組織病理学

組織病理学 · H2-092B

卵巣濾胞嚢胞(肉眼像)

Follicular ovarian cyst (image)

描出疾患
卵巣機能性嚢胞・良性腫瘍

🧠 全体像:という疾患名だけでは、標本固有の大きさ、内容液の性状、被覆上皮の状態を確定できない。診断では、実際に観察できる肉眼・組織所見に基づいて評価する。

診断できる範囲を守る

根拠 判断できること 判断できないこと
疾患名のみ 濾胞嚢胞が学習対象であること 個々の標本の大きさ、破裂の有無、被覆上皮の状態
肉眼形態 嚢胞の分布、被膜との関係 内容液の性状の細部
組織形態 裏打ち細胞の種類、間質の変化 標本間で共通しない付随所見

形態的根拠が示されていない状態で、内容液の色調、破裂の有無、周囲の炎症反応などの個別所見を推定してはならない。

flowchart TD
    A["卵巣表面近くの嚢胞性病変"] --> B["肉眼で大きさ・被膜・多発性を確認"]
    B --> C["組織で顆粒膜・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='theca cell'>莢膜細胞</span>の裏打ちを確認"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mass effect'>圧排</span>による裏打ち細胞の萎縮の有無を確認"]
    D --> E["濾胞嚢胞として評価"]

一般的な確認項目

項目 濾胞嚢胞で典型的な方向性
頻度 非常に多く、多くは無症状で偶発的に発見される(連続でのは閉経前34.9%・閉経後17.0%)1
裏打ち細胞 ・
内容液 透明な漿液性液
合併症 捻転、破裂による・(5 cmを超える嚢胞は捻転例で多いが、捻転疑いで手術した症例の43%は実際には捻転ではなかった)2

これらは疾患一般の確認項目であり、対象標本での実際の所見は個別に確認する必要がある。組織学的特徴の詳細は卵巣濾胞嚢胞を参照する。

まとめ

  • 濾胞嚢胞は疾患名であり、個別標本の所見をそこから直接補ってはならない。
  • 確認できる肉眼・組織所見を診断の根拠とする。
  • 標本固有の所見は卵巣濾胞嚢胞で確認する。

出典

  1. 1.Frequency and disposition of ovarian abnormalities followed with serial transvaginal ultrasonography(Obstetrics and Gynecology・2013)卵巣癌スクリーニングに参加した39,337人を221,576回の連続経腟超音波で追跡した研究で、卵巣嚢胞は閉経前女性で有病率34.9%・発生率15.3%、閉経後女性で有病率17.0%・発生率8.2%と高頻度であった。初回検査が異常だった症例の63.2%は以後の検査で正常化しており、初回が複雑・充実性・両側性であっても消退する例が多い。単房性嚢胞が異常所見の11.5%を占めた。単回の超音波異常だけを手術の引き金にせず、連続観察で判断すべきである閲覧 2026-08-24
  2. 2.Operative Findings in Pediatric and Adolescent Patients With Presumed Adnexal Torsion(The Journal of Surgical Research・2022)付属器捻転が疑われて超音波を受けた4〜18歳の女性225例のうち、手術に至った113例で実際に捻転が確認されたのは57%であった。悪心・嘔吐、圧痛、白血球増多、血流の途絶、5 cmを超える腫瘤・嚢胞は捻転例でより多くみられ、卵巣体積比15超が捻転の予測因子であった。一方で手術例の43%は捻転ではなく、画像所見だけで捻転を確定できない閲覧 2026-08-24