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Symptoms · Published

必須脂肪酸欠乏

Essential fatty acid deficiency

臓器系
内分泌・代謝消化器
科目
BiochemistryPhysiology
トピック
生化学 5/1:体内および食事中の主要な脂質の構造と機能生理学 6.6:身体のエネルギー平衡・食物の量的・質的必要量
関連疾患
腸リンパ管拡張症
起因薬
魚油ベース脂肪乳剤

🧠 全体像欠乏の核心は、(ω-6)と(ω-3)をヒトは合成できないという一点に尽きる。脂肪をほとんど含まないや極端な脂肪制限食が続くと、体は代わりにからミード酸に作り出す。⭐ この代償反応そのものが診断の手がかりで、トリエン/テトラエン比(ミード酸/比)の上昇の核心的指標になる。臨床像(皮膚炎・脱毛・創傷治癒遅延)が出そろう前に、このの変化で気づけるかどうかが実務上の分かれ目である。

定義と用語の整理

とは、ヒトがω-3位・ω-6位に二重結合を導入するデサチュラーゼ酵素を持たないために体内で合成できず、食事から摂取する必要がある脂肪酸で、代表が(ω-6系)と(ω-3系)である1。これらはといった長鎖脂肪酸の出発物質でもあるため、欠乏すると産生を含む広い代謝に影響が及ぶ。

病態生理

flowchart TD
    A["脂肪を含まない<span class='jp-term jp-term-diagram' title='parenteral nutrition, PN'>静脈栄養</span>・極端な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='low-fat meal'>低脂肪食</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='linoleic acid'>リノール酸</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alpha-linolenic acid'>α-リノレン酸</span>の供給不足"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arachidonic acid'>アラキドン酸</span>などの長鎖<span class='jp-term jp-term-diagram' title='polyunsaturated'>多価不飽和</span>脂肪酸産生が低下"]
    B --> D["基質<span class='jp-term jp-term-diagram' title='availability'>利用能</span>により<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oleic acid'>オレイン酸</span>(ω-9)からミード酸への変換が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='compensatory'>代償的</span>に増加"]
    D --> E["トリエン/テトラエン比(ミード酸/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arachidonic acid'>アラキドン酸</span>比)の上昇"]
    C --> F["鱗屑性皮膚炎・脱毛・創傷治癒遅延・易感染性"]
    E --> F

体はが不足すると、非であるから合成できるミード酸(20:3、n-9系)の産生を増やして代償しようとする。ミード酸は本来豊富に存在する物質ではないため、その相対的な増加そのものが欠乏を反映する——これがトリエン/テトラエン比(ミード酸/比)を診断指標として使う理由である1。⚠️ この比のは歴史的な経緯に注意する。 Holmanが最初に報告した閾値は0.4で、その後広く使われるようになった閾値は0.2だが、近年の脂肪酸プロファイル検査で得られる健常人のはそれよりも低く、施設の検査法に応じた表と照らし合わせる必要がある1

⚠️ 緊急・見逃してはいけない状況

  • 脂肪を含まない、または極端に脂肪含有量の少ないが続く患者を合併しうる)、周術期の絶食が長期化した患者などで発症しうる。
  • ⚠️ 純粋魚油ベース(ω-3系のみ)の長期単独使用も理論上のリスクを持つ。 この製剤はのいずれも含有量が低いため、供給不足そのものは起こりうる。ただし、この単独投与を受けた患者群でEFADの発症が実際に観察された報告は乏しく1、EPA・DHAが豊富に供給されることが何らかの形で代償している可能性がされている。「起こりにくい」ことと「モニタリング不要」は同義ではない——添付文書もEFADの兆候の定期的な確認を推奨している2
  • 小児ではという非特異的な所見だけが先行することがあり、状を待って気づくと発見が遅れる。

評価の進め方

flowchart TD
    A["脂肪投与が乏しい<span class='jp-term jp-term-diagram' title='parenteral nutrition, PN'>静脈栄養</span>・極端な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='low-fat meal'>低脂肪食</span>が続く患者"] --> B["臨床像を確認:鱗屑性皮膚炎・脱毛・創傷治癒遅延・易感染性"]
    B --> C["血漿脂肪酸プロファイルを測定"]
    C --> D["トリエン/テトラエン比(ミード酸/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arachidonic acid'>アラキドン酸</span>比)を評価"]
    D --> E{"年齢別<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reference range'>基準範囲</span>を超えて上昇しているか"}
    E -->|"はい"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='essential fatty acid'>必須脂肪酸</span>欠乏と診断し脂肪投与を見直す"]
    E -->|"いいえ"| G["他の原因(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='zinc deficiency'>亜鉛欠乏</span>など)を再検討"]

臨床像だけでは他の栄養欠乏(など)と鑑別しにくいため、脂肪投与量が乏しい背景があれば臨床像を待たずに脂肪酸プロファイルを測定する姿勢が実務的である。

対応の考え方

治療の本体は原因の是正——を含む脂肪の投与を再開・増量することに尽きる。であればを十分に含む(大豆油ベースや混合製剤など)を導入し、経口摂取が可能なら植物油・魚・種実類などの食事性の摂取を確保する。純粋魚油ベースを使用中で発症が疑われる場合は、混合製剤への変更を検討する。

まとめ

  • )はヒトが合成できず、脂肪をほとんど含まないや極端なで欠乏する。
  • ⭐ 診断の核心はトリエン/テトラエン比(ミード酸/比)の上昇——供給不足を補おうとからミード酸がに作られる。
  • 臨床像は鱗屑性皮膚炎・脱毛・創傷治癒遅延・易感染性で、小児ではが先行することがある。
  • ⚠️ 純粋魚油ベースの長期単独使用は理論上のリスクを持つが、実際の発症報告は乏しい。それでもモニタリングは省略しない。
  • 治療はを含む脂肪投与の再開・増量が本体である。

出典

  1. 1.Essential fatty acid deficiency in parenteral nutrition: Historical perspective and modern solutions, a narrative review(Nutrition in Clinical Practice・2025)リノール酸・α-リノレン酸をヒトが合成できないのはω-3・ω-6位に二重結合を挿入するデサチュラーゼ酵素を欠くためであること、必須脂肪酸供給が不足するとω-9系脂肪酸(オレイン酸)からミード酸への代償的な変換が基質利用能により増加すること、Holman指数(トリエン/テトラエン比=ミード酸/アラキドン酸比)の閾値0.2が診断に広く用いられてきたが健常人の基準範囲はそれより低いこと、臨床像として乾燥・鱗屑性皮疹、体重減少(小児では成長障害)、脱毛、脆弱な爪、落屑性皮膚炎、易感染性、毛髪の色素脱失、創傷治癒遅延を挙げていること、リノール酸・α-リノレン酸をともに低含有する純粋魚油ベース脂肪乳剤の単独使用でも、その単独投与を受けた患者でEFADの発症は観察されていないと報告していることを確認した。閲覧 2026-08-12
  2. 2.OMEGAVEN (fish oil triglycerides) injectable emulsion — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration (DailyMed)・2018)純粋魚油ベース脂肪乳剤(Omegaven)の添付文書が必須脂肪酸欠乏(EFAD)の兆候のモニタリングを推奨していることを確認した。閲覧 2026-08-12