組織病理学

組織病理学 · H2-041

セリアック病

Celiac disease – SMALL INTESTINE

描出疾患
セリアック病

🧠 全体像:セリアック病(celiac disease)は、-DQ2またはDQ8を背景に小麦などのへ免疫反応を起こすである。十二指腸では、、増加を組み合わせて評価する。

発症機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gluten'>グルテン</span>中の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gliadin'>グリアジン</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tissue transglutaminase, tTG'>組織トランスグルタミナーゼ</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deamidation'>脱アミド化</span>"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='human leukocyte antigen'>HLA</span>-DQ2/DQ8でCD4陽性T細胞へ提示"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inflammatory cytokine'>炎症性サイトカイン</span>"]
    A --> E["上皮ストレスと<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraepithelial lymphocyte'>上皮内リンパ球</span>活性化"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='villous atrophy'>絨毛萎縮</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='crypt hyperplasia'>陰窩過形成</span>"]
    E --> F
    F --> G["吸収不良"]

組織像

所見 意味
低下
再生性
増加 通常100上皮細胞あたり25個以上を目安1
炎症 形質細胞・リンパ球など
十二指腸を示す目印
Paneth細胞 陰窩底部に位置し、抗菌物質を分泌
粘液を産生する

は十二指腸を示すが、「絨毛とがあればセリアック病」という診断所見ではない。感染、薬剤、免疫不全なども類似のを起こす。病理報告の標準様式を定めた文献自身が、を来す重要な組織学的鑑別を併記することを求めている2。

💡 段階づけはで書く。 増加のみならtype 1(浸潤期)、が加わればtype 2、まで及べばtype 3で、type 3は絨毛の短縮の程度により3a(軽度)・3b(中等度)・3c(完全消失)に分ける。もとのMarsh分類を病理医向けの報告様式として整理し直したもので、25/100というの閾値と組み合わせて「どの段階か」を言葉でなく型番で伝えるである21。

診断と治療

手順 要点
血清学 IgA抗体と総IgA
生検 摂取中に複数の十二指腸部位から採取。成人では大半の症例で確定に必須3
遺伝学 -DQ2/DQ8陰性なら診断可能性は低い
治療 生涯にわたる厳格な除去
追跡 症状、、血清抗体、必要時

💡 小児では生検を省略できる道がある。 ESPGHANの2020年改訂ガイドラインは、IgAが基準値上限の10倍以上で、かつ別の血液検体で抗endomysium抗体IgAが陽性であれば、家族の同意のもとにを省略して診断してよいとした。2012年版と違い、症状の有無も-DQ2/DQ8の判定も必須条件ではない4。ただしこれは小児に限った運用で、成人は依然として大半で生検による確定が必要とされている3。

治療抵抗例では摂取継続、他疾患、を再評価する。除去食下で症状が続くとき最も多い原因は意図しない混入であり、真のはまれだが予後は不良である3。長期未治療例では腸症関連T細胞リンパ腫やのリスクが上がるが、すべての患者に発生するわけではない。

まとめ

  • 、、増加が三本柱である。
  • 診断は摂取中の血清学と生検を統合する。
  • 治療は厳格な除去で、反応不良時は診断と摂取を再評価する。

出典

  1. 1.Quantitation of intraepithelial lymphocytes in human duodenum: what is normal?(Journal of Clinical Pathology・2002)正常十二指腸粘膜の上皮内リンパ球数を数え直した研究。絨毛表面上皮を500細胞以上連続して数えた20例の実測範囲は1.8〜26/100上皮細胞、平均11・標準偏差6.8で、平均+2標準偏差にあたる25/100上皮細胞を十二指腸粘膜の正常上限とすべきと結論した。それまで引用されていた40/100という上限は30年以上前の空腸生検に由来し、十二指腸生検には当てはまらない閲覧 2026-08-24
  2. 2.The histopathology of coeliac disease: time for a standardized report scheme for pathologists(European Journal of Gastroenterology and Hepatology・1999)Marsh分類を基礎に病理報告の標準様式を提案した論文(Marsh-Oberhuber分類)。セリアック病の組織所見と病理医が使う用語を定義したうえで、鑑別すべき重要な組織学的疾患を列挙し、あわせて症候性・無症候性・潜在性・治療後・難治性というセリアック病の臨床病型を定義した閲覧 2026-08-24
  3. 3.American College of Gastroenterology Guidelines Update: Diagnosis and Management of Celiac Disease(The American Journal of Gastroenterology・2023)2013年版を改訂した米国消化器病学会のセリアック病ガイドライン。血清中の抗組織トランスグルタミナーゼ抗体などセリアック病特異抗体は初期スクリーニングに有用だが、確定診断には大半の患者で小腸生検を要するとし、生検を省略する方針は「選ばれた小児」に限って提案されるとする。治療は生涯の厳格なグルテン除去食で、除去食下でも症状が続く不応性セリアック病では意図しないグルテン混入をはじめ原因を系統的に検索する。真の難治性セリアック病は不応性セリアック病のまれな原因で、しばしば予後不良である閲覧 2026-08-24
  4. 4.European Society Paediatric Gastroenterology, Hepatology and Nutrition Guidelines for Diagnosing Coeliac Disease 2020(European Society for Paediatric Gastroenterology, Hepatology and Nutrition / Journal of Pediatric Gastroenterology and Nutrition・2020)2012年版を改訂した小児セリアック病の診断ガイドライン。疑ったらまず総IgAと抗組織トランスグルタミナーゼIgAを測り、抗体価が基準値上限の10倍以上で家族が同意し、別の血液検体で抗endomysium抗体IgAが陽性なら、十二指腸生検を省略した診断を適用してよい。HLA-DQ2/DQ8の判定と症状の有無は必須条件ではない閲覧 2026-08-24