組織病理学

組織病理学 · H2-093A

卵巣濾胞嚢胞

Follicular ovarian cyst

描出疾患
卵巣機能性嚢胞・良性腫瘍

🧠 全体像:は、排卵に至らなかった卵胞または排卵後すぐに閉鎖した卵胞に由来する、きわめて頻度の高い無害な卵巣嚢胞性病変である。とあわせて、卵巣の非腫瘍性嚢胞性病変の代表格をなす。

発生と組織像

flowchart TD
    A["卵胞が排卵に至らない、または排卵後すぐに閉鎖"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antrum'>卵胞腔</span>に漿液が貯留"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='granulosa cell'>顆粒膜細胞</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='theca lutein cells'>莢膜黄体細胞</span>に裏打ちされた嚢胞"]
    C --> D["液体貯留の持続"]
    D --> E["裏打ち細胞の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mass effect'>圧排</span>性萎縮"]
所見 解釈
またはの裏打ち 卵胞由来であることを示す標識的所見
変性する黄体 との・関連病変として観察されうる
・被膜 嚢胞と周囲卵巣組織との関係を評価する

多くは小型でに多発し、透明な漿液性内容液で満たされる。液体貯留が進むと内圧により裏打ち細胞がされ萎縮するため、進行した病変では裏打ちが不明瞭になることがある。

臨床的意義

濾胞嚢胞のほとんどは無症状で、画像検査で偶発的に発見される(卵巣癌スクリーニングで連続を受けた39,337人では、卵巣嚢胞のは閉経前34.9%・閉経後17.0%と高い)1。まれに10 cmを超えて増大し、な腫瘤やの原因となる。嚢胞が破裂すると、と様の症状を呈することがあり、やとの鑑別が必要になる。

⚠️ 濾胞嚢胞・はであり、多くは自然消退する。前述のスクリーニングコホートでは、初回超音波で異常とされた病変の63.2%が以後の検査で正常化しており、初回像が複雑・・両側性であっても消退する例が少なくなかった。単回の超音波異常だけを手術の引き金にしないというのが、この数値から導かれる原則である1。すべての卵巣嚢胞を腫瘍性病変と同列に扱わず、大きさ、経過観察での変化、症状の有無から手術適応を判断する。

💡 「どこから追いかけるか」はサイズで線が引かれている。 単純性付属器嚢胞について、Society of Radiologists in Ultrasoundの2019年コンセンサスは、閉経前では3 cmを報告の閾値・5〜7 cm超を経過観察の対象とし、閉経後では1 cm超を記録に残したうえで経過観察は3〜5 cm超からとする。10〜15%以上縮小した時点で追跡は打ち切ってよく、逆に増大するはを考える2。「3 cm」という数字は、と生理的卵胞を切り分ける実務上の目安として覚えるとよい。

肉眼像に限定した情報は卵巣濾胞嚢胞(肉眼像)、卵巣の非腫瘍性疾患全般は卵巣・卵管の非腫瘍性疾患を参照する。

まとめ

  • 濾胞嚢胞は排卵不全または排卵後早期閉鎖した卵胞に由来するである。
  • 顆粒膜・の裏打ちと漿液性内容液が典型像である。
  • 大部分は無症状・自然消退するが、増大や破裂は・の原因となる。

出典

  1. 1.Frequency and disposition of ovarian abnormalities followed with serial transvaginal ultrasonography(Obstetrics and Gynecology・2013)卵巣癌スクリーニングに参加した39,337人を221,576回の連続経腟超音波で追跡した研究で、卵巣嚢胞は閉経前女性で有病率34.9%・発生率15.3%、閉経後女性で有病率17.0%・発生率8.2%と高頻度であった。初回検査が異常だった症例の63.2%は以後の検査で正常化しており、初回が複雑・充実性・両側性であっても消退する例が多い。単房性嚢胞が異常所見の11.5%を占めた。単回の超音波異常だけを手術の引き金にせず、連続観察で判断すべきである閲覧 2026-08-24
  2. 2.Simple Adnexal Cysts: SRU Consensus Conference Update on Follow-up and Reporting(Radiology(Society of Radiologists in Ultrasound)・2019)単純性付属器嚢胞の癌リスクは極めて低い。閉経前では3 cmを報告の閾値とし、経過観察の画像検査は5〜7 cm超で推奨する。閉経後では1 cm超を記録に残し、経過観察は3〜5 cm超から(画像による性状評価が良好な症例では5 cmの高い閾値を用いる)。いずれかの時点で10〜15%以上縮小していればそれ以上の追跡は不要で、増大する単純性嚢胞は嚢胞腺腫であることが多い閲覧 2026-08-24