スコア体系ノート一覧へ

Scores · Published

Cauchy分類

Cauchy classification

臓器系
皮膚運動器
科目
Forensic Medicine
トピック
法医学 27:熱傷・熱中症と寒冷障害・低体温症
構成:症状
チアノーゼ
適用疾患
凍傷

🧠 全体像:は、の直後の所見から切断リスクを予測し、薬物療法の適応を決めるためのである。(第1〜4度)でを分ける組織学的な分類と混同しやすいが、が見ているのはチアノーゼがのどこまで及んでいるかという後の血流評価であり、狙いも異なる——分類が「どれだけ深く傷んだか」を記述するのに対し、は「・を使うべきか」というに直結する判断材料になる。このとの結びつきの強さが、他の分類とを分ける最大の存在意義である。

目的と適用場面

内容
目的 後のチアノーゼの及ぶ範囲から、切断範囲を予測する
対象 手指・に及ぶ患者
使う場面 直後の評価。・()の適応判断、搬送・の決定
評価しないもの 前(凍結中)の組織、骨そのものの血流(臨床的には判定できず、チアノーゼはにとどまる)

💡 チアノーゼの及ぶ範囲は骨の血流そのものではなくである。 骨への灌流の有無は現場では直接測れないため、軟部組織の虚血・チアノーゼを代わりに用いる。グレードが上がるほど四肢切断に至る可能性が高まる1。

構成要素と配点

は加算式のスコアではなく、後のチアノーゼの解剖学的な及ぶ範囲によってグレード1〜4に分ける記述的な分類である。

グレード 後の所見(チアノーゼの範囲) 予後(何を切断しうるか)
グレード1 チアノーゼなし 切断・の可能性なし
グレード2 のみにとどまる 軟部組織の切断と爪(指爪・趾爪)の
グレード3 ・近位に及ぶ の骨切断と機能的
グレード4 ・に及ぶ 四肢の切断と機能的

評価は後に行う。⚠️ 凍結中・前の組織には適用できない——チアノーゼの範囲はによって血流が再開して初めて評価できる所見だからである。

解釈とカットオフ

グレードは切断リスクの予測だけでなく、薬物療法の適応を決めるとして使われる。2024年改訂のWilderness Medical Societyガイドラインの誌上版は、格付けの付いた推奨文で次のとおり位置づけている(どちらも強い推奨・低品質エビデンス)2。

治療 適応グレード タイミング(推奨文の逐語)
グレード2〜4(以遠に及ぶ=deep frostbite) 後72時間まで、ただし可能なかぎり早く2
(、静注または) グレード3・4(重症=severe frostbite) 受傷後24時間以内。とくにが使えない場合2

⭐ 同じ表に並ぶ2つの推奨で、時間枠の起点が違う。 は「」、は「」である。💡 混同すると、現場で凍結が長く続いてまでに時間がかかった症例で、の投与機会を実際より早く閉じてしまう(逆にの窓を広く取りすぎる)。原文は起点が違う理由を述べていない。

💡 この対応は年々広がってきた。 を提案した2016年の原著論文自体は、より保守的な基準を示していた——rt-PAは切断が不可避なグレード4に限り後24時間以内、()はグレード2〜4に後48時間以内という基準である3。2024年のWMSガイドラインでは、の対象がグレード3・4へ広がり、の投与可能な時間枠も72時間へ延びている2。⚠️ 同時にの起点も動いている——2016年の原著はrt-PAも「後」24時間としていたが、2024年版の推奨文は「受傷後」24時間である32。

限界と使ってはいけない場面

⚠️ による分類(第1〜4度)と混同しない。 には組織学的な深さで分ける分類も存在し、番号が同じ「グレード1〜4」「第1〜4度」でも評価軸がまったく異なる。は後のチアノーゼの解剖学的な広がりで切断リスクを予測する分類であり、皮膚・皮下・深部構造のどこまで傷んだかを記述する分類とは別物である。

⚠️ 単回の評価で確定させない。 が明確になるのは受傷後3〜8週で、組織生存性の判定を待つ(受傷後最大6週)が不要な外科的処置を防ぎうるとされる。直後のグレードだけで最終的な切断範囲を決めない1。

⚠️ 薬物療法の適応判断に使う場合、資料によって時間枠の書き方が割れている。ただし誌上版の原文を読めば決着する。 誌上版の格付けの付いた推奨文は、が「72時間」、が「24時間」で、起点は薬ごとに違う2。WMS自身が公開している要約もを「後72時間まで」とする4。⭐ 同ガイドラインを要約した2025年の総説が両方を「受傷後」と書いているのは、この総説の側の言い換えである5——格付けの付いた推奨文を正本とする。

⚠️ さらに、誌上版は同じ文書の中でも自分と食い違っている。 格付けの付いた推奨文は「以遠・グレード2〜4・後72時間」だが、同じ文書の院内治療の手順リスト(項目13)は「以遠・受傷後48時間以内」と書き、の本文も「解凍後48時間未満、おそらく72時間まで」としている2。関節の位置も時間枠も1文書内で2通りある。💡 実務上はどの起点・どの上限で数えても間に合うよう、可能なかぎり早く投与を開始すると読むのが安全である。2016年の原著(rt-PA 24時間・48時間)は、いずれも「後」を起点にしていた3。

まとめ

  • は、後のチアノーゼがのどこまで及ぶかでグレード1〜4に分け、切断範囲を予測する記述的な分類である。
  • グレード1(チアノーゼなし)は切断・の可能性なし、グレード4(・に及ぶ)は四肢の切断に対応する。
  • 2024年WMSガイドラインでは、はグレード2〜4に後72時間以内、はグレード3・4に受傷後24時間以内(とくにが使えない場合)推奨される。どちらも強い推奨・低品質エビデンスである。⚠️ 起点が薬ごとに違うのであって、資料によって割れているのではない——誌上版の推奨文がこう書き分けている。⚠️ ただし同じ文書の手順リストはを「以遠・受傷後48時間以内」と書いており、文書内で食い違う。格付けの付いた推奨文を正本とする。
  • による分類とは評価軸が異なり、単回の評価で最終的な切断範囲を決めない。

出典

  1. 1.Frostbite(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)Cauchy分類のグレード1〜4が、再加温後のチアノーゼの範囲(グレード1:チアノーゼなし/グレード2:末節骨のみ/グレード3:中節骨・近位指節骨/グレード4:手根骨・足根骨に及ぶ)と、それぞれの予後(グレード1:切断・後遺症の可能性なし/グレード2:軟部組織の切断と爪の後遺症/グレード3:指趾の骨切断と機能的後遺症/グレード4:四肢の切断と機能的後遺症)の対応で定義されていること(Staging節)、グレードが上がるほど四肢切断の可能性が高まること、壊死境界(demarcation)が受傷後3〜8週で明確になること、組織生存性の判定を待つ遅延切断(受傷後最大6週)が不要な外科的処置を防ぎうること(History and Physical節、Treatment/Management節)を確認した。閲覧 2026-08-11
  2. 2.Wilderness Medical Society Clinical Practice Guidelines for the Prevention and Treatment of Frostbite: 2024 Update(Wilderness Medical Society (McIntosh et al., Wilderness Environ Med 35:183-197)・2024)誌上版の全文を取得して確認した(journals.sagepub.com は素のcurlもWebFetchも403。Internet Archiveに保存された2025-06-20の全文ページを id_ 付きURLで `curl -L --compressed` により取得した)。格付けの付いた推奨文は逐語で "We suggest iloprost for deep frostbite extending to the distal interphalangeal joint or more proximal (Grades 2-4), up to 72 hours after rewarming but ideally as soon as possible."(Strong recommendation, low-quality evidence)および "We suggest IV or intra-arterial tPA for the treatment of severe frostbite (Cauchy Grade 3 and 4) within 24 h of injury, especially if iloprost is not available."(同格付け)であり、**時間枠の起点は薬ごとに異なる**(イロプロストは再加温後、tPAは受傷後)。⚠️ 同じ文書の院内治療の手順リスト項目13は "Iloprost therapy: consider for deep frostbite to or proximal to the proximal interphalangeal joint, within 48 h after injury, especially if angiography is not available or with contraindications to thrombolysis." と書き、考察本文は "intravenous iloprost should be considered a first-line therapy for Grades 3 and 4 frostbite <48 h after thawing, and possibly for up to 72 hours" と書いており、**関節の位置(遠位/近位指節間関節)も時間枠(72時間/48時間)も文書内で食い違う**。閲覧 2026-09-16
  3. 3.A New Proposal for Management of Severe Frostbite in the Austere Environment(Wilderness & Environmental Medicine(Cauchy E, et al.)・2016)この論文自身の当初の提案(Abstract)では、rt-PAはグレード4の凍傷(切断が不可避な場合)に限り再加温後24時間以内に、プロスタサイクリン(イロプロスト)はグレード2〜4に再加温後48時間以内に投与するとしていたことを確認した。閲覧 2026-08-11
  4. 4.Frostbite Summary 2024(Wilderness Medical Society・2024)発行団体自身が公開している2024年改訂凍傷ガイドラインの要約。誌上版(DOI 10.1177/10806032231222359)は出版社が403、Unpaywallもリポジトリ版を持たず取得できなかったため本頁を参照した。イロプロストについて逐語で "The WMS expert panel recommend using Iloprost for deep frostbite extending to the distal interphalangeal joint or more proximal (Grades 2-4) as soon as possible, up to 72 hours after rewarming." =適応がグレード2〜4(遠位指節間関節以遠に及ぶ深部凍傷)で、時間枠の起点が再加温後であることを確認した。本頁は院内治療の詳細(tPA の適応グレードと時間枠)を扱わず、誌上版を参照するよう案内している。閲覧 2026-09-16
  5. 5.What Is New in Altitude- and Cold-Related Illnesses of Travel: Appraisal and Summary of the Updated Guidelines from the Wilderness Medical Society(International Journal of Environmental Research and Public Health・2025)DOIをCrossrefで解決し、題名・誌名・22巻2号284・2025年2月14日が一致することを確認したうえで、Europe PMCの全文(PMC11855094)を読んだ。2024年改訂のWilderness Medical Society凍傷ガイドラインが、イロプロストをCauchy分類グレード2〜4の深部凍傷(遠位指節間関節以遠に及ぶもの)に対し72時間以内(できるだけ早期)に投与することを推奨していること、Cauchy分類グレード3・4の重症凍傷に対し24時間以内の静注または動注tPAを、とくにイロプロストが使えない場合に推奨していること(Interventions for Treatment of Frostbite節)を確認した。⚠️ 本総説は両者の時間枠の起点をいずれも "of injury"(受傷後)と書いており、「イロプロストは再加温後・tPAは受傷後」という起点の使い分けは本総説には無い。発行団体自身の要約(wms-frostbite-guidelines-2024-summary)はイロプロストを "up to 72 hours after rewarming"(再加温後)としており、起点の表記が資料間で食い違う。閲覧 2026-09-16