リハビリテーション医学

リハビリテーション医学 · 02

リハビリテーションにおける機能評価:移動能力・筋力・標準化スケール

Functional assessment in rehabilitation: mobility, muscle strength, and standardized scales

前提:正常
皮質脊髄路(錐体路)固有受容反射
症状
Trendelenburg徴候転倒恐怖
スコア
2分間歩行試験Activities-specific Fall Caution ScaleBarthel指数BergバランススケールMedicare機能分類レベルMRC徒手筋力テストPohjolainen分類Timed Up & Goテスト移動能力指数機能的自立度評価表機能的歩行分類高活動レベル移動能力予測尺度国際版転倒効力感尺度切断者移動能力予測尺度日常生活活動特異的バランス自信尺度歩行能力指数

🧠 全体像:リハビリテーション評価は身体構造の評価だけでなく、病歴・身体所見・・を段階的に確認し、や筋力、自立度を標準化されたスケールで数値化することで、経過やゴール設定をに追跡できるようにする。

このノートで扱う設問(原資料の通し番号):

設問 トピック
12 の評価と評価スケール
13 リハビリテーション評価で確認する4領域
14 筋力の評価法
16 の評価

(Q15「ICFとは」はノートを参照)

12. 移動能力の評価と評価スケール

の評価は、易しい動作から難しい動作へと段階的に確認する。

  • 基本的な:臥位・しゃがみ位・膝立ち位から座位・立位への移行など
  • 体位の保持:座位保持(静的・動的)、立位保持
  • :座位のまま椅子からベッド、別の座面、から車の座席への移動など
  • 物の運搬・操作
  • 歩行
    • 歩行パターン(、、痙性、性、、、、、、ワドル歩行、性歩行など)
    • の使用有無(杖、、歩行器)
    • 歩行の自立度(自立、介助あり、口頭誘導あり、平地/など環境別)
  • 使用:一時的か恒久的か

・歩行をに数値化するため、以下のスケールが用いられる。

スケール 内容
FAC(Functional Ambulation Category)(Holden et al., 1984) 臨床医が0〜5の6段階で評価。「」〜「」までを分類
2MWT(2-Minute Walk Test) 2分間で平地を歩いた距離(m)を測定。の使用は可
TUG(Timed Up & Go test) 椅子から、3 m歩行し、方向転換して着席するまでの所要時間(秒)
WAI(Walking Ability Index)(Siriwardena・Bertrand, 1991) を臨床的な観察で1〜6に格づけする。1=、6=。の後の転帰研究で、装着後3・6・9・12か月の時点で評価するために作られた指標で、距離や時間を測るものではない。Pohjolainenの分類(の実用的使用をClass I〜VIIで表す別の指標)としばしば取り違えられる
患側下肢で(歩行器の使用有無を問わず)支持脚を動かさずに立位保持できる時間を測定

💡 ・とは別に、脳卒中後の全体的な転帰を1つの等級で表す尺度として修正Rankin尺度(mRS)(0=無症候〜6=死亡の7段階)が国際的によく使われる。通常の会話形式での評価ではがkappa 0.78程度にとどまり一方の評価者が系統的に低い等級を付ける偏りもみられたが、5領域の日常機能を確認するを用いるとが改善する(kappa 0.78→0.93)と報告されている1。

・自立度を評価するスケールとしては、次の2つが代表的である。

スケール 特徴
Barthel Index 10種類の(排便・排尿管理、整容、、食事、、移動、更衣、昇降、入浴)を評価。100点=完全自立、0点=
FIM(Functional Independence Measure) 運動項目に加え、理解・表出・交流・協調性・・記憶などの認知項目を含む18項目。各項目を1〜7点で評価(1=、7=完全自立)。最高126点(完全自立)〜最低18点(完全依存)

💡 Barthelは()のみを評価するのに対し、は認知・項目を含む点が大きな違いであり、を伴う患者(脳卒中後など)の評価でがより有用になる。

⚠️ どちらの尺度にも・がある。 201例・脳卒中後82例を対象にと(合計・運動・認知)の分布と反応性を比較した研究では、・合計・運動サブスケールは・が小さく反応性も同程度であった一方、認知サブスケールは患者で顕著なを示し、進行性疾患での評価としての有用性が限られると報告されている2。どちらを使うかで経過の見え方が変わりうるため、対象群の重症度分布を踏まえて選ぶ必要がある。

💡 尺度の点数が上がったことと、患者にとって意味のある変化とは別である(minimal clinically important difference, )。 脳卒中患者113例を対象とした研究では、主治医が臨床的に重要と判断する変化に対応する得点の変化量は、合計で22点・運動サブスケールで17点・認知サブスケールで3点と推定され、入院時の得点が低い患者ほど大きな変化量がに対応した3。数点程度の得点上昇だけでは、臨床的に意味のある改善とは言えない場合がある。

13. リハビリテーション評価で確認する4領域

身体構造そのものの評価に加えて、以下の4領域を評価する。

  1. 病歴(case history/anamnesis)
    • 背景(家族構成、住環境、就労状況)
    • 全身体力、心機能
    • ・
    • 精神状態(、協調性、)
    • レベル
    • 自立度(食事・更衣・排泄などの評価)
    • 障害されている機能
  2. QOL(quality of life)

14. 筋力の評価法

方法 内容
を左右比較
Pronator drift(変位試験) 上肢挙上保持中の・下降を観察し、を検出
MRC(Medical Research Council) 抵抗に対する筋力を0〜5の6段階で評価する。英国MRCが定めた標準的スケール
Mingazzini試験 下肢の軽微な筋力低下を検出する保持試験
Barré試験 上肢の軽微な筋力低下を検出する保持試験
・つま先立ち 遠位筋力(・)の評価
() 反射の左右差・亢進/低下を確認

⚠️ 出典ではの名称が不明瞭であったため、標準的な(0〜5段階)として、また上肢の保持試験はBarré試験として補正して記載した。

⚠️ はであり、等間隔尺度ではない。 「4と5の差」と「1と2の差」を同じ大きさとして扱うことはできず、とくにGrade 4が覆う幅(にはかろうじて勝るが検者の抵抗にはほとんど抗せない〜ほぼ正常)は他の段階より広い。それでも、経験のある検者間では実用上十分な再現性が得られるとする報告もある(31例で、手指伸展・・の検者間一致は重み付きκ 0.77〜0.78、同一検者内一致は0.82〜0.86)4。

16. セルフケアの評価

  • リハビリテーション:患者が自立して生活するために不可欠な、に関するリハビリテーション。
  • 評価する要因:食事、入浴、移動、家庭生活、社会活動、就労

まとめ

  • リハビリテーション評価は病歴・身体所見・・の4領域を段階的に確認する。
  • は・・・などのスケールで、自立度はBarthel IndexやFIMで数値化して評価する。
  • 筋力評価にはによるのほか、Mingazzini試験・Barré試験などの保持試験を用いる。

出典

  1. 1.Improving the assessment of outcomes in stroke: use of a structured interview to assign grades on the modified Rankin Scale(Stroke・2002)脳卒中後6〜24か月の患者63例を2名の評価者が独立に修正Rankin尺度(mRS)で評価したところ、通常の方法での評価者間一致は57%(重み付きκ0.78)にとどまり一方の評価者が有意に低い等級を付ける偏りもみられたが、5領域の日常機能を確認する構造化面接を導入すると一致率78%(重み付きκ0.93)に改善し、評価者間の系統的な差もなくなったこと閲覧 2026-08-26
  2. 2.Measuring change in disability after inpatient rehabilitation: comparison of the responsiveness of the Barthel index and the Functional Independence Measure(Journal of Neurology, Neurosurgery, and Psychiatry・1999)多発性硬化症201例・脳卒中後82例の入院リハビリテーション患者を対象に、Barthel指数とFIM(合計・運動・認知の3尺度)の得点分布・床効果・天井効果・反応性(effect size)を比較したところ、Barthel指数とFIM合計・FIM運動サブスケールはいずれも床効果・天井効果が小さく反応性も同程度であったのに対し、FIM認知サブスケールは多発性硬化症患者で顕著な天井効果を示し、進行性の多発性硬化症でのアウトカム評価としての有用性が限られると結論したこと閲覧 2026-08-26
  3. 3.Determination of the minimal clinically important difference in the FIM instrument in patients with stroke(Archives of Physical Medicine and Rehabilitation・2006)長期急性期病院を退院した脳卒中患者113例を対象に、主治医による臨床的重要度評価(15段階のLikert尺度)を基準として最小重要臨床差(MCID)を求めたところ、FIM合計・運動・認知サブスケールのMCIDはそれぞれ変化量22点・17点・3点と推定され、入院時FIM得点が低い群ほど大きな変化量がMCIDに対応したこと。すなわちFIM合計点が数点上がっただけでは、臨床的に意味のある変化とは限らないこと閲覧 2026-08-26
  4. 4.Reliability and validity of the Medical Research Council (MRC) scale and a modified scale for testing muscle strength in patients with radial palsy(Journal of Rehabilitation Medicine・2008)橈骨神経麻痺31例を対象にMRCスケールの再現性を検討したところ、検者間一致は手指伸展0.77・手関節伸展0.78・握力0.78、同一検者内一致は0.82-0.86(いずれも重み付きκ)とほぼ完全な一致に相当し、握力の実測値との相関係数も0.78であったこと。MRCは0〜5の順序尺度であり、等間隔尺度ではない点には注意が必要だが、経験のある検者間では実用上十分な再現性が得られることを示す報告であること閲覧 2026-08-26