臨床薬理学

臨床薬理学 · 40

がん性疼痛とオピオイドによる薬物療法

Cancer pain and opioid therapy

前提:病態
オピオイド抗てんかん薬・鎮痛補助薬

🧠 全体像:がんの痛みは「がんそのもの」と「がんの治療」から生まれ、何年も続きうる慢性疼痛である。薬物療法の骨格はラダーで、痛みの強さに合わせて非オピオイド→→へ進み、痛みの型に応じて鎮痛補助薬を足す。には天井がないので「痛みが取れる量が正しい量」だが、そのぶん用量換算・オピオイドの切り替え・への・副作用(とくに耐性ができない便秘)の管理が安全の要になる。換算表はあくまで目安で、切り替えるときは計算値より少なめに始めてし直す。

がん関連慢性疼痛:ICD-11での位置づけ

定義

国際疼痛学会がICD-11のためにまとめた分類では、慢性がん関連疼痛を、そのものや転移によって起こる慢性疼痛(慢性がん性疼痛)と、がんの治療によって起こる慢性疼痛(慢性がん治療後疼痛)の2つに分ける1。

  • 旧来のICD-10には、慢性がん関連疼痛を表す項目がなかった。
  • がん患者でも、(たとえば)による痛みは区別する。
  • がんの治療成績が上がって長く生きる患者が増えたため、終末期の痛みだけでなく、がんサバイバーの長期のが課題になった。がんによる痛み・治療による痛み・な原因の痛みが同時に存在しうるので、どれに当たるかを分けることが個別の治療計画につながる1。

診断の階層

ICD-11の診断は3つの階層に整理される。第1・第2階層は2018年に確定したICD-11本体に含まれ、第3階層は基盤となる層(ファウンデーション層)に登録された。ICD-11では1つの診断が複数の群に属してよい(多重親子関係)。

flowchart TD
  A["慢性がん関連疼痛<br>(第1階層)"] --> B["慢性がん性疼痛<br>(第2階層)"]
  A --> C["慢性がん治療後疼痛<br>(第2階層)"]
  B --> B1["慢性内臓がん性疼痛"]
  B --> B2["慢性骨がん性疼痛"]
  B --> B3["慢性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neuropathic'>神経障害性</span>がん性疼痛"]
  C --> C1["がん治療薬による慢性疼痛<br>(化学療法誘発性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neuropathy'>ニューロパチー</span>など)"]
  C --> C2["放射線治療後の慢性疼痛"]
  C -.->|"概念上の所属"| C3["がん手術後の慢性疼痛"]
  B1 -.->|"追加の親"| D1["その他の慢性内臓痛"]
  B3 -.->|"追加の親"| D2["その他の慢性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neuropathic pain'>神経障害性疼痛</span>"]
  C3 -.->|"別の章でコード化"| D3["手術の種類ごとの<br>慢性術後疼痛のコード"]
群 第3階層の診断 補足
慢性がん性疼痛 慢性内臓がん性疼痛 「その他の慢性内臓痛」も追加の親にもつ
同上 慢性骨がん性疼痛 の痛み。の代表
同上 慢性がん性疼痛 「その他の慢性」も追加の親にもつ
慢性がん治療後疼痛 がん治療薬による慢性疼痛 が代表(後述)
同上 放射線治療後の慢性疼痛 ・線維化など
同上 がん手術後の慢性疼痛 他の2つと違い第3階層の診断としては置かれず、ほかの慢性術後疼痛とまとめて、手術の種類ごとに該当する章でコード化する

慢性疼痛全体の中での位置

ICD-11は、3か月を超えて続く(または繰り返す)慢性疼痛を、痛みそのものを病気とみなす慢性一次性疼痛と、基礎疾患に続発する慢性二次性疼痛に分ける。慢性がん関連疼痛は二次性疼痛の6群の1つである(定義の詳細は痛みの定義・評価・分類)。

慢性一次性疼痛 慢性二次性疼痛(6群)
慢性がん関連疼痛
慢性一次性内臓痛 慢性術後・外傷後疼痛
慢性一次性疼痛 慢性二次性疼痛
慢性一次性頭痛・口腔顔面痛 慢性二次性内臓痛
慢性
− 慢性・口腔顔面痛

💡 がんの痛みは、腫瘍による組織破壊()と神経への浸潤・圧迫や治療による神経損傷()が重なるになりやすい。ラダーで「痛みの型に応じて鎮痛補助薬を選ぶ」のはこのためである。

WHO除痛ラダー

3段階のラダー(1986年)

目標は、できるだけ少ない副作用で、最も効果的なを得ることである。痛みが続くか強まるたびに1段ずつ上がり、頂上が「がんの痛みからの解放」になる。

段 痛みの強さ 薬
第1段 軽度 非オピオイド ± 鎮痛補助薬
第2段 軽度〜中等度 軽度〜中等度の痛み用のオピオイド() ± 非オピオイド ± 鎮痛補助薬
第3段 中等度〜高度 中等度〜高度の痛み用のオピオイド() ± 非オピオイド ± 鎮痛補助薬

改訂版のラダー

1986年のラダーには、その後いくつかの改訂案が出された(Pergolizzi・Raffa 2014の整理)。

  • 3段の改訂版:第1段で鎮痛補助薬をより具体的に示し、第2段に「」に加えて多角的な配合剤(オピオイドと非オピオイドの)を入れた。状況によっては第1段から第3段へ一足飛びに上がることを認め、むしろ勧める。
  • 4段の改訂版:第4段として、高度〜非常に高度の痛みになどのインターベンショナル治療 ± 非オピオイド ± 鎮痛補助薬を加えた。さらにの考え方を足し、持続する慢性の痛みには長時間作用型オピオイド、にはオピオイドを使う(急性の痛みには短時間作用型、中間的な痛みには)。
flowchart TD
  S1["第1段:軽度の痛み<br>非オピオイド ± 鎮痛補助薬"] -->|"痛みが続く・強まる"| S2["第2段:軽度〜中等度<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='weak opioids'>弱オピオイド</span>または配合剤<br>± 非オピオイド ± 鎮痛補助薬"]
  S1 -.->|"強い痛みでは第2段を飛ばしてよい"| S3
  S2 -->|"痛みが続く・強まる"| S3["第3段:中等度〜高度<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='strong opioids'>強オピオイド</span><br>± 非オピオイド ± 鎮痛補助薬"]
  S3 -->|"痛みが続く・強まる"| S4["第4段(改訂案):高度〜非常に高度<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='nerve block'>神経ブロック</span>などの<br>インターベンショナル治療"]
  S3 --> BT["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='breakthrough pain'>突出痛</span>には<span class='jp-term jp-term-diagram' title='short-acting (regular)'>速効型</span>オピオイドを追加"]
  S4 --> G["がんの痛みからの解放"]

ラダーを使うときの原則

原則 内容 なぜか
第1・2段にはがある 非オピオイドとは、ある量を超えて増やしても効果が増えない 増量で効かないなら段を上げる。副作用だけが増える
定時投与で予防する 強まってから追いかけるのでなく、時間を決めて定期的に使って痛みを予防する。経口か経皮が望ましい 血中濃度を一定に保てば、痛みの山と副作用の山が減る
段階的に導入する 第1・2段を十分量使っても効かなければへ切り替える −
を待ちすぎない 数時間で経口の継続が要るかを判断できる。非常に強い急性の痛みではを急速に(静注でも)してよい 少量で効くなら、下の段で足りる可能性を示し、ラダーを下りることもできる
鎮痛補助薬は痛みの型で選ぶ 平滑筋・骨格筋の弛緩薬、、抗うつ薬、、など ・・浮腫による痛みはオピオイドだけでは取りにくい
効果を評価する 導入・変更のたびに結果を必ず評価する 「痛みが取れる量」を探す作業だから
痛みの型・原因 使う鎮痛補助薬の例
内臓の疝痛(腸閉塞など) ()
()、放射線治療
抗うつ薬(など)、(カルバマゼピン、など)
腫瘍周囲の浮腫・ (など)

がん疼痛に使う薬の群(WHO 2018年版の表2)

薬の群 薬のクラス 薬と剤形の例
非オピオイド の経口錠・液剤、、注射剤
同上 の経口錠・液剤、の経口錠・注射剤、の経口錠・
オピオイド の経口錠・液剤・注射剤
同上 モルヒネの経口錠・液剤・注射剤、の経口錠・液剤・注射剤、の経口錠・液剤、の注射剤・・トローチ、の経口錠・液剤・注射剤
鎮痛補助薬 ステロイド の経口錠・注射剤、の経口錠・注射剤、の経口錠
同上 抗うつ薬 の経口錠、の経口錠
同上 カルバマゼピンの経口錠・注射剤
同上 の注射剤

現行のWHO 2018年版での位置づけ

2018年版は、1986年のラダーを有用な教育ツールだが、厳密な治療手順ではないと位置づけ直し、図は付録に一般的な手引きとして残した2。推奨は段を順に上がることではなく、痛みの強さの評価に合わせて最初から適切な強さの薬を選ぶ形になっている。

項目 古典的なラダー(1986年) 2018年版
開始 第1段から順に上がる 痛みの強さに応じ、・・オピオイドを単独または併用で開始する。中等度〜高度の痛みを弱いだけで始めない(強い推奨・根拠の質は低い)2
維持 第3段は どのオピオイドでもよい。経口が可能なら速放またはの経口モルヒネを定時投与し、経口モルヒネをに使う(強い推奨・中等度)2
経口・経皮が望ましい 経口・経皮が使えないときは、痛みの少ない皮下注を筋注より優先する2
鎮痛補助薬 痛みの型で選ぶ ステロイドは必要時にできるだけ短期間(強い推奨)、には(強い推奨)との放射線治療(強い推奨・高い質)。抗うつ薬・・オピオイドローテーションはがん疼痛での有効性の根拠が乏しく、個別に試して無効なら中止する2
中止 − が生じていればを避けるためする2

⭐ 「第1・2段には天井がある」「には天井がない」「定時投与+」の3点は、ラダーの位置づけが変わっても生きている考え方である。

耐性・依存とオピオイドローテーション

増量は病勢の進行と耐性のサイン

病気が進行したり耐性が生じたりすると、オピオイドの増量が必要になる。一方で、がん患者で精神的な依存が生じることはまれとされてきた。

用語 意味 がん疼痛での扱い
耐性 同じ効果を得るのに多くの量が要るようになる 増量で対応する。耐性が強いときは別のオピオイドへの切り替えを考える
急に止めるとが出る状態 長期使用で誰にでも起こる生理的な適応。中止はで行う()
精神的依存() 害があっても使用を止められない行動の障害 がん患者ではまれとされるが、ゼロではない

⚠️ 「がん患者では依存はまず起こらない」という古典的な教え方は、終末期の短い経過を想定していた。長く生きるサバイバーが増えた現在は、切り替えの前に本人と家族の・依存・横流しの既往を確認することが推奨されている3。

オピオイドローテーション

オピオイドの間のは完全ではない。耐性がはっきりしてきたら、別のオピオイドへ切り替える(ローテーション)と、少ない換算量で鎮痛が戻ることがある。特定の痛みには、や放射線照射などのインターベンショナル治療も選択肢になる。

MASCC・ASCOなどの2025年の合同指針は、切り替え(薬剤そのものの変更に加え、・剤形の変更も含む)を考える状況として次を挙げる3。

  • 増量しても痛みが取れない、または増量に耐えられない
  • 副作用(かゆみ・悪心など)が減量や対症療法でも続く
  • ・過度の眠気・・・などのオピオイド誘発性神経毒性
  • 吸収・代謝・排泄に影響する上の理由(腎障害・肝障害など)
  • 入手性や費用の問題
flowchart TD
  A["切り替えが必要か評価<br>痛みの再評価・副作用・臓器機能・相互作用"] --> B["現在のオピオイドの1日量を<br>経口モルヒネ換算量に直す"]
  B --> C["換算比で新しいオピオイドの<br>計算上の1日量を出す"]
  C --> D{"減量が必要な状況か<br>高用量・高齢や虚弱・副作用<br>直前の急な増量"}
  D -->|"はい"| E["計算値より約50%少なく始める"]
  D -->|"いいえ"| F["計算値より低めに始める"]
  E --> G["不足は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rescue'>レスキュー</span>で補いながら<br>数日かけて<span class='jp-term jp-term-diagram' title='titration'>滴定</span>し直す"]
  F --> G
  G --> H["痛み・眠気・呼吸・せん妄・便通を<br>数日間は密に観察"]

切り替えの要点は次のとおり。

  • 換算比は等鎮痛量ではない。 集団で「離脱も過量も起こしにくい量」の目安にすぎず、は大きい。1日量をいったん経口モルヒネ換算量に直してから新しい薬の量を出す2段階の方法が一つの選択肢で、その後は痛みと副作用を見て個別に調整する3。
  • 減量して始める。 不完全なとののため、新しいオピオイドは計算値よりかなり低い量で始める4。 2018年版の付録は、高用量(モルヒネ換算1 g/日以上)での切り替え、高齢・虚弱、せん妄などの耐えがたい副作用、直前の急な増量(の可能性)では計算値の約50%減が賢明とし、不足分はで補いながらし直すとする2。教科書的には「計算値から25〜50%減らす」という目安が広く教えられてきた。
  • は半減期が長くが大きいので、換算はの助言を得て、経験のあるが行い、を監視する23。
  • とはで活性体になる。ではからモルヒネが多くでき中毒の危険があり、や阻害薬の併用ではが効きにくい3。
  • 腎障害が強いときは・・、肝障害が強いときはやモルヒネを考える、とする合意がある3。

強オピオイドの投与経路と用量

投与経路

大分類 経路 例・特徴
経腸 経口 第一選択。・液剤・
同上 (トローチなど)
同上 点鼻 ()
同上 舌下・ ・錠()
同上 直腸
皮膚 局所 関節などへの外用
同上 経皮 ・の
吸入 吸入 −
非経口 静注・皮下注・筋注 経口・経皮が使えなければ皮下注を筋注より優先する
同上 ・ 少量で強い鎮痛。難治例で専門施設が行う

経路別の代表的な用量

経路 薬と用量 補足(現行の標準)
経口 モルヒネ(硫酸塩)30 mgを1日2回から 2018年版の付録では、オピオイド未使用者の典型的な開始量はモルヒネ5 mgを4時間ごと(30 mg/日)で、速放製剤で必要量を決めてから徐放製剤を12時間ごとに使う2。30 mgを1日2回は60 mg/日に当たり、付録のオピオイド未使用者の典型的な開始量(30 mg/日)の2倍になる。未使用者にそのまま当てはめず、速放製剤でので決めた量を基準にする
同上 ()8 mgを1日1回から 1日1回型の製剤。換算係数5で経口モルヒネ換算40 mg/日。⚠️ 米国の1日1回型のはの患者(経口モルヒネ60 mg/日などを1週間以上使用)専用で、耐性のない患者には致死的な呼吸抑制のおそれから禁忌とされる5。未使用者の開始量としてそのまま使わず、製剤の添付文書で確認する
同上 10 mgを1日1回から 2018年版の付録ではオピオイド未使用者に10 mgを12時間ごととし、には速放製剤2.5〜5 mgを4時間ごとに追加する2。の多くは1日2回の製剤なので、用法は製剤の添付文書で確認する
同上 50〜100 mgを1日4回 (第2段)。1日400 mgが一般的な上限
経皮 25〜100 µg/時を3日ごとに貼り替え 2018年版の付録は典型的な開始量を12〜25 µg/時・72時間ごととし、高度の・発熱・多汗の患者には使わないとする2。⚠️ 米国の添付文書は、をの患者(経口モルヒネ60 mg/日、経口30 mg/日、経口8 mg/日などを1週間以上使用)に限り、耐性のない患者・急性や短期の痛み・には禁忌としている6
同上 5〜70 µg/時を4日ごとに貼り替え 製剤により貼り替え間隔が異なる(低用量の5〜20 µg/時製剤は7日ごと、35〜70 µg/時製剤は最長4日ごとの製剤がある)
静注・皮下注 モルヒネ(塩)1回1〜10 mg 2018年版の付録では未使用者に2 mgを4時間ごとの静注・皮下注2。経口の約半量で等しい効果
モルヒネ1回1〜2 mgを静注または 患者がボタンで決められた量を追加投与し、で過量を防ぐ
同上 錠15 µgを専用装置から投与 と誤解されやすいが、実際はカートリッジを内蔵した装置から舌下に置く(飲み込まない)を患者自身が投与する方式で、主に術後のに使う

💡 は効き始めるまでに半日以上かかり、はがしても皮下に薬がたまっていて効果がしばらく続く。用量が安定した患者、飲み込めない患者、経口モルヒネに耐えられない患者に向き、痛みが急に変わる時期のには向かない。熱などで吸収が変わる点にも注意する4。

用量換算

CDC 2022年版の換算係数表

各オピオイドの1日量に換算係数を掛けると経口モルヒネ換算量(mg/日)になる4。

オピオイド 換算係数 計算の例
0.15 240 mg/日 → 36 mg/日
(µg/時) 2.4 12.5 µg/時 → 30 mg/日(経口モルヒネ換算30 mg/日=12.5 µg/時)、25 µg/時 → 60 mg/日。いずれも経口モルヒネ換算量を出す計算で、の用量の決め方ではない
ヒドロコドン 1 ヒドロコドン5 mg+325 mgの配合錠を1日4回 → 20 mg/日
5 8 mg/日 → 40 mg/日
4.7 ⚠️ 下の注意4を参照
モルヒネ 1 −
1.5 10 mgを1日2回(20 mg/日)→ 30 mg/日
オキシモルホン 3 −
0.4 100 mg/日 → 40 mg/日
0.2 200 mg/日 → 40 mg/日

自身が表に付けている注意は、換算そのものより重要である4。

  1. 単位は(µg/時)以外すべてmg/日。
  2. 換算は推定にすぎず、遺伝やのを反映できない。
  3. 換算量を、別のオピオイドへ切り替えるときの用量決定に使わない。 切り替えでは不完全なとののため、新しいオピオイドは計算値よりかなり低い量で始める。
  4. は半減期が長く変動し、呼吸抑制のピークが鎮痛のピークより遅れて長く続くので、とくに注意する。
  5. はµg/時で表し、熱などで吸収が変わるので、とくに注意する。
  6. はでがあるため、表に含めない。
  7. の治療の用量決定には使わない。
  8. (ノルアドレナリンも併せもつ)と(セロトニン・ノルアドレナリンも併せもつ)の係数はµ受容体への作用だけで決めてあり、の危険が同じように用量に比例するかは分かっていない。

⚠️ 2022年版は、がんに関連する痛み、・終末期医療には適用されない4。表の本来の目的は、非がん性疼痛で1日の総オピオイド量をして危険を見積もることである。がん疼痛の切り替えにはがん領域の換算表と臨床判断を使う。

対モルヒネ効力比の比較

欧州で使われてきた「経口モルヒネ10 mgに相当する量」の表を、 2022年版・ 2018年版の付録・MASCC等2025年の合意と並べる。自身も、付録の換算表は例として示したもので、の推奨と解釈すべきではないとしている2。どの列の値も、切り替えの計算の出発点にすぎない。

オピオイド 従来の欧州の表:比 従来の欧州の表:経口モルヒネ10 mg相当量 2022年版の係数4 2018年版付録の比2 MASCC等2025年の合意3
0.15 100 mg 0.15 1/10 −
0.1 100 mg − 1/10 −
0.1 100 mg 0.2 − 経口→経口モルヒネ 10:1(=0.1)
0.4 25 mg 0.4 1/3 経口→経口モルヒネ 3:1(≒0.33)
1.5 6.6 mg 1.5 1.5(製造元は2) 経口モルヒネ→経口 1.5:1、逆向きは1:1〜1:2
5 2 mg 5 4〜5(製造元は5〜7.5) 経口モルヒネ→経口 5:1
  • の行は、比0.15なら10 mg相当は約67 mgになるはずで、100 mgという値は比0.1(付録の1/10)に対応する。どちらの数字で覚えるかで計算が変わるので、使う表を1つに決めておく。
  • は表によって0.1と0.2で2倍違う。の0.2は危険の見積もり用の数字で、がん疼痛の切り替えの合意(10:1)とは一致しない。
  • では向きによって比が違う(モルヒネ→は1.5:1だが、→モルヒネは1:1〜1:2の幅)3。換算比が双方向に対称とは限らないことも、減量して始める理由の一つである。

フェンタニル貼付剤と経口モルヒネ

従来の欧州の表では、25 µg/時=経口モルヒネ60 mg/日とする。の係数2.4でも(25×2.4=60)、 2018年版付録の100:1でも(25 µg/時×24時間=0.6 mg/日、その100倍)同じ対応になる。

経口モルヒネ(mg/日) 静注・皮下注モルヒネ(mg/日) (µg/時)
30 15 12
60 30 25
90 45 37.5
120 60 50
180 90 75
240 120 100

( 2018年版付録の表A6.4。経口と静注・皮下注のモルヒネ比は2:1を仮定2)

⚠️ この表は換算上の対応であり、そのまま切り替えの用量にしない。切り替えでは上に述べた減量の原則が当てはまる。米国の添付文書の換算表は、経口モルヒネ60〜134 mg/日を25 µg/時に当てるなど保守的に作られた一方向の表で、逆向き(から他のオピオイドへ)に使うと新しい薬の量を過大に見積もり、致死的な過量になりうる6。表の12 µg/時(経口モルヒネ30 mg/日)の行は計算上の値で、米国の添付文書ではのない患者へのの使用は禁忌である6。

⚠️ へ切り替えるときは、の効果が出るまで前の徐放製剤の最後の1回分やで橋渡しをする。から外すときも、皮膚に残った薬の効果がしばらく続くので、次の薬は少なめに始める。

突出痛

定義と治療

は、を定時投与して背景の痛みが抑えられているがん患者に起こる、一過性の強い痛みである。治療は、のオピオイドを短時間だけする()。

  • ・錠(頬の内側に貼る)の
  • 100〜800 µg、1日4回まで
  • 量は1日量の1/6がな目安

2018年版は、をオピオイド(モルヒネなど)ので治療することを実践上の声明とし、定時の4時間量の50〜100%を考慮してよいとする2。MASCC等2025年の合意は、当初はモルヒネ換算1日量の10〜15%のオピオイド(できれば定時と同じ薬)を使い、効果(痛みの30〜50%減少)で調整するとした3。

目安 1日量120 mgの経口モルヒネを使う患者での1回量
従来の1/6 20 mg
2018年版:4時間量(20 mg)の50〜100% 10〜20 mg
MASCC等2025年:1日量の10〜15% 12〜18 mg

⚠️ ・点鼻のには「1日量の1/6」を当てはめない。 MASCC等の合意は、オピオイドでもでも、に要る量は定時量とあまり相関しないので個別にするとしている3。 2018年版の付録は、を1週間以上定時の(経口モルヒネ60 mg/日、25 µg/時、経口8 mg/日、経口30 mg/日などの相当量以上)を使っているの患者のに限り、最小量から始めること、製剤の間で生物学的に同等ではなく互換性がないため、製品を始めるときも変えるときも最小量からし直すことを求めている2。オピオイド未使用者に使うと呼吸抑制の危険が高い。

flowchart TD
  A["定時の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='strong opioids'>強オピオイド</span>で<br>背景の痛みは抑えられている"] --> B["一過性の強い痛み=<span class='jp-term jp-term-diagram' title='breakthrough pain'>突出痛</span>"]
  B --> C{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='opioid tolerance'>オピオイド耐性</span>か<br>(モルヒネ60 mg/日相当以上を1週間以上)"}
  C -->|"はい"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immediate-release'>速放性</span>経口オピオイド<br>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transmucosal'>経粘膜</span>・点鼻<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fentanyl'>フェンタニル</span>"]
  C -->|"いいえ"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immediate-release'>速放性</span>経口オピオイドの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rescue'>レスキュー</span>"]
  D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transmucosal'>経粘膜</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='fentanyl'>フェンタニル</span>は<br>最小量から個別に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='titration'>滴定</span>"]
  E --> G["1日量の10〜15%<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Traditional'>伝統的</span>には1/6)から"]
  F --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rescue'>レスキュー</span>の回数が多ければ<br>定時量を見直す"]
  G --> H

💡 1日の回数は定時量が足りているかの指標になる。何度も使うなら、背景の痛みのコントロールが不十分と考えて定時量を見直す。

化学療法誘発性末梢神経障害

慢性がん治療後疼痛のうち、薬による痛みの代表がである(末梢神経障害)。多くは感覚優位で遠位・左右対称の「」になる。

薬剤別の臨床像

薬 感覚 運動 反射 自律神経 回復
:シスプラチン 遠位・左右対称で全の低下、。痛みを伴うまたは 正常 感覚障害に比例して低下 まれ 部分的。中止後も数か月進行しうる
同様だがシスプラチンより軽い 正常 通常は正常 まれ シスプラチンと同様
(急性) 寒冷で誘発される口・咽頭・上肢の 咽頭の筋の痙攣・攣縮 通常は正常 なし 1週間以内に軽快するが、2週ごとのサイクルの合間にも持続しうる。化学療法の終了後に改善する
(慢性) シスプラチンと同様。治療中は上肢の症状が強いが、終了後は上肢が下肢より早く改善し、終了1年後には下肢のほうが強い 正常 通常は正常 まれ 終了後およそ3か月で改善し始めるが、一部の患者では慢性の問題になる
:、、、 下肢遠位の、上肢はまれ。・は神経毒性が弱い。でまれに 頻度は低いが、下肢遠位の対称性筋力低下がへ進むことがある 早期から低下・消失 便秘が多い(とくに)。は少ない 通常3か月以内に回復。では持続しうる
:、 軽度の遠位の全の低下、手より足で強い。痛みを伴う ときに足の筋の軽い筋力低下。筋肉痛、 の低下 まれ 治療後に改善することが多いが、約50%で1年後も症状が残る
軽度〜中等度の遠位・対称性の全の低下。痛みを伴う ときに下肢遠位の軽い筋力低下。高度の筋力低下、・はまれ 感覚障害に比例して低下 ときにあり:、下痢、便秘 通常3か月以内に回復するが、持続しうる
イキサベピロン 痛みを伴う、遠位の 10〜16%で筋力低下 まれ まれ 中止後に改善することが多い
、、 軽度〜中等度の遠位・対称性の全の低下 30〜40%で筋力低下と振戦。・が多い 感覚障害に比例して低下 便秘。そのほか(、徐脈)はまれ 部分的に回復。1年以上続くことがある

💡 のは、神経細胞膜のへの作用による一過性の過興奮で、冷たい飲食物や外気で誘発される。慢性症状はの障害による性ので、ほかのと同じ型になる。は微小管を壊して長い軸索の輸送を止めるため、運動・自律神経(便秘)まで障害が及びやすい。

慢性疼痛としての診断基準

による慢性疼痛の中核的な(AAPTの慢性がん性疼痛の、2017年)は次の6項目である。

番号 基準
1 神経毒性が知られているへの曝露のあとに痛みが始まった
2 痛みを伴う症状が左右対称のに分布し、下肢から始まって上肢へ広がりうる(足にあって手にないことも多い)
3 痛みを伴う症状に、同じ分布の痛みを伴わない症状(ピリピリ感・)を伴う
4 診察で、の分布に1つ以上のの低下や誘発痛があり、次の少なくとも1つで確かめられる:触覚・振動覚・痛みを伴わない温の検出閾値の両側性上昇/鈍的圧迫・ピン刺激に対する痛覚閾値の両側性上昇/侵害性の熱・に対する痛覚閾値の両側性低下
5 障害部位で、感覚の異常が運動の異常より不釣り合いに大きい(による神経障害は例外)
6 痛みを説明できるほかの病態(ほかの原因によるなど)がない

プレガバリンの臨床報告(2014年の総説)

のへの臨床報告をまとめた総説(Verma 2014)は次のように整理した。

痛みの種類 用量・期間 主な結果
有痛性 150〜600 mg/kg※、4〜14週 2週以内に痛みと関連症状が改善し、試験期間を通じて持続。めまい・傾眠・浮腫・体重増加・などの軽度〜中等度の副作用。心機能が低下していた患者での障害が悪化
化学療法誘発性の 75〜300 mg/日、2〜8週 ・・/シスプラチンによる難治性の痛みに、全年齢層で単剤でもほかのとの併用でも有効
150〜600 mg/日、8〜13週 軽度〜中等度の副作用で著明に痛みを軽減。の6倍の力価。軽度〜中等度のめまい
150〜600 mg/日、4〜12週 ほかの全般的な指標も改善し、持続する有意な鎮痛。とが良い。めまい・傾眠・浮腫・口渇など
150〜600 mg/kg※、8週 持続する鎮痛
300〜600 mg/日、術前・術後 を軽減し、オピオイドの使用量を減らした

※ 150〜600 mg/kgという単位は、の成人量(1日150〜600 mg)から見て、mg/日の誤りと考えられる。「6倍の力価」は同じ効果を得る量が少ないという意味で、効果の大きさが6倍という意味ではない。

⚠️ 現行のASCO 2020年版の指針では、確立した有痛性のに根拠をもつ薬はだけで、提案してよい(中等度)が効果の大きさは限られる。・、、(・±)、経口については、の枠外では推奨を示せない(推奨なし)とした7。予防に推奨できる薬はなく、・、、カルバマゼピンなどを予防目的に使わない。耐えがたい神経障害や機能障害が出たら、化学療法の延期・減量・変更・中止を検討する7。上の総説の化学療法誘発性疼痛の報告は、小規模・非対照の研究を含む当時の整理として読む。

強オピオイドの副作用

副作用 頻度 耐性 対応と現行の注意
便秘 100% あり できない 開始と同時に下剤を定時で併用する(次節)
悪心・嘔吐 20% なし できる(5〜7日) 開始時にを頓用・短期併用。続けば切り替えを考える
鎮静 開始時に20% あり できる(3〜4日) 増量直後に出やすい。持続・悪化は過量や腎障害による蓄積を疑う
2% あり できない せん妄の原因検索。オピオイド誘発性神経毒性なら減量・切り替え3
1% なし できない 同上
呼吸抑制 腫瘍の患者ではほとんどみられない(痛みが強力な呼吸刺激になるため) − − ⚠️ 下記
依存 腫瘍の患者ではほとんどみられない − − ⚠️ は必発。は長期では起こりうる

💡 便秘だけ耐性ができないのは、腸管の神経叢にあるµ受容体への作用が持続するからである。吐き気(への作用)や眠気には数日で耐性ができるので、開始後しばらくの我慢と対症療法で乗り切れることが多い。

⚠️ 「呼吸抑制はほとんど起こらない」は、痛みに見合った量を少しずつした場合の話である。呼吸抑制は大量投与で起こりうる副作用で2、次のようなときに危険が高まる。

  • や放射線治療などで痛みが急に取れたとき(呼吸を刺激していた痛みがなくなる)
  • 腎機能が悪化し、モルヒネのが蓄積したとき
  • 急速な増量、の導入、オピオイド未使用者への
  • ベンゾジアゼピンなどの鎮静薬との併用

呼吸抑制に先立って眠気が強まるので、鎮静の程度と呼吸数を観察する。治療はで、0.08〜0.12 mgを2〜3分ごとに十分な呼吸が戻るまで静注する。長期使用者では一度に多く使うと激しいと痛みのを招くので少量ずつし、は作用が短いので20〜60分ごとの反復や持続静注が要ることがある2()。

オピオイド誘発性腸症候群

2つの病態を分ける

オピオイドによる消化管の障害は、便秘だけにとどまらない。「オピオイド腸症候群」としてまとめて語られる症状と機序には、性質の違う2つの病態が含まれる。

項目 オピオイド誘発性腸機能障害 麻薬性腸症候群
位置づけ オピオイドを使う患者の多くに起こる消化管の副作用 オピオイド腸機能障害の一部で、頻度は低いが見逃されやすい
中心の症状 高度の便秘、硬く乾いた便、腹部膨満、の低下、消化管の通過遅延、逆流 慢性または頻回に反復する腹痛が、オピオイドを続け・増やしているのに悪化する8
主な機序 のµ受容体を介する末梢の作用 中枢の痛覚促進(と共通の機序)
治療の中心 定時の下剤、末梢性µ受容体拮抗薬 計画的なオピオイドの段階的な離脱と、を和らげる薬の併用8

症状

  • 高度の便秘、硬く乾いた便の形成
  • 慢性または反復性の腹痛(差し込むような痛み、痙攣)
  • の低下、腹部膨満
  • 消化管の通過遅延

機序

flowchart TD
  A["オピオイド"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='enteric plexus'>腸管神経叢</span>のµ受容体"]
  B --> C["蠕動の抑制・分節収縮の増加<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Transit time'>通過時間</span>の延長"]
  B --> D["腸液分泌の抑制<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='water absorption'>水分吸収</span>の増加"]
  B --> E["括約筋の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypertonia'>緊張亢進</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='gastric emptying'>胃排出</span>の遅延"]
  C --> F["硬く乾いた便・便秘・膨満"]
  D --> F
  E --> G["逆流・悪心"]
  F --> J["オピオイド誘発性腸機能障害"]
  G --> J
  A --> H["中枢の痛覚促進<br>抗鎮痛経路・下行性促進・グリア活性化"]
  H --> I["麻薬性腸症候群<br>増量しても腹痛がかえって悪化"]

麻薬性腸症候群で、オピオイドを使っているのに腹痛が強まっていく理由として、次の中枢の機序が挙げられている8。

  • 興奮性の抗鎮痛経路の活性化
  • 延髄からの下行性の痛覚促進
  • との活性化による痛覚促進
  • の活性化。モルヒネの耐性を生み、オピオイド誘発性の痛みを強める

💡 これらは、オピオイドを増やすほど痛みに敏感になるを説明する機序と共通する。ただし麻薬性腸症候群はそのものの別名ではなく、腹部に現れるな痛みのである。便秘による腹痛なら排便で軽くなるが、麻薬性腸症候群ではオピオイドの増量が痛みを悪化させるので、「痛いから増やす」が悪循環になる。増量のたびに腹痛が強まるなら、この病態を疑ってオピオイドの減量・離脱を考える。

治療

目的 薬 ポイント
便秘 下剤:、(酸化など)。(、)や(、)も使う 耐性ができないので、オピオイドの開始と同時に定時で始める
逆流 (など)または の遅延による逆流症状に
下剤で効かない便秘(比較的新しい薬) 皮下注、経口(との配合剤) 末梢だけでµ受容体を遮断し、鎮痛を妨げない

💡 なぜ鎮痛が消えないのか:は(窒素に4つの置換基がつき常に陽電荷をもつ)なので、血液脳関門を通らず脳に入らない。経口のは、腸管では局所でµ受容体を遮断するが、吸収されると肝臓ので代謝されるため、全身にはほとんど届かない。「で100%代謝される」と覚えられることが多いが、正確にはほぼすべて(経口のは数%)である。同じ考え方で作られたとして、の・ナロキセゴールもある。

⚠️ 高度の肝障害では経口のが落ちて全身に回り、鎮痛の減弱やを起こしうる。は、腸閉塞やその疑いがある患者には使わない(穿孔の危険)。

まとめ

  • ICD-11の慢性がん関連疼痛は、がんそのもの・転移による「慢性がん性疼痛」(内臓・骨・)と、治療による「慢性がん治療後疼痛」(薬・放射線・手術)に分かれ、慢性二次性疼痛の1群である。
  • ラダー:非オピオイド→→の3段に、痛みの型に応じた鎮痛補助薬を足す。第1・2段にはがある。定時投与・経口/経皮・段階的導入・迅速な・効果の評価が原則。改訂版は第1段から第3段への飛び越しや、インターベンショナル治療の第4段を加えた。
  • 2018年版はラダーを教育ツールと位置づけ、中等度以上の痛みは最初からオピオイドを併用し、経口モルヒネの定時投与+モルヒネのを基本とする。
  • は不完全なので、耐性が強いときはローテーションを試す。換算比は等鎮痛量ではなく、新しいオピオイドは計算値より少なめ(条件によって約50%減)から始めてし直す。はが扱う。
  • 2022年版の換算係数:0.15、2.4(µg/時)、ヒドロコドン1、5、4.7、モルヒネ1、1.5、オキシモルホン3、0.4、0.2。ただしがん疼痛には適用されず、切り替えの用量決定にも使わない。
  • 25 µg/時=経口モルヒネ60 mg/日(12.5 µg/時=30 mg/日)。は表によって0.1と0.2で違い、の比と相当量の組み合わせにも表の間で食い違いがある。
  • にはオピオイドの。には1日量の1/6、現行の合意では10〜15%から。・点鼻は患者に限り、最小量からする(点鼻は100〜800 µg、1日4回まで)。
  • は薬ごとに型が違う(の寒冷誘発性の、の運動・、は約50%で1年後も残る)。治療の根拠があるのはだけで、予防薬はない。
  • の副作用のうち便秘は100%で耐性ができない。悪心(5〜7日)と鎮静(3〜4日)には耐性ができる。呼吸抑制はしていればまれだが、痛みが急に取れたときや腎障害・急速な増量では起こりうるので、眠気を早期のとして観察し、は少量ずつする。
  • オピオイド誘発性腸機能障害には定時の下剤、逆流には・、難治例には末梢だけで働く()や経口(でほぼ代謝)を使う。オピオイドを続け・増やしているのに腹痛が悪化するなら、と共通の中枢機序による麻薬性腸症候群を疑い、増量ではなく段階的な離脱を考える。

出典

  1. 2.WHO Guidelines for the Pharmacological and Radiotherapeutic Management of Cancer Pain in Adults and Adolescents(World Health Organization・2018)WHO IRIS のPDF(ISBN 9789241550390、Wayback Machine 2023-03-20保存版)で逐語を確認した。1986年の3段階ラダーは有用な教育ツールだが厳密な治療手順ではないこと(付録1の図A1.1に一般的な手引きとして残す)、中等度〜高度の痛みに弱い鎮痛薬だけで開始せずオピオイドを併用して開始してよいこと(強い推奨・低い質)、維持にはどのオピオイドを用いてもよいこと、経口モルヒネ(速放または徐放)を定時投与し速放性経口モルヒネをレスキューに用いること(強い推奨・中等度)、経口・経皮が使えなければ筋注より皮下注、身体依存が生じたら漸減すること、ステロイド(強い推奨・中等度)、骨転移へのビスホスホネート(強い推奨・中等度)と単回照射の放射線治療(強い推奨・高い質)、抗うつ薬・抗けいれん薬・オピオイドローテーションは有効性の根拠が乏しく個別に試して無効なら中止すること、突出痛は速放性オピオイドのレスキューで治療し定時の4時間量の50〜100%を考慮すること。表2の薬の群と例。付録6で、経粘膜フェンタニルは1週間以上の定時強オピオイド(経口モルヒネ60 mg/日、フェンタニル貼付剤25 µg/時、経口ヒドロモルホン8 mg/日、経口オキシコドン30 mg/日などの最小量)を使うオピオイド耐性患者の突出痛に限り、最小量から始め、製剤間で生物学的に同等でなく互換性がないため開始時も切り替え時も最小量から滴定し直すこと、換算表は例示でありWHOの推奨と解釈すべきでないこと、表A6.1の典型的な開始量(経口モルヒネ5 mgを4時間ごと、フェンタニル貼付剤12〜25 µg/時を72時間ごと、高度の悪液質・発熱・多汗では使わない)、徐放性モルヒネと徐放性オキシコドン(10 mgを12時間ごと)の用法、表A6.2の対モルヒネ効力比(コデイン・ジヒドロコデイン1/10、タペンタドール1/3、オキシコドン1.5、ヒドロモルホン4〜5、メタドン5〜10で専門家の助言を要する、経皮ブプレノルフィン100、経皮フェンタニル100)、表A6.4の経口モルヒネと貼付剤の対応(100:1、30 mg/日=12 µg/時、60 mg/日=25 µg/時など)、高用量(モルヒネ換算1 g/日以上)・高齢や虚弱・耐えがたい副作用・直前の急な増量のときは計算上の等価量から約50%減らすのが賢明であること、ナロキソンは0.08〜0.12 mgを2〜3分ごとに静注し離脱を避けるため慎重に用いること。2026-09-27の最終照合で、付録6のナロキソンの項に初回反応後も作用が短いため20〜60分ごとの反復や持続静注が要りうること、モルヒネの項に大量で呼吸抑制が起こること・経口量は注射量のおよそ2倍であること、表A6.1にオピオイド未使用者の静注・皮下注モルヒネ2 mgを4時間ごと、オキシコドン速放製剤2.5〜5 mgを4時間ごとの頓用(徐放製剤10 mgを12時間ごとに併用)があること、表A6.2の括弧内が製造元の推す効力比(オキシコドン2、ヒドロモルホン5〜7.5)であることを確認した。閲覧 2026-09-27
  2. 3.Opioid conversion in adults with cancer: MASCC-ASCO-AAHPM-HPNA-NICSO guideline(Supportive Care in Cancer(MASCC・ASCO・AAHPM・HPNA・NICSO)・2025)抄録(PMID 40029420)と、ASCO・MASCC公式の要約スライド(mascc.org 掲載のPDF)で推奨文を確認した。換算比は等鎮痛量と混同せず離脱と過量を避ける目安にすぎず個別に調整すること、まずモルヒネ換算の1日量を計算する2段階の方法、変更を考える状況(増量しても痛みが取れない・増量に耐えられない、副作用が持続する、錯乱・過度の眠気・幻覚・痛覚過敏・ミオクローヌスなどの神経毒性、薬物動態上の理由、入手性や費用)、トラマドール・コデインはCYP2D6の影響を受けること、メタドンへの変更は経験のある医師が行いQTcを監視すること、突出痛には当初モルヒネ換算1日量の10〜15%の速放性オピオイドを用い、必要量は定時量と相関が弱いため個別に滴定すること、合意された換算比(経口モルヒネ→経口オキシコドン1.5:1、経口ヒドロモルホン5:1、経口オキシコドン→経口モルヒネ1:1〜1:2、経口トラマドール→経口モルヒネ10:1、経口タペンタドール→経口モルヒネ3:1、皮下と静注は1:1など)。2026-09-27の最終照合で、ASCO公式の推奨表(mascc-table-v2)に、切り替え前の評価として本人と家族の薬物の誤用・乱用・嗜癖・横流しの既往と肝・腎機能の評価が挙がること、重い腎障害ではブプレノルフィン・フェンタニル・メタドン、重い肝疾患ではヒドロモルホンかモルヒネを考慮すること、突出痛の用量は痛みの30〜50%減少を反応として調整することを確認した。閲覧 2026-09-27
  3. 4.CDC Clinical Practice Guideline for Prescribing Opioids for Pain — United States, 2022(Centers for Disease Control and Prevention(MMWR Recommendations and Reports)・2022)Europe PMCの全文(PMC9639433)で逐語を確認した。経口モルヒネ換算量の換算係数表(コデイン0.15、経皮フェンタニル〔µg/時〕2.4、ヒドロコドン1.0、ヒドロモルホン5.0、メタドン4.7、モルヒネ1.0、オキシコドン1.5、オキシモルホン3.0、タペンタドール0.4、トラマドール0.2)と脚注の注意(フェンタニル以外はmg/日、換算は推定にすぎない、換算値で別のオピオイドの用量を決めず不完全な交差耐性のため新しいオピオイドは計算値よりかなり低い量で始める、メタドンと経皮フェンタニルは特に注意、ブプレノルフィンは部分作動薬で天井効果があるため表に含めない、タペンタドールとトラマドールは再取り込み阻害作用をもつ)。この指針は鎌状赤血球症やがんに関連する痛み、緩和ケア・終末期医療には適用されないこと。閲覧 2026-09-27
  4. 5.HYDROMORPHONE HYDROCHLORIDE extended-release tablets — Prescribing Information (Padagis US LLC)(米国FDA(DailyMed収載の添付文書)・2025)DailyMed APIで取得した添付文書(2025年12月版)で、徐放性ヒドロモルホン錠がオピオイド耐性患者に1日1回投与する製剤であり、オピオイド耐性を1週間以上、経口モルヒネ60 mg/日、経皮フェンタニル25 µg/時、経口オキシコドン30 mg/日、経口ヒドロモルホン8 mg/日などを使っている患者と定義すること、オピオイド耐性のない患者では致死的な呼吸抑制が起こりうるため禁忌であることを確認した。閲覧 2026-09-27
  5. 6.FENTANYL transdermal system — Prescribing Information (SpecGx LLC)(米国FDA(DailyMed収載の添付文書)・2026)DailyMed APIで取得した添付文書(2026年1月改訂)で、フェンタニル貼付剤の適応がオピオイド耐性患者に限られ、オピオイド耐性を1週間以上、経口モルヒネ60 mg/日、経皮フェンタニル25 µg/時、経口オキシコドン30 mg/日、経口ヒドロモルホン8 mg/日などを使っている患者と定義すること、オピオイド耐性のない患者・急性や間欠的な痛み・術後痛・軽度の痛みには禁忌であること、他のオピオイドから貼付剤への換算表(経口モルヒネ60〜134 mg/日→25 µg/時など)は等鎮痛量の表ではなく保守的に作られているため、貼付剤から他のオピオイドへの換算に使うと新しい薬の量を過大に見積もり致死的な過量になりうることを確認した。閲覧 2026-09-27
  6. 7.Prevention and Management of Chemotherapy-Induced Peripheral Neuropathy in Survivors of Adult Cancers: ASCO Guideline Update(American Society of Clinical Oncology(Journal of Clinical Oncology)・2020)出版社ページのWayback Machine保存版(20211215171954)の本文で逐語を確認した。予防に推奨できる薬はなく、ガバペンチン・プレガバリン、ベンラファキシン、カルバマゼピンなどを予防に用いないこと(推奨1.4)、アセチル-L-カルニチンは用いないこと、耐えがたい神経障害や機能障害が出たら化学療法の延期・減量・変更・中止を検討すること、確立した有痛性の化学療法誘発性末梢神経障害にはデュロキセチンを提案してよい(推奨3.1。根拠は中間、推奨の強さは中等度、効果の大きさは限られる)こと、ガバペンチン・プレガバリン、三環系抗うつ薬、バクロフェン・アミトリプチリン±ケタミンの外用ゲル、経口カンナビノイド、運動療法・鍼治療・スクランブラー療法については、臨床試験の枠外では推奨を示せない(推奨なし)としたこと(推奨3.2)。2026-09-27に監査で同じ保存版の推奨1.4・3.1・3.2の逐語を再確認した。閲覧 2026-09-27
  7. 8.The narcotic bowel syndrome: clinical features, pathophysiology, and management(Clinical Gastroenterology and Hepatology・2007)抄録(PMID 17916540)で、麻薬性腸症候群をオピオイド腸機能障害の一部で、オピオイドを継続・増量しているのに悪化する慢性または頻回に反復する腹痛を特徴とする症候群と定義し、痛覚の増強の根拠として興奮性の抗鎮痛経路の活性化、延髄吻側腹内側部からの下行性の痛覚促進とダイノルフィン・コレシストキニンによる痛覚促進、モルヒネ耐性を生みオピオイド誘発性の痛みを強めるグリア細胞の活性化を挙げ、治療は症候群の早期認識、医師と患者の良好な関係、決められた計画による段階的なオピオイドの離脱、離脱症状を減らす薬の併用であることを確認した。閲覧 2026-09-27