Histopathology

Histopathology · H2-123B

脂肪肉腫(後腹膜:組織学的grading・外科的境界編)

Liposarcoma – RETROPERITONEUM

描出疾患
軟部肉腫

🧠 全体像の分子亜型分類(ALT/WDLPS〜DDLPS、粘液型、)と診断の中心的マーカーはH2-109B:(後腹膜)で扱った。本項目では、亜型を横断して悪性度を数値化する組織学的grading(FNCLCC分類)と、後腹膜という部位に固有の外科的な難しさを補足する。

軟部肉腫の組織学的grading(FNCLCC分類)

FNCLCC(フランス癌センター)分類は、を含む軟部肉腫全般に用いられる標準的な組織学的grading体系で、3項目のスコアを合算してgradeを決める。

評価項目 スコア1 スコア2 スコア3
正常成熟脂肪組織に近い(など) 組織型が確定できる中間的分化 未分化・組織型が不確かな低分化腫瘍
数(10 HPFあたり) 少数 中等度 多数
腫瘍壊死 なし 50%未満 50%以上

3項目の合計スコアによりgrade 1(低悪性度)〜grade 3()に分類され、grade上昇は局所再発・遠隔転移リスクの上昇と関連する。では、スコアが低くgrade 1にとどまることが多いのに対し、や円形細胞成分の増えた粘液型、数・壊死のいずれかが上昇しgrade 2〜3になりやすい。

flowchart TD
    A["後腹膜<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Liposarcoma'>脂肪肉腫</span>の生検・切除検体"] --> B["組織学的亜型を同定"]
    B --> C["FNCLCC 3項目(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='differentiation'>分化度</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mitosis'>核分裂</span>数・壊死)を評価"]
    C --> D["grade 1〜3を判定"]
    D --> E["画像で周囲構造への浸潤範囲を評価"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='resectability'>切除可能性</span>を多職種で検討"]
    F --> G["広範切除(必要に応じ隣接臓器合併切除)"]
    G --> H["高gradeでは<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adjuvant therapy'>補助療法</span>を検討"]

後腹膜という部位に固有の外科的課題

後腹膜は、周囲の骨格筋(腰筋など)・腎・尿管・大血管・腸管に近接しながら発育するため、H2-109Bで述べた「発見の遅れ」に加え、切除そのものが技術的に難しいという課題がある。

課題 内容
周囲構造への浸潤 骨格筋・腎・大血管など複数の構造に接し、単純な腫瘤摘出では断端陽性になりやすい
完全切除のための合併切除 陰性を得るために、患側腎・結腸の一部など隣接臓器を含めた切除(compartmental resection)が検討される
局所再発の管理 とくにDDLPSは断端陰性でも局所再発率が高く、繰り返す再切除が必要になることがある
放射線療法の位置づけ 四肢の軟部肉腫と異なり、後腹膜では周囲臓器の線量のから放射線療法の意義は確立しておらず、症例ごとに検討を要する

⚠️ 「断端陰性を得られれば根治」と単純化しない。後腹膜、とくにDDLPSは組織学的に断端陰性であっても局所再発をきたしうるため、術後も長期の画像経過観察が必要になる。

軟部腫瘍全般の疫学・軟部腫瘍の疫学・病因・組織型・病期・症状・診断、治療の軟部腫瘍の治療を参照する。

まとめ

  • FNCLCC分類は数・壊死の3項目からgrade 1〜3を判定する、軟部肉腫横断的な組織学的grading体系である。
  • は低gradeにとどまりやすく、型・円形細胞優位の粘液型・は高gradeになりやすい。
  • 後腹膜という部位は周囲臓器への浸潤・完全切除の困難さ・断端陰性でも局所再発しうる点が外科的な課題である。
  • 分子亜型分類・診断マーカーの詳細はH2-109B:(後腹膜)を参照する。