組織病理学

組織病理学 · H2-093B

乳癌(肉眼標本)

SPECIMEN - Malignant breast tumor

描出疾患
乳癌

🧠 全体像:乳癌は女性で最も多いであり、癌死因としても世界全体では女性の第1位を占める(古典的な教科書記載の「肺癌に次いで第2位」は、肺癌死亡が突出して多い地域の統計を反映した順位である)。肉眼標本では、腫瘍の部位・大きさに加え、浸潤性かかの区別、・血行性の進展経路を意識した評価が重要である。

疫学と危険因子

危険因子 要点
年齢 患者の75%が50歳超、40歳未満はわずか5%
遺伝性素因 BRCA1・BRCA2など修復関連の変異(80歳までの乳癌リスクはBRCA1で72%、BRCA2で69%)1
既存乳腺病変 、の既往
ホルモン要因 、年齢が高い、、・
肥満、

⚠️ 「女性の癌死因の第2位」は地域限定の順位である。 GLOBOCAN 2022 の推計では、女性乳癌は全癌罹患の11.6%・全癌死亡の6.9%を占め、女性に限れば罹患・死亡のいずれでも最多のである(男性では肺癌が最多)。の順位は地域・性・年齢によって変わるため、「第2位」という数字は出典の集計範囲とセットで覚える2。旧来の順位づけも、試験でそのまま問われうるので捨てずに位置づけだけ更新しておく。

変異とエストロゲン・を介した増殖刺激が組み合わさって発生する。遺伝子のによる不活化など、遺伝子発現制御の異常も関与する。

肉眼所見

観察項目 記載内容
左右差 左乳房がわずかに右より多い傾向(韓国の171,500例で左/右比1.031、に左右差なし)3
好発部位 外上四分円
浸潤性・の区別 基底膜を貫通しているかどうかで分類する
腫瘤の性状 境界不明瞭で硬い腫瘤として触れることが多い

進展経路

flowchart TD
    A["乳癌"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pattern of invasion'>浸潤様式</span>"}
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lymphatic'>リンパ行性</span>"| C["外側・中央四分円の病変は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='axillary nodes'>腋窩リンパ節</span>へ"]
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lymphatic'>リンパ行性</span>"| D["内側四分円の病変は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='internal mammary lymph node'>内胸リンパ節</span>へ"]
    B -->|"血行性"| E["肺・骨格・肝・副腎・脳など遠隔臓器へ"]

臨床像

多くは患者本人またはが発見する、境界不明瞭・無痛性・可動性の腫瘤(2〜3 cm、転移を伴うことがある)として顕在化する。検診の普及により、になる前の段階で発見される例が増えている。

の代表的組織型は()と、病変はと、良性腫瘍との対比は腫瘍(・)を参照する。組織型分類全般は乳腺の悪性腫瘍、疫学・病期・診断の詳細は乳癌の疫学・病因・組織型・病期・症状・診断に整理する。

まとめ

  • 乳癌は女性で罹患・死亡ともに最多のであり(「肺癌に次いで第2位」という順位は集計範囲によって変わる)、患者の大多数が50歳超である。
  • 外上四分円に好発し、浸潤性・の区別がの基本軸である。
  • は病変の部位により腋窩・へ向かう。
  • 検診により、触知不能な早期段階での発見が増えている。

出典

  1. 1.Risks of Breast, Ovarian, and Contralateral Breast Cancer for BRCA1 and BRCA2 Mutation Carriers(JAMA・2017)80歳までの累積乳癌リスクはBRCA1で72%、BRCA2で69%、対側乳癌リスクは診断20年後にBRCA1で40%、BRCA2で26%である閲覧 2026-08-24
  2. 2.Global cancer statistics 2022: GLOBOCAN estimates of incidence and mortality worldwide for 36 cancers in 185 countries(CA: A Cancer Journal for Clinicians・2024)2022年の推計で、女性乳癌は全癌罹患の11.6%(世界2位)、全癌死亡の6.9%(世界4位)を占める。女性に限れば乳癌が罹患・死亡のいずれでも最多の癌腫であり(男性では肺癌が最多)、癌腫の順位は世界の地域によって大きく異なる閲覧 2026-08-24
  3. 3.Clinicopathological features and prognosis associated with breast cancer laterality: a nationwide study from the Korean Breast Cancer Society(Annals of Surgical Treatment and Research・2022)韓国乳癌学会登録の171,500例で左右比(左/右)は1.031(95%信頼区間1.022〜1.041、P<0.001)と左優位だが差はわずかで、年齢・BMI・部位・HER2状態が左右差に関連した。左右で生存率に有意差はなく、左優位は経時的に縮小している閲覧 2026-08-24