生物物理学

生物物理学 · 06.09

Boltzmann分布の応用III:気圧公式

Applications of the Boltzmann-distribution III.: barometric formula

🧠 はが高いほど気体分子のがに減ることを示す。

重力場でのBoltzmann分布

ではをmghmghへ適用する。

flowchart TD
  A["高度上昇"]
  B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gravity'>重力</span>ポテンシャル増加"]
  C["Boltzmann因子に従う<span class='jp-term jp-term-diagram' title='population'>占有数</span>減少"]
  D["圧力低下"]
  A --> B
  B --> C
  C --> D

静水圧平衡からの導出

高度 hh で厚さ dhdh のを考える。上向きを正とすると、平衡より圧力の減少はの重さに等しい。

dp=−ρg dhdp=-\rho g\,dh

物質量を ν\nu とすると、等温のでは pV=νRTpV=\nu RT である。を MM とすれば、は ρ=Mν/V=Mp/(RT)\rho=M\nu/V=Mp/(RT) となる。これを代入して分離すると、

dp=−MgpRT dhdpp=−MgRT dh∫p0p(h)dp′p′=−MgRT∫0hdh′ln⁡ ⁣(p(h)p0)=−MghRT\begin{aligned} dp&=-\frac{Mgp}{RT}\,dh \\ \frac{dp}{p}&=-\frac{Mg}{RT}\,dh \\ \int_{p_0}^{p(h)}\frac{dp'}{p'} &=-\frac{Mg}{RT}\int_0^h dh' \\ \ln\!\left(\frac{p(h)}{p_0}\right)&=-\frac{Mgh}{RT} \end{aligned}

したがっては、

p(h)=p0exp⁡ ⁣(−MghRT)\boxed{ p(h)=p_0\exp\!\left(-\frac{Mgh}{RT}\right) }

となる。ここで p0=p(0)p_0=p(0)、MM は気体のであり、TT、gg、気体組成を一定と仮定している。

ボルツマン因子とスケールハイト

1分子の質量を mm とすれば、高度 hh で増加するは mghmgh である。したがってにも同じ指数則が成り立つ。

n(h)n0=exp⁡ ⁣(−mghkBT)=exp⁡ ⁣(−MghRT)\frac{n(h)}{n_0} =\exp\!\left(-\frac{mgh}{k_BT}\right) =\exp\!\left(-\frac{Mgh}{RT}\right)

M=NAmM=N_A m、R=NAkBR=N_Ak_B を用いると、分子表示とモル表示が一致する。 HH を

H≡RTMgH\equiv\frac{RT}{Mg}

と定義すれば、圧力分布は p(h)=p0e−h/Hp(h)=p_0e^{-h/H} と簡潔に書ける。高度が HH 上がるごとに圧力は 1/e1/e になる。実大気では温度と組成が高度で変わるため、この単純なには補正が必要である。

等温近似と高度依存性

mghmghをBoltzmann因子へ代入すると高度分布が得られ、圧力と粒子の換算にはのを使う。

  • 重い気体ほどが小さい。
  • 温度が高いほど高度による減少は緩やか。
  • h≪Hh\ll H なら e−h/H≃1−h/He^{-h/H}\simeq1-h/H より、p(h)≃p0(1−h/H)p(h)\simeq p_0(1-h/H) と線形近似できる。

生体・医学での解釈

高地でとが低下する理由を示す。酸素モル分率 xO2x_{\mathrm{O_2}} を一定とみなせる範囲では、も pO2(h)=xO2p(h)p_{\mathrm{O_2}}(h)=x_{\mathrm{O_2}}p(h) に従って低下する。

高地の低圧低酸素環境では、生理学的適応と産生の増加が観察される。12

まとめ

  • はが高いほど気体分子のがに減ることを示す。
  • 重い気体ほどが小さい。
  • 高地でとが低下する理由を示す。

出典

  1. 1.Sympathetic neural overactivity in healthy humans after prolonged exposure to hypobaric hypoxia(Journal of Physiology・2003)高地の低圧低酸素環境に対する健常者の生理学的適応閲覧 2026-08-21
  2. 2.Rate of erythropoietin formation in humans in response to acute hypobaric hypoxia(Journal of Applied Physiology・1989)急性低圧低酸素への曝露に伴うヒトのエリスロポエチン応答閲覧 2026-08-21