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Drug Atlas · A11 Opioids / オピオイド · 必修

フェンタニル

fentanyl

分類
Opioids / オピオイドGeneral anesthetics / 全身麻酔薬
商品名(日本)
デュロテップフェントス
商品名(EU)
Durogesic
科目
Pharmacology
トピック
A15: Intravenous anesthetics. Perioperative medicationA11: Opioids
禁忌疾患
気管支喘息慢性閉塞性肺疾患
副作用
傾眠悪心嘔吐便秘瘙痒感
解毒薬
ナロキソン
対象疾患
精巣捻転・卵巣捻転

🧠 全体像モルヒネの数十〜百倍の力価を持つ合成で、その正体は「を上げるために脂溶性を極端に高めた設計」に尽きる。高い脂溶性のおかげで血液脳関門を速く通過し起効が速いが、同じ性質が筋・脂肪組織へのを生み、単回投与では短時間で切れるのに反復・では蓄積してむしろ覚醒が遅れるというを生む。この一薬の性質が、系()という枝分かれ全体の出発点になっている。

薬効群の中での位置づけ

薬剤 力価(モルヒネ比) 特徴 主な使いどころ
約100倍 高脂溶性、可、なし 、慢性の貼付、製剤
約500〜1000倍 系で最高力価への親和性が最も高い 術中・(心臓血管麻酔で頻用)
とほぼ同等 血漿・組織エステラーゼで分解される特殊代謝→作用 の持続静注、投与終了後すみやかな覚醒が必要な場面

系はいずれもを持たない。 モルヒネのM6Gのような腎依存性の蓄積がないため、腎不全患者の鎮痛ではが第一に選ばれやすい。一方、脂肪組織へのによる「での蓄積」は特有の弱点で、腎機能とは別の注意点になる。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fentanyl'>フェンタニル</span>が高い脂溶性で<br>血液脳関門を速やかに通過"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mu-opioid receptor'>μオピオイド受容体</span>に<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='high affinity'>高親和性</span>で結合"]
    B --> C["Gi/o蛋白質活性化<br>→cAMP↓、Ca2+チャネル抑制、K+チャネル開口"]
    C --> D["脊髄・脳幹での<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nociceptive transmission'>痛覚伝達</span>↓<br>→強力な鎮痛"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='respiratory center'>呼吸中枢</span>のCO2感受性↓<br>→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Dose-related'>用量依存性</span>の呼吸抑制"]
    A --> F["単回投与は脂肪・筋組織へ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='redistribution'>再分布</span><br>→血中濃度が速く低下(作用は短い)"]
    F -.->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='repeated administration'>反復投与</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='repeated/continuous dosing'>持続投与</span>では<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='peripheral compartment'>末梢コンパートメント</span>が飽和"| G["蓄積して作用が遷延<br>(単回投与の常識が通用しなくなる)"]

💡 「効きが速いのに切れも速いはずが、使い方次第で長引く」矛盾の正体は 単回静注では、脳への移行が速いぶん脳からの(脂肪・筋への移動)も速く、作用はすぐ終わる。しかしを続けると、末梢の脂肪が薬物で飽和し、そこから血中へ戻ってくる分ができなくなる。だから「は短時間作用性」という理解は単回投与限定であり、では(後述のとの対比参照)が大きく延びる。

薬物動態

項目 値・特徴
経口では低い。(口腔・鼻腔)・経皮・静注で用いる
分布 極めて高い脂溶性。血液脳関門を速やかに通過し、脂肪・筋組織へする
代謝 CYP3A4で代謝。を持たない
排泄 代謝物として
半減期 単回静注では約30〜60分(消失というよりが主体)。では蓄積しが延長する

適応

領域 使いどころ
周術期 全身麻酔の導入・維持における鎮痛(A15: の主力オピオイド)
救急 短時間作用性の即効鎮痛:精巣・など、診察・搬送を待つ間の
慢性疼痛 )による持続鎮痛
に対するの口腔粘膜・鼻腔製剤

用法・用量

静注は少量(1回25〜100 μg相当)から効果を見ながら漸増する。がある慢性疼痛患者に限り導入し、初回投与から十分な血中濃度に達するまで数時間〜半日かかる点を踏まえて他剤で橋渡しする。用の製剤は薬とは別に個別に用量設定する。実際の用量は適応・年齢・体重・肝腎機能・の有無で大きく変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌:閉塞性など)、重度の呼吸抑制、阻害薬の投与中および中止後2週間以内1
  • ⚠️ 喘息とCOPDは日本では上の重みが違う。 EUのSmPCは「呼吸抑制、閉塞性」と一括りにするが1、日本の注射剤の電子添文は喘息だけを禁忌(2.5、が起こりうるため)とし、等の呼吸機能障害は禁忌ではなく9.1.2の慎重投与(呼吸抑制を増強するおそれ)に置いている2。frontmatter は方針どおりEUの区分(両方とも禁忌)に従っているが、日本ではCOPD患者への使用が禁じられているわけではない
  • 日本の電子添文は上記に加え、痙攣発作の既往歴等で呼吸抑制を起こしやすい患者・筋弛緩剤が禁忌の患者・ナルメフェン投与中または中止後1週間以内を禁忌に挙げる2
  • 注意すべき副作用:呼吸抑制()、低下、他の・アルコールとの併用による相互増強
  • ⚠️ は発熱・外部加温で吸収が促進され、血中濃度がし呼吸抑制のリスクが高まる
  • CYP3A4阻害薬(、一部のマクロライド系、など)との併用で血中濃度上昇、呼吸抑制のリスクが増す
  • オピオイド未使用者へのの初回導入は禁忌に準じて避ける(十分な鎮痛耐性がないと過量になりやすい)

副作用

頻度 内容
高頻度 傾眠悪心嘔吐便秘
注意 (急速静注時、特に高用量)
重篤・まれ 呼吸抑制、依存・乱用(高力価・速い起効ゆえに乱用リスクが高い)

まとめ

  • はモルヒネの約100倍の力価を持つ合成。高い脂溶性が起効の速さとの両方を説明する。
  • 単回投与は脂肪・筋へので速やかに切れるが、持続・ではが飽和し作用が遷延する。
  • を持たず腎不全でも比較的使いやすい一方、CYP3A4で代謝されるため強い阻害薬との併用に注意する。
  • 系は(最高力価)・)へ枝分かれし、それぞれ術中管理の異なる場面で使い分けられる。
  • がある患者専用。発熱・外部加温による吸収促進に注意する。
  • 高頻度の副作用は傾眠・・便秘。重篤なものはの呼吸抑制で、過量にはで拮抗する。
  • 閉塞性・COPDなど)、重度の呼吸抑制、MAO阻害薬の投与中・中止後2週間以内は禁忌。ただし日本の電子添文は喘息のみを禁忌とし、は慎重投与にとどめる点でEUと区分が異なる。日本は痙攣発作の既往も禁忌に挙げる。

出典

  1. 1.Fentanyl 50 microgram/ml Injection - Summary of Product Characteristics (SmPC)(electronic medicines compendium (emc), UK・2024)禁忌に「呼吸抑制、閉塞性気道疾患」と過敏症、モノアミン酸化酵素(MAO)阻害薬の併用(中止後2週間以内を含む)が含まれること閲覧 2026-08-03
  2. 2.フェンタニル注射液0.1mg・0.25mg「第一三共」添付文書(KEGG MEDICUS(JAPIC添付文書情報)/第一三共・2026)日本の禁忌は喘息患者(2.5)・痙攣発作の既往歴(2.4)・頭部外傷や脳腫瘍等による呼吸抑制を起こしやすい患者(2.3)・筋弛緩剤が禁忌の患者(2.1)・過敏症(2.2)・ナルメフェン投与中または中止後1週間以内(2.6)などで、慢性肺疾患等の呼吸機能障害のある患者は禁忌ではなく9.1.2「合併症・既往歴等のある患者」に置かれていることを確認した。閲覧 2026-08-03