臨床薬理学

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鎮痛薬の臨床開発

Development of analgesics

前提:病態
薬物開発の段階(概要)臨床試験の種類

🧠 全体像:新しいは、医薬品開発の一般則(→臨床薬理→探索→→検証→安全性)に、痛みに特有の難しさをした規則で開発される。痛みは主観なので本人の自己評価(NRS・)で測り、反応が大きく揺れるのでに対するを示し、できればも並べて意味づける。痛みの型(体性・内臓、・・)と強さごとに試験モデルを選び、効いたモデルの範囲でだけ適応が認められる。安全性では、オピオイドの呼吸抑制・依存・乱用、の心血管・のような系統特有の害を最初から狙って評価する。欧州ではEMAのガイドラインEMA/CHMP/970057/2011がこの規則を定めている。

EMAの鎮痛薬開発ガイドライン

欧州でを開発するときの規則は、EMAの科学ガイドライン「痛みの治療を目的とする医薬品の臨床開発に関するガイドライン」(EMA/CHMP/970057/2011)にまとめられている。

項目 内容
番号 EMA/CHMP/970057/2011
経緯 2011年に改訂の構想文書、2013年と2015〜2016年に意見公募、2016年12月にEMAのヒト用医薬品委員会が採択
施行 2017年7月1日
置き換えたもの のとの
現在の位置づけ 第1版が現在有効な版としてEMAに掲げられている(2026年9月時点)1
対象外 片頭痛は別のガイドラインの対象(頭痛と片頭痛の薬物療法)。のような複雑な疼痛症候群も主な対象ではない

表の内容はEMAのサイトとガイドラインによる1。

💡 なぜ2つのガイドラインを1つにまとめたのか。 痛みは昔からとにきれいに分けられると考えられてきたが、やがん性疼痛のように両方の要素をもつが多いことが分かり、別々の規則では実態に合わなくなった1。痛みの型の区別は痛みの定義・評価・分類で扱う。

このガイドラインは単独で完結せず、医薬品開発の一般則に従うことが前提になる。本文が併せて読むよう求めるのは、(ICH E4)、高齢者(ICH E7)、の一般指針(ICH E8)、統計(ICH E9)、対照群の選び方(ICH E10)、小児(ICH E11)、依存性の非臨床評価、薬物相互作用などのガイドラインである1。開発の相の一般論はの段階との種類を参照。

開発の流れ

flowchart TD
  A["適切な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='preclinical study (preclinical testing)'>前臨床試験</span><br>薬理・毒性・依存性の動物試験"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pharmacokinetic'>薬物動態</span>試験<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='route of administration'>投与経路</span>ごとの関連ガイドラインに従う"]
  B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pharmacodynamics'>薬力学</span>試験<br>作用機序を理解する"]
  C --> D["相互作用試験<br>臨床で併用されやすい薬・アルコール"]
  D --> E["探索的試験<br>健康<span class='jp-term jp-term-diagram' title='study participant / subject'>被験者</span>の制御された痛み刺激モデル<br>→ 患者での探索試験"]
  E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dose-response'>用量反応</span>試験<br>開始量・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dose escalation'>漸増法</span>・効果の発現と持続・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ceiling effect'>天井効果</span>"]
  F --> G["検証的有効性試験<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='randomized'>無作為化</span>対照並行群間試験<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='placebo'>プラセボ</span>への<span class='jp-term jp-term-diagram' title='superiority'>優越性</span>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='active drug (as opposed to placebo)'>実薬</span>対照"]
  G --> H["効果の維持と耐性の評価"]
  G --> I["臨床的安全性の評価<br>長期使用薬は12か月以上のデータ"]

前臨床と臨床薬理

前臨床試験

適切なを行うことが出発点である。に特有なのは依存性で、新しい系統の化合物や依存が起こりうる兆候がある場合には、動物での依存性試験が必要になる1。

臨床開発の3つの基礎試験

試験 求められること に特有の論点
試験 ごとに関連するガイドラインに従い、適応・治療期間・送達系・に合わせて調べる 痛みそのものがや組織の血流を変えて吸収に影響しうるので、母集団の手法が向く。の経口徐放製剤ではアルコールによる用量(機構が壊れて一気に放出される現象)を、経皮製剤では熱による放出の増加を調べる
試験 作用機序を理解する 機序が分かっていると、有効性試験の陽性結果を信頼しやすい。痛みの型を特徴づける非臨床・臨床・橋渡しのモデルや、反応しやすい患者を見分ける表現型・薬理ゲノムの探索が奨励される。鎮静・・抗うつなどのが有効性の評価をゆがめないかも確かめる
相互作用試験 臨床で一緒に使われやすい薬を併用したときの有効性・安全性への影響を評価する との両方の相互作用を調べる。アルコールや他の薬との相互作用が重要になりうる

表の内容はEMAのガイドラインによる1。

⚠️ 用量が重視される理由。 の製剤は1日分に近い量を1錠に閉じ込めている。アルコールでの仕組みが壊れると、その量が短時間に放出されて呼吸抑制を起こしうる。を熱い風呂や発熱で温めた場合も皮膚からの吸収が増える(がん性疼痛とオピオイド療法)。

痛みの測り方

痛みは常にな体験なので、本人の自己評価が最も妥当な指標であり、で使えるな指標はまだ無い。痛みの強さがの有効性の鍵となる指標で、常に報告する1。

測るもの 代表的な尺度 補足
痛みの強さ(一次元) NRS、、 NRSは0〜10の離散値で最もよく使われる。は10 cmの線上の連続値。は変化を捉える感度が低い
痛みの質(多次元) McGill痛み(短縮版を含む)、の尺度 一次元の尺度では痛みの質を捉えきれないので、特に慢性疼痛の試験で併用する
身体機能 簡易疼痛調査票、多次元疼痛調査票、な尺度(のOswestry障害指数、のWOMAC) 慢性疼痛は日常生活を妨げるので、に入れる
健康関連の生活の質 SF-36、EQ-5D 汎用の尺度
情動機能 Beck抑うつなどの抑うつ・不安・気分・睡眠の尺度 不安・抑うつ・不眠は痛みの感じ方を変えるので、慢性疼痛の試験では開始時の心理評価が強く勧められる
全般的な改善度 患者が評価する全般的改善度の尺度 慢性疼痛の試験で、全体としての利益を示す補助指標

表の内容はEMAのガイドラインによる1。各尺度の使い方は痛みの定義・評価・分類を参照。

💡 全般的印象の尺度は2種類ある。 が評価する臨床全般印象のCGIと、患者が評価する全般的改善度の2つで、EMAのガイドラインが慢性疼痛の試験の補助指標として挙げているのは後者である1。慢性疼痛の試験方法を検討する国際的な作業部会のIMMPACTも、中核となる4つの領域として、痛みの強さ(0〜10の)、身体機能(多次元疼痛調査票と簡易疼痛調査票の生活障害の尺度)、情動機能(Beck抑うつと気分プロフィール検査)、患者による全般的改善度を推奨し、臨床的に意味のある変化を2つ以上の方法で判断するよう求めている2。

探索的試験と用量反応試験

探索的試験

  • 開発の初期には、健康に制御された痛み刺激を与えるモデルが、治療効果と標的への作用を確かめるのに役立つ1。
  • ただし刺激の強さと長さは倫理上限られる。また痛みは強いなので、薬の鎮静や呼吸抑制は、健康より患者のほうが目立ちにくい1。
  • そのため、患者での探索的試験が通常は必要である。この段階では、効果の出やすい患者に絞った組み入れ、交差試験(症状が安定している場合)、中止試験(オピオイドのようにが評価を乱す場合を除く)、濃縮登録も許される1。

用量反応試験

ICH E4に沿って・曝露反応の関係を明らかにし、開始量と、効果の発現・・持続を示す。も評価する1。

  • は痛みの強さや耐性に応じて臨床反応を見ながら漸増するので、固定用量の試験が組みにくい。その場合はモデルに基づく手法で曝露反応を特徴づける1。
  • てんかんやなど他の領域で確立した薬でも、痛みでのは大きく違いうるので、原則として痛みのためのを別に行う1。

💡 や抗うつ薬がに使われる例(との治療)が、この規則の背景にある。の鎮痛用量がうつ病の用量よりずっと少ないように、痛みでのは元の適応から推定できない。の考え方は集団レベルでのを参照。

検証的有効性試験

試験デザインの原則

原則 内容 理由
対照並行群間試験 検証的な証拠には最も適したデザイン 交差試験は、のように痛みが予測できる強さで規則的に繰り返す場合に勧められる例外である
に対する 原則として示す(例外あり) 痛みの試験では反応が大きく、しかもばらつく。治療の割り付けにかかわらず開始時から改善する傾向(試験参加そのものの効果、開始時の点数の水増し、平均への回帰)がある
対照 効果の分かったがあれば多くの場合併せて置く 対の差に臨床的な意味づけを与える。がに勝てば、その試験モデルが効果を検出できる(感度がある)ことの確認にもなる
へのの正式な証明は通常不要 ただしとの差をつきで示す

表の内容はEMAのガイドラインによる1。

「への」の例外には次がある1。

  • がん性疼痛:救済薬だけに頼るプラセボ群は倫理的に許されないので、モルヒネのようなとのを考える(ただし試験の感度が問題になる)。オピオイドを使ったことのない患者は対象に向かない。
  • 侵襲的な(脊髄くも膜下・注射など):対照群に注射を行うのが倫理的に不適切なことがあり、同じ経路の対照や最小限の侵襲のを考える。
  • 承認薬や標準治療が無い場合は、対照を置けないことがある。

試験を成り立たせる細部

論点 求められること
試験集団 診断と痛みの強さがそろった均質な集団で調べ、結果を広い集団へ外挿する。重い痛みでの効果は、軽い痛みとは別に確かめる
救済薬 効果の分かった救済薬を常に使えるようにし、使った患者も試験を続ける。救済薬の種類は1つが望ましい
併用療法 痛みの感じ方を変える薬(を含む)や、・手術・心理的支援などのは原則避けるか、一定に保つ
評価の時点 開始時の痛みはの直前に測る。慢性疼痛では朝夕の1日2回の評価と、電子日誌の使用が勧められる。安静時だけでなく体動時の痛みも測る
時点ごとの痛みの強さの開始時からの差を必ず示し、多くはそのの(時間-鎮痛効果)も示す。長期試験では毎日の値の週平均を使う
反応者解析 臨床的に意味のある改善を事前に定義して、主解析に加えて示す。頭痛では完全な消失、慢性疼痛では30%または50%の減少が目安。途中で脱落した人や救済薬を規定以上に使った人は原則として非反応者とする
効果の維持と耐性 用量を臨床反応で調整する長期ので耐性を特徴づける。効果の維持は、6か月以上安定して投与した反応者をとにしてを比べる中止試験で確かめる

表の内容はEMAのガイドラインによる1。

痛みの型ごとの試験モデルと適応の範囲

は、効果を示した「痛みのモデル」の範囲でしか適応が認められない。急性疼痛で使える試験モデルの例は次のとおりである1。

痛みの型 軽度〜中等度(おおむねNRS 6以下、 60 mm以下) 中等度〜高度(おおむねNRS 4以上、 40 mm以上)
、小さな皮膚の手術 したの、の手術、大きな、重い骨格の外傷、熱傷の交換
内臓痛 、腎・胆道の疝痛
と内臓痛の両方 の腹部・婦人科手術 開腹・手術
目指す適応 必要な証拠
急性疼痛全般 と内臓痛(またはと混合痛)の両方のモデルで、それぞれ独立に効果を示す。1つのモデルだけなら、その病態に限った適応になる
慢性の 3か月を超える膝・股関節のの痛みで試験する
全般 中枢性(後、脳卒中後の視床痛など)と末梢性(、有痛性、など)の両方で効果を示す。末梢性は2つ以上のモデルで示す
「慢性疼痛」全般 適切な慢性疼痛のモデルで示し、少なくとも1つはのような典型的なで、との両方の要素への効果を示す
がん性疼痛・ がん性疼痛はオピオイドを使っている患者で試験する。の適応には、原則として十分に設計された2つ以上の試験が要る

表の内容はEMAのガイドラインによる1。

慢性疼痛の検証試験には、次の条件がつく1。

  • 対象は原則として中等度〜高度の痛み(NRS 4以上、 40 mm以上)の患者。軽い慢性疼痛では反応が大きくばらつくからである。
  • 症状は3か月を超えて続き、最近の痛みの強さや治療に大きな変化が無いこと。
  • 持続する効果は、間を除いて12週間以上の治療期間で示す。
  • は、痛みの点数の改善だけでは特定の適応の根拠にならず、機能など他の領域の改善と長期の効果の維持も求められる。一般的な鎮痛の適応を支えるモデルにはならない。

💡 重いほうから軽いほうへは外挿できるが、逆はできない。 中等度〜高度の痛みのモデルで効いた薬は、同じモデルのより軽い痛みにも効くと推定できる。しかし軽い痛みで効いても、重い痛みに効くとはいえない。ただし利益と危険は別に評価するので、は重い痛みで効いても軽い痛みには一般に適応されない1。

臨床的安全性の評価

論点 求められること
長期使用の薬 で12か月以上のの安全性データを十分なで集める。急性疼痛に繰り返し使う薬や、適応外の長期使用がありうる薬でも必要になりうる
系統に特有の害 オピオイドの便秘、ののようにを制限する有害事象を徹底的に分析する。の試験では心血管と消化管の有害転帰の解析を事前に定める
周術期の 手術時の出血への影響を特に評価する
のある薬 覚醒・認知への影響と、運転や機械操作の能力への影響に注意する
オピオイドなど中枢性 呼吸への影響、耐性、依存に特に注意する。呼吸抑制は鎮静薬の併用とを考慮して解析し、夜間(の併用時など)が特に危険なので覚醒時の検査だけでは足りない
の原因疾患 糖尿病のなど、原因疾患への悪影響を調べる

表の内容はEMAのガイドラインによる1。

離脱・依存・乱用・誤用

  • 中止時のとを調べるため、一部の試験では薬理学的に許される範囲でできるだけ急に中止し、その後を追跡する。可能なら完検の中止が望ましい1。
  • 用語を区別する:誤用はだが不適切な使い方、乱用は治療以外の目的(オピオイドなら精神作用を得るため)の使用、は耐性と急な減量でのを伴う生理的反応、精神依存は強迫・制御の障害・を中心とする1。
  • 乱用を防ぐ製剤の開発は奨励されるが、効能・効果の欄で乱用のしにくさを主張することは認められにくい1。

耐性と依存の薬理は耐性・・依存を参照。

特別な集団

集団 要点
小児 ICH E11に従う。機序のよく分かった系統(従来の、μ作動性オピオイド)は成人データの外挿が認められうる。プラセボ対照試験は倫理的・実務的に難しいので、救済をすぐ使える試験での使用量の差をにする設計も考えられる。年齢と発達段階に合わせた検証済みの尺度を使い、自己申告ができない年少児では行動観察尺度を使う。新生児に薬を使う場合は、2歳までの神経発達の追跡が標準的に求められる
高齢者 腎・肝機能を含む年齢に関連したデータを示す。鎮静・めまい・による転倒、低血圧やQT延長に特に注意する。は高齢者で回答不能が増えるので、NRS・・McGill痛みが適する

表の内容はEMAのガイドラインによる1。

まとめ

  • 欧州の開発はEMAのガイドラインEMA/CHMP/970057/2011(2016年採択、2017年施行、との旧ガイドラインを統合)に従い、第1版が現在も有効な版である。医薬品開発の一般則とICHのガイドラインが前提になり、片頭痛は別のガイドラインで扱う。
  • では依存性の評価が鍵。臨床薬理では、に応じた(痛みによる吸収の変化、オピオイドの用量、と熱)、作用機序の理解、併用薬・アルコールとの相互作用を調べる。
  • 痛みは主観なので自己評価で測る:強さはNRS・、質はMcGill痛み、加えて身体機能・生活の質・情動機能・全般的改善度。
  • 探索的試験は健康の制御された痛み刺激モデルで始め、患者での探索試験へ進む。試験で開始量・・効果の発現と持続・を示し、他領域の薬でも痛みでの用量を別に探す。
  • 検証試験は対照並行群間試験で、に対するを示し(がん性疼痛などの例外あり)、対照があれば併せて置く。救済薬を常に用意し、反応者解析(慢性疼痛で30〜50%減少)と、中止試験による効果の維持を示す。
  • 適応は効いた痛みのモデルの範囲に限られる。急性疼痛全般にはと内臓痛の両方、全般には中枢性と末梢性の両方、慢性疼痛全般にはを含むモデルが要る。慢性疼痛の試験は中等度以上の痛みで12週間以上。
  • 安全性では、長期使用薬に12か月以上のデータ、オピオイドの呼吸抑制(特に夜間)・耐性・依存・乱用、の心血管・、周術期の出血、運転能力への影響を評価する。

出典

  1. 1.Guideline on the clinical development of medicinal products intended for the treatment of pain(European Medicines Agency(Committee for Medicinal Products for Human Use)・2016)EMA公式ページで、2011年に改訂の構想文書(EMA/CHMP/210477/2011)が意見公募されたこと、EMA/CHMP/970057/2011の第1版が現在有効な版(2016年12月22日公開、2017年7月1日施行)として掲げられていること、2013年と2015〜2016年の2回の意見公募を経たこと、侵害受容性疼痛(CPMP/EWP/612/00)と神経障害性疼痛(CPMP/EWP/252/03 Rev. 1)の別々のガイドラインを置き換えたことを確認した。全文PDF(2016年12月15日CHMP採択)で次を確認した。片頭痛は別のガイドラインの対象で、ICH E4・E7・E8・E9・E10・E11や依存性の非臨床評価のガイドラインと併せて読むこと。薬物動態は関連ガイドラインに沿って投与経路・送達系・対象集団に応じて調べ、痛みが消化管運動や組織灌流を介して吸収に影響しうるので母集団薬物動態の手法が適しうること、強オピオイドの経口徐放製剤ではアルコールによる用量ダンピング、経皮製剤では熱の影響を調べること。新しい有効成分の作用機序の明確な理解が重要で、鎮静・抗不安・抗うつなどの中枢作用の影響を評価すること。薬物動態・薬力学の相互作用を評価し、臨床で併用されやすい薬の有効性・安全性への影響、アルコールと中枢作用薬との相互作用を調べること。痛みは主観なので自己評価の尺度が最も妥当で、痛みの強さが鍵となる有効性の指標であり、VAS・NRS・言語評価尺度が広く検証されていること、多次元の尺度(McGill痛み質問票、神経障害性疼痛の尺度)、身体機能(Brief Pain Inventory、Multidimensional Pain Inventory、疾患特異的尺度)、健康関連の生活の質(SF-36、EQ-5D)、情動機能(Beck抑うつ質問票など)、患者による全般的改善度の評価を用いること。探索的試験では健康被験者で制御した痛み刺激のモデルが有用だが刺激の強さと持続は倫理的に限られ、痛みのある患者では中枢作用薬の鎮静・呼吸抑制が目立ちにくいこと、患者での探索的試験が通常必要で、交差試験・無作為化中止試験・濃縮登録も探索段階では許容されること。ICH E4に沿って用量反応・曝露反応を明らかにし、開始量・漸増法・効果発現・最大効果・持続を示し、天井効果を評価し、強オピオイドのように臨床反応で漸増する薬ではモデルに基づく手法が望ましく、他領域で確立した薬でも痛みでは別の用量探索試験が原則必要なこと。検証試験は無作為化対照並行群間試験が最適で、プラセボ反応が大きいのでプラセボに対する優越性が必要であり、多くの場合は効果の分かっている実薬対照も加えて臨床的意義の文脈を与え、実薬の対プラセボ優越性でモデルの感度を確かめ、実薬への非劣性の正式な証明は通常不要だが差を信頼区間つきで示し、承認薬や標準治療が無ければ実薬対照は不要でありうること。交差試験は月経困難症のように痛みが規則的に繰り返す場合に勧められること、侵襲的な投与経路ではプラセボ投与が倫理的に不適切でありうるので同経路の実薬対照か偽処置を考えること、上乗せ試験・配合剤、均質な試験集団で調べ重い痛みでの効果は別に確かめること、救済薬の種類は1つが望ましく使った患者も試験を続けること、効果の分かった救済薬を常に使えるようにすること、痛みの感じ方を変える薬(市販薬を含む)やTENS・手術・心理的支援などの非薬物療法を避けるか一定に保つこと、開始時の痛みを無作為化の直前に測り慢性疼痛では朝夕2回と電子日誌を勧め体動時の痛みも測ること、長期試験では毎日の値の週平均を使うこと、痛みの強さの差とその総和・疼痛緩和の総和、反応者解析(頭痛では完全な消失、慢性疼痛では30%または50%の減少)、6か月以上の非盲検投与の後の無作為化中止試験による効果の維持の評価と耐性の特徴づけ。急性疼痛は体性痛と内臓痛の両方のモデルで示せば一般的な急性疼痛の適応となり、軽度〜中等度(NRS 6以下、VAS 60 mm以下)と中等度〜高度(NRS 4以上、VAS 40 mm以上)の表1のモデル(抜歯、小手術、埋伏智歯抜去、外反母趾手術、大きな整形外科手術、重い骨格外傷、熱傷の包帯交換、原発性月経困難症、急性膵炎、腎・胆道疝痛、腹腔鏡手術、開腹・開胸手術)を挙げること。慢性疼痛の試験では原則NRS 4以上の患者を対象に3か月を超える症状を求め、漸増期間を除き12週間以上の治療期間で持続効果を示し、慢性の侵害受容性疼痛には膝・股関節の変形性関節症の試験で足り、神経障害性疼痛の一般的な適応には中枢性と末梢性の両方で効果を示し、「慢性疼痛」の一般的な適応には少なくとも1つの典型的な混合性疼痛(慢性腰痛など)を含むこと。がん性疼痛ではプラセボ群が倫理的に問題となり実薬対照の非劣性試験を考えうること、突出痛には2つ以上の試験が必要なこと。長期使用の薬には12か月以上の臨床試験の安全性データが要り、オピオイドの便秘やNSAIDsの消化不良など系統に特有の有害事象を分析し、NSAIDの試験では心血管・消化管の有害転帰を事前に定め、周術期の薬では出血への影響を、中枢作用薬では覚醒・認知・運転能力を、オピオイドでは呼吸への影響(特に夜間)・耐性・依存を評価すること。中止時の反跳・離脱を調べ、誤用・乱用・身体依存・精神依存を区別し、新規の系統では動物での依存性試験が必要で、乱用防止製剤の開発が奨励されること。小児ではICH E11に沿い、年齢に合った検証済みの尺度を使い、新生児の中枢作用薬では2歳までの神経発達の追跡が標準的に求められること、高齢者では年齢に関連した薬物動態データと安全性(転倒、低血圧、QT延長)に特に注意し、VASは高齢者で回答不能が増えるのでNRS・言語評価尺度・McGill痛み質問票が適すること。閲覧 2026-09-27
  2. 2.Interpreting the clinical importance of treatment outcomes in chronic pain clinical trials: IMMPACT recommendations(The Journal of Pain(Initiative on Methods, Measurement, and Pain Assessment in Clinical Trials)・2008)抄録(PMID 18055266)で、IMMPACTが以前に推奨した慢性疼痛の臨床試験の4つの中核領域とその尺度——痛みの強さ(0〜10の数値評価尺度)、身体機能(多次元疼痛調査票と簡易疼痛調査票の生活障害の尺度)、情動機能(Beck抑うつ質問票とProfile of Mood States)、参加者による全般的改善度(Patient Global Impression of Change)——を確認し、臨床的に重要な改善・悪化の評価には2つ以上の方法を使うよう推奨したことを確認した。閲覧 2026-09-27