組織病理学

組織病理学 · H1-084

大腸腺癌の肝転移

Metastasis carcinomatosa hepatis - LIVER

描出疾患
大腸癌肝転移
疾患
肝転移

🧠 全体像:大腸癌はの静脈へ侵入するとを通って肝へ到達し、転移性結節を形成する。の腺管形成、、壊死、は腺癌を示唆するが、原発臓器は形態だけで断定せず、既往、画像、と統合する。

門脈を介する肝転移

flowchart TD
    A["大腸原発腺癌"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gut wall'>腸管壁</span>へ浸潤"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='venous invasion'>静脈侵襲</span>"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='portal blood flow'>門脈血流</span>"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hepatic sinusoid'>肝類洞</span>へ到達"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hepatic parenchyma'>肝実質</span>内で増殖"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='liver metastasis'>転移性肝腫瘍</span>"]

大腸からの静脈還流の多くは門脈を経て肝へ入るため、肝は大腸癌の代表的な転移先である。ただし、は大腸癌に限らず、膵、胃、乳房、肺など多くの原発癌から生じうる。

標本の要点

項目 所見 意味
背景肝 、、 との境界を確認する
性・膨張性にみえる結節 転移性結節でみられうる。境界の作られ方は3型に分けて評価する(下記)1
腫瘍構築 不整な腺管形成 腺癌への分化
腫瘍細胞 を含みうる 細胞質内粘液により核が偏在
脈管所見 血管内または血管壁への を支持する
壊死 腫瘍中心部の広い壊死 増殖に血流が追いつかない
間質 線維芽細胞を伴う デスモプラジア
炎症 壊死周囲などのリンパ球 腫瘍随伴反応として解釈する

原発巣の推定

手掛かり 大腸原発を支持する所見
形態 腺管形成、壊死、
臨床 の既往または病変
CDX2、SATB2、CK20などの組合せ。SATB2単独で大腸癌の85%が陽性、SATB2かCK20のどちらかが陽性なら97%2
除外 、、胃癌など他の腺癌

は細胞内粘液を示す形態であり、大腸原発に特異的ではない。また、の腺癌を形態だけで「転移」と断定できない場合は、などの原発性肝腫瘍も鑑別する。

💡 免疫染色でも3%は取りこぼす。 SATB2は下部消化管の腺上皮に発現が限局する転写因子で、原発性・1,882例を含む9コホートの解析では大腸癌の85%が明瞭に陽性、SATB2かCK20のどちらかが陽性になる症例が97%だった2。裏を返せば両方陰性の大腸癌が3%残るということで、「マーカー陰性だから大腸原発ではない」とは言えない。既往と画像を捨てずに統合するのはこのためである。

壊死とデスモプラジア

腫瘍の急速な増殖に血流供給が追いつかないとが生じる。は腫瘍周囲で活性化した線維芽細胞・がを形成する反応であり、単なる「結合組織の沈着」ではない。

💡 では「境界の作られ方」そのものが予後因子になる(組織学的)。 国際コンセンサスは、腫瘍細胞と周囲の正常が接する界面の形からをdesmoplastic型(線維性の被膜様の帯で隔てられる)・pushing型(を押しのけるが線維帯を作らない)・replacement型(腫瘍細胞がの中へ置き換わるように入り込む)の3主要型(ほかにまれな2型)に分ける。判定はを要さず通常のHE標本でできる。12名の独立した観察者が159例を判定した検証では、replacement型とdesmoplastic型で級内相関係数0.5超の良好〜優秀な一致が得られた。そして374例の後のは、desmoplastic型がreplacement型・pushing型より有意に良好だった(P=0.006)1。上の表で「性・膨張性にみえる結節」と書いたのは、この3型のうちpushing型・desmoplastic型に相当する像である。を「反応にすぎない」と読み飛ばさない。

まとめ

  • 大腸癌細胞はを介して肝へしやすい。
  • 腺管、、壊死、デスモプラジアを正常肝組織との関係から読む。
  • は大腸原発に特異的ではない。
  • は形態、臨床情報、画像、を統合して推定する。

出典

  1. 1.International consensus guidelines for scoring the histopathological growth patterns of liver metastasis(British Journal of Cancer(van Dam PJ, van der Stok EP, Teuwen LA, et al.)・2017)肝転移が腫瘍細胞と周囲の正常肝実質との境界の作られ方によってdesmoplastic・pushing・replacementの3主要型(ほかにまれな2型)に分かれ、通常のHE染色標本で判定できること、12名の独立した観察者が159例を判定した検証でreplacement型とdesmoplastic型は級内相関係数0.5超の良好〜優秀な一致を示したこと、大腸癌肝転移374例の肝切除後の全生存期間がdesmoplastic型でreplacement型・pushing型より有意に良好であったこと(P=0.006)を確認した。閲覧 2026-08-24
  2. 2.SATB2 in combination with cytokeratin 20 identifies over 95% of all colorectal carcinomas(American Journal of Surgical Pathology(Magnusson K, de Wit M, Brennan DJ, et al.)・2011)上皮系細胞でのSATB2発現が下部消化管を覆う腺上皮に限局すること、原発性・転移性大腸癌1,882例を含む9コホートの免疫組織化学解析でSATB2が大腸癌の85%に明瞭な陽性を示し、SATB2またはCK20のいずれかが陽性となる大腸癌が97%に達したこと、SATB2が原発不明癌の鑑別における補完的な指標として使えることを確認した。閲覧 2026-08-24