」効き方の方が向いている。が選ばれるのは、速さそのものが必要な場面(の緊急治療など)に限られる。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='liothyronine, T3'>リオチロニン</span>(T3そのもの)を投与"] --> B["末梢での<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deiodinase'>脱ヨード酵素</span>による<br>T4→T3変換を経由せず、直接T3として作用"]
    B --> C["核内の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thyroid hormone receptor, TR'>甲状腺ホルモン受容体</span>(TR)に結合"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='target gene'>標的遺伝子</span>の転写を制御"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='basal metabolic rate (BMR)'>基礎代謝率</span>↑・熱産生↑・心拍数↑など<br>T4より速く<span class='jp-term jp-term-diagram' title='systemic effect'>全身作用</span>が現れる"]

適応

日本の電子添文(チロナミン、2024年2月改訂)による。

領域 使いどころ
内分泌 甲状腺機能低下症(原発性及び下垂体性)、、、、甲状腺腫1

⚠️ 日本の添付文書上の適応は「」を含むが、これは慢性甲状腺機能低下症の重症像を指す効能名であり、緊急疾患としての「」への静注療法を明記したものではない。 チロナミンは経口のみで、注射剤・静注用製剤の記載は電子添文に無い1。

⭐ では、国際的にはT4単独ではなくT3併用が検討される。 ()は、重症甲状腺機能低下症・では末梢でのT4→T3変換が障害されるため、高用量静注(初回200〜400μg、重症例では300〜500μgまで)に加え、を初回5〜20μg・その後8時間ごとに2.5〜10μgで併用することを推奨している(高齢者・心血管疾患患者はより低用量)2。グルココルチコイド(など)は投与に先行または同時に開始する——副腎皮質の反応性低下と甲状腺ホルモンによるコルチゾール代謝促進からを誘発しうるためである2。

用法・用量

通常の甲状腺機能低下症治療(日本の電子添文):ナトリウムとして、通常成人初回量は1日5〜25μgとし、1〜2週間間隔で少しずつ増量する。は1日25〜75μg1。⚠️ 心・血管系障害(狭心症・・など)がある患者では、少量から開始し通常より長期間かけて増量する1。

での併用(国際的な報告):初回5〜20μg、その後8時間ごとに2.5〜10μg。高齢者・心血管疾患患者ではより低用量とし、過剰投与を避けながら臨床的改善が得られ患者が安定するまで継続する2。実際の用量・(静注用製剤の入手可否を含む)は施設のプロトコル・入手可能な製剤で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌:な心筋梗塞のある患者(の亢進により心負荷が増大し、病態が悪化することがある)1
  • ⚠️ (を含む)の患者には、の補充を先行させる。 と同じ理由(甲状腺ホルモンがコルチゾール代謝クリアランスを促進しを誘発しうるため)である1
  • 狭心症・・などの心・血管系障害患者では少量から開始し長期間かけて増量する1
  • ワルファリンの作用を増強しうる。交感神経刺激剤はリスクを増加させ、・血糖降下剤とは濃度・作用の変化に注意する。などは吸収を低下させる1

副作用

頻度 内容
高頻度 、振戦、不眠、下痢1
重篤・まれ 狭心症、、不整脈、1

まとめ

  • (T4)と違い、活性型T3そのものを直接補充する。効果発現が速い代わりに血中濃度が不安定になりやすく、日常の維持療法には向かない。
  • 日本の適応は甲状腺機能低下症(原発性・下垂体性)、、、、甲状腺腫。チロナミンは経口のみで、電子添文に注射剤の記載は無い。
  • ⭐ 国際的には、でT4単独では末梢変換(T4→T3)が障害されるため、はをT4に併用する用法(初回5〜20μg、以後8時間ごとに2.5〜10μg)を推奨している。
  • 禁忌はな心筋梗塞。にはステロイド補充を先行させる(と同じ理由)。障害では少量から慎重に増量する。
  • 副作用は状(・振戦・不眠・下痢)が中心で、過量では狭心症・不整脈・のリスクがある。

出典

  1. 1.チロナミン錠(リオチロニンナトリウム) 電子添文(医薬品医療機器総合機構(あすか製薬)・2024)電子添文の全文(2024年2月改訂版)を取得して確認した。効能又は効果が粘液水腫、クレチン症、甲状腺機能低下症(原発性及び下垂体性)、慢性甲状腺炎、甲状腺腫であること。用法及び用量がリオチロニンナトリウムとして通常成人初回量1日5〜25μgを1〜2週間間隔で少しずつ増量し維持量1日25〜75μgとすること。**本剤は経口の錠剤のみであり、注射剤・静注用製剤の記載は無い**こと。禁忌が新鮮な心筋梗塞のある患者(基礎代謝亢進による心負荷増大で病態が悪化しうるため)であること。重要な基本的注意として、狭心症・陳旧性心筋梗塞・動脈硬化症などの心血管系障害患者では少量から開始し通常より長期間かけて増量すること、副腎皮質機能不全患者には副腎皮質ホルモンの補充を先行させることが挙げられること。相互作用としてワルファリン(作用増強)、交感神経刺激剤(冠不全リスク増加)、強心配糖体(濃度変化)、血糖降下剤(血糖管理への影響)、コレスチラミン等(吸収低下)が挙がること。主な副作用が狭心症、うっ血性心不全、副腎クリーゼ、[[symptoms/palpitations|動悸]]、不整脈、[[symptoms/tremor|振戦]]、不眠、下痢であることを確認した閲覧 2026-09-22
  2. 2.From the Popoveniuc Score to Therapeutic Protocols: A Comprehensive Review of Myxedema Coma(Cureus・2026)全文(オープンアクセス)を取得して確認した。粘液水腫性昏睡の初期治療は高用量レボチロキシン(T4)静注(初回200〜400μg、重症例では300〜500μgまで、高齢者・低栄養・不整脈や心筋梗塞の既往がある患者では避ける)を48時間かけて投与し、その後1日50〜100μgへ移行すること。静注用レボチロキシンが無い環境では経口・経鼻胃管・経直腸投与を検討してよく、静注と経口で死亡率に有意差は無いこと。グルココルチコイド(ヒドロコルチゾン50〜100mgを6時間ごと静注、7〜10日間)をレボチロキシン投与の前または同時に開始すべきこと(重症甲状腺機能低下症・粘液水腫性昏睡は副腎皮質の反応性を低下させ、甲状腺ホルモンがコルチゾール代謝を促進するため副腎クリーゼを誘発しうる)。**米国甲状腺学会(ATA)はLT4単独の欠点(末梢でのT4→T3変換が障害されるsick euthyroid syndromeを呈するため)を補う目的で、T3(リオチロニン)の併用を初回ボーラス5〜20μg、その後8時間ごとに2.5〜10μgで投与することを推奨しており、高齢者・心血管疾患患者ではより低用量を用いる**こと。リオチロニンは臨床的改善が得られ患者が安定するまで継続し、過剰投与は避けるべきであることを確認した閲覧 2026-09-22