組織病理学

組織病理学 · H2-081B

高異型度漿液性癌

High grade serous carcinoma (cystadenocarcinoma ovarii)

描出疾患
卵巣癌

🧠 全体像:は卵管・卵巣・腹膜に発生する系癌で、多くはのに由来すると考えられる1。

病理発生

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fimbriae (of the uterine tube)'>卵管采</span>上皮のTP53異常"] --> B["STIC"]
    B --> C["卵管・卵巣・腹膜のHGSC"]
    C --> D["卵巣表面・網・腹膜へ播種"]
    C --> E["腹水・リンパ節転移"]

「卵巣表面上皮のみから生じる」という旧来の説明に限定しない。TP53異常はほぼ必須で(489例の統合で96%にTP53変異)、BRCA1・BRCA2異常や(homologous recombination deficiency:HRD)を伴う群がある(解析腫瘍の約半数でが機能欠損)2。

💡 卵管起源説を支えたのはSEE-プロトコルである。 付属器を全割で検索するSEE-(Sectioning and Extensively Examining the FIMbriated end)で骨盤55例を調べると、75%が卵管内膜に病変を持ち、内癌の93%がに局在し、と併存卵巣癌は同一のTP53変異を共有した1。ただし「多くは」であって全部ではない。すべてのSTICが臨床的なへ進むわけではなく、すべてのがSTIC由来でもない。STICの臨床的意義がはっきりしているのは生殖細胞系列BRCA1/2で、症例の85〜90%を占める一般集団の女性では相対的に不明確である3。

所見 要点
肉眼 ・嚢胞性、表面結節、出血、壊死;両側性も多い
構築 複雑な、裂隙状、、腺
細胞 高度核異型、明瞭な核小体、多数の
浸潤 ・卵管壁・腹膜への破壊性浸潤
石灰化;存在だけで予後良好とはしない
免疫 PAX8・WT1陽性、異常p53発現パターンを示すことが多い

診断と治療

卵管、卵巣、腹膜を一体としてし、を含めて原発部位を評価する。全例で遺伝学的検査を検討し、BRCA1/2とHRD情報をに用いる。

治療は専門チームで、最大限の安全なとプラチナ・療法を基本とする。初回手術が不適切な例では後の手術を検討し、反応、病期、BRCA1/2、HRDなどに応じやによる維持療法を選ぶ4。固定した5年生存率で個別予後を断定しない。

と治療の詳細はの病期・治療・病理を参照する。

まとめ

  • HGSCはSTICとのを意識する。
  • 、複雑構築、異常p53が重要である。
  • 卵管・卵巣・腹膜病期とBRCA・HRDを治療へ統合する。

出典

  1. 1.Intraepithelial carcinoma of the fimbria and pelvic serous carcinoma: Evidence for a causal relationship(The American Journal of Surgical Pathology・2007)付属器を全割検索するSEE-FIMプロトコルで検討した骨盤漿液性癌55例のうち41例(75%)が卵管内膜(采部を含む)に病変を持ち、卵管上皮内癌(TIC)の93%が卵管采に存在した。TICと併存卵巣癌を調べた5例はいずれも同一のTP53変異を共有した。「卵巣」漿液性癌の71%が卵管内膜への進展を、48%がTICを伴っていた。閲覧 2026-08-24
  2. 2.Integrated genomic analyses of ovarian carcinoma(Nature・2011)高異型度漿液性卵巣腺癌489例の統合ゲノム解析で、TP53変異はほぼ全例(96%)に認められ、NF1・BRCA1・BRCA2・RB1・CDK12を含む9遺伝子に低頻度だが有意な体細胞変異が繰り返し見つかった。経路解析では解析腫瘍の約半数で相同組換えが機能欠損していた。閲覧 2026-08-24
  3. 3.Cell Origins of High-Grade Serous Ovarian Cancer(Cancers・2018)高異型度漿液性癌の起源として卵管遠位部(采部)上皮が有力視され、漿液性卵管上皮内癌(STIC)が前駆病変として提唱されている。ただしすべてのSTICが臨床的な高異型度漿液性癌へ進展するわけではなく、すべての高異型度漿液性癌がSTIC由来でもない。STICの臨床的意義は生殖細胞系列BRCA1/2変異保有者で最も明確で、症例の85〜90%を占める一般集団の女性では相対的に不明確である。閲覧 2026-08-24
  4. 4.Maintenance olaparib for patients with newly diagnosed advanced ovarian cancer and a BRCA mutation (SOLO1/GOG 3004): 5-year follow-up of a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trial(The Lancet Oncology・2021)BRCA変異を有する新規診断の進行卵巣癌391例でオラパリブ300 mgを1日2回最長2年間維持投与した5年追跡では、無増悪生存期間中央値がオラパリブ56.0か月対プラセボ13.8か月(ハザード比0.33、95%信頼区間0.25〜0.43)であった。2年間の維持投与の利益は投与終了後も持続した。閲覧 2026-08-24