Biophysics

Biophysics · 28.12

身体診察の生物物理IV―聴診

Biophysics of physical examination IV — auscultation

応用トピック
呼吸器の身体診察

🧠 は、心臓・血管・気道・肺で自発的に生じた機械振動を器で受け取る受動的な音響測定である。 聞こえる音は発生源だけでなく、組織内の伝播と器の周波数特性によっても変わる。

音の発生源と伝播経路

呼吸音は主に気道内の流れ、は弁の閉鎖に伴うの振動、は血流が構造物を振動させることで生じる。発生した振動は肺、体液、筋、脂肪、胸壁を通って体表へ届く。その途中で反射、透過、吸収、散乱が起こるため、体表で聞く音は発生源の波形そのものではない。

平面として近似できる場合、音の強度 IIの実効値 prmsp_{rms} ZZ を用いて

I=prms2ZI=\frac{p_{rms}^2}{Z}

と表せる。組織境界で ZZ が変わると伝達率も変化するため、は音源から器までの経路を考える基礎となる。

呼吸音を生む流れ

気道内の定常なは音を生じにくい。分岐、狭窄、高流速によって流れが不安定になると圧力変動が増え、気道壁や分泌物を振動させる。が大きくなる条件は乱れやすさを考える手掛かりになるが、生体気道は分岐し変形するため、単一の臨界値だけで呼吸音を決められない。

主な発生機序 時間・周波数上の特徴
正常呼吸音 で生じた流れの雑音が肺を伝播 吸気優位で軟らかい連続音
喘鳴 狭窄気道壁と気柱の持続振動 比較的高い連続音
いびき様音 の分泌物や狭窄 低い連続音、咳で変化しうる
・肺胞の急な開放や液体膜の変化 短い不連続音
弁口や血管での流れが周囲を振動 に同期した持続成分

聴診器は周波数フィルターである

flowchart TD
  A["心臓・血流・気道で振動発生"] --> B["組織内を伝播"]
  B --> C["境界で反射・透過し減衰"]
  C --> D["胸壁表面の振動"]
  D --> E["集音部と管で周波数選択"]
  E --> F["検者の耳で知覚"]
  F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='phase'>時相</span>・部位・音色を統合"]

は比較的高い周波数、は軽く当てると低い周波数を伝えやすい。強く押すと皮膚が張って性が増し、ベル型の利点が失われる。接触圧、位置、衣服、周囲雑音も検出信号を変えるため、機器を置くだけで客観値が得られるわけではない。

打診との違いと所見の統合

は検者の衝撃に対する応答を測るのに対し、部で進行中の現象が作る音を受け取る。肺実質のが減ると、からの音が胸壁へ伝わりやすくなる場合がある一方、胸水は音源と胸壁の間で音を弱めうる。発生源と伝播経路を分けると、「音が大きい=病変が強い」という単純化を避けられる。

まとめ

  • は内部で自然に生じた機械振動を検出する受動測定である。
  • 音の所見は発生源、組織伝播、器の周波数応答の積として決まる。
  • 連続音と不連続音では発生機序が異なり、呼吸相やとの関係が重要である。
  • との入力の有無を区別し、位置・・左右差を統合して解釈する。