組織病理学

組織病理学 · H2-032

胃炎(HE染色)

Gastritis (HE)

描出疾患
胃炎

🧠 全体像:は、好中球を伴う活動性炎症、リンパ球・形質細胞主体の慢性炎症、腺萎縮、、びらん・出血を分けて記載する。などによる急性びらん性胃障害と、Helicobacter pyloriによるを混同しない。

急性胃障害と慢性胃炎

項目 急性びらん性・出血性胃障害
主な背景 、アルコール、重症ストレス、胆汁逆流など H. pylori、など
炎症 少ない場合もあり、好中球を伴いうる リンパ球・形質細胞主体、活動性では好中球も加わる
表面障害 充血、点状出血、びらん 長期化で腺萎縮・化生を伴いうる
深さ びらんはを越えない 潰瘍はを越えて深部へ達する
flowchart TD
    A["H. pylori<span class='jp-term jp-term-diagram' title='persistent infection'>持続感染</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chronic active gastritis'>慢性活動性胃炎</span>"]
    B --> C["腺萎縮"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intestinal metaplasia'>腸上皮化生</span>"]
    D --> E["異形成"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gastric adenocarcinoma'>胃腺癌</span>リスク上昇"]
    B --> G["獲得MALT形成"]
    G --> H["MALTリンパ腫リスク"]

HEでの評価

所見 解釈
のリンパ球・形質細胞 慢性炎症
腺窩・腺管内の好中球 活動性炎症
腺の減少 萎縮
を伴う上皮
表層欠損と出血 びらん性障害

が必ず萎縮・異形成へ進むわけではない。⭐ この但し書きの実測値を持っておく。 H. pylori感染者1,246例と非感染者280例を平均7.8年追跡した前向き研究では、胃癌は感染者の36例(2.9%)に生じ、非感染者では0例だった。裏を返せば感染していても約8年で97%は胃癌に至らない。ただし感染者の中でも高度の、優位の胃炎、を持つ者は有意に高リスクだった)1。つまり「感染の有無」で0か1かが決まり、「萎縮・化生・分布」でその中の勾配が決まる。

は優位の・主細胞喪失、、過形成を示し、H. pylori胃炎とは分布が異なる。💡 化生の内訳と癌リスクはH. pylori胃炎と同じではない。 H. pylori陰性を確認した211例を平均7.5年追跡すると、化生は偽化生(200/211例)のほうが(160/211例)より多く、は・異形成を経て1型(10-11例)へ至った。一方で10,541人年の追跡で胃癌の過剰リスクは検出されず、報告されてきたの胃癌リスク上昇は、認識されていないH. pyloriの既往・併存によって説明できる可能性が指摘されている)2。試験対策としては従来どおり「は胃NET・胃癌リスク」で答えつつ、腺癌リスクのほうは議論が続いている論点だと知っておく。

びらんと潰瘍は径ではなく深さで区別する。びらんはを越えず、潰瘍はを越えるため、「1 cm未満なら潰瘍ではない」「小さい潰瘍はまで達しない」といったな判定はしない。

治療安全性

関連では適応、用量、併用薬を見直し、必要に応じ酸分泌抑制を行う。H. pylori感染は除菌し、治療後にまたはなどで除菌確認を行う。菌体検出は 胃炎の を参照する。

まとめ

  • 好中球は活動性、リンパ球・形質細胞は慢性炎症を示す。
  • びらんはを越えず、潰瘍の深さと混同しない。
  • 萎縮、、異形成を別々に評価する。

出典

  1. 1.Helicobacter pylori infection and the development of gastric cancer(New England Journal of Medicine・2001)日本人1,526例(H. pylori感染1,246例、非感染280例)を平均7.8年(範囲1.0-10.6年)追跡し、胃癌は感染者36例(2.9%)にのみ発生し非感染例では0例だった。内訳は腸型23例・びまん型13例。感染者のうち高度の胃萎縮、胃体部優位の胃炎、腸上皮化生を有する者は有意に胃癌リスクが高かった。原疾患別では非潰瘍性ディスペプシア445例中21例(4.7%)、胃潰瘍297例中10例(3.4%)、胃過形成性ポリープ229例中5例(2.2%)に胃癌が生じ、十二指腸潰瘍275例からは0例だった。閲覧 2026-08-24
  2. 2.Autoimmune gastritis: long-term natural history in naïve Helicobacter pylori-negative patients(Gut・2023)血清・組織・分子生物学的検査で一貫してH. pylori陰性と確認された自己免疫性胃炎211例(女性対男性3.15対1)を平均7.5年追跡した。組織像は一貫して胃体部(酸分泌腺領域)優位の単核球浸潤で、化生は偽幽門腺化生(初回200/211例)が腸上皮化生(160/211例)より高頻度だった。腸上皮化生は追跡中に160/211から179/211へ増えたが、偽幽門腺化生の頻度は変わらなかった。ECL細胞はびまん性過形成から腺腫様過形成・異形成へ進み、1型神経内分泌腫瘍(初回10例、追跡時11例)は常に広範な酸分泌腺萎縮とECL腺腫様過形成・異形成を伴っていた。OLGA III期は両時点とも5%未満、IV期は皆無だった。累積10,541人年の追跡で、一般人口と比べ胃癌その他の悪性腫瘍の過剰リスクは認められず、甲状腺癌のみ境界的に有意だった(SIR 3.09、95%CI 1.001-7.20)。閲覧 2026-08-24