生物物理学

生物物理学 · 06.10

Boltzmann分布の応用II:化学反応の平衡・速度とArrhenius plot

Application of the Boltzmann-distribution II: equilibrium and rate of chemical reactions (Arrhenius plot)

🧠 にはを超える分子集団が必要で、その割合が温度にに依存する。

反応障壁を越える分子

アレニウスのを対数化するとln⁡k\ln k対1/T1/Tが直線となり、傾きからを求められる。

flowchart TD
  A["分子が衝突"]
  B["Ea以上の活性化状態へ到達"]
  C["生成物の形成"]
  A --> B
  B --> C

化学平衡を決める式

反応商を QQ、標準反応エネルギーを ΔrG∘\Delta_rG^\circ とすると、任意の組成での反応エネルギーは

ΔrG=ΔrG∘+RTln⁡Q\Delta_rG=\Delta_rG^\circ+RT\ln Q

である。平衡では ΔrG=0\Delta_rG=0 かつ Q=KQ=K なので、

0=ΔrG∘+RTln⁡KRTln⁡K=−ΔrG∘ln⁡K=−ΔrG∘RT\begin{aligned} 0&=\Delta_rG^\circ+RT\ln K \\ RT\ln K&=-\Delta_rG^\circ \\ \ln K&=-\frac{\Delta_rG^\circ}{RT} \end{aligned}

したがって、無次元の KK は

K=exp⁡ ⁣(−ΔrG∘RT)\boxed{ K=\exp\!\left(-\frac{\Delta_rG^\circ}{RT}\right) }

で与えられる。ΔrG∘<0\Delta_rG^\circ<0 なら K>1K>1 となり、平衡は生成物側に偏る。

活性化エネルギーからアレニウス式へ

反応が起こるには、分子がエネルギー障壁を越える必要がある。モルを EaE_a とすると、1分子当たりの障壁は εa=Ea/NA\varepsilon_a=E_a/N_A である。障壁を越えうる集団の主要なはで表され、R=NAkBR=N_Ak_B より、

Nε≥εaN∝exp⁡ ⁣(−εakBT)=exp⁡ ⁣(−Ea/NAkBT)=exp⁡ ⁣(−EaRT)\begin{aligned} \frac{N_{\varepsilon\ge\varepsilon_a}}{N} &\propto\exp\!\left(-\frac{\varepsilon_a}{k_BT}\right) \\ &=\exp\!\left(-\frac{E_a/N_A}{k_BT}\right) \\ &=\exp\!\left(-\frac{E_a}{RT}\right) \end{aligned}

有効な衝突の頻度と立体配置を前指数因子 AA にまとめると、定数 kk は

k=Aexp⁡ ⁣(−EaRT)\boxed{ k=A\exp\!\left(-\frac{E_a}{RT}\right) }

となる。たとえば速度式が v=k[A]α[B]βv=k[A]^\alpha[B]^\beta なら、アレニウス式が表すのは濃度とは別の kk のである。

アレニウスプロット

アレニウス式の自然対数を取ると、

ln⁡k=ln⁡ ⁣[Aexp⁡ ⁣(−EaRT)]=ln⁡A−EaRT=ln⁡A−EaR(1T)\begin{aligned} \ln k &=\ln\!\left[A\exp\!\left(-\frac{E_a}{RT}\right)\right] \\ &=\ln A-\frac{E_a}{RT} \\ &=\ln A-\frac{E_a}{R}\left(\frac{1}{T}\right) \end{aligned}

となる。したがって y=ln⁡ky=\ln k、x=1/Tx=1/T とすれば、直線の傾き mm と切片 bb は

m=−EaR,b=ln⁡A,Ea=−Rmm=-\frac{E_a}{R},\qquad b=\ln A, \qquad E_a=-Rm

である。2つの温度で測定した値からは、

ln⁡ ⁣(k2k1)=−EaR(1T2−1T1)\ln\!\left(\frac{k_2}{k_1}\right) =-\frac{E_a}{R}\left(\frac{1}{T_2}-\frac{1}{T_1}\right)

を使って EaE_a を求められる。

速度と平衡の区別

を超える分子の割合はBoltzmann因子で決まるが、と平衡組成は別であり、平衡条件は熱力学的平衡で整理する。

  • 温度上昇で高エネルギー側の裾が増えが上昇。
  • 触媒は順反応・逆反応のを下げて平衡へ達するまでの時間を短くするが、ΔrG∘\Delta_rG^\circ と KK は変えない。
  • アレニウスプロットの直線の傾きは −Ea/R-E_a/R。

生体・医学での解釈

、、生物学的過程のに応用。のや高温下でのも、Arrheniusプロットを用いて解析されている。12

まとめ

  • にはを超える分子集団が必要で、その割合が温度にに依存する。
  • 平衡組成は K=exp⁡(−ΔrG∘/RT)K=\exp(-\Delta_rG^\circ/RT)、のは k=Aexp⁡(−Ea/RT)k=A\exp(-E_a/RT) で表し、両者を区別する。
  • 温度上昇で高エネルギー側の裾が増えが上昇。
  • 、、生物学的過程のに応用。

出典

  1. 1.The Arrhenius plot behaviour of rat liver 5'-nucleotidase in different lipid environments(Biochimica et Biophysica Acta・1978)肝酵素の温度依存性をArrheniusプロットで解析した例閲覧 2026-08-21
  2. 2.The cytotoxic effect of cis-diamminedichloroplatinum(II) on cultured Chinese hamster ovary cells at elevated temperatures: Arrhenius plot analysis(International Journal of Hyperthermia・1990)高温条件での細胞毒性をArrheniusプロットで解析した例閲覧 2026-08-21