組織病理学

組織病理学 · H2-089B

浸潤性乳癌(非特殊型)

Invasive carcinoma – NST

描出疾患
乳癌

🧠 全体像:(invasive breast carcinoma of no special type:NST、旧称「(NOS)」)は、のうち小葉癌・・などの特殊型に分類できないものを指す、乳癌の中で最も頻度の高い組織型である。

分類の考え方

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='invasive breast cancer'>浸潤性乳癌</span>"] --> B{"特殊型の形態的特徴を満たすか"}
    B -->|"満たす"| C["小葉癌・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tubular carcinoma'>管状癌</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mucinous carcinoma'>粘液癌</span>など"]
    B -->|"満たさない"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='no special type (NST)'>非特殊型</span>(NST)"]
    D --> E["基底膜を越える不整浸潤"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='desmoplastic stroma'>線維形成性間質</span>反応"]
    F --> G["硬い<span class='jp-term jp-term-diagram' title='palpable'>触知可能</span>な腫瘤"]

「(invasive ductal carcinoma:IDC、NOS)」という旧称は現行の分類ではNSTに置き換わっている。分類はNSTのほかに30の特殊型を区別し、NSTが全乳癌の60〜70%、特殊型で最多のが5〜15%を占める1。であり、特殊型の所見がないことを確認したうえで診断する。

⚠️ 「」は現行分類では独立した特殊型ではない。 乳腺腫瘍分類第5版(2019)では、・非典型・所見を伴う浸潤癌をまとめ、に富む浸潤癌のスペクトラムの一端(パターンを示すNST)として扱う。典型的なはその独立した組織学的亜型ではなくなった2。旧分類の「」は試験で問われうるので名称と形態(境界明瞭、シンシチウム様増殖、豊富な、予後は比較的良好)は覚えたうえで、現行の位置づけを併せて押さえる。

標本の所見

所見 解釈
(Nottingham/Elston-Ellis法)の評価項目の一つ。腺管形成の割合・核の・規定視野での数の3項目を採点し合計で3段階に分ける3
脂肪組織への浸潤 基底膜を越えた不整なの浸潤を示す
石灰化 壊死や分泌物のに伴いうる
非腫瘍性腺 周囲の正常・小葉との対比に用いる
腺管形成に乏しい高グレード領域を示唆する

多くはを併存し、により周囲間質が硬化するため、臨床的には境界不明瞭で硬い腫瘤として触知される。

診断・治療への接続

50歳以降の女性に多く、変異やエストロゲン・を介したが背景にある。に加え、ER・PR・の結果が全身治療(、、化学療法)の選択を規定する。細胞異型が目立たなくても、とから予後を軽視しない。

成分の評価はの、との対比はを参照する。組織型全般は乳腺の悪性腫瘍、疫学・病期・診断の詳細は乳癌の疫学・病因・組織型・病期・症状・診断に整理する。

まとめ

  • NSTは特殊型の形態を満たさないで、全乳癌の60〜70%と最も頻度が高い1。
  • 基底膜を越える浸潤と反応により硬い腫瘤を形成する。
  • (腺管形成・核・数の3項目の合計)とER・PR・結果をに統合する3。
  • 「(NOS)」という旧称はNSTに置き換わっている。
  • 「」も独立した特殊型ではなくなり、TILsに富むNSTのパターンとして扱う。

出典

  1. 1.Invasive lobular breast cancer and its variants: how special are they for systemic therapy decisions?(Critical Reviews in Oncology/Hematology・2014)WHO乳腺腫瘍分類は非特殊型浸潤癌(invasive breast cancer of no special type、旧称 invasive ductal carcinoma)と30の特殊型を区別しており、非特殊型が全乳癌の60〜70%、特殊型で最多の浸潤性小葉癌が5〜15%を占める。浸潤性小葉癌は一般に非特殊型より予後良好で内分泌療法反応性が高く化学療法への反応が乏しいと考えられているが、現時点で利用できるデータはこれらの前提を一致して支持しているわけではない閲覧 2026-08-24
  2. 2.Clinicopathologic Features and Immune Cell Subtypes Analysis of Tumor-infiltrating Lymphocytes Rich Invasive Breast Carcinoma of No Special Type(Applied Immunohistochemistry & Molecular Morphology・2023)WHO乳腺腫瘍分類第5版で「腫瘍浸潤リンパ球に富む非特殊型浸潤癌(TILs-rich IBC-NST)」が新たな名称として導入され、典型的髄様癌はこの範疇の独立した形態学的亜型ではなくTILsに富むNSTのスペクトラムの一端として位置づけられたこと、および同研究で髄様癌42例の間質TILs平均78.10%に対し髄様所見を欠く高悪性度トリプルネガティブ乳癌180例では61.33%であり、5年無病生存率82.50%対54.49%、5年全生存率85.00%対58.68%であったことを確認した閲覧 2026-08-24
  3. 3.Pathological prognostic factors in breast cancer. I. The value of histological grade in breast cancer: experience from a large study with long-term follow-up(Histopathology・1991)Nottingham/Tenovus研究でBloom-Richardson法を改訂した組織学的異型度評価法。腺管形成の割合、核の多形性、規定視野面積での正確な核分裂像数の3項目を半定量的に採点し、その合計から3段階の異型度を決める。1,831例での評価では異型度Iの生存が異型度II・IIIより有意に良好であった(P<0.0001)。異型度は腫瘍径・リンパ節病期とともにNottingham prognostic indexを構成する閲覧 2026-08-24