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日常生活活動特異的バランス自信尺度

Activities-specific Balance Confidence Scale

別名
ABC scale
臓器系
全身精神運動器
科目
Rehabilitation
トピック
リハビリテーション 02:リハビリテーションにおける機能評価:移動能力・筋力・標準化スケール

🧠 全体像:Activities-specific Balance Confidence(ABC)scaleは、家の中を歩く・を上り下りする・混雑したモールを歩くといった16種類のそれぞれについて「ふらつかず、バランスを崩さずに行える自信」を0〜100%で自己評価してもらい、その平均を1つのスコアにするの尺度である。の評価でしばしば並べて語られるFES-Iは「懸念の強さ」を測るのに対し、ABC scaleは「自信の高さ」を測る——軸そのものが逆向きであり、開発者自身が評価の際に「転倒」「」という語を使わない設計にしている点も、この違いを反映している。

目的と適用場面

内容
目的 日常の移動・バランス課題を「ふらつかずに行える」という(バランスへの自信)を定量化する
対象 歩行可能な地域在住高齢者、パーキンソン病脳卒中・前庭疾患・などバランス障害を伴う患者
使う場面 の一部、リハビリテーション経過の追跡、運動療法中心か心理的アプローチ中心かという対応の重心を決める材料
評価しないもの なバランス能力・歩行速度そのもの(別途などで測る)、、実際の転倒歴

開発は1990年代前半、臨床家15名と高齢外来患者12名の意見をもとに16項目が作成され、地域在住高齢者60名(65〜95歳)を対象に既存のFalls Efficacy Scale(FES)と頭合わせで比較検証された1。当時のFESは、後にFES-Iへ拡張される前のTinettiらによる原版である。💡 開発当初からの課題は「機能の高い高齢者でも自信の低下を検出できるか」であり、つま先立ちでの棚上げ物取りや混雑したモールでの歩行、凍結した歩道の歩行のような難度の高い動作まで含めた点が、より基本的な動作を中心とするFESとの差別化点になっている1

構成要素と配点

16項目それぞれについて「バランスを保ち、ふらつかずに…できる自信がどれくらいあるか」を0%(自信なし)〜100%(完全に自信がある)まで10%刻みで自己評価する2

# 項目(…できる自信)
1 家の中を歩く
2 を上り下りする
3 かがんでクローゼットの床にあるスリッパを拾う
4 目の高さの棚にある小さな缶に手を伸ばす
5 つま先立ちで頭上のものに手を伸ばす
6 椅子の上に乗って物に手を伸ばす
7 床を掃く
8 家から私道に停めた車まで外を歩く
9 車に乗り降りする
10 駐車場を横切ってモールまで歩く
11 スロープを上り下りする
12 人が足早に通り過ぎる混雑したモールを歩く
13 モールを歩いていて人にぶつかられる
14 手すりにつかまってエスカレーターに乗り降りする
15 手すりにつかまれないほど荷物を抱えてエスカレーターに乗り降りする
16 凍った屋外の歩道を歩く

⭐ 実際には行っていない動作は「もしやるとしたら、どのくらい自信があるか」を想像して回答させる。普段杖や歩行器、人の支えを使っている場合は、それらを使った状態を前提に自信を評価させる2

採点:16項目の合計(範囲0〜1600)を回答項目数で割り、0〜100%のスコアを算出する。少なくとも12項目に回答していれば採点可能とされる。項目2・9・11・14・15のように「上り」と「下り」など複数の状況を含む項目で自信の程度が状況によって異なる場合は、低い方の自信度を採用する(その動作全体をするのは低い方の自信度であるため)2

💡 評価の際、検者は「転倒」「」という語を使わない。1990年代後半の改訂で、問いの表現も「バランスを崩さず・ふらつかずに行える」という前向きで動作志向の表現に統一された(バランスを崩しても立て直せることを排除しない表現)2。このは、の評価で「恐怖」より中立的な「懸念」という語を用いる現行指針の考え方と軸を共有している。

解釈とカットオフ

ABC scaleには単一の統一されたは確立されていない。原著論文の1つは、在宅ケア利用者からコミュニティ運動プログラム参加者までを含む一連の研究から、次のような機能レベルの目安を示している3

スコア帯 典型的な 意味
80%超 運動療法・リハビリテーションで到達しうる活動的な高齢者 高い機能レベル
50〜80% 退職者施設居住者、慢性疾患を持つ高齢者 中等度の機能レベル
50%未満 在宅ケア利用者 低い機能レベル

転倒予測の観点では、地域在住高齢者125名(転倒歴あり45名・なし80名)を対象にした研究で、非転倒者は転倒者より反応時間が速くBergバランススケール・ABCスコアがいずれも高く、反応時間・Berg合計点・ABC合計点を組み合わせたロジスティックは感度89%・特異度96%(個々の設問まで用いたモデルでは感度91%・特異度97%)で転倒者・非転倒者を判別した4。💡 この結果はABCが他の指標と組み合わせたときに強い判別力を持つことを示すが、ABC単独のとして一般化できる単一の数字が確立されているわけではない点に注意する。

限界と使ってはいけない場面

⚠️ 開発時の対象は歩行可能な地域在住高齢者・バランス障害患者であり、介護施設などの施設入所高齢者は想定されていない。 施設入所高齢者向けには、開発者自身の手で別にActivities-specific Fall Caution Scale(AFC scale)という尺度が作られている2

⚠️ 自己報告尺度であるため、がある患者では回答のが下がる。家族やによる代理回答は本人のな自信を反映しない。

⚠️ FES-Iとは測定している構成概念が異なる。 FES-Iはへの「懸念の強さ」を測るのに対し、ABC scaleは「その動作を行える自信」を測る。どちらも転倒に関連する評価だが、同じものを違う言葉で言い換えているわけではないため、互いに代替可能な尺度として扱わない。

⚠️ 単一ので「ハイリスク/ローリスク」を断定しない。原著論文が示す機能レベルの目安(50%未満・50〜80%・80%超)はの記述として提示されたものであり、個々の患者の転倒予測を保証する診断閾値ではない3

⚠️ ABC scale単独では、実際のバランス能力や歩行速度のような機能は評価できない。や歩行速度など指標と併用し、な自信とな機能がどれだけ乖離しているかを評価する。

まとめ

  • ABC scaleは16種類のそれぞれについて「ふらつかず・バランスを崩さずに行える自信」を0〜100%で自己評価し、その平均をスコアとするの尺度である。
  • 懸念の強さを測るFES-Iとは測定している構成概念が異なり、互いに代替可能な尺度ではない。
  • 機能レベルの目安として50%未満(低)・50〜80%(中等度)・80%超(高)という区分が示されているが、単一の統一されたは確立されていない。
  • 反応時間・Bergバランススケールと組み合わせた予測モデルは転倒者・非転倒者を高い感度・特異度で判別できたが、ABC単独の閾値として一般化されたものではない。
  • 開発時の対象は地域在住高齢者・バランス障害患者であり、施設入所高齢者には別のが用意されている。
  • なバランス・歩行能力の評価(など)と組み合わせ、自信と実際の機能の乖離をする。

出典

  1. 1.The Activities-specific Balance Confidence (ABC) Scale — Instructions(Dr. Anita M. Myers, University of Waterloo(尺度開発者による公式配布資料。Strokengineが配布をホスト)・2020)公式の実施用紙原本から、16項目それぞれの原文の問い方(「バランスを保ち、ふらつかずに…できる自信がどれくらいあるか」)、0〜100%(10%刻み)の評価尺度、合計を回答項目数(最低12項目)で割って平均する採点法、複数の状況を含む項目(上り/下りなど)は低い方の自信度を採用すること、1990年代後半に「転倒」「転倒恐怖」という語を使わず「バランスを保ち、ふらつかない」という前向きな表現へ評価文言を改訂したこと、対象が歩行可能な地域在住高齢者・バランス障害を持つ者であり施設入所高齢者は対象外で、施設向けには別にActivities-specific Fall Caution Scale(AFC scale)が開発されていることを確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.The Activities-specific Balance Confidence (ABC) Scale(Powell LE, Myers AM (Journal of Gerontology: Medical Sciences)・1995)抄録で、臨床家15名と高齢外来患者12名の意見をもとに16項目を作成しFalls Efficacy Scale(FES)と頭合わせで検証したこと、地域在住高齢者60名(65〜95歳、移動の自信の高低で自己分類)を対象にしたこと、両尺度とも内的整合性・再検査信頼性・収束的妥当性・基準関連妥当性が良好だったこと、ABCがFESより効率的な弁別力を持ち回答の幅が広く、機能の高い高齢者でのバランスへの自信低下をより検出しやすいことを確認した(全文は購読制で未取得)閲覧 2026-08-10
  3. 3.Discriminative and Evaluative Properties of the Activities-specific Balance Confidence (ABC) Scale(Myers AM, Fletcher PC, Myers AH, Sherk W (Journal of Gerontology: Medical Sciences)・1998)抄録で、在宅ケア利用者からコミュニティ運動プログラム参加者まで475名を含む一連の4つの研究を通じて、ABCスコアの解釈の目安として50点未満を在宅ケア利用者に典型的な低い身体機能レベル、50〜80点を退職者施設居住者や慢性疾患を持つ者に典型的な中等度の機能レベル、80点超を運動療法・リハビリテーションで到達しうる活動的で機能の高い高齢者の水準としたことを確認した(全文は購読制で未取得)閲覧 2026-08-10
  4. 4.Predicting falls within the elderly community: comparison of postural sway, reaction time, the Berg balance scale and the Activities-specific Balance Confidence (ABC) scale for comparing fallers and non-fallers(Lajoie Y, Gallagher SP (Archives of Gerontology and Geriatrics)・2004)抄録で、地域在住高齢者125名(転倒歴あり45名・なし80名)を反応時間・Bergバランススケール・ABCスケール・重心動揺で比較し、非転倒者は転倒者より反応時間が速くBerg・ABCスコアがいずれも高かったこと、反応時間・Berg合計点・ABC合計点を組み合わせたロジスティック回帰モデルが感度89%・特異度96%(個々の設問まで用いたモデルでは感度91%・特異度97%)で転倒者・非転倒者を判別したことを確認した。⚠️ 一部の二次資料はこの研究由来としてABC単独の67%カットオフ(感度84%・特異度87%)を報告しているが、抄録本文にはこの具体的な数値を確認できず、原著本文は未取得のため本文には採用していない閲覧 2026-08-10