Biophysics

Biophysics · 08.01

光散乱―Rayleigh散乱とMie散乱

Light scattering (Rayleigh and Mie)

🧠 は、入射光で誘起された分極が別方向へを再放射する現象である。 粒子が波長より十分小さければRayleigh散乱、波長と同程度以上ならMie散乱が支配的となり、波長依存性と角度分布が変わる。

誘起双極子から散乱光が生じる

入射光のは物質中のを周期的に変位させ、を作る。このが入射方向とは異なる方向へ放射するため、光軸上の強度は減少し、周囲にはが現れる。弾性散乱では光子のエネルギーはほぼ変わらず、主に進行方向が変わる。

光をとして扱う理由は電磁スペクトルに、光軸から外れた成分を含めた減弱は減弱則に対応する。

flowchart TD
  A["入射光の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='electric field'>電場</span>"] --> B["粒子内に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oscillating dipole'>振動双極子</span>を誘起"]
  B --> C["各方向へ光を再放射"]
  C --> D["光軸上の透過光が減少"]
  C --> E["角度別の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='scattered light'>散乱光</span>を観測"]
  E --> F["粒子径・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='refractive index'>屈折率</span>差を推定"]

Rayleigh散乱とMie散乱

粒子半径をaa、媒質中の波長をλ\lambdaとすると、サイズx=2πa/λx=2\pi a/\lambdaが散乱領域を決める。

比較 Rayleigh散乱 Mie散乱
主な条件 x1x\ll1 x1x\sim1以上
粒子径 波長より十分小さい 波長と同程度以上
波長依存性 およそλ4\lambda^{-4} 単純なべき乗則では表せない
角度分布 前方・後方に比較的対称 前方散乱が強くなりやすい

Rayleigh領域では、1粒子からの散乱強度は概略

Isa6λ4m21m2+22I_{\mathrm{s}}\propto \frac{a^6}{\lambda^4}\left|\frac{m^2-1}{m^2+2}\right|^2

となる。mmは粒子と媒質の相対である。半径の6乗に依存するため、少数の大きな粒子や凝集体が信号を強く支配しうる。

散乱と吸収を区別する

吸収では光子エネルギーが物質の内部へ移るが、弾性散乱では検出方向が変わる。したがって、透過光の減少だけでは両者を区別できない。吸収を濃度へ換算するLambert–Beerの法則を濁った試料へ適用するときは、散乱による見かけのに注意する。

💡 粒子径と散乱強度の関係は線形ではない。 とくにRayleigh領域ではa6a^6依存なので、平均粒径が少し増えただけでもは大きく増える。

生体試料の測定へ

の検出方向と強度から粒子濃度を求める方法は、時間揺らぎから粒径を求める方法は動的で扱う。細胞、脂質粒子、タンパク質凝集体は大きさと差が異なるため、測定波長・角度・濃度範囲をそろえて比較する必要がある。

まとめ

  • は、入射光が誘起した分極から別方向へ光が再放射される現象である。
  • Rayleigh散乱は波長より十分小さい粒子で成立し、強い粒径依存性とλ4\lambda^{-4}依存性を示す。
  • Mie散乱では前方散乱が強くなり、波長依存性は粒径とに複雑に依存する。
  • 透過光の減少には散乱と吸収の両方が含まれうる。