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アルコール使用障害同定テスト

Alcohol Use Disorders Identification Test

別名
AUDITAUDIT-C
臓器系
精神
科目
Public Health
トピック
公衆衛生 09:アルコールSBI(スクリーニングと短時間介入)(roleplay)
適用疾患
アルコール使用障害

🧠 全体像(Alcohol Use Disorders Identification Test)は、WHOが世界共通で使えるよう開発した10項目ので、直近1年間の飲酒を「量」「」「有害な影響」の3ブロックに分けて量的に段階評価する。同じでも、4項目で生涯にわたる依存傾向の有無だけを拾うとは目的が異なり、点数の大きさそのものが介入の強度を決める設計になっている。

目的と適用場面

内容
目的 直近1年間の飲酒パターンを評価し、・依存の可能性を段階的に判定する
対象 ・救急外来・健診など、あらゆる場面で飲酒歴を確認する成人
使う場面 のスクリーニング、の適応判定、専門機関紹介の要否判断
評価しないもの そのもの、の重症度、など身体合併症の有無

構成要素と配点

10項目の質問はいずれも過去1年間の飲酒について尋ね、3つのに分かれる。合計0〜40点。

WHOの原版は「」を約10 gと定義する(ビール330 mL・度数5%、ワイン140 mL・度数12%、蒸留酒40 mL・度数40%がおおむね1ドリンクに相当)。版でもこの10 g換算が踏襲されており、久里浜医療センターなどが示す換算表では日本酒1合(180 mL)は約2ドリンクにあたる。⚠️ これは、厚生労働省が「節度ある適度な飲酒」の目安として示す1日あたり20 g(いわゆる「1単位」)とは基準が異なる数値であり、の「1ドリンク」=1回の飲酒量を数える単位を、上の「1日の適量」と混同しない。

危険な飲酒量(質問1〜3)

質問1〜3はすべて0〜4点の5段階で、以下のように採点する。

質問 0点 1点 2点 3点 4点
1. 飲酒の頻度 飲まない 月に1度以下 月に2〜4度 週に2〜3度 週に4度以上
2. 飲酒する日の1日あたりの量(ドリンク数) 1〜2 3〜4 5〜6 7〜9 10以上
3. 一度に6ドリンク以上飲む頻度 ない 月に1度未満 月に1度 週に1度 ほぼ毎日

依存症状(質問4〜6)

質問4〜6も0〜4点の5段階で、3項目とも同じ頻度スケール(ない/月に1度未満/月に1度/週に1度/ほぼ毎日)を用いる。

質問 0点 1点 2点 3点 4点
4. 飲み始めると止められなかった頻度 ない 月に1度未満 月に1度 週に1度 ほぼ毎日
5. 飲酒のせいで通常やるべきことができなかった頻度 ない 月に1度未満 月に1度 週に1度 ほぼ毎日
6. 深酒の翌朝にが必要だった頻度 ない 月に1度未満 月に1度 週に1度 ほぼ毎日

有害な影響(質問7〜10)

質問7・8は質問4〜6と同じ0〜4点の頻度スケールだが、質問9・10だけは他の8項目と異なり「ある/なし」の重みで採点する0・2・4点の3択であり、中間の1点・3点は存在しない。

質問 0点 1点 2点 3点 4点
7. 飲酒後に罪悪感や後悔を感じた頻度 ない 月に1度未満 月に1度 週に1度 ほぼ毎日
8. 飲酒のせいで前夜の出来事を思い出せなかった頻度 ない 月に1度未満 月に1度 週に1度 ほぼ毎日
質問 0点 2点 4点
9. 飲酒が原因で自分や他人がけがをしたことがあるか ない あるが過去1年ではない 過去1年である
10. 家族・友人・医療者から飲酒を心配された、または減らすよう勧められたことがあるか ない あるが過去1年ではない 過去1年である

解釈とカットオフ

WHOのガイドラインは合計点を4つの区分(Zone I〜IV)に分け、区分ごとに推奨する対応の強度を対応づけている。

区分 合計点 WHOが推奨する対応
Zone I 0〜7点 飲酒に関する教育(alcohol education)。低リスク飲酒または非飲酒として、現在の飲酒習慣についての簡単な情報提供にとどめる
Zone II 8〜15点 簡潔な助言(simple advice)。低リスクの目安を超える飲酒として、5分程度の助言と飲酒教育資料の提供によるを行う
Zone III 16〜19点 簡潔な助言に加え、と経過観察の継続。反応が乏しい、または依存が疑われる場合は専門機関への紹介に切り替える
Zone IV 20点以上 専門機関へ紹介し、依存症の診断的評価と治療を検討する。紹介先がなければで管理を続け、自助グループなど地域資源を活用する

💡 WHOはこの点数帯を国・飲酒文化・の定義によって多少前後してよい目安と位置づけている。加えて、質問4〜6()のいずれかで2点以上、または質問9・10のいずれかで4点がついた場合は、合計点だけで区分を機械的に決めず、1段階上の対応を検討することを推奨している。

⚠️ Zone III・IVの「専門機関紹介」は無条件の紹介ではない。Zone IIIはまず助言とを試し、または依存が疑われた場合に紹介へ進むという段階的な流れであり、「16点以上=即紹介」と短絡しない。

AUDIT-C

最初の3項目(頻度・量・6ドリンク以上飲む頻度)だけを使う短縮版で、0〜12点。フル版を聴取する時間が取れない場での一次スクリーニングとして使い、陽性であればフルまたは臨床的評価に進める。は一般に男性4点以上、女性3点以上で危険・を疑う。フル版と異なり・有害な影響の項目を含まないため、量的な飲酒パターンのには優れるが、依存や問題の重症度そのものは捉えられない

CAGEとの使い分け

CAGE AUDIT
項目数 4項目 10項目
問う期間 生涯 直近1年間
捉えるもの 依存傾向の有無(陽性/陰性の二値) 量・・有害な影響を段階的に数値化した重症度
出力 ふるい分け(該当項目数) 0〜40点の連続的なスコア
向いている場面 短時間での簡便なふるい分け 重症度に応じた介入の強度(教育/助言//紹介)を決める場面

💡 は「はい」が1つでもあれば拾い上げる簡便な網であるのに対し、は網にかかった後どの強さの介入が必要かを決める物差しである。両者は競合するのではなく、まずで拾い上げ、で段階づけるという順に組み合わせて使うこともできる。

限界と使ってはいけない場面

⚠️ 自己申告に依存する。 過小申告やにより、実際の飲酒量より低く出やすい。依存が進んだ患者ほど過小評価しがちな点に注意する。

⚠️ には性差・年齢差・地域差がある。WHO自身も「国の飲酒文化やの定義によっては前後する」と明記しており、高齢者では感度が下がり特異度が上がるという報告もある。一律の点数をどの集団にも機械的に適用しない。

⚠️ は診断ツールではなくスクリーニングツールである。 高得点はを強く示唆する所見にすぎず、を置き換えるものではない。診断には別途、による基準の確認を要する。

⚠️ の重症度評価には使えない。離脱管理には別の臨床評価尺度を用いる。

まとめ

  • はWHOが開発した10項目・0〜40点ので、直近1年間の飲酒を量(質問1〜3)・(質問4〜6)・有害な影響(質問7〜10)の3領域で評価する。
  • 質問1〜8は0〜4点の5段階、質問9・10だけは0・2・4点の3択で採点する。
  • WHOのZone I〜IVは、0〜7点=飲酒教育、8〜15点=簡潔な助言、16〜19点=助言++経過観察、20点以上=専門機関紹介、という段階的な対応に対応づけられる。
  • 短縮版(質問1〜3のみ、0〜12点)は一次スクリーニングに使い、陽性ならフルまたは臨床評価に進む。
  • (生涯・4項目の簡便なふるい分け)と(直近1年・10項目の段階評価)は目的が異なり、補完的に使う。
  • 自己の性差・年齢差、そしてスクリーニングであり診断そのものではない点に注意する。