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国際版転倒効力感尺度

Falls Efficacy Scale-International

別名
FES-I
臓器系
全身精神運動器
科目
Rehabilitation
トピック
リハビリテーション 02:リハビリテーションにおける機能評価:移動能力・筋力・標準化スケール
構成:症状
転倒恐怖

🧠 全体像:Falls Efficacy Scale-International(FES-I)は、日常のさまざまな場面(掃除・入浴・買い物・坂道歩行など)について「転ぶことへの懸念の強さ」を16項目・4段階で数値化する、国際的に検証済みの尺度である。バランスや筋力そのものではなく、あくまで患者本人が感じている懸念の強さと範囲を測る点が軸で、同じく懸念を扱う尺度でも「その動作を転ばずに行える自信」を0〜100%で尋ねるABC scaleとは、測っている構成概念が異なる。

目的と適用場面

内容
目的 転倒への懸念(心理的側面)の強さを日常の16場面について段階的に数値化する。バランス・筋力・歩行速度などのな身体機能そのものは測らない
対象 の訴えがある高齢者、転倒の多因子リスク評価を受ける地域在住高齢者全般。転倒歴の有無は問わない
使う場面 外来でのスクリーニング、多因子評価の一部としての標準化尺度による評価、運動療法・などの介入前後での効果判定
評価しないもの バランス・筋力・歩行速度そのもの、実際の転倒回数、うつ病・不安症の

現行の指針は、多因子評価に転倒への懸念の評価を含めることをGRADE 1Bで、その評価にFES-IやShort FES-Iのような標準化尺度を用いることをGRADE 1Aで推奨している1。評価の場面では「fear(恐怖)」より中立的な「concern(懸念)」という表現を用いることが勧められており、では「懸念」という訳語がこれに対応する1

構成要素と配点

FES-Iは、日常のさまざまな場面について「転ぶことをどれくらい懸念するか」を尋ねる16項目からなる。各項目は、実際にその動作を行っているかどうかにかかわらず、転ばずにその動作を行えると仮定した場合の懸念の強さを、共通の4段階スケールで採点する。

共通の評価尺度(全16項目に共通)

点数 内容
1点 まったく懸念しない
2点 やや懸念する
3点 かなり懸念する
4点 非常に懸念する

16項目の一覧とShort FES-I23

日常の負荷が軽い場面から重い場面まで幅広くカバーするよう設計されており、そのうち評価負担を減らすために選ばれた7項目がShort FES-Iを構成する。

番号 場面 Short FES-I
1 家の掃除(掃き掃除・掃除機がけ・拭き掃除など)
2 着替え(衣服の着脱)
3 簡単な食事の準備
4 入浴・シャワーを浴びる
5 買い物に行く
6 椅子からの立ち座り
7 の昇り降り
8 近所を歩き回る
9 頭上や床にあるものに手を伸ばす
10 鳴っている電話に、切れる前に出る
11 滑りやすい床(濡れた床・凍結した路面など)を歩く
12 友人・親族を訪ねる
13 混雑した場所を歩く
14 凸凹した地面(砂利道・整備の悪い舗道など)を歩く
15 坂道を上り下りする
16 な集まりに出かける(礼拝・親族の集まり・クラブの会合など)

合計点は、FES-Iが16項目の単純合計で16〜64点、Short FES-Iが該当する7項目の単純合計で7〜28点になる2。Short FES-Iは元の16項目のうち着替え・入浴/シャワー・椅子からの立ち座り・昇降・頭上や床への手伸ばし・坂道の昇降・な集まりへの外出の7項目を選んで作られており、内的整合性・4週間後のが優れ、元のFES-Iとの相関は0.97と非常に高い3

解釈とカットオフ

ROC曲線を用いて、懸念の強さを3段階に区分するが定められている2

区分 FES-I(16項目、16〜64点) Short FES-I(7項目、7〜28点)
懸念が少ない 16〜19点 7〜8点
中等度の懸念 20〜27点 9〜13点
強い懸念 28〜64点 14〜28点

💡 点数そのものより、懸念の強さとな身体機能(テストや歩行速度など)がどれだけ乖離しているかを見ることが臨床的には重要になる。懸念だけが強くな機能低下が乏しければ心理的アプローチを、機能低下が主体であれば運動療法を中心に据えるという対応の重心を決める材料になる。

限界と使ってはいけない場面

⚠️ 単独ではの予測ツールにならない。 FES-I(Short FES-Iを含む)は懸念の強さを測るものであり、多因子評価の一部として、なバランス・筋力・歩行評価と組み合わせて用いる1

⚠️ 点数の上昇は、実際の転倒の有無だけを反映するわけではない。 縦断検証では、FES-Iの点数は実際に転倒したかどうかにかかわらず時間とともに上昇する傾向があり、複数回の転倒があった患者でより強く上昇する傾向がみられた2。経過中の点数変化だけで新たな身体機能低下や転倒を推定しない。

⚠️ Short FES-Iはわずかに弁別力が劣る。 Short FES-Iは評価時間を短縮できる一方、年齢・性別・転倒歴・懸念の有無による群間の弁別力はフルバージョンのFES-Iよりわずかに劣る。項目ごとの分布そのものが研究上の関心事である場合は、フルバージョンの使用が推奨される3

⚠️ ABC scaleと混同しない。 項目の内容が似ているため取り違えやすいが、FES-Iは「懸念の強さ」を、ABC scaleは「転ばずに行える自信」を測っており、測定している構成概念が異なる。両者を同じもの・互換可能なものとして扱わない。

⚠️ は地域在住高齢者を対象に定められたものであり、施設入所者や重度の身体機能障害がある集団にそのまま適用できるとは限らない。

まとめ

  • FES-Iは、日常16場面について「転ぶことへの懸念の強さ」を4段階で採点し、合計16〜64点で評価する国際的に検証済みの尺度である。
  • 評価負担を減らした7項目版のShort FES-I(7〜28点)もあり、現行の指針はどちらも標準化尺度としてGRADE 1Aで評価に用いることを推奨している。
  • はROC曲線で定められ、FES-Iは16〜19/20〜27/28〜64点、Short FES-Iは7〜8/9〜13/14〜28点で懸念の強さを3段階に区分する。
  • 点数の上昇は実際の転倒の有無だけを反映するわけではなく、単独でを予測するものではない。多因子評価の一部としてな機能評価と組み合わせて使う。
  • 「懸念の強さ」を測るFES-Iと「自信の程度」を測るABC scaleは構成概念が異なり、混同しない。

出典

  1. 1.World guidelines for falls prevention and management for older adults: a global initiative(Task Force on Global Guidelines for Falls in Older Adults (Age and Ageing)・2022)多因子転倒リスク評価に転倒への懸念の評価を含めることをGRADE 1Bで、Short FES-Iなど標準化尺度を用いた評価をGRADE 1Aで推奨していること、「fear」より中立的な「concern about falling」という表現を評価の場面で用いることを勧めていること閲覧 2026-08-10
  2. 2.The Falls Efficacy Scale International (FES-I). A comprehensive longitudinal validation study(Delbaere K, Close JC, Mikolaizak AS, Sachdev PS, Brodaty H, Lord SR (Age and Ageing)・2010)地域在住高齢者500名(70〜90歳)を1年間追跡した検証研究で、FES-Iが16項目・Short FES-Iが7項目からなり各項目を「まったく懸念しない」〜「非常に懸念する」の4段階で採点し合計点がFES-Iで16〜64点・Short FES-Iで7〜28点になること、ROC曲線を用いて懸念の強さを区分するカットオフ値を定めたこと、FES-I点数は実際に転倒したかどうかにかかわらず時間とともに上昇する傾向があったこと閲覧 2026-08-10
  3. 3.The Short FES-I: a shortened version of the falls efficacy scale-international to assess fear of falling(Kempen GIJM et al (Age and Ageing)・2008)Short FES-Iが元の16項目のうち着替え・入浴/シャワー・椅子からの立ち座り・階段昇降・頭上や床への手伸ばし・坂道の昇降・社会的な集まりへの外出の7項目を選んで作られたこと、内的整合性と4週間後の再検査信頼性が優れ元のFES-Iとの相関が0.97と高いこと、一方で年齢・性別・転倒歴・恐怖の有無による群間弁別力はFES-Iよりわずかに劣ること閲覧 2026-08-10