組織病理学

組織病理学 · H1-070

皮膚基底細胞癌(HE染色)

Carcinoma basocellulare (HE) - SKIN

描出疾患
基底細胞癌

🧠 全体像:(basal cell carcinoma)は最も頻度の高いで、様腫瘍細胞の胞巣、辺縁の、と間質の間の裂隙が特徴である。転移は極めてまれだが、放置すると局所へ深く浸潤して組織を破壊する。

発生機序

flowchart TD
    A["慢性紫外線曝露"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deoxyribonucleic acid'>DNA</span>損傷"]
    B --> C["PTCH1など<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Hedgehog pathway'>Hedgehog経路</span>の異常"]
    C --> D["SMOシグナルが持続"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='basal cells'>基底細胞</span>様細胞が増殖"]
    E --> F["真皮内へ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tumor nest'>腫瘍胞巣</span>を形成"]
    F --> G["局所浸潤・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ulceration'>潰瘍形成</span>"]

293例のでは、85%が遺伝子の変異をもち、内訳はPTCH1が73%、SMOが20%、SUFUが8%であった。61%はTP53変異を併せもち、変異率は65変異/Mbとの中で最も高い1。

標本の読み方

所見 読み方
様腫瘍細胞 少量の細胞質と円形・卵円形の核をもつ
表皮から連続または真皮内に島状に増殖する
胞巣周辺の細長い核が、境界に対して垂直に並ぶ
裂隙形成 と・の間に空隙が生じる
を取り囲み、炎症細胞を伴いうる
表面潰瘍 表皮欠損と炎症・壊死を伴う
様構造 一部の分化型や鑑別病変でみられ、単独ではを決めない

生物学的挙動

特徴 意味
緩徐な増殖 長期間小さくみえても自然治癒しない
、軟骨、骨へ浸潤しうる
転移 極めてまれ
好発部位 紫外線曝露を受ける頭頸部、とくに顔面
再発リスク 部位、径、境界不明瞭、組織亜型、などで異なる

「転移しにくい」ことは「良性」を意味しない。と局所浸潤範囲の評価が重要である。再発リスクの層別化は具体的で、米国学会のガイドラインは解剖部位をH(顔面中央部・眼瞼・鼻・口唇・耳・手足・など)・M(・前額・頭皮・頸部・脛骨前面)・L(体幹・四肢)に分け、は大きさを問わず高リスク、M領域は径10 mm以上、L領域は径20 mm以上を高リスクとする2。

転移は極めてまれだが、進行例では所属リンパ節、肺、骨などへの転移が報告される。デンマークの全国レジストリでの既往をもつ126,627人を14年間追跡した研究では、病理学的に確認できた転移例は5例(うち3例は基底扁平上皮癌)にとどまり、14年は0.0039%(95%信頼区間0.0016〜0.0083%)であった3。

扁平上皮癌との比較

項目
主な細胞 様細胞 異型
代表所見 、裂隙形成 、個細胞角化、
転移 極めてまれ 高リスク例ではしうる
主な問題 局所破壊と再発 局所浸潤に加えて転移リスク

まとめ

  • 様胞巣、、間質との裂隙を組み合わせて認識する。
  • 表面潰瘍、、炎症は付随所見として評価する。
  • 転移は極めてまれだが、の悪性腫瘍である。
  • 角化を主体とする扁平上皮癌や、良性毛包系腫瘍と鑑別する。

出典

  1. 1.Genomic analysis identifies new drivers and progression pathways in skin basal cell carcinoma(Nature Genetics・2016)基底細胞癌293例の遺伝子解析で、85%がHedgehog経路遺伝子の変異(PTCH1 73%、SMO 20%、SUFU 8%)をもち、61%がTP53変異を伴った。変異率は65変異/Mbと癌腫の中で最も高い。85%は他の癌関連遺伝子にも driver 変異をもち、MYCN 30%、PTPN14 23%、PPP6C 15%などが再発性に見られた閲覧 2026-08-24
  2. 2.Guidelines of care for the management of basal cell carcinoma(American Academy of Dermatology・2018)低リスク原発BCCの標準切除マージンは皮下脂肪層中層までの深さで4mm、リスク層別化は解剖部位をH(顔面中央部・眼瞼・眉毛・眼囲・鼻・口唇・顎・下顎・耳前後部・側頭・耳介・手足・外陰部)・M(頬部・前額・頭皮・頸部・脛骨前面)・L(体幹・四肢。手足・爪部・脛骨前面・足関節を除く)に分け、H領域は大きさを問わず高リスク、M領域は径10mm以上、L領域は径20mm以上で高リスクとする閲覧 2026-08-02
  3. 3.The incidence of metastatic basal cell carcinoma (mBCC) in Denmark, 1997-2010(European Journal of Dermatology・2015)デンマークの全国レジストリで基底細胞癌の既往をもつ126,627人を14年間追跡したところ、転移性基底細胞癌の候補170例のうち病理再検で確認できたのは5例のみ(うち3例は基底扁平上皮癌)で、14年累積発生割合は既往者で0.0039%(95%CI 0.0016〜0.0083)、一般人口で0.0001%であった閲覧 2026-08-24