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Symptoms · Published

網状皮斑

Livedo reticularis

別名
リベド網状チアノーゼ
臓器系
皮膚循環器
科目
DermatologyInternal Medicine
トピック
皮膚科 3-27:血管炎・多形紅斑・結節性紅斑内科学 H-10:抗リン脂質抗体症候群
関連疾患
Nicolau症候群コレステロール塞栓症

🧠 全体像:という所見を見た時点でやることは1つ、「温めて消えるか」を確認することである。皮膚の血流は真皮深部を上行する細動脈を頂点とする円錐状のに分かれ、その辺縁をが囲む1。寒による生理的なでこの辺縁の血流が落ちると、規則正しく閉じた(cutis marmorata、)が現れ、保温すれば消える。これに対し、そのものが血栓・塞栓で閉塞すると、不規則でのが生じ、保温しても消えない12。この一点の見極めが、経過観察でよい所見と、・・・血管炎という原疾患の検索が要る所見を分ける。

定義と用語の整理

「」というは、良性の生理的所見と致命的でありうる病的所見の両方を指してしまう。⚠️ 英語圏では cutis marmorata と livedo reticularis を同義に用い(=生理的側)、これと病的な livedo racemosa を対置する2分法をとる12。本ノートの題名は前者だが、臨床で問題になるのは後者との切り分けである。

用語 性質 の形 温度への反応
cutis marmorata() ・静脈叢のうっ滞による可逆的所見 規則的・対称的・閉じた輪 寒冷で出現し、保温で完全に消退する
livedo racemosa(病的livedo) の血栓性・塞栓性閉塞 不規則・(が途切れる) 温度に関わらず持続する2

⭐ 「が完全な輪として閉じているか」と「保温で消えるか」の2点だけで大半が振り分けられる。 閉じた規則的なが保温で消えるなら経過観察でよい生理的所見、不規則でのが保温後も残るなら精査対象である。

病態生理

皮膚の血流は、真皮深部を上行する1本の細動脈を頂点とし、直径1〜3cm程度の範囲を灌流する円錐状の単位の集合として構成される。各単位の辺縁では動脈密度が下がり、代わりにがその区域の還流を担う1。

flowchart TD
    A["円錐状の皮膚<span class='jp-term jp-term-diagram' title='perfusion unit'>灌流単位</span><br>頂点=真皮深部の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ascending arteriole'>上行細動脈</span>"] --> B["単位の辺縁:動脈密度が低く<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='superficial venous plexus'>表在静脈叢</span>が優位"]
    B --> C{"辺縁部の血流低下の原因"}
    C -->|"寒冷による可逆的<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vasospasm'>血管攣縮</span>・静脈叢のうっ滞"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deoxygenated blood'>脱酸素化血</span>液が規則的な<br>閉じた<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fishnet'>網目</span>として透見される"]
    D --> E["保温で血流が戻り消退する<br>cutis marmorata・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cutis marmorata (physiologic livedo reticularis)'>生理的網状皮斑</span>"]
    C -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ascending arteriole'>上行細動脈</span>自体の血栓性・塞栓性閉塞"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='perfusion unit'>灌流単位</span>ごと途絶し<br>不規則・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cystica'>開放性</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fishnet'>網目</span>になる"]
    F --> G["保温しても消えない<br>livedo racemosa"]

💡 「の形」は原因の所在を映す。 動脈そのものは無事で辺縁の血流だけが可逆的に落ちれば、の輪郭は保たれたまま規則的なになる。動脈そのものが閉塞すれば、ごと丸ごと途絶するため輪が破れた不規則なになる。

⚠️ 見逃してはいけないもの

危険度の高い順に並べる。いずれもlivedo racemosa型(不規則・・保温で消えない)で疑う。

  • ⚠️ 。 は本症候群の血栓症状の一つで、・・・胎児死亡などの血栓性合併症と併せて評価する(内科学 H-10)。若年でのにを伴えば(livedo racemosaと非炎症性のを来す病態。を伴う例と伴わない例がある)も鑑別に挙がるが、本ノートの参照先には該当する疾患ノートが無い。
  • ⚠️ 。 ・・大血管手術・抗凝固/から数日〜数週間遅れて・blue toe・の三徴が出る。処置直後〜数日で立ち上がるとのの違いが鑑別点になる。
  • ⚠️ 。 ・に多く、激痛を伴うとして始まり潰瘍・へ進む。1年死亡率が高く、疼痛の強さと進行の速さが他の原因との違いになる。
  • 血管炎。 中血管の血管炎(など)ではに皮下結節・深い潰瘍・末梢神経障害・腎/を伴う( 3-27)。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='livedo reticularis'>網状皮斑</span>に気づく"] --> B["患部を保温して<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='fishnet'>網目</span>の変化を観察する"]
    B --> C{"規則的・閉じた<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fishnet'>網目</span>で<br>保温により完全に消退するか"}
    C -->|"はい"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cutis marmorata (physiologic livedo reticularis)'>生理的網状皮斑</span>・cutis marmorataとして<br>経過観察でよい"]
    C -->|"いいえ(不規則・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cystica'>開放性</span>・保温後も残存)"| E["livedo racemosaとして精査へ"]
    E --> F{"疼痛が強く<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='end-stage renal failure'>末期腎不全</span>・透析歴があるか"}
    F -->|"あり"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='calciphylaxis'>カルシフィラキシス</span>を疑い<br>皮膚生検を急ぐ"]
    F -->|"なし"| H{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endovascular treatment'>血管内治療</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardiac catheterization'>心臓カテーテル</span>・<br>抗凝固/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thrombolytic therapy'>血栓溶解療法</span>から<br>数日〜数週の既往があるか"}
    H -->|"あり"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cholesterol embolism'>コレステロール塞栓症</span>を疑い<br>好酸球・補体・腎機能を確認"]
    H -->|"なし"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antiphospholipid antibody'>抗リン脂質抗体</span>・血管炎の<br>血清学的検査と臓器症状を評価"]

対症療法の考え方

そのものを消す治療はなく、保温で消えるかどうかを見極めること自体が診断行為である。生理的なcutis marmorataは治療対象ではない。livedo racemosa型であれば、対症療法ではなく原因治療(の抗凝固中止、の、の抗凝固、血管炎の免疫抑制療法)に委ねる。

まとめ

  • は皮膚(頂点=、辺縁=静脈叢)の辺縁部の血流変化を反映する所見で、良性の生理的所見と致命的でありうる病的所見の両方を含む。
  • 規則的・閉じたで保温により完全に消退すればcutis marmorata()、不規則・ので保温後も残ればlivedo racemosaと呼び分ける。
  • livedo racemosa型では、・・・血管炎を危険度の高い順に検索する。
  • は誘因となる血管処置から数日〜数週遅れて発症する点、は強い疼痛を伴う点が、それぞれの鑑別の手掛かりになる。
  • 自体への対症療法はなく、保温での可逆性を見極めることが最初の診断ステップであり、以降は原因治療に委ねる。

出典

  1. 1.Livedo Racemosa – The Pathophysiology of Decompression-Associated Cutis Marmorata and Right/Left Shunt(Frontiers in Physiology・2020)皮膚の血流が直径1〜3cm程度の円錐状の灌流単位に分かれ各単位の頂点が真皮深部を上行する細動脈にあること、単位の辺縁では動脈密度が低下し表在静脈叢が優位になること、生理的なcutis marmorata・網状皮斑はこの辺縁部での血流低下(脱酸素化・静脈叢のうっ滞)により規則的で閉じた輪状の網目として見え保温で消退すること、livedo racemosaは上行細動脈そのものの血栓性・塞栓性閉塞により生じるため不規則で開放性(切れた)網目になることを確認した閲覧 2026-09-01
  2. 2.Livedo racemosa in neurological diseases: an update on the differential diagnoses(European Journal of Neurology・2020)生理的な網状皮斑は寒冷条件で出現するのに対し、病的で不規則なlivedo(temperatureに関わらず持続し"livedo racemosa"と呼ばれる)は温暖でも持続すること、livedoを伴う神経疾患には炎症性成分を持つものや全身性疾患に由来するものが多いことを総説したことを確認した(抄録のみを閲覧しており全文は未取得)閲覧 2026-09-01