腫瘍学

腫瘍学 · II-29

乳癌の疫学・病因・組織型・病期・症状・診断

Epidemiology, etiology, histology, staging, symptoms and diagnosis of breast cancer

前提:病態
BRCA1・BRCA2・ATM遺伝子乳腺の悪性腫瘍
前提:正常
上肢:胸筋部と乳房女性性内分泌学
疾患
乳癌
検査値
糖鎖抗原15-3

🧠 全体像:乳癌はまたは小葉上皮由来が多く、診断は診察・画像・組織ので行う。病期だけでなく、(ER)、、、が治療を決める。

危険因子

分類 主な因子
ホルモン曝露 早い、遅い閉経、、遅い初回満期妊娠、閉経後
遺伝 BRCA1/2、PALB2、TP53などの、強い家族歴
生活・身体 飲酒、閉経後肥満、運動不足
乳腺の性状 高乳腺濃度(濃度)
医原性 若年期の胸部照射

高乳腺濃度は他因子と独立した強い危険因子で、濃度の面積比が75%以上の群は5%未満の群に比べ4.64(50〜74%で2.92)と、乳癌で最も強い危険因子の一つである。1

大部分は散発性で、遺伝性は一部である。BRCA1/2保有者では80歳までの乳癌リスクがBRCA1で72%、BRCA2で69%、乳癌診断から20年後の対側乳癌リスクがそれぞれ40%・26%に達する。2 も存在する。

病理と進展

区分 代表例
上皮内病変 、、
浸潤癌 、など
分子表現型 陽性/陰性、陽性、

局所では乳房・皮膚・胸壁へ、に腋窩・内胸・下リンパ節へ進展し、血行性には骨、肺、肝、脳へ転移しやすい。

💡 (乳癌の10〜15%、80%がER陽性)はと生物学的に別物である。E-cadherin消失を背景に細胞がばらけて浸潤するため多発性・多中心性で腫瘤を作りにくく、触診でもでも過小評価されやすい。転移先も漿膜(腹膜)・髄膜・卵巣といった特徴的な部位に及び、化学療法感受性はより低い。3

TNMの骨格

T 要点
T1 最大径2 cm以下(T1miは微小浸潤1 mm以下)
T2 >2〜5 cm
T3 >5 cm
T4 大きさを問わず胸壁または皮膚へ進展。を含む

N分類は腋窩、内胸、下リンパ節の部位、数、可動性、微小/肉眼転移で決まる。M1は遠隔転移である。解剖学的病期にER・PgR・・グレードを加えたも用いる。

症状と診察

  • 無痛性で硬く不整、可動性が乏しい腫瘤、乳房左右差、、、血性分泌、を疑う。
  • は腫瘤が不明瞭でも、・浮腫・を呈し得る。
  • 良性を示唆する所見があっても年齢だけで除外せず、持続する新規腫瘤を評価する。

診断

flowchart TD
  A["乳房症状または検診異常"] --> B["診察+年齢・状況に応じ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mammography'>マンモグラフィ</span>/超音波"]
  B --> C{"画像は疑わしいか?"}
  C -->|"はい"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='image-guided'>画像ガイド下</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='needle biopsy'>針生検</span>:原則コア針"]
  C -->|"低<span class='jp-term jp-term-diagram' title='suspected diagnosis'>疑診</span>だが触知病変が持続"| E["臨床・画像の不一致を再評価"]
  E --> D
  D --> F["病理、ER/PgR、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='human epidermal growth factor receptor 2'>HER2</span>、グレード"]
  F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='clinical stage (cTNM)'>臨床病期</span>に応じ腋窩・遠隔評価"]

画像所見

良性を示唆 悪性を示唆
境界明瞭、楕円形、平行、 、構築の乱れ、不整境界、

陰性でも触知腫瘤を否定できない。超音波は嚢胞/の判別、腋窩評価、生検誘導に有用である。は浸潤の評価や受容体検査に限界があり、疑わしい病変ではが基本となる。

⚠️ ただしの受容体判定は手術検体と完全には一致しない。とくにでは腫瘍のの影響が大きく、病理分類でのは60%程度、IHC 1+・2+/ISH陰性という-low領域で感度・が落ちる。4 と生検結果が食い違うときは手術検体での再評価を考える。

CA15-3やは無症状者の診断・検診には用いない。遠隔病期画像は症状、局所進行、検査異常などに応じて選び、早期乳癌に一律の・を行わない。

まとめ

  • 乳房異常は診察・画像・組織を一致させて診断する。
  • ER/PgR、、病期、グレードはに不可欠である。
  • 陰性画像や年齢だけで持続性腫瘤を良性と決めない。

出典

  1. 1.Breast density and parenchymal patterns as markers of breast cancer risk: a meta-analysis(2006)マンモグラフィ濃度は最も強い乳癌危険因子の一つで、面積比75%以上は5%未満に比べ相対リスク4.64(50〜74%で2.92)であることを確認した。閲覧 2026-08-13
  2. 2.Risks of Breast, Ovarian, and Contralateral Breast Cancer for BRCA1 and BRCA2 Mutation Carriers(2017)80歳までの累積乳癌リスクがBRCA1で72%、BRCA2で69%、対側乳癌リスクが診断20年後にBRCA1で40%、BRCA2で26%であることを前向きコホートで確認した。閲覧 2026-08-13
  3. 3.Comprehensive Review of Molecular Mechanisms and Clinical Features of Invasive Lobular Cancer(2021)浸潤性小葉癌が乳癌の10〜15%を占め、80%がER陽性で、多発性・多中心性のため発見が難しく、漿膜・髄膜・卵巣という特徴的な転移様式を示し、化学療法感受性が低いことを確認した。閲覧 2026-08-13
  4. 4.Diagnostic value of core needle biopsy for determining HER2 status in breast cancer, especially in the HER2-low population(2022)コア針生検と手術検体のHER2判定一致率が病理分類で60.0%にとどまり、とくにIHC 1+・2+/ISH陰性のHER2-low領域で感度・陽性的中率が低いことを確認した。閲覧 2026-08-13