臨床薬理学

臨床薬理学 · 41

非がん性の侵害受容性疼痛・慢性疼痛・急性疼痛の薬物療法

Non-cancer nociceptive, chronic and acute pain

前提:病態
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)オピオイド

🧠 全体像:がんではないの薬物療法は、「はしごをどちら向きに使うか」で整理できる。慢性の痛みではのラダーを下から上り、の長期使用は勧められない。急性の痛み(術後・外傷・疝痛)ではラダーを180°回して上から下りる——最初に十分に強く効かせ、治癒とともに段を下げる。どちらでも最初の仕事は、痛みがかかを見分け、原因の病気を治し、運動などのを土台にすることである。慢性疼痛はICD-11で慢性一次性疼痛(痛みそのものが病気)と慢性二次性疼痛(基礎疾患で説明できる)に分かれ、慢性一次性疼痛の薬物療法は抗うつ薬だけが勧められ、・オピオイド・などは新たに始めない。

出発点:痛みの型を決め、原因を治す

非がん性の痛みの治療は、次の3段で考える。

  1. 痛みの型を決める。 (組織の損傷・炎症でが働く痛み)か、(神経そのものの病変による痛み)かで、効く薬がまったく違う。型の見分け方は痛みの定義・評価・分類、の薬はとの治療で扱う。
  2. なら、まず病気そのものを治すか、原因を薬以外の方法で取り除く。 例えば関節リウマチの痛みは、を足すよりで炎症を抑えるほうが根本的である(関節リウマチの薬物療法)。の痛みなら運動やマッサージが原因への介入になる。
  3. は、患者ごとに危険を評価してから選ぶ。 は急性期なら使えるが、慢性の痛みへの長期使用は勧められない。長く使うほど耐性(同じ効果に必要な量が増える)と本物の依存の危険がはるかに大きくなるからである。
flowchart TD
  A["がんではない痛み"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nociceptive'>侵害受容性</span>か<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='neuropathic'>神経障害性</span>か"}
  B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neuropathic'>神経障害性</span>"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neuropathic pain'>神経障害性疼痛</span>の治療<br>(抗うつ薬・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gabapentinoid'>ガバペンチノイド</span>など)"]
  B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nociceptive'>侵害受容性</span>"| D["原因の病気を治す<br>例:関節リウマチの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='disease-modifying therapy'>疾患修飾療法</span>"]
  D --> E["原因への<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Non-pharmacological'>非薬物療法</span><br>運動・マッサージ・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Lifestyle'>生活習慣</span>"]
  E --> F["危険を評価して<span class='jp-term jp-term-diagram' title='analgesic'>鎮痛薬</span>を選ぶ"]
  F --> G{"急性か慢性か"}
  G -->|"急性"| H["強い段から始めて<br>治癒とともに下げる(逆ラダー)"]
  G -->|"慢性"| I["弱い段から始める<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='strong opioids'>強オピオイド</span>の長期使用は避ける"]

2つのラダー:上るか、下りるか

WHOの3段階ラダー

のラダーは、本来はがん性疼痛のために作られた3段のである(詳細と各オピオイドはがん性疼痛とオピオイド療法が扱う)。

段 対象 使う薬 次の段へ進む条件
第1段 痛み全般の出発点 ± 鎮痛補助薬 痛みが続くか強まる
第2段 軽度〜中等度の痛み 軽度〜中等度の痛み用のオピオイド ± 非オピオイド ± 鎮痛補助薬 痛みが続くか強まる
第3段 中等度〜高度の痛み 中等度〜高度の痛み用のオピオイド ± 非オピオイド ± 鎮痛補助薬 最上段の目標は「がんの痛みからの解放」

💡 ±(加えても加えなくてもよい) が要点である。上の段に上がっても非オピオイドや鎮痛補助薬を捨てるのではなく、必要に応じて重ねる。鎮痛補助薬は、本来はではないが特定の痛みに効く薬(抗うつ薬・・副腎皮質ステロイドなど)を指す。

慢性の非がん性侵害受容性疼痛:下から上る

慢性の非がん性では、ラダーは下から使う。ただしがん性疼痛と違って、第3段のを長く続けることは勧められない。余命の限られたがん性疼痛と違い、慢性の非がん性疼痛の患者は何年も薬を飲み続けるため、耐性・依存の害が積み重なる。

急性の非がん性侵害受容性疼痛:ラダーを180°回す

急性の痛みでは治療の段を3→2→1の順に使う。のラダーを180°ひっくり返したもので、「逆ラダー」と呼ばれる。

flowchart TD
  subgraph S1["慢性の痛み:下から上る"]
    C1["第1段<br>非オピオイド ± 補助薬"] -->|"痛みが続く・強まる"| C2["第2段<br>弱い段のオピオイドを追加"]
    C2 -->|"痛みが続く・強まる"| C3["第3段<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='strong opioids'>強オピオイド</span><br>(非がん性では長期使用を避ける)"]
  end
  subgraph S2["急性の痛み:上から下りる"]
    A3["第3段から開始<br>強い鎮痛で痛みを確実に抑える"] -->|"組織が治り痛みが引く"| A2["第2段へ下げる"]
    A2 -->|"さらに軽快"| A1["第1段へ下げる<br>やがて中止"]
  end

💡 なぜ急性では上から始めるのか。 急性の痛みは原因(手術・骨折・結石)がはっきりしていて、時間とともに必ず弱まる。最初に十分に抑えれば、痛みによる不動・不眠・交感神経の緊張を防げ、回復が早まる。一方、慢性の痛みには「治って自然に下りる」時間の流れが無いので、上から始めると強い薬から降りられなくなる。

侵害受容性疼痛の非薬物療法

で用いられてきたは次のとおりである。

  • 運動療法:太極拳やウォーキングのような全身的な運動と、による標的を絞った運動がある。では、患者を動かないままにさせないことが最も大事な仕事で、それが急性から慢性への移行を防ぐ。
  • その他の:、マッサージ
  • の改善

💡 で「安静にさせない」理由。 痛みを恐れて動かないでいると、筋力と体力が落ち、動くことへの恐怖と痛みへのとらわれが強まり、痛みそのものが持続する悪循環に入る。この悪循環が、急性のが慢性化する主な経路の一つとされる。

現行のNICEガイドラインとの対比

同じ手段でも、対象の痛みによって現行ガイドラインの評価は分かれる。

手段 従来の整理 NG193(2021):慢性一次性疼痛 NG59(2016、2026改訂):・
運動療法 全身・標的の運動、では不動を避ける 16歳以上に監督下の集団運動プログラムを勧め、の継続を促す1 通常の活動を続けるよう助言し、集団運動プログラムを考慮する2
の一つ 効果の証拠が無いとして、超音波・干渉波療法とともに行わない1 行わない(・超音波・干渉波療法も同様)2
マッサージ の一つ は証拠が乏しく、診療の推奨は作られていない(研究推奨のみ)1 運動を含む治療パッの一部としてだけ考慮する2
選択肢の一つ アクセプタンス・コミットメント療法またはを考慮する。は行わない1 と身体・心理の複合プログラムの推奨は2026年7月に取り下げられた。定期の見直しで内容が古くなっている可能性が示されたが、この領域の改訂が優先されなかったためで、を否定したわけではない2
選択肢の一つ 条件(地域での実施・医療者の時間5時間以内など)を満たす1コースを考慮する1 行わない2
・社会生活 の改善 の継続 復職と日常生活の再開を促す2

⚠️ 「ならどれでもよい」ではない。 運動療法はどの痛みでも勧められる一方、は両ガイドラインとも行わないとし、は慢性一次性疼痛では条件付きで考慮、では行わないと割れている。対象の痛みを特定してから選ぶ。

慢性疼痛の分類:ICD-11

慢性疼痛とは、3か月を超えて持続または再発する痛みである3。ICD-11はこれを、痛みの原因となる基礎疾患で説明できるかどうかで2つに分ける3。

区分 定義 含まれる病態
慢性一次性疼痛 痛みやその影響を十分に説明する基礎疾患が無い などの

慢性頭痛と口腔顔面痛(例:片頭痛)
慢性内臓痛(例:胸痛症候群、、症候群)
慢性疼痛(口腔顔面を除く):、胸部痛、、
慢性二次性疼痛 基礎疾患が痛みやその影響を十分に説明する 慢性がん関連疼痛
慢性二次性内臓痛(例:、)
慢性二次性疼痛(例:、関節リウマチ、痛風)
慢性・口腔顔面痛
慢性術後・外傷後疼痛
慢性(例:)

⭐ 慢性一次性疼痛と慢性二次性疼痛は共存しうる。 例えば変形性症(二次性)の患者に(一次性)が重なることがある。 NG193も同じ定義をとり、両者が共存しうると明記している1。

慢性一次性疼痛の診断には、「基礎疾患で説明できない」ことに加えて、痛みが3か月を超えて続き、著しい情動的苦痛または機能障害を伴い、他の病態でよりよく説明されないことが求められる4。生物学的・心理学的な要因が見つかっても、他の診断がよりよく説明しない限りこの診断は使える4。

💡 「一次性」は「原因不明の」という意味ではない。 慢性一次性疼痛は、生物・心理・社会の要因がすべて関わるの病態とみなされ4、機序の面では中枢での痛みの処理が変わったと重なる部分が大きい。痛みそのものを治療の標的にする、という点で二次性疼痛と治療の考え方が変わる。

flowchart TD
  A["3か月を超えて続く・繰り返す痛み<br>=慢性疼痛"] --> B{"痛みとその影響を<br>基礎疾患で十分に説明できるか"}
  B -->|"できない"| C["慢性一次性疼痛<br>情動的苦痛または機能障害を伴う"]
  B -->|"できる"| D["慢性二次性疼痛"]
  C --> E["痛みそのものを治療する<br>運動・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='psychotherapy'>心理療法</span>・鍼・抗うつ薬"]
  D --> F["基礎疾患の治療と<br>その疾患のガイドラインに従った鎮痛"]
  C -.->|"共存しうる"| D

慢性一次性疼痛の治療:NICE NG193

治療の全体像

区分 勧められるもの 行わない・新たに始めないもの
運動プログラム、(など)、 ・超音波・干渉波療法、1
薬物療法 抗うつ薬(、、、など) 、、オピオイド、、副腎皮質ステロイド、など

慢性一次性疼痛には、抗うつ薬以外のの有効性を示す証拠が無い。これを現行のNG193の推奨と並べると、細部の違いが見える。

論点 従来の整理 現行( NG193)
抗うつ薬の種類 、、、 この4剤に、を加えた6剤のいずれかを考慮する1
年齢 記載なし 18歳以上で考慮し、16〜17歳では専門医に相談する1
位置づけ 勧められる 利益と害を十分に話し合ったうえで「考慮する」。2021年4月の時点ではどれもであった1
使わない薬 、、オピオイド、、副腎皮質ステロイド、に有効性の証拠が無い 16歳以上で、(を含む)、抗精神病薬、ベンゾジアゼピン、副腎皮質ステロイドの注射、、(外用・静注)、と副腎皮質ステロイドの配合注射、、オピオイド、を新たに始めない1
例外 記載なし に対するとは、の中でなら使いうる(研究推奨)1

抗うつ薬をどう使うか

  • 説明:うつ病の診断が無くても、抗うつ薬は生活の質・痛み・睡眠・心理的苦痛を改善しうる、と伝えてから処方する1。「気のせいだから抗うつ薬」と受け取られないようにするためである。
  • 選び方:どの系統が優れるかを直接比べた試験は無く、は特定の薬を優先していない。は長期の有効性の証拠が比較的多い。根拠の多くはの女性の試験である1。
  • 用量:は1日5 mgという非常に少ない量でも効果を示した試験があり、最小量から始めて1日100 mgを超えないよう漸増する。・はうつ病での用量に準じる1。
  • 評価:効果は4〜6週で評価し、効かなければ続けない。中止するときはに注意してする1。

💡 抗うつ薬が痛みに効く理由。 脳幹からへ下るはセロトニンとノルアドレナリンを伝達物質とする。とはこの2つの再取り込みを阻害して抑制系を強め、脊髄での痛みの伝達を弱める。うつへの効果とは独立した作用なので、の鎮痛用量はうつ病の用量よりずっと少ない。

⚠️ は(口渇・便秘・尿閉・せん妄)、、QT延長、時の心毒性に注意する。高齢者では少量でも転倒の原因になる。

他の鎮痛薬を「始めない」理由

薬 NG193が挙げた根拠
オピオイド 慢性一次性疼痛への有効性の証拠が見つからず、6か月を超える長期使用で依存の危険が増えることを示す研究がある1
短期使用で生活の質・痛み・心理的苦痛が変わらず、身体機能がむしろ下がるという少数の証拠がある。消化管出血の害がある1
利益が無いことを示す証拠があり、乱用・依存の危険がある(英国ではに指定)1
・・抗精神病薬・副腎皮質ステロイド 証拠が見つからず、害の可能性がある1

⚠️ 「新たに始めない」と「すぐやめる」は違う。 すでにこれらの薬を使っている人では、証拠が乏しいことを説明したうえでを行い、安全な量で利益があるなら安全に続ける計画を立て、利益が乏しいか害が大きいなら減量・中止を支援する1。オピオイド・・ベンゾジアゼピン・抗うつ薬は、中止時のも話し合う。

💡 慢性一次性疼痛の型には慢性一次性頭痛(片頭痛など)も含まれるが、頭痛・・関節リウマチ・・など、固有のガイドラインがある病態ではそちらに従う1。片頭痛の薬物療法は頭痛と片頭痛の薬物療法、はの薬物療法を参照。

急性疼痛の治療選択

急性のは、痛みの出どころで3つに分けると薬を選びやすい。

の痛み 急性の内臓痛 手術・外傷の痛み
例 、の痛み、関節リウマチ、痛風 、 手術、骨折、その他の外傷
鎮痛の基本 NSAIDs(または選択的阻害薬) 、、 静注の、静注の
効かないとき の静注・経口() の静注・経口() の静注
補助的な選択肢 副腎皮質ステロイド(、)、(、) () 鎮静やに

⚠️ は使用にのある薬である。では2012年のEMAの見直しで、市販後に過敏症反応の報告が多いことと一部の適応で有効性が証明されていないことから、経口の用途が成人の脳卒中後の治療に限られ、注射剤は販売承認の取り消しが勧告された5。したがって、ではの痛みへの補助薬としては適応外になる。

列ごとの薬理

の痛みは炎症が中心なので、プロスタグランジン産生を止めるが第一になる。

急性の内臓痛(疝痛)は、管腔臓器の平滑筋が結石などで閉塞に逆らって攣縮する痛みである。

  • は作用に加えてをもち、疝痛によく使われる。⚠️ まれだが重いを起こす(薬剤性)。
  • はPDE4を阻害して平滑筋のを増やし、攣縮を解く。
  • はで尿管の攣縮との上昇を抑える点でも理にかなう。

手術・外傷の痛みは強く、の吸収も当てにならないので、静注が基本になる。

  • 静注の(モルヒネなど)と静注を組み合わせ、オピオイドの必要量を減らす。
  • はで、少量でオピオイドの効きにくい痛みを抑え、オピオイドの必要量を減らす。
  • は選択的α2作動薬で、呼吸をほとんど抑えずに鎮静し、鎮痛も補う。
  • 術後のやはを参照。
flowchart TD
  A["急性の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nociceptive pain'>侵害受容性疼痛</span>"] --> B{"痛みの出どころ"}
  B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Musculoskeletal'>筋骨格系</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='back pain'>背部痛</span>・関節・痛風"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nonsteroidal anti-inflammatory drugs'>NSAIDs</span><br>非選択的または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cyclooxygenase-2'>COX-2</span>選択的"]
  B -->|"内臓<br>胆道・腎の疝痛"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nonsteroidal anti-inflammatory drugs'>NSAIDs</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='metamizole'>メタミゾール</span><br>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='paracetamol'>パラセタモール</span>"]
  B -->|"手術・外傷"| E["静注の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='strong opioids'>強オピオイド</span><br>+静注<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nonsteroidal anti-inflammatory drugs'>NSAIDs</span>"]
  C -->|"効かない"| C2["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='weak opioids'>弱オピオイド</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tramadol'>トラマドール</span>)"]
  D -->|"効かない"| D2["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='weak opioids'>弱オピオイド</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tramadol'>トラマドール</span>)"]
  E -->|"効かない"| E2["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ketamine'>ケタミン</span>静注"]
  C -.->|"補助"| C3["副腎皮質ステロイド<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='centrally acting'>中枢性筋弛緩薬</span>"]
  D -.->|"補助"| D3["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='smooth muscle relaxant'>平滑筋弛緩薬</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='drotaverine'>ドロタベリン</span>"]
  E -.->|"補助"| E3["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dexmedetomidine'>デクスメデトミジン</span><br>(鎮静・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='postoperative pain'>術後痛</span>)"]

腰痛での現行の推奨との対比

急性はの痛みの代表だが、 NG59は上の表と一部違う立場をとる。

論点 従来の整理(の列) 現行( NG59)
第一の 経口を考慮する。消化管・肝・心腎の毒性と年齢を考え、最小を最短期間で使い、保護も考える2
が効かないとき 急性に限り、が禁忌・不耐・無効のときだけ考慮する(との併用も可)。急性にには使わず、には使わない2
内臓痛の列の選択肢 に単独は使わない2
副腎皮質ステロイド 補助的な選択肢 に経口副腎皮質ステロイドを使わない。の無いについては触れていない2
補助的な選択肢 触れていない2
抗うつ薬・ 記載なし ・・、・をに使わない2

💡 の多くは慢性化すると慢性一次性疼痛(慢性一次性疼痛)に入るが、にはNG59が優先されるため、NG193で考慮される抗うつ薬もNG59では使わない側に入る。病態ごとのガイドラインを確認する理由がここにある。

逆ラダーの実例:急性疼痛の4段階

英国のバッキンガムシャー病院NHSトラストが示した急性疼痛の「逆ラダー」は、の1996年のラダーを急性疼痛向けに改変した考え方に、機能評価を組み合わせたものである。痛みの強さ(0から10/10)が高いほど左の高い段から始め、痛みが時間と治癒で引くにつれてを減らしていく。

段 定時投与の内容 注意書き
第4段(最も強い) 第1段の定時投与に加えて、、または、またはによる・ 麻酔科医またはチームと相談しない限り、第4段と一緒に他のオピオイドを処方しない
第3段 の定時投与++頓用のオピオイド+第1段 は高齢者で注意。モルヒネが第一選択(ただし、術後プログラムの管理下にある患者と、臨床上の理由がある場合を除く)
第2段 またはの定時投与、+第1段 は高齢者で注意
第1段(最も弱い) +の定時投与 は禁忌が無い場合に限る
すべての段に共通 鎮痛補助薬:、と酸素の混合ガス、非薬物的介入 —

機能評価は、痛みが活動をどれだけ妨げるかで0〜3点をつける。

点数 区分 状態
3 高度 痛みがあり、活動時にも安静時にも活動を妨げる
2 中等度 痛みがあり、一部の活動を妨げるが、おおむね活動できている
1 軽度 痛みはあるが活動を妨げない
0 なし 痛みが無い
flowchart TD
  A["急性疼痛を評価<br>痛みの強さ(0〜10)と活動への支障(0〜3)"] --> B["第4段<br>第1段+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='patient-controlled analgesia'>患者自己調節鎮痛</span><br>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epidural analgesia'>硬膜外鎮痛</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nerve block'>神経ブロック</span>"]
  A --> C["第3段<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='strong opioids'>強オピオイド</span>定時+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nonsteroidal anti-inflammatory drugs'>NSAIDs</span><br>+頓用オピオイド+第1段"]
  A --> D["第2段<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='weak opioids'>弱オピオイド</span>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tramadol'>トラマドール</span><br>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nonsteroidal anti-inflammatory drugs'>NSAIDs</span>+第1段"]
  A --> E["第1段<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='paracetamol'>パラセタモール</span>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nonsteroidal anti-inflammatory drugs'>NSAIDs</span>の定時投与"]
  B -->|"痛みが治癒とともに引く"| C
  C -->|"さらに軽快"| D
  D -->|"さらに軽快"| E
  E -->|"痛み0・活動に支障なし"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='analgesic'>鎮痛薬</span>を中止"]

💡 この表から読み取れる3つの原則。

  • 定時投与が基本で、頓用はである。急性疼痛では痛みが出てから飲むより、効果が切れないように時間を決めて飲むほうが総量も少なく済む。
  • 第1段(+)はどの段でも土台に残る。 の違う薬を重ねてオピオイドの必要量を減らす「」の考え方である。
  • 強い手段ほど重複に注意する。 やのオピオイドに別のオピオイドを重ねると呼吸抑制の危険が増すので、専門チームと相談する。

⚠️ の注意は全段に付いている。 高齢者・・消化性潰瘍の既往・心不全・抗凝固薬内服では、禁忌や減量を確認してから使う。

まとめ

  • 非がん性の痛みは、まずかかを見分け、原因の病気を治し、運動などのを土台にする。は危険を評価してから選ぶ。
  • の3段階ラダーは、慢性の痛みでは下から上る。非がん性の慢性疼痛ではの長期使用を避ける(耐性・依存)。急性の痛みではラダーを180°回し、強い段から始めて治癒とともに下げる(逆ラダー)。
  • :運動療法(では不動を避けて慢性化を防ぐ)、・マッサージ、、鍼、。現行ではは行わず、鍼は慢性一次性疼痛で条件付き・では行わない。
  • 慢性疼痛=3か月を超える痛み。ICD-11で慢性一次性疼痛(、、片頭痛、、非特異的など)と慢性二次性疼痛(がん関連、二次性内臓痛・疼痛、術後・外傷後、など)に分け、両者は共存しうる。
  • 慢性一次性疼痛( NG193):運動・・鍼、薬は抗うつ薬(・・・・・)だけを考慮。・オピオイド・・・・・副腎皮質ステロイドなどは新たに始めない。
  • 急性疼痛:は→、補助に副腎皮質ステロイド・。内臓痛は・・→、補助に。手術・外傷は静注の+静注→、補助に。
  • の現行推奨( NG59):が中心、はが使えないときの急性だけ、単独・へのオピオイド・抗うつ薬・は使わない。
  • 逆ラダーの4段階:第4段(・・)→第3段()→第2段(・)→第1段(+)。定時投与を基本に、第1段を土台に残し、機能評価(0〜3)で下げていく。

出典

  1. 1.Chronic pain (primary and secondary) in over 16s: assessment of all chronic pain and management of chronic primary pain(National Institute for Health and Care Excellence・2021)NICE公式ページ(2021年4月7日公開)の推奨本文で次を確認した。慢性疼痛を3か月を超えて持続または再発する痛みとし、基礎疾患で痛みやその影響を十分に説明できない慢性一次性疼痛と、説明できる慢性二次性疼痛に分け、両者が共存しうること、ICD-11の定義と整合し、線維筋痛症・複合性局所疼痛症候群・慢性一次性頭痛と口腔顔面痛・慢性一次性内臓痛・慢性一次性筋骨格系疼痛を慢性一次性疼痛の型とすること、基礎疾患で説明できる場合は頭痛・腰痛と坐骨神経痛・関節リウマチ・変形性関節症などの各疾患のNICEガイドラインに従うこと(1.1.20)。16歳以上に監督下の集団運動プログラムを勧め(1.2.1)、身体活動の継続を促し(1.2.2)、アクセプタンス・コミットメント療法または認知行動療法を考慮し(1.2.3)、バイオフィードバックを行わず(1.2.4)、地域で実施し医療者の時間が5時間以内などの条件を満たす1コースの鍼治療を考慮し(1.2.5)、TENS・超音波・干渉波療法を効果の証拠が無いとして行わない(1.2.6)こと。18歳以上にアミトリプチリン・シタロプラム・デュロキセチン・フルオキセチン・パロキセチン・セルトラリンのいずれかの抗うつ薬を利益と害を十分に話し合ったうえで考慮し(2021年4月時点で適応外使用、1.2.7)、16〜17歳では専門医に相談し(1.2.8)、うつ病の診断が無くても生活の質・痛み・睡眠・心理的苦痛を改善しうると説明すること(1.2.9)。16歳以上で抗てんかん薬(ガバペンチノイドを含む。複合性局所疼痛症候群の臨床試験を除く)、抗精神病薬、ベンゾジアゼピン、副腎皮質ステロイドのトリガーポイント注射、ケタミン、局所麻酔薬(外用・静注。複合性局所疼痛症候群の臨床試験を除く)、局所麻酔薬と副腎皮質ステロイドの配合トリガーポイント注射、NSAIDs、オピオイド、パラセタモールを新たに始めないこと(1.2.10)、すでに使っている人では証拠の乏しさを説明したうえで共同意思決定を行い、安全な量で利益があれば安全に続ける計画を立て、利益が乏しいか害が大きければ減量・中止を支援すること(1.2.11)、抗うつ薬・オピオイド・ガバペンチノイド・ベンゾジアゼピンの中止では離脱の問題を話し合うこと(1.2.12)、ガバペンチノイドが英国で規制物質(Class C、Schedule 3)であること。基礎疾患で説明できる場合の参照先に過敏性腸症候群のガイドラインも挙げていること。根拠と影響の章で、抗うつ薬の根拠の多くが線維筋痛症の女性であること、系統間の直接比較が無く特定の薬を優先できなかったこと、デュロキセチンは長期の有効性の証拠が多いこと、SSRI・SNRIの用量はうつ病に準じること、効かなければ続けないこと、アミトリプチリンは1日5 mgの低用量でも効果を示した証拠があり最小量から始めて1日100 mgを超えないこと、効果を4〜6週で評価すること、オピオイドの有効性の証拠が見つからず6か月を超える長期使用で依存が増えること、NSAIDsの短期使用で生活の質・痛み・心理的苦痛が変わらず、少数の証拠で身体機能がプラセボより下がり、消化管出血の害があること、ガバペンチノイドの利益が無いことを示す証拠があること、パラセタモール・ケタミン・抗精神病薬・副腎皮質ステロイドには証拠が見つからなかったこと、徒手療法は証拠が乏しく診療の推奨を作れなかったことを確認した。閲覧 2026-09-27
  2. 2.Low back pain and sciatica in over 16s: assessment and management(National Institute for Health and Care Excellence・2026)NICE公式ページ(2016年11月30日公開、2026年7月29日最終更新)の推奨本文で次を確認した。自己管理の助言と通常の活動の継続を勧め(1.2.1)、集団運動プログラムを考慮し(1.2.2)、徒手療法(脊椎マニピュレーション・モビライゼーション・マッサージなどの軟部組織手技)は運動を含む治療パッケージの一部としてだけ考慮し(1.2.7、2026年改訂)、鍼治療(1.2.8)・超音波・経皮的電気神経刺激(PENS)・TENS・干渉波療法(1.2.9〜1.2.12)を行わないこと、心理療法と身体・心理の複合プログラムの推奨(1.2.13・1.2.14)は、定期の見直しで古くなっている可能性が示されたが改訂が優先されなかったため2026年7月に取り下げられたこと、復職と日常生活の再開を促すこと(1.2.15)。坐骨神経痛にガバペンチノイド・他の抗てんかん薬・経口副腎皮質ステロイド・ベンゾジアゼピンを用いない(1.2.16、2020年)こと。腰痛には消化管・肝・心腎の毒性と年齢などの危険因子を考えて経口NSAIDsを考慮し(1.2.22)、臨床評価・危険因子の監視・胃粘膜保護を考え(1.2.23)、最小有効量を最短期間で使い(1.2.24)、弱オピオイド(パラセタモール併用の有無を問わない)はNSAIDsが禁忌・不耐・無効のときに限って急性腰痛に考慮し(1.2.25)、パラセタモール単独を用いず(1.2.26)、急性腰痛に日常的にオピオイドを用いず(1.2.27)、慢性腰痛にオピオイドを用いず(1.2.28)、SSRI・SNRI・三環系抗うつ薬(1.2.29)とガバペンチノイド・抗てんかん薬(1.2.30)を腰痛に用いないこと。筋弛緩薬への言及が無いことも確認した。閲覧 2026-09-27
  3. 3.Chronic pain as a symptom or a disease: the IASP Classification of Chronic Pain for the International Classification of Diseases (ICD-11)(PAIN(International Association for the Study of Pain)・2019)抄録(PMID 30586067)で、IASPの作業部会がWHOと協力してICD-11の慢性疼痛分類を作ったこと、慢性疼痛を3か月を超えて持続または再発する痛みと定義すること、線維筋痛症や非特異的腰痛のように痛みそのものを疾患とみなす群を慢性一次性疼痛とし、慢性がん関連疼痛・慢性神経障害性疼痛・慢性二次性内臓痛・慢性外傷後および術後疼痛・慢性二次性頭痛と口腔顔面痛・慢性二次性筋骨格系疼痛の6群を慢性二次性疼痛とまとめることを確認した。閲覧 2026-09-27
  4. 4.The IASP classification of chronic pain for ICD-11: chronic primary pain(PAIN(International Association for the Study of Pain)・2019)抄録(PMID 30586068)で、慢性一次性疼痛は痛みが3か月を超えて持続し、著しい情動的苦痛または機能障害(あるいはその両方)を伴い、他の病態でよりよく説明されないときに診断すること、生物・心理・社会的な要因がすべての下位型に関わる多因子性の病態とみなすこと、同定された生物学的・心理学的要因の有無にかかわらず、他の診断がよりよく説明しない限り適用できることを確認した。閲覧 2026-09-27
  5. 5.Tolperisone - referral(European Medicines Agency・2012)EMA公式ページで、2012年6月21日にCHMPが経口トルペリゾンの利益は危険を上回るが用途を成人の脳卒中後痙縮の治療に限るべきと結論し、注射剤の販売承認の取り消しを勧告し、再審査後の2012年10月18日にこれを確認したこと、見直しのきっかけが市販後の過敏症反応の多数の報告と一部適応での有効性の証明不足であったこと、ハンガリーを含む中東欧の国々で販売されていることを確認した。閲覧 2026-09-27