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McGill疼痛質問票

McGill Pain Questionnaire

別名
マギル疼痛質問票McGill痛み質問票MPQShort-Form McGill Pain QuestionnaireSF-MPQ
臓器系
神経
科目
Clinical Pharmacology
トピック
臨床薬理学 38:痛みの定義・評価・分類臨床薬理学 43:鎮痛薬の臨床開発
構成:症状
疼痛

🧠 全体像:McGill疼痛(MPQ)は、痛みを単一の「強さ」だけでなく「感覚(どのような質の痛みか)」「情動(どのような苦痛・恐怖を伴うか)」「評価(全体としてどれほど耐えがたいか)」という多次元の体験として捉え、言語的記述語を用いて定量化するである。1975年にRonald Melzackによって開発された。NRSやVASといった一次元尺度では捉えきれない痛みの質(クオリティ)をに測定できる点が最大の特徴であり、痛みの病態鑑別や、の臨床開発において薬剤が痛みのどの側面にしたかを多角的に評価する国際標準ツールとして確立している。臨床現場の負担を減らすため、15項目に短縮した短縮版(SF-MPQ)やの記述語を追加した改訂短縮版(SF-MPQ-2)も広く普及している。

目的と適用場面

項目 内容
目的 痛みの多次元的側面(感覚的・情動的・)の定量化と痛みの質の精密評価
対象 慢性疼痛(関節痛、、がん性疼痛、、頭痛など)やなどの急性疼痛患者
使う場面 ペインクリニックでの初期多角評価、やの効果判定、新薬開発の(エンドポイント)
評価しないもの 救急外来での数秒間の即時、痛みの原因病態自体の解剖学的確定

強さのみを測るNRSやVASと異なり、「痛みがどのように感じられるか」という言葉の選択を通じて、痛みの生理学的・心理学的背景を浮き彫りにする1。

構成要素と配点

原版(MPQ)、短縮版(SF-MPQ)、改訂短縮版(SF-MPQ-2)の3つの版が存在する。

1. 原版(MPQ)

痛みを表現する78個の形容詞が、意味の近さによって20群に分類されている1。

  • (第1〜10群):時間的性質(など)、空間的性質、点状圧迫感、感、牽引感、熱感、鋭敏感、、など
  • (第11〜15群):感、自律神経症状、恐怖感、懲罰感など
  • (第16群):痛みの全体的強度・耐えがたさ(不快な、耐えがたいなど)
  • 雑多(第17〜20群):、広がり、締めつけ感、引き裂かれるような感じなど

患者は各群の中から、現在の痛みに最も当てはまる言葉を各群最大1語ずつ選ぶ。

算出される主要指標:

  1. (PRI):各群の中で選ばれた言葉の順位値(1点〜最大5点)を合計したスコア。感覚PRI、情動PRI、評価PRI、雑多PRI、および総合PRIが算出される。
  2. 選択語数(NWC):患者が選んだ言葉の総数(最大20語)。
  3. 現在の痛みの強さ(PPI):0(無痛)、1(軽度)、2(不快)、3(苦痛)、4(ひどい)、5(耐えがたい)の6段階評価。
  4. :人体図上で痛む場所と広がりを描画する。

2. 短縮版(SF-MPQ)

原版は回答に15〜20分を要し、臨床現場での負担が大きいことから1987年に開発された短縮版である2。

  • 15の記述語:感覚的記述語11語(ズキズキ痛む、鋭く刺すような、焼けるような、重い痛みなど)と、情動的記述語4語(させるような、恐ろしい、など)からなる。
  • 配点:各語を「なし(0点)」「軽度(1点)」「中等度(2点)」「高度(3点)」の4段階で採点する。
  • 併用指標:痛みの強さを測るVAS(0〜100 mm)とPPI(0〜5点)を併せて実施する。所要時間は通常2〜5分程度である。

3. 改訂短縮版(SF-MPQ-2)

の要素(、ピリピリ感など)を拡充し、回答尺度を0〜10点のに変更した改訂版(22項目)である3。

サブスケール 項目数 評価する痛みの性質
持続痛 6項目 ズキズキする痛み、、重い痛みなど
間歇痛 6項目 刺すような痛み、、鋭い痛みなど
6項目 焼けるような痛み、冷たい痛み、、など
情動的記述語 4項目 恐ろしい、罰を受けているような、する痛みなど

解釈と臨床的意義

多次元的解釈の考え方

MPQは「何点以上で異常」という単一で診断を下す尺度ではなく、感覚的スコアと情動的スコアのバランス(プロファイル)および介入前後の変化を読み解く。

  • 感覚スコア優位のパターン:骨折、関節炎、急性など損傷が明瞭なでは、感覚的記述語の選択率と点数が高くなり、情動スコアは比較的低くとどまる。
  • 情動スコア優位のパターン:、難治性症、(CRPS)などでは、痛みの一次元的強さに比べて情動的記述語(恐怖、、感など)の選択頻度や点数が著しく高くなる。この解釈は、単なるの増量ではなく、や抗うつ薬の導入、多職種一体治療の必要性を示唆する。

治験・新薬開発での役割

の開発試験において、のみでは「痛みが減ったか否か」しか判別できない。MPQを併用することで、「刺激を遮断して感覚的鋭敏さを減らしたのか」「情動的苦痛や耐えがたさを緩和したのか」といった作用特性の違いを詳細に特徴づけることができる2。

flowchart TD
    A["疼痛患者の受診・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='clinical trial (clinical study)'>臨床試験</span>登録"] --> B{"評価の目的と許容時間"}
    B -->|"数秒〜数分の迅速評価<br>日々の強さモニタリング"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='NRS / VAS'>一次元尺度</span><br>痛みの強さのみを測定"]
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neuropathic pain'>神経障害性疼痛</span>のスクリーニング"| D["[[scores/dn4|DN4<span class='jp-term jp-term-diagram' title='questionnaire'>質問票</span>]]<br>4点以上で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neuropathic pain'>神経障害性疼痛</span>を疑う"]
    B -->|"痛みの質・多次元的苦痛の評価<br>新薬の作用特性分析"| E["McGill疼痛<span class='jp-term jp-term-diagram' title='questionnaire'>質問票</span>(MPQ / SF-MPQ)"]
    E --> F["感覚スコア・情動スコア・評価スコアを分解分析"]
    F --> G["身体的介入と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='psychosocial intervention'>心理社会的介入</span>の個別化設計"]

限界と使ってはいけない場面

⚠️ 言語力と読解力に強く依存する。 78個(短縮版でも15個)の言葉の微妙なニュアンスを理解して選択する必要があるため、高度の者、意識障害患者、せん妄患者、小児、および理解が困難な患者では原版の実施が困難である。高齢者や衰弱患者では短縮版(SF-MPQ)やNRSを選択する。

⚠️ 翻訳と文化的適応の影響を受ける。 痛みの形容詞が持つ感覚的強度や情動的ニュアンスは言語や文化圏によって異なる。での運用にあたっては、逆翻訳やを経た標準化された公認版を用いる必要がある。

⚠️ 救急外来での即時には適さない。 質問数が多く回答と集計に時間を要するため、や外傷など迅速な処置が求められる救急現場での初期判定には、直感的なNRSやVASを優先する。

まとめ

  • McGill疼痛(MPQ)は、痛みを感覚的・情動的・評価的の3大次元から捉える多次元疼痛評価である。
  • 原版(78語・20群)からは(PRI)、選択語数(NWC)、(PPI)が算出される。
  • 日常臨床や外来では15語からなる短縮版(SF-MPQ)や改訂短縮版(SF-MPQ-2)が汎用される。
  • 痛みの質の鑑別や情動的負荷のに優れ、における作用特性の評価にも用いられるが、言語理解力や集中力を要する点に留意する。

出典

  1. 1.The McGill Pain Questionnaire: major properties and scoring methods(Pain(Melzack R)・1975)痛みの主観的体験を感覚的(sensory)・情動的(affective)・評価的(evaluative)の3大次元に分類し、78の記述語(20群)から疼痛評価指数(PRI)、選択語数(NWC)、現在の疼痛強度(PPI:1〜5)を導出する多次元疼痛質問票(MPQ)を開発し、297例の疼痛患者データで統計的処理と治療差検出に十分な感度を有することを確認した。閲覧 2026-10-27
  2. 2.The short-form McGill Pain Questionnaire(Pain(Melzack R)・1987)原版MPQの施行時間を短縮するため、15記述語(感覚11語・情動4語、各0〜3点)にVASとPPIを組み合わせた短縮版(SF-MPQ)を開発し、術後・産科・理学療法・歯科患者において原版MPQと高い相関を示し、同等の治療反応性感度を持つことを確認した。閲覧 2026-10-27
  3. 3.Development and initial validation of an expanded and revised version of the Short-form McGill Pain Questionnaire (SF-MPQ-2)(Pain(Dworkin RH, Turk DC, Revicki DA, et al.)・2009)神経障害性疼痛の症状記述語を追加し回答形式を0〜10の数値評価尺度に変更した改訂短縮版(SF-MPQ-2、22項目)を慢性疼痛患者882例および有痛性糖尿病性末梢神経障害患者226例で検証し、持続痛・間歇痛・神経障害性疼痛・情動の4サブスケール構造と優れた信頼性・妥当性を確認した。閲覧 2026-10-27